2020年1月26日日曜日

任期の長さとは反比例の幼児性を示す首相の答弁(日刊ゲンダイ)

 通常国会の冒頭で各党の代表質問が行われましたが、答弁に立った安倍首相の発言空疎の一語に尽き、野党の厳しい追及にマトモに答えるものではありませんでした
 日刊ゲンダイが「また野党を揶揄の首相答弁 任期の長さとは反比例の幼児性」とする記事を出し、首相の答弁について、「‥‥官僚のせい、ホテルのせい、野党のせい。透けて見えるのは異常なほどの自己愛、敵への攻撃性、自己中心の論理。そこからは軽さ、品のなさ、薄っぺらさが滲み出ている」と述べるとともに、野党の批判に対して「米国のお先棒を担いでいるとの指摘はまーったくあたりません!」とムキになって反論する児性を指摘しました。

 記事中に登場する臨床心理士の矢幡洋氏が、「自己愛性パーソナリティー障害」の特性について
「自己評価が非常に高く、自分をおとしめるような事実を受け入れようとしないのが特徴です。不都合な事実を突きつけられると、自分以外の外部のせいにして責任転嫁することが多い。自分のプライドを守ることが主目的で、言い合いに負けたくない心理が先に立つ。ですから、事実に基づく議論は成立しません。自己愛型の人は政治家として危うい。折れるべきところで折れないので、周りにイエスマンしか残らなくなります」
と語っているのは実に説得力があり、それに尽きている感じがします。
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また野党を揶揄の首相答弁 任期の長さとは反比例の幼児性
日刊ゲンダイ 2020/01/24 
 通常国会がようやく始まり、衆参両院で23日まで2日間にわたって代表質問が行われた。積み上がる疑惑から逃げ回り、51日ぶりに国会答弁に立った安倍首相の発言の空疎なことと言ったらなかった。老眼鏡をかけて手元のペーパーに始終目を落とし、官僚作文を棒読み。安倍が疑惑のド真ん中にいる首相主催の「桜を見る会」をめぐる公金私物化問題、成長戦略の柱に掲げるIR(カジノを含む統合型リゾート施設)を舞台にしたカジノ汚職、2閣僚辞任に関する説明責任。野党の厳しい追及にマトモに答えようとしなかった

 桜疑惑の招待者名簿の再調査については「調査で廃棄を確認。改めて調査を指示することは考えていない」とし、ホテルニューオータニで破格の会費5000円で催された前夜祭の明細書開示は「ホテルは公開を前提としての資料提供に応じかねるとのこと」。招待者名簿が公文書管理法で義務付けられた管理簿にも、政府ガイドラインで定められた廃棄簿にも未記載だった問題を受け、内閣府の歴代人事課長6人を厳重注意処分にして幕を引こうとしている。それでいて、いまだに民主党政権を当てこすりだ。2011~17年分の管理簿未記載は「両年(11年と12年)の措置を前例として漫然と引き継いだ」と釈明し、民主党政権の対応が未記載の発端だったというのだ。官僚のせい、ホテルのせい、野党のせい。透けて見えるのは異常なほどの自己愛、敵への攻撃性、自己中心の論理。そこからは軽さ、品のなさ、薄っぺらさが滲み出ている

ムキになり「指摘はまーったくあたりません!」
 IR担当の内閣府副大臣だった衆院議員の秋元司容疑者の逮捕については、「捜査に影響する可能性があり、詳細なコメントを控える」。昨年7月の参院選をめぐる公選法違反疑惑で広島地検の捜査対象となっている河井克行前法相と妻の案里参院議員の件は、「捜査に関する事柄については答えを控える」といった具合だ。

 耳タコ答弁を崩したのは、23日の衆院本会議での共産党の志位委員長による質問だった。自衛隊の中東派遣をめぐり、「安倍政権の対応は米国の『お先棒担ぎ』そのものだ」と批判。すると、安倍は「米国のお先棒を担いでいるとの指摘はまーったくあたりません!」とムキになって反論した。齢65、一国を背負って立つトップの子供じみた言動にはア然とするほかない。野党を揶揄し、責任を押し付け、この期に及んでもオレ様気取り。もはや首相答弁の問題は、中身よりもその幼児性にあるのではないか。

言動は「子供の言い合い論理」と専門家
 臨床心理士の矢幡洋氏が言う。
「安倍首相の言動は子供の言い合い論理に近いものを感じます。悪さを注意された子供が〈オマエだってやってるじゃないか!〉と筋違いの反論をすることがある。指摘された事実に焦点を当てず、論点をズラしてごまかそうとするのです。こうした傾向は自己愛性パーソナリティー障害の特徴と合致します」

