2021年3月24日水曜日

24- 「時短命令は違憲」・・・飲食店チェーンが東京都を提訴

 東京都は18日、営業を午後8時までとする緊急事態宣言下の要請に応じない27店に対して時短命令を出しました。このうち26店は「グローバルダイニング」(東京)経営するチェーン店で、同社は命令に従って宣言解除の21日まで4日間、午後8時閉店としましが、都が営業時短を「要請」した段階では、ホームページに「グローバルダイニング代表・長谷川の考え方https://www.global-dining.com/news/2021/01/07/11929/1月7日付)や「弁明書」(下掲)を掲載して、時短に応じませんでした。

 都は18日に「午後8時以降に営業を行い、さらにWEB上で発信していることが、来店を促し、市中感染のリスクを高めている」との理由で、集中的に同社に命令を出しました。
 それに対して同社は22日、都の新型コロナ対応の改正特別措置法に基づく営業時短命令は違法だとして、計104円の損害賠償求める訴訟を東京地裁に起こしました。損害賠償の請求額は、命令を受けた 26店舗×4日間×1円 /店・日)104円 で、代理人の倉持麟太郎弁護士は、損害賠償の請求が目的ではないとして、都の命令は同社を狙い撃ちにしたもので、「法の下の平等、表現の自由、営業の自由を侵害している」「コロナ禍で露呈された法の支配、民主主義の脆弱さを問う訴訟にする」と述べました。
 同社は20年12月時点で15億円の赤字を出し13億円を借金したといいます。1日4~6万円程度の給付金ではどうにもならないということです。
 同社は、午後8時以降営業を行いそれをWEB上で発信していることで20~30代の若者客が増え、2月の売り上げ創業以来初の黒字になったということです

 十分な補償を行わない中で、時短を「要請」したり「命令」したりすることがどうなのかが司法の場で問われることになります。
 11日付の同社の「弁明書」は説得力がありますので、NHKの記事と併せて紹介します。
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“東京都の時短命令は不当” 飲食店運営会社が提訴
                     NHK NEWS WEB 2021年3月22日
営業時間の短縮要請に応じていないとして、新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づいて東京都から営業時間を短縮するよう命令を受けた飲食店の運営会社が、命令は不当だとして訴えを起こしました。
飲食店の運営会社「グローバルダイニング」は22日東京地方裁判所に訴えを起こし、東京 千代田区で長谷川耕造社長が会見を開きました。
訴えによりますと、グローバルダイニングは、今月18日に都から都内の26店舗について、「午後8時以降も営業を続け、感染リスクを高めている。ほかの飲食店の営業を誘発するおそれがある」として、営業時間を短縮するよう命令を受けました。
これについて、特別措置法は営業の自由や法の下の平等を保障した憲法に違反し、営業時間の短縮命令は違法だとして、都に賠償を求めています。
会見で長谷川社長は「店ではクラスターも起きず、営業を短縮しなくても社会やお客様に危害を加えることはないと確信していた。懲罰を与えることは許されない」と述べました。
また、弁護団の倉持麟太郎弁護士は「緊急事態宣言が必要だったのかも検証されていない。司法の場で争うことを通して、薄弱な法的根拠で、政治による決定がなされ、しわ寄せを受けている人の声なき声を伝えていきたい」と述べました。
一方、東京都は「訴状が届いておらず、コメントは差し控える」としています。
小池知事「特措法にのっとった手続き」
   (中 略)
官房長官「飲食店の時短措置は重要」
   (中 略)

(株)グローバルダイニング 弁明書

                              2021年3月11日
小池百合子 
                         株式会社グローバルダイニング
                            代表取締役 長谷川耕造
                   

 当社運営店舗26店が、新型インフルエンザ等対策特別措置法45条2項要請に応じないことについて、下記の通り弁明を行います。
                    
1.当社の新型コロナウイルスに関しての考え方について
 COVID-19のような弱毒性のウイルスは完全に封じ込めるのは不可能であると考えております。今回の世界的な流行も、無症状の陽性者が多く、彼らが世界中に移動して短期間に世界中に伝染したものです。
 そのため、この感染を克服するには「感染して免疫を得る」もしくは「ワクチン接種によって免疫を得る」ことにより、人口約6割の方が免疫を持ち、集団免疫を確立するしかないという事は自明の理だと考えております。

