2021年3月19日金曜日

政府は変異株スルー 緊急事態全面解除の論理矛盾

 政府は18日、対策本部会議を開いて首都圏1都3県に出されている緊急事態宣言について21日で解除することを決定しました。

 しかし首都圏では新規感染者数が横ばいから微増の傾向にあることからリバウンドが懸念されるとして、宣言解除後も飲食の感染防止や変異したウイルスの監視体制の強化など5つの柱を挙げました。この種の会見ではいつもそんな風に積極性を示しますが、それをどの程度実行するのかは別問題で、これまではほとんど何もしないというのが実態でした。
 政府は、「ステージ3」にあるとして解除基準は満たしている点を強調しますが、尾身分科会会長が述べたように、現在の解除基準には変異株に関連するものが全く抜けています。全国に広がっている変異株度外視した全面解除は危険極まりないものです(日刊ゲンダイ)。
 18日の記者会見で、感染の再拡大を招いたら政府はどんな責任を取るつもりなのかという当然の質問が出ましたが、納得できる回答は得られませんでした。
 宮城県の新規感染者数は1月下旬には落ち着いていましたが、2月23日、「Go Toイート」を再開すると急増し、今月17日には過去最多の107人に達し、18日も98人の感染が確認されました。村井知事と郡仙台市長は緊急の記者会見を開き、県独自の緊急事態宣言を発出しました。期間は来月11日までで範囲は全域ですNHK)
 これは仮に落ち着いているように見えても、人の接触回数が上がればたちまち感染爆発が起きるということで、現在の脆弱な監視体制や隔離体制下では正常な経済活動は無理であることを示しています。
 政府がコロナ対策として「やるべきこと」をやっていないツケはどこまでもついて回ります。
 日刊ゲンダイとNHKの記事を紹介します。
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政府は変異株スルー 緊急事態“ヤケクソ”全面解除の論理矛盾
                          日刊ゲンダイ 2021/03/18
 菅首相は17日、首都圏1都3県に発令中の緊急事態宣言について、21日の期限通りに解除する方針を確認した。18日に対策本部を開き、正式決定するが、不安は尽きない。東京と埼玉の直近1週間平均の感染者数は前週比1割強も増えている。その上、全国に広がる変異株を度外視した全面解除は、危険極まりない
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 菅首相は17日夜、宣言解除の理由として、「感染者や病床使用率の数字が解除の方向に入っている」と「数字」を挙げた。確かに4都県の人口10万人あたりの新規感染者数は政府が解除の基準とする「ステージ3」の15人を切っている。病床使用率も宣言発令の対象となる「ステージ4」の50%を継続的に下回っているが、最大の懸念材料はスルーだ。
 今や、大きな脅威になりつつある変異株である。6府県の先行解除が決定された2月26日、政府分科会の尾身茂会長は「ステージの考え方を出した時期には変異株の問題はなかった」とクギを刺した。当日時点の変異株の感染者数は17都府県で158人だったが、今月16日時点では26都道府県で399人にまで膨れ上がっている。それでも、「従来の基準」に基づいて、解除しようというのだ。
 変異株の感染力は、従来型よりも英国型が1・43~1・9倍、ブラジル型が1・4~2・2倍、南ア型が1・5倍強いとされる。西武学園医学技術専門学校東京校校長の中原英臣氏(感染症学)が言う。
感染力の強い変異株を想定していなかった頃の基準で感染状況や医療提供体制を眺めて、解除判断を下すのは危険です。変異株が怖いのは、感染者が従来型よりも2倍近く感染を拡大させるということ。“1人の感染者”の意味が全然違うのです。病床の改善も解除の根拠にしていますが、英国型は致死率が1・3~2倍との研究結果もあります。変異株の患者がさらに増えれば、重症病床があっという間に逼迫することも十分あり得ます」
 フランスでは感染者に占める変異株の割合が70%に上り、特に首都パリの病床が逼迫。重症患者を病床に余裕のある地域に移送する事態に陥り、マクロン大統領は新たな行動規制をほのめかしている。

2月4日死亡の患者から検体確認
「日本では、政府関係者が『宣言をこれ以上延長しても効果が薄れるだけだ』と漏らしたとの報道があります。効果が出るように規制を強化すべきなのに、効果がないから解除とは論理矛盾です。科学的ではなく、ヤケクソで解除するように見えます。対外的に3月25日から始まる聖火リレーの前に解除したかったと考えざるを得ません。変異株は日に日に広がっています。解除による気の緩みも加わり、早晩、大きな第4波に見舞われる恐れがあります」(中原英臣氏)
 大阪では2月4日に死亡したコロナ患者の検体から変異株が確認された。かなり前から変異株が市中に定着していた可能性がある。
 ヤケクソ解除のしわ寄せはいずれ国民にやってくる。


宮城 村井知事 独自の緊急事態宣言を発出 感染者急増で
                     NHK NEWS WEB 2021年3月18日
宮城県内で17日、初めて新型コロナウイルスの感染確認の発表が100人を超えるなど、急激に感染者が増加していることを受けて、宮城県と仙台市は、独自の緊急事態宣言を発出しました。飲食店などへの時短要請は行いませんが、仙台市内の繁華街で集中的なPCR検査を実施することにしています。
宮城県内では17日、新型コロナの1日の感染確認の発表が107人と過去最多となったほか、18日も98人の感染確認が発表されるなど感染者が急増しています。
また、患者1人が17日に死亡したことも発表され、県内で感染が確認され亡くなった人は27人となりました。
宮城県の村井知事と仙台市の郡市長は緊急の記者会見を開き、このまま感染拡大が続けば医療提供体制がひっ迫するおそれがあるとして、県独自の緊急事態宣言を発出しました。
期間は来月11日までで、範囲は全域です
飲食店などへの営業時間の短縮要請など、県民に対して新たな要請は行わず、歓送迎会や花見での大人数の宴会の自粛などを引き続き求める形となっています。
ただ、特に仙台市内で感染が拡大していることから、市内の繁華街で集中的にPCR検査を実施するということです。
村井知事は会見で「特措法による宣言ではないが、持っている意味は同じだと理解してほしい。県民全体で不要不急の外出は控えてほしい。旅行も自粛してもらいたい。感染が拡大すれば飲食店の営業時間の短縮要請を行うことも十分ありえる」と述べました。
また、郡市長は「リバウンドを抑え込むために、国や県に職員の応援をお願いし、感染の連鎖を断ち切りたい。市民の方には会食における細心の注意と、一人一人の最大限の努力、協力をお願いしたい」と述べました