 医学事典によると、自己愛性パーソナリティー障害には、誇大性、称賛への欲求、共感欠如の持続的パターンが認められるという。具体的な診断基準はこうだ。▼自分の重要性および才能についての誇大な、根拠のない感覚 ▼途方もない業績、影響力、権力、知能、美しさ、または無欠の恋という空想にとらわれている ▼自分が特別かつ独特であり、最も優れた人々とのみ付き合うべきであると信じている ▼無条件に称賛されたいという欲求 ▼特権意識 ▼目標を達成するために他者を利用する ▼共感の欠如 ▼他者への嫉妬および他者が自分を嫉妬していると信じている ▼傲慢、横柄――。
 驚くほど、安倍の人格と一致する。

自己評価が非常に高く、自分をおとしめるような事実を受け入れようとしないのが特徴です。不都合な事実を突きつけられると、自分以外の外部のせいにして責任転嫁することが多い。自分のプライドを守ることが主目的で、言い合いに負けたくない心理が先に立つ。ですから、事実に基づく議論は成立しません。自己愛型の人は政治家として危うい。折れるべきところで折れないので、周りにイエスマンしか残らなくなります」(矢幡洋氏=前出)
 ちなみに、人口の0・5%が自己愛性パーソナリティー障害を有していると推定されていて、女性よりも男性に多いという。

支持率が下がればガクッといく
 安倍の任期は7年を超え、昨年11月20日に通算在職日数で戦前の桂太郎を抜き、憲政史上最長となった。自民党総裁任期は21年9月まで。東京五輪後の8月24日まで政権を維持すれば、連続在職記録でも大叔父の佐藤栄作を抜いて単独1位に躍り出る。その任期の長さを考えれば愕然とする人品骨柄だ。

 安倍に関する著書もある政治評論家の野上忠興氏はこう言う。
「養育係の久保ウメさんは幼少期の安倍首相について、〈自己主張、自我が人一倍強い〉〈わがまま勝手で、こうと言ったらテコでも動かず、すねやすい〉と言っていました。夏休み最終日に〈宿題は終えたの?〉と聞くと、〈うん、やった〉と答えるのに、実際は全く手つかず。ウメさんが徹夜をして左手で仕上げたそうです。祖父は岸信介元首相。両親は外相を務めた安倍晋太郎氏と、岸の長女の洋子さん。政治家の家庭に生まれたため、多感な時期に両親が不在なことが多く、その寂しさからオレはオレなりにやっているんだと開き直るようになったようです。攻めに強く守りに弱い政治スタイルは、謝ることが嫌だから。自分がかわいすぎて、指弾されることに我慢ならない。再登板以降、言行不一致のその場しのぎがあまりにも目立ちます」
 こういう首相だからこそ、周囲をオトモダチで固め、批判を決して許さず、ライバルを徹底的に潰し、ここまでやってきたのだろう。

 大学入試改革をめぐる「身の丈」発言で大炎上した萩生田文科相も、経産相時代に安倍の意を受けて韓国叩きに鼻息が荒かった世耕参院幹事長もオトモダチ。その結果、日韓関係は戦後最悪に陥り、19年の貿易統計(速報)で対韓輸出額は12・9%減の5兆441億円に縮小。全体の貿易収支は1兆6438億円の赤字で、2年連続の赤字となった。公選法違反疑惑の河井克行もアベ応援団のひとりだ。12年の自民党総裁選で克行が鳩山邦夫氏(故人)を説得し、鳩山主宰の「きさらぎ会」を安倍支持でまとめた。案里が初出馬した選挙戦では、党本部が案里陣営に1億5000万円を支給する超VIP待遇。その2カ月後に克行は初入閣した。
 一方、官邸主導で擁立した案里の滑り込み当選のあおりを受け、落選の憂き目に遭ったのが溝手顕正前参院議員だ。第1次安倍内閣で防災担当相を務めながら、野党時代に安倍を「過去の人」と評し、首相再登板を公然と批判。恨み骨髄の安倍は溝手の参院議長就任の芽を摘み取り、国会からも追い出した。ここにきてポスト安倍に再浮上するライバルの石破茂元幹事長に対する冷遇もあからさまだ。年末に収録されたBS番組で「ポスト安倍」の候補として岸田文雄政調会長、茂木外相、菅官房長官、加藤厚労相に言及。「ぜひ競い合いながら、自民党にはたくさんの人物がいると国民に思っていただけたら」とか言っていたが、世論の支持が最もアツい石破は論外だといわば公言したわけである。

「世論調査では桜疑惑の政府説明に7割が納得せず、IR整備に6割が反対しているのに、内閣支持率がガタ落ちすることはない。〈他に適当な人がいない〉という消極的選択と野党の体たらくの結果ですが、果たして本当にそうなのか。安倍首相は〈政治は結果だ〉と言いますが、これまでどんな結果を出したのでしょうか。内閣の最重要課題に掲げる北朝鮮による拉致問題は解決の見通しが立たず、北方領土返還はむしろ遠のいている。戦後最長の景気拡大を喧伝していますが、経済指標は景気後退を示唆しています。安倍首相が唯一のよりどころとする支持率が下がればガクッといく」(野上忠興氏=前出)
 消極的支持を積極的不支持に変える潮目にきている。