2.新型コロナ対策についての疑問
 コロナで亡くなられた方々の「約81.5%」が70歳以上の高齢者の方々と言われており、「高齢者で一定の基礎疾患をお持ちの方々」「重い基礎疾患をお持ちの方々」はリスクが高く、感染させてはいけない方々です。
 それに対し、昨年初頭からこの新型コロナ禍が一年以上経過して、コロナでの死者と言われている若年層の方々は、3月3日時点で、20代・3名、30代・16名、40代・57名です。ハイリスクの方たちを守るためには、ハイリスクの方が住む家庭内での感染を防ぐ必要があります。高齢者世代やハイリスクをお持ちの方と、若い世代の分離は行政のサポートで対応できたのではないでしょうか
 また介護施設内感染やクラスターを防ぐ必要もあります。介護スタッフを徹底して管理・隔離するなどの施策も、行政主導でできたのではないかと考えます
 ハイリスクの方々を守ることができれば、リスクの低い若い世代の家庭での感染についてはそれほど恐れることはありません。(同様に当社の顧客もローリスクの年代の方が大半です)しかし残念ながら、その様な具体策の話は行政サイド、特に東京都知事から聞いたことがありません
 日本の超過死亡率がコロナのおかげで激減しているという情報もあります。必要なはずの、ハイリスクグループの命を守る具体策を実行せずに、感染を低減、低減と言って、緊急事態宣言を要請・発出して経済活動に対して2回にわたりブレーキを踏み、さらに延長するのは、経済を心肺停止に近い状態にするのに等しいと言わざるを得ません。
 これを例えれば「指の先が化膿したので、腕を肩から切断」するような、ありえない愚策だと思います。
 今回の再延長においては、病床の使用率の高さを理由にしていましたが、昨年5月時点で3,300だった東京都の新型コロナ用病床数は、現在でも5,000しかないと聞いております。欧米の感染拡大を見れば病床確保は必須事項だったはずなのに、その努力を怠りました。10万人あたりの病床数が、アメリカの1.5倍ある日本で、感染者数がアメリカよりもはるかに少ない日本で、病床数ひっ迫・医療ひっ迫とは、努力不足の結果を、都民に対して我慢を強いることで目をそらし、ごまかそうとしているようにしか見えません
 不要不急の外出を控えるよう言いつつ、(時間や人数が限られているとはいえ)映画やイベント、テーマパークなどの営業が認められるような緊急事態宣言に何の意味があるのでしょうか。少なくとも外食は、それを必要とする人は、どの時間帯においても少なからず居ります。

3.45条要請及び経済対策についての疑問
 新型インフルエンザ等対策特別措置法第24条及び第45条を元に、時間短縮営業の要請を受けましたが、これはあくまでも「要請」であり、要請を受けた側が任意に判断できるものであると考えております。
 当社としては、本年1月の緊急事態宣言が発出される際、ホームページ上で当社の考え方(https://www.global-dining.com/news/2021/01/07/11929/)を掲載し、その後、マスコミ取材などでも「要請は受けない」と明言をしております。
「東京都は時短要請に応じない飲食店などに理由を聞く手続きを開始した」という報道が出ておりますが、今回届いた3月5日付け書面のタイトルは「弁明の機会の付与について」とありました。「弁明」とは「物事をはっきりさせる」という意味もありますが、一般的には「非難されたことに対して言い開きをする」という意味合いで使われます。
 任意に選択できるはずの要請に応じなかった事に対し「弁明」を求めることに違和感を覚えます
 なお前述したホームページに公開した「当社の考え」は批判にさらされるものと覚悟をしておりましたが、批判の件数はわずかにすぎず、対して賛同・応援の数はかなりの数に上りました
 時間短縮の「要請」という、当社で判断できる期間においては、時間短縮をせず営業を続けることは、お客様への大切な約束であり、それが要請に応じない理由の一つでもあります。
 協力金等の経済対策についても、一律1日6万円というのはあまりにも不合理です。対応のスピードを理由にしているようですが、方法はいくらでもあるはずです。店舗・企業の状況に応じた経済対策を望みます。
 また東京都では、一定期間すべて時短要請に応じた事業者にのみ協力金の支払いをするとのことですが、新型インフルエンザ等対策特別措置法第63条2には「当該影響を受けた事業者を支援するために必要な財政上の措置その他の必要な措置を効果的に講ずるものとする。」とあります。
 たとえ1日であっても「当該影響を受けた事業者」に対し「必要な措置を効果的に講ずる」ことが義務であれば、東京都は特措法63条の義務違反をしていると言わざるを得ません。これについては回答を望むところです。
効果的な対策がなされていれば、当社も要請に応じていた可能性は高いものと考えております。
 新型コロナ対策や経済対策制度に大きな不備がある中、民間、特に飲食店を狙い撃ちにした経済的我慢を強いる緊急事態宣言と時間短縮要請については不信しかありません。巷で「何としてもオリンピックを実現するために、都知事は緊急事態宣言を実行・延長させた」と言われているようですが、これまでの施策を見ると、それらの噂が真実味を増してまいります。
 上記説明の通り、当社は45条要請に応じておりませんし、応じないことについて特措法45条3項にいう「正当な理由」があるものと考えておりますので、今後も要請にとどまるのであれば、応じないという意思を持っております。
 しかしながら要請に応じないことについて、正当な理由がないという(当社にとっては非常に不本意な)判断が下り、今後当社に特措法45条3項に基づく営業時間短縮の「命令」が出るということであれば、その命令に従うことは法律上の強制力をもった当社の「義務」となるため、遺憾ではありますが、その命令には従う用意はあります
本弁明書に書ききることのできない、当社の考え、飲食業界の思いは他にもたくさんあります。可能であれば、直接ご面談させていただき、ご説明させていただきたいと考えております。
 本弁明書による当社意見を真摯に受け取っていただくことを望む次第です。