2021年3月13日土曜日

政治的責任から逃げ回る菅首相 よく正気でいられるもの(日刊ゲンダイ)

 安倍首相は、息子や自身が関わる東北新社とNTTによる総務官僚接待攻勢が次々に週刊文春に暴露されて、いまや火だるま状態です。そもそもNTTの接待攻勢は菅氏がスマホの4割値下げを叫んだのを機に始まり、結果的にNTTは「ドコモ完全子会社化」という実を取り、余りあるものを得ました。国会でその責任を問われれた菅首相は、「政治責任の定義はないんじゃないでしょうか」と、歴史に残るセリフを口にました。

 日刊ゲンダイが「政治的責任から逃げ回る菅首相 よく正気でいられるもの ~ 」という記事を出しました。記事の中で、いまや国民は、菅首相に、「ダーティーに世を渡り歩かねば、叩き上げは天下を取れないと妙なたくましさを感じているフシすらある」と語っています。恐ろしい話です。
 内閣広報官の担当が山田真貴子氏から小野日子氏に変わったときに、記者団が「これを機に更問い(納得できない回答を聞き直す)を認めるように」と要求しましたが認められなかったということです。こんな話は外国の記者にはとても通用せず、世界の「奇観」とでも言うべきものですが、菅氏はそんなことをずっと続けてきました。
 ところで、菅政権の不人気に自民党内ではこれではとても選挙はやれないという思いなのですが、支持率が下げ止まったことから「超低空飛行ながら墜落はしない」と見て、菅首相の総裁任期の満了まで続けてもらうということのようです。
 それは「菅降ろしが早すぎると、9月にまた総裁選をやらなければならなくなるし、一連の不祥事や後手のコロナ対策の後始末は誰もやりたがらない」からで、まさにご都合主義の発揮です。そうなると恐ろしいだけでなく迷惑な話です。
 日刊ゲンダイの記事を紹介します。
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政治的責任から逃げ回る菅首相 よく正気でいられるものだ 自分の息子と子飼いの総汚染
                        日刊ゲンダイ 2021年3月12日
                         (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
 政治責任の定義というのはないんじゃないでしょうか」――。この言い草はないんじゃないでしょうか。5日の参院予算委員会における菅首相の答弁だ。立憲民主党の小西洋之議員に総務省接待問題に「政治責任があると考えるか」と問われ、完全に開き直ったのだ。
 安倍政権の官房長官時代、「桜を見る会」に“半グレ”が多数参加していたと指摘された際も、菅は定例会見でこう言い放った。
 反社会勢力の定義は一義的に定まっているわけではない
 その後、安倍政権は「反社の定義は困難」との見解を閣議決定までしたが、今度は「政治責任の定義は困難」と閣議に諮るのか。よくもまあ、菅はここまで政治責任から逃げ回れるものだ。
 気になるのは、菅の独特な言い回し。最近やたら「~じゃないでしょうか」を多用する。先月26日、山田真貴子前内閣広報官“隠し”のぶら下がり取材では、13回も乱発。この口癖に興味深い考察を立てたのは法大教授の上西充子氏だ。論点をはぐらかす「ご飯論法」の名づけ親である。
「ハーバー・ビジネス・オンライン」(3月1日)で〈いら立ちを抑えながら反論する場合に用いられる言い回しではないだろうか〉と指摘。相手に強い言葉で怒りやイライラをぶつけるわけにはいかない。だけど、気持ちが収まらない。〈そういう場合に口をついて出てくるのが「~じゃないでしょうか」という言い回しではないか〉と分析していた。

 「説明できることと説明できないことってあるんじゃないでしょうか」
 昨年10月、NHK「ニュースウオッチ9」で有馬嘉男キャスターに日本学術会議の任命拒否問題を聞かれた際も、菅は険しい表情でそう語っていた。菅の「~じゃないでしょうか」は、イライラを隠し切れない合図。もっと言えば「これ以上、聞くとキレるぞ」と脅しているに等しい。
 つまり冒頭の答弁は、なぜ官僚のせいで自分が「政治責任」を問われなければいけないのか、という傲慢さの表れ。なるほど、「接待も官僚が勝手にやったこと」と言わんばかりの強弁を繰り返すわけだ。菅の口癖が浮き彫りにするのは、自分が「罪作り」の原因のクセに、まるで他人事。決して己の非を認めない厚顔と破廉恥「じゃないでしょうか」。

