現行の日米の「思いやり予算」特別協定は21年3月末に失効します。マーク・ナッパー米国務副次官補(日本・韓国担当)は24日の記者会見で、「明らかに日本も米国の扶養家族ではない」と述べて、韓国に対すると同様に、日本にも米軍駐留経費の負担増を求めていく考えを示しました。
米軍駐留経費は、日米地位協定第24条で、「日本国に負担をかけないで合衆国が負担する」と明記しているのですが、現実は1978年以来「思いやり」と称して駐留経費を負担するようになりました。その後、米軍再編経費、SACO(日米特別行動委員会)経費と次々に拡大し、負担額は43年間で10兆円にものぼります(しんぶん赤旗)
河野防衛相は米軍駐留経費の日本側負担(「思いやり」予算)に関する日米間の新たな特別協定について、「今年の秋口くらいから交渉が始まる」との見通しを示しました。
それについてしんぶん赤旗は「駐留費の負担協議 米軍への『思いやり』廃止こそ」とする主張を掲げました。
日本の負担額は世界の中でも突出しているので、増額などもってのほかです。
天木直人氏が「日米安保はやめるしかない」とする記事を出しましたので併せて紹介します。
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主張 駐留費の負担協議 米軍への「思いやり」廃止こそ
しんぶん赤旗 2020年1月26日
河野太郎防衛相が、在日米軍駐留経費の日本側負担(「思いやり」予算)に関する日米間の新たな特別協定について、来年3月に現行協定の期限が切れるため、「今年の秋口くらいから交渉が始まる」との見通しを示しました(21日)。「米国第一」を掲げるトランプ米政権は既に、安倍晋三政権に大幅な増額を求めています。しかし、「思いやり」予算は、在日米軍の維持経費は日本に負担をかけないで米国が負担すると明記した日米地位協定にも反するものです。廃止が当然であり、増額など論外です。
「世界最高額」の負担
米軍駐留経費の負担問題をめぐっては、米国と韓国が現在交渉中です。トランプ政権は当初、韓国の文在寅(ムンジェイン)政権に対し、今年の負担額を昨年の5倍以上となる約50億ドル(約5500億円)に引き上げるよう要求したと報じられています。韓国側は反発し、今月14、15両日にワシントンで開かれた協議でも合意に至りませんでした。
ポンペオ米国務長官とエスパー米国防長官は連名で米紙ウォール・ストリート・ジャーナル17日付に「韓国は(米国の)同盟国であり、扶養家族ではない」と題する異例の寄稿をし、改めて大幅負担増を強く迫っています。
トランプ政権は、日本にも法外な負担増を求めています。昨年7月に当時のボルトン米大統領補佐官が来日した際、日本側負担を現状の4倍を超える年約80億ドル(約8800億円)に増額するよう要求していたと報じられています。
「思いやり」予算の大幅増を迫る背景には、日米安保条約が「不公平な合意」(トランプ大統領)という認識があります。トランプ氏は「米国が攻撃されても日本はたたかう必要がない」「(日本を守るため)米国は多くのカネを払っている」などと繰り返しています。
しかし、在日米軍は「日本防衛」を任務にせず、米国の世界戦略を遂行する海兵遠征軍や空母打撃群など海外“殴り込み”部隊です。米軍駐留経費負担も、米国の同盟国の中で突出しています。
安倍政権が決定した2020年度予算案で、「思いやり」予算は1993億円に上ります。沖縄県名護市辺野古の米海兵隊新基地建設など米軍再編関係経費1799億円、沖縄県内の米軍基地移転(たらい回し)などのためのSACO(沖縄に関する特別行動委員会)関係経費138億円も盛り込み、総額は3930億円に達します。
元外務事務次官・元駐米大使の村田良平氏は、「思いやり」予算について「問題の根源は、日本政府の『安保上米国に依存している』との一方的思いこみにより、その後無方針にずるずると増額して来たことにある。米国は日本の国土を利用させてもらっており、いわばその片手間に日本の防衛も手伝うというのが安保条約の真の姿である以上、日本が世界最高額の米軍経費を持たねばならない義務など本来ない」と語っています。(『村田良平回想録 下巻』08年)
特別協定結ぶ必要ない
