日本の検察が持つ自由裁量権は海外の法律専門家たちを驚かせるほどに大きく、刑事事件以外において、誰を起訴の標的にするかはまさに彼らの自由に任されています。
それは良く運用されればそれなりに評価できる面はあるのですが、もしも政治権力を持っている人間にそれが利用されるならばその害悪は計り知れません。それは絶対避けるべきですが、検察制度が創設されて間もない明治時代に既にそれを利用した政敵の追い落としがありました。とはいえその後の歴代のトップは良識を発揮して自制して来ましたが、官邸ポリスを殊の外重宝している安倍首相はどうなのでしょうか。
ジャーナリストの本澤二郎氏が「安倍と菅の大暗闘」と題する記事を出しました。
腐臭を極める安倍政権のツートップスの暗闘という訳でまことにおぞましい話ですが、検事総長をどちらが握るかがポイントということに至っては絶句ものです。
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安倍と菅の大暗闘
本澤二郎の「日本の風景」(3557) 2020年01月17日
<法務検察・警察首脳人事が決め手となるポスト安倍抗争>
腐敗まみれの安倍・自公・日本会議の政府のもとでは、法務検察と警察の首脳人事が物を言う。これほど腐りきった政権も珍しいのだが、小選挙区制下の長期政権では、不思議でも何でもない。拙著「小選挙区制は腐敗を生む」(エール出版)を参照されたい。
目下、首相の安倍と官房長官の菅が、水面下で大暗闘を繰り広げている。菅は、河井(二階派)を法務大臣に押し込んで、法務検察の力でライバルを排除する作戦が成功するかにみられたが、どっこい河井夫妻は、公選法と政治資金規正法の違反で首を斬られた。
カギは、誰が河井夫妻を刺したのか?「安倍サイド」という見方が強い。安倍後継の一番手にのし上がってきた菅を、安倍が煙たくなって、落下させたというのである。
いまや安倍と菅は犬猿の仲なのだ。安倍城は内部から崩壊しているのである。菅が期待している黒川の検事総長は、安倍側近の森雅子法相によって阻止される、という見方が浮上している。
<中村格の警察庁長官は消えた!>
ここ数年、菅を「影の首相」とする声も噴出していた。安倍の健康状態を知る立場の菅が、後継へと大きく踏み出したためでもあった。
その具体的な表れが、河井の法相人事を菅が押し切ったことで、安倍と激突することになった。菅と二階の連携である。
もう一つの菅と安倍の対決は、警察庁長官人事でも表面化した。ご存知、中村格を長官に押し込むことに反菅・反二階派が動いた。
中村といえば、伊藤詩織さん事件でTBS山口強姦魔を不起訴にした御仁で有名だ。清和会OBによると、徳洲会医療事故にも関与したという疑惑も出ている。ほかにも沢山あるという問題人物だが、1月17日付の長官と警視総監人事異動で、中村の長官起用は消えた。
ここでも菅は、目的人事に失敗、安倍に敗れてしまった?最近の菅記者会見が乱れがちの、菅の精神状況を物語っているようだ。同時に内閣記者会も、少しばかり活性化しているが、一皮むくと、安倍サイドがけしかけている可能性を否定できない。
<黒川事総長もない?>
森雅子法相は、安倍人事である。菅人事ではない。
そこから菅人脈と言われてきた黒川の検事総長は消えた、と見られている。
法務大臣経験者から検察の内情を聞くまでは、多くの国民同様に「正義の検察」を信じてきたジャーナリストだったが、ゴーン事件でも指摘されたが、生殺与奪の権限は、一人検事総長の手に握られている。これが日本の法務検察の真実である。
その検事総長は、官邸と太い鉄の鎖でつながっている。菅が安倍を出し抜いて、検事総長をわが手に抑え込もうとした理由であるが、どうやら安倍ー森ラインで、菅のための黒川起用を阻止すると見られている。
<ダルマになった菅義偉官房長官>
それにしても、繰り返したくなるのだが、法務検察人事をだれが牛耳るのか、でポスト安倍の行く方が決まるという日本的な首相レースに反吐が出る。
仮に黒川の検事総長が実現したりすると、菅のライバルはことごとく脛の傷を暴露されて、失脚することになる?
中村格の警察庁長官人事をつぶされ、ついで検事総長まで抑え込まれると、菅の自民党総裁・首相の目は消えることになる。つまりはダルマになった菅である。それでも飛び出そうとすれば、横浜のカジノを暴かれることになろうか。
<どうする二階幹事長>
菅と連携しながら、息子を自身の選挙区から擁立したい二階幹事長も、思惑が外れることになる。
法務検察警察人事は、二階の戦略にも影響を与える。
安倍には麻生がついているが、安倍自身には、細田派は存在しているようで、存在していない。四分五裂の状態である。
<予算国会乗り切り困難>
傷ついた狼に、気力迫力がない。野党の大攻勢に太刀打ちできる解散権は、竹刀である。野垂れ死にする確率も、野党次第で高い。予算国会乗り切りは、通常国会目前にして厳しい。
政局国会になる可能性も出てきている。
2020年1月17日記(東京タイムズ元政治部長・政治評論家・日本記者クラブ会員)