2021年3月16日火曜日

21日で宣言解除なら すぐに都内感染1日1300人の試算

 「もう打つ手がない」と専門家会議のメンバーが発言したようですが、打つ手がないのではなく、政府はこれまで「何も手を打ってこなかった」のでした。
 12月の「勝負の3週間」の時がそうでした。正月明けに急遽緊急事態宣言を出したとき、菅首相は「1ヶ月で必ず収束させる」と断言しましたが、それに見合った方策は何も講じませんでした。勿論2月7日には収束しなかったので結局1ヵ月延長しました。
 3月7日に2週間の再延長をする際には、ようやく「PCR検査を拡充する」と1年遅れの対策を口にしましたが、それも実行していません。PCR検査回数はその後も約45,000件/日程度(全国ベース)で、それ以前の約60,000件/日よりもむしろ減りました。国民に宣言したにもかかわらずこのありさまで、常にその場限りの言い逃れという無責任さです。
 何の実効性のある対策も立てずに国民にただ自粛を要求するのでは、キチンと月給が入る人たち以外の国民の懐はとても持ちません。漫然とこの事態を継続させることは許されないことですが、だからと言ってこのまま21日で緊急事態宣言を終了させれば、仲田泰祐東大准教授らの試算によると1ヶ月余りで東京都の新規感染者数は1300人/日に戻るということです。
 菅首相が再選に向けての命綱にしている「東京五輪・パラ」どころではなくなるのは自業自得ですが、国民は踏んだり蹴ったりです。
 因みに、神奈川県の黒岩祐治知事は15日、県庁で記者団に「解除の方向がいい」と述べましたが、埼玉県の大野元裕知事は「現時点で解除要請を行う段階にない」、千葉県の森田健作知事も「重症者を減らし病床を確保しなければいけない」と慎重姿勢を示しました。
 東京都の小池百合子知事は、都内の状況について「重症者は(国のステージ2を)クリアしても、療養者数が増えるなどの動きになっている」と悲観材料を口にしましたが、宣言解除の是非には言及しませんでした。
 日刊ゲンダイと東京新聞の記事を紹介します。
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321宣言解除なら都内感染1日1300人試算 忍び寄る“魔のGW”
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「変異株、ワクチン、行楽シーズン」の3難関
「もう打つ手がない」――。14日付の産経新聞によると、新型コロナ対策について厚労省に助言する専門家組織のメンバーが11日の会合でこう発言したという。新規感染者の減少が鈍化する中、菅政権は発令中の緊急事態宣言を予定通り21日に解除する方針のようだ。無策のまま、解除すれば「3つの難関」が立ちふさがり、大型連休後半の5月初めには、都内の新規感染者が再び1日1300人を超えかねない。
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 菅首相は18日にも専門家による諮問委員会などを開き、解除の是非を判断する。それにしても、「打つ手なし」だから解除してしまえというのは、あまりにもフザけた話だ。産経の報道だと、関係閣僚の一人は「宣言はもう効かない。早く解除するしかない」と言い放ったという。
 ツイッターでは〈呆れた〉〈打つ手なし????国民の命まもる気持ちなし〉と批判が噴出。舛添前都知事も〈呆れるほど無責任〉と酷評し、〈打つ手なし〉はトレンド入りするほどだった。
 毎日新聞が13日に行った世論調査では、宣言を「21日以降も延長すべきだ」が57%に上った。菅政権は無策を棚に上げ、本気で解除する気なのか。
 宣言発令中の1都3県は、病床使用率こそ落ち着きつつあるが、新規感染者は減るどころか、増加傾向だ。厚労省が12日に公表したデータによると、宣言下の1都3県は東京と埼玉で、直近1週間(~3月11日)の新規感染者は前週よりも増えた。既に解除された大阪、京都、兵庫の3府県も増え、確実にリバウンドしている(別表)


 原因のひとつは、感染力が強い「変異株」の存在だろう。北海道大の北島正章助教らが国内のある地域で昨年12月4日に採取された下水を分析すると、検出された新型コロナの遺伝物質の59%が変異株由来だった。今年1月7日の分析では倍の124%に上昇。現在はさらに増加しているとみるのが自然だ。

人出を呼ぶ「桜」満開と重なり…
 頼みの「ワクチン接種」も先が見えない。河野担当大臣は、6月末までに5000万人分のファイザー製ワクチンを調達可能と胸を張るが、12日現在の入荷実績はたったの118万人分、接種実績も約23万件にとどまる。
 今後の「行楽シーズン」で気が緩めば、さらに人出は増える。気象庁は14日、東京都心で平年より12日も早い桜の開花を発表。宣言解除と「満開」が重なれば人流増に伴い、リバウンドが加速するのは間違いない。
 東大の仲田泰祐准教授らの試算によると、21日に宣言が解除され花見などで都民の気が緩んだと想定すると、東京の1日当たりの新規感染者は5月第1週に1000人台を突破。ゴールデンウイーク明けの同月第3週に1300人超になるという。今はどう見ても解除できるタイミングではないはずだ。
昨年、1回目の宣言が全国で解除された日の新規感染者数は東京で8人でした。200~300人台で推移する今、解除する根拠はありません。政府は病床使用率の低下を根拠にしていますが、現在、蔓延しつつある英国型変異株は感染力の強さのみならず、致死率も高いと危ぶまれています。すると、重症化する患者も増える公算は大。解除しても病床はすぐに逼迫してしまいます。医療体制の拡充をしないまま、解除するのは危険です」(西武学園医学技術専門学校東京校校長・中原英臣氏=感染症学)
 前出の仲田准教授の試算は、感染者減が横ばいだった今月7日までのデータを基にしたもの。足元の感染者数が増加しているのだから、さらにペースが速まり、5月初めにも「都内1300人超え」に達する可能性は高い。
 菅首相はそれでも解除する気なのか。


緊急事態宣言解除で首都圏知事の意見割れる 神奈川は解除前向き、埼玉と千葉は慎重
                          東京新聞 2021年3月15日
 1都3県で21日に期限を迎える新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言について、神奈川県の黒岩祐治知事は15日、県庁で記者団に「解除の方向がいい」と述べた。一方、埼玉県の大野元裕知事は「現時点で解除要請を行う段階にない」、千葉県の森田健作知事も「重症者を減らし病床を確保しなければいけない」と慎重姿勢を示し、意見が割れた
 黒岩知事は神奈川県内の新規感染者数が減少傾向にあることや、病床使用率が改善していることなどから「総合的に神奈川県は解除の条件を満たしている」と説明。「街の雰囲気や皆さんの感情を考えても、(さらなる)延長は我慢できないのではないか。宣言の効果が薄れている」と語った。近く4都県で協議するとし「解除の方向で話し合いたい」と期待した。
 これに対し、大野知事は「新規陽性者数がリバウンド(再拡大)の兆候を示している」と指摘。さらに延長を要請する可能性について「当然あり得る」とした。森田知事も「解除といえる状況にしたいが、リバウンドが心配」と述べた。両知事とも県内での変異株感染者の増加も懸念した。
 東京都の小池百合子知事は15日夕、都内の状況を「重症者は(国のステージ2を)クリアしても、療養者数が増えるなどの動きになっている」と説明。引き続き感染防止の徹底を呼び掛け、宣言解除の是非には言及しなかった