「思いやり」予算に関する日米特別協定は1987年、地位協定の負担原則に反することから「暫定的、一時的、限定的、特例的な措置」として結ばれ、既に33年にもなります。これ以上、新たな協定を結ぶ必要はありません。米軍ではなく、日本国民の暮らしを「思いやる」政治が求められます。
日米安保は「止められなければ文句を言うな」という事だ
天木直人のブログ 2020-01-26
きょう1月26日の朝日と毎日が、奇しくも、日米安保条約の不条理を批判する記事を掲載した。
すなわち、朝日は一面トップで東京上空の制空権に関する不条理を取り上げた。
五輪期間中は世界から民間機が集中するから、せめてその期間だけでも横田基地を使わせてもらえないかと日本政府が米軍に打診していたことがわかったと。
ところが米国はこの要望を拒否したという。
それどころか、首都圏上空の制空権すら手放そうとしない。
だから日米地位協定の改正が待ったなしなのだ。
そう、朝日は、「日米地位協定」(中央公論新社)の著者である山本章子琉球大学講師に言わせている。
その同じ朝日新聞は、「日曜に想う」というコラムで、大野博人編集委員の論評を掲載し、もはやアメリカはトラブルシュータ―ではなくトラブルメーカーだと言わせている。
そのコラムの中で大野編集委員は、いま中東で起きている緊張状態は「イラン問題」ではなく、「アメリカ問題」だとし、ノーベル賞学者であるポール・クルーグマンのことばを引用して、あの大義なきイラク戦争を主導したディック・チェイニー副大統領(当時)について、「数十万人のイラク人の血で手を汚したやつだからと、外国人が殺害したら米国人はどう反応しただろうか、自問してもらいたい」と書いている。
きょう1月26日の毎日新聞に至ってはもっとすごい。
すなわち「時代の風」というコラムで小倉和夫青山学院特別招へい教授の次のような論評を掲げている。
つまり日米安保条約は、軍事的行動については「それぞれの憲法上の規定に従って」実施する事になっている。だから平和憲法の下での制約は当然だと。
在日米軍は憲法違反だと断じたあの砂川事件の伊達判事とまるで同じだ。
しかも小倉氏はこう言っている。
日本にある米軍基地は世界中の米国の戦争に重要な役割を果たしている、しかし、そのありかたについて日本は文句を言えない状況だと。
小倉氏は私の7年先輩だ。
イラク戦争に反対して首を切られた失格外交官の私と違って、外務省の要職を歴任し、その後も様々な要職を天下った成功者だ。
その人物がここまではっきりと日米安保条約の欺瞞を公言したのだ。
だったら、私のようにはっきりと、日米安保条約は止めるべきだと言うべきだ。
しかし、山本氏にしても大野氏にしても小倉氏にしても、日米安保は見直せとというけれど、止めろとは決して言わない。
山本氏に至っては、その著書「日米地位協定」の中で私は日米安保容認論者だとまで書いている。
しかし、彼らが知らないはずがない。
日米安保条約を日本の望む方向で改定する事を米国が認めるはずがない事を。
なぜなら日米安保条約は日米軍事同盟条約だ。米軍の意向がすべてに優先される。
米軍が自ら不利益になる事を認めるはずがない。
つまり日米安保条約を続ける限り、その不平等性は変えられないのだ。「文句があるなら止めるしかない」という話しなのである。
おりからきょうの各紙が一斉に報じた。
ついに米国が米軍駐留経費をもっと増額しろと言い出したと。
ナッパー国務次官補代理(日本・韓国担当)が24日の記者会見で、韓国への負担増要求は日本にも適用されるといい、ナッパーの上司であるスティルウェル国務次官補は24日のワシントンでの講演で、アジア地域の安全保障情勢は、10年前、いや5年前と全く異なる、といって負担増要求を求めたと。
もはや、あきらかだ。日米安保条約を止めるというトランプ大統領が米国の大統領であるいましかない。止める覚悟がないなら、すべての不当な要求を受け入れるしかないのだ。
いくら日米安保は不条理だ、正しい同盟関係にせよ、と文句を言ってみてもはじまらないのである。
それはガス抜きでしかないのだ。
そんな事を言うくらいなら、いっそ「日米安保に代るものはない」と繰り返す御用学者の方がよっぽどわかりやすい。
日米安保バンザイと繰り返す読売や産経のほうが朝日や毎日より正直である(了)