どうみても「天領」を舞台にしたスガ案件
 いくら「政治責任」から逃げまくっても、違法接待問題のど真ん中にいるのは菅だ。舞台は「天領」と呼ばれるほど、影響力が強い総務省。NTTの接待攻勢を担った澤田純社長は、首相就任後に官邸で面会するほど「買っている」人物だ。
 登場人物はオール菅人脈。NTTの接待が過熱したのは2018年から。キッカケも菅発言のようだ。官房長官の立場で携帯電話料金を「4割下げる余地がある。競争が働いていない」とブチ上げたのが、18年8月。通信業界に激震が走った年に、NTTの接待攻勢が加速したのだ。
 澤田氏は18年6月の社長就任早々、19年ぶりとなるグループ再編を進め、その終着点が昨年9月29日発表の「ドコモの完全子会社化」。折も折、「携帯料金値下げ」を看板政策に掲げる菅政権の発足直後のことだ。
 同業他社が束になって武田総務相に「公正な競争環境が阻害される恐れがある」との意見書を提出する中、NTTは総務省のお墨付きを得て昨年11月17日、ドコモのTOBを完遂。その2週間後、ドコモが月額2980円の格安新料金プランを発表したのである。
 「外形的には菅氏を中心とした『スガ案件』に見えます。NTTは菅氏肝いりの『携帯値下げ』の妥協点を探るため、菅氏子飼いの総務官僚を“迎賓館”で籠絡。菅氏に花を持たせる形で、ドコモ完全子会社化という実を取ったのではないか。携帯値下げを中心的に担った菅氏の“懐刀”でNTT接待をヒタ隠し、総務審議官を更迭された谷脇康彦氏が接待漬けになっていたから、なおさらです」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)
 次期次官の目がついえた「ミスター携帯」は今月8日の参院予算委で、澤田社長と会食時の会話内容を問われ、「会食において、携帯電話料金の話は話題に出たと思います」と答弁している。癒着構造を、ほぼ自白したも同然ではないか。

幕引き図るたび“文春砲”の繰り返し
 外資規制に違反していたのにBS4K放送の認定を取り消さず、違法状態のまま、新設子会社への事業承継を認定――。総務省が「脱法スキーム」を入れ知恵した疑いまで浮上した放送事業会社・東北新社と菅の関係は、より単純だ。
“接待要因”は長男の正剛氏。ブラブラしていた20代に父親から総務大臣秘書官をあてがわれた彼が加わると、まもなく事務次官級と会食できる特典付き。創業者は秋田出身の同郷で、菅は総額500万円に上る政治献金をもらっていた。おまけに、BS4K放送の事業継承を決裁した当時、担当トップの情報流通行政局長だったのは前出の山田氏。彼女もまた菅のお気に入りである。
 週刊文春が正剛氏同席の違法接待を報じた当初、菅は「長男とは別人格」と色をなして反論。息子のしでかした事態が国家公務員倫理規程違反による総務省幹部の大量処分に発展すると、ようやく「おわび」を口にしたが、あくまで「政治家」としてではなく、「父親」として。とことん、「政治責任」に踏み込むことを避け続ける。
 この間、幕引きを図るたび、新たな“文春砲”が撃ち込まれるの繰り返し。秋本芳徳前情報流通行政局長は当初、東北新社との接待の場で衛星放送が話題に上ったことを否定。その翌週、文春が現場での録音を基にやりとりを詳報するや、事実を認め、更迭された。
 総務省の調査に東北新社以外の接待はなかったと答えた谷脇氏も、ほどなく文春にNTTからの豪華接待を暴かれ、更迭。山田氏が広報官続投から一転、辞職したのもNTT接待で名前が出ることを察知したからというのが通説だ。

ダーティーさに共感する諦めの世論
 子飼いの山田氏と谷脇氏を切り捨て乗り切ろうとしたら、接待漬けは政治家に飛び火。通信事業の許認可に直接関わる総務大臣、副大臣、政務官、およびその経験者に狙いを定めたNTTの接待攻勢という文春砲がまたもや、炸裂した。
 その数、過去7年間で実に計15人、延べ41件。対象者は「接待ではなく、プライベートな会合という認識」(野田聖子元総務相)、「完全割り勘を事前に伝えた」(高市早苗前総務相)などと弁明に追われている。
 自分の息子と子飼いの総汚染。週明けには澤田社長に加え、東北新社の中島信也社長も国会招致の予定だ。人の迷惑を顧みず、意地でも関与を認められない闇があるのはミエミエだが、菅はよく正気でいられるものだ。ツラの皮が厚い理由をコラムニストの小田嶋隆氏はこう指摘する。
 「結局、安倍政権下で公文書改ざんを平気でやってのけ『モリカケ桜』をしのいだ“成功体験”に味を占めているのでしょう。その体質を世論も『政治家は平気で嘘をつく』と訳知り顔で認めているような気がします。首相絡みの違法接待が発覚したにもかかわらず、最新の内閣支持率は復調気配。コロナ対応など生活に密接な要素でヘタを打てば即、反応するのに、それ以外は興味なし。むしろ、子飼いを冷酷に切り捨てた菅首相に『こうして今の地位を築いたのか』『ダーティーに世を渡り歩かねば、叩き上げは天下を取れない』と、妙なたくましさを感じているフシすらある。第2次安倍政権の発足から8年以上、マトモな政治家を見ていないからこその諦念なのでしょうが、実に嘆かわしいことです
 腐敗政治の連続に、世論の方が正気を失ってしまったのだろうか。