2021年3月17日水曜日

東北新社新社長が総務省の便宜供与を示唆する爆弾証言

 15日に参院予算委員会に参考人招致された東北新社の中島社長が、BS4Kの事業者認定を受けた後に外資比率が規制値をオーバーしていること気付き、その時点で、子会社へ事業を承継することで違反を解消する案を総務省に出し、結果的に了承された経過について爆弾証言を行いました。

 東北新社BS4K放送の事業者として認定を受けたのは17年1月で、その時点で外資比率は20.75%20%の規制値を超えていました。
 中島社長によれば、同年8月4日に外資比率の超過に気づいたので、8月9日に当時の木田由紀夫社長が総務省鈴木課長と面談して、「子会社承継することで違法状態を解消する」案を出し、(結果的に了承されて)10月14日東北新社メディアサービスへの事業承継認可されました。
 要するに子会社への事業承継以前に、総務省に違法状態の解消策を相談に行ったのですが、その時点でBS4K事業者認定の取り消しを受けなかったということです。
 それが事実であれば大いに立場が悪くなる総務省は、その相談を受けたこと自体を否定しました。
 しかし事業者認定を取り消された東北新社にとって、敢えてそんな虚偽をデッチあげるメリットは何もないし、面会の月日や相手方の名前も出ているので真実なのだろうと思われます。そうであれば、首相の息子が在籍する企業であることによって、特例的に扱われたもので行政が歪められたことになります。
 LITERAが取り上げました。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
あの有名CM監督が東北新社新社長として国会に 菅首相長男を「優秀な若者」とヨイショする一方、総務省の便宜供与を示唆する爆弾証言
                             LITERA 2021.03.15
 総務省の接待問題で、本日、東北新社の中島信也社長とNTTの澤田純社長が参院予算委員会に参考人招致された。
 これまで再三、野党からは高級接待をおこなってきた菅義偉首相の長男・菅正剛氏や、東北新社の子会社「東北新社メディアサービス」の木田由紀夫・前社長の国会招致が要求されてきたが、与党側がここにきて招致を認めたのは、約2週間前に社長に就任したばかりの中島社長のみ。
しかも、中島氏といえば、1993年にカンヌ広告映画祭でグランプリを受賞した日清カップヌードルの「hungry?」や、サントリーの「燃焼系アミノ式」「伊右衛門」、最近だとオダギリジョーが出演しているAirPAYのCM演出を手掛けた有名CMディレクター。2019年に東北新社副社長に就任しているが、昨年も「副社長の肩書なんて、もはやネタ。これからもずーっと映像の現場で働きたい!」と題した講演をおこなっているように、経営陣というよりもCM制作畑の人物であり、子会社の衛星放送事業や総務省接待の実態について当時からどこまで把握していたかは不明。きょうの国会でも、「私はこれまで衛星放送に関わる業務をおこなっていなかったため、現在も鋭意勉強中」と答弁した。
さらに、接待の目的について問われた際には、中島社長からは「接待の目的は顔つなぎ」「顔つなぎの目的は顔つなぎ」という珍回答が飛び出す始末。また、菅首相の長男である正剛氏について「総務省の接待要員という役割を担っていたのではないか」と追及されると、中島社長はこう述べた。
「菅正剛くんはたいへん優秀な若者」
「総務省との接待の要員のためにいたのではございませんし、会食のために呼ばれているのではないと考えています」
 四十がらみの人物を「優秀な若者」って……(苦笑)。中島氏は過去の講演会で「人を喜ばせるために、死ぬまで人の顔色を伺い続ける男」を自称していたが、きょうはすぐ傍に鎮座する菅首相を喜ばせようとしたのだろうか。それはともかく、実態をつぶさに把握していたとも思えない中島社長を国会に呼んでも、所詮「ガキの使い」にもならない。だからこそ与党側も中島社長の招致に応じたのだろう。
 しかし、そんな中島社長の口から、東北新社への特別優遇について、新たな重大証言も飛び出した。放送法違反の外資比率でありながら東北新社がBS4K放送事業者として認定された問題で、新事実が判明したのだ。

東北新社は2017年に放送法違反を総務省の情報流通行政局課長に相談していた 上司の局長は山田真貴子 
 あらためておさらいすると、総務省は2017年1月、東北新社をBS4K放送の放送事業者として認定したが、野党の追及により、東北新社の外資比率が放送法違反の20%を超えていたことが発覚。当初、武田良太総務相は、認定申請時の外資比率は「19.96%」だったと主張していたが、その後、東北新社側から計算方法の誤りが報告され、実際には認定申請時も20.75%だったことが判明し、武田総務相は12日に「重大な瑕疵があった」として認定取り消しの方針を打ち出した。
 東北新社が「担当者の計算方法の誤り」から虚偽の申請をおこない、総務省がチェックもせずに認定していた──。こんな杜撰なことが起こり得るのか甚だ疑問であり、東北新社の優遇が疑われる問題だが、重要なのはここからだ。本日の国会では、中島社長に対して“いつ外資比率が違反していることに気付き、いつどのように総務省に報告したか”という質問が投げかけられたが、その際、中島社長はこう答えたのだ。
2017年8月4日に関連3チャンネルを当社に承継すべく、申請書を作成していた過程で、担当者が外資比率に気づき、規制に違反している恐れがあることに気付いたという報告を受けております」
「気付いたあと、8月9日ごろに、4K認定について総務省の担当部署に面談し、報告したとの報告を受けております」
 放送法が定める外資規制に違反していることに東北新社側が気付いたのは2017年8月4日で、なんと9日には総務省側と面談をおこなって報告していた、というのだ。
 さらに重要なのは、報告を受けた総務省の担当者が誰か、ということだ。「(8月9日に)誰と誰が面談したのか」という質問に、中島社長はこう答えた。
当社の木田由紀夫が、総務省の鈴木課長に相談に行った
 この「鈴木課長」というのは、当時、情報流通行政局の総務課長だった鈴木信也・現電波部長のこと。そして、このときの情報流通行政局のトップである情報流通行政局長は、山田真貴子・前内閣広報官なのだ。
 しかも、だ。違法状態であるという報告を受けていながら、総務省は認可の取り消しをおこなわなかったばかりか、東北新社が同年9月に新設した子会社「東北新社メディアサービス」へのBS4K放送事業の承継申請を認可しているのだが、子会社への承継申請にいたった経緯について、中島社長はこう語ったのだ。
「子会社で承継していくということで、なんとか違法な状態を治癒できると考え、当方のほうからこのアイデアを(8月9日の)その席上に出した

放送法違反のまま子会社への事業承継を認可した4日後に吉田眞人・総務審議官を銀座で接待
 つまり、本来ならば放送法違反の報告を受けた時点で総務省は東北新社に認可取り消しの行政処分をすみやかにおこなうべきだったのに、それをせず、違法状態の解消のために子会社に事業を承継させるという東北新社側の「アイデア」に乗っかり、いまのいままで認可時の違法性を隠してきたというわけだ。
 さらに付け加えれば、総務省が東北新社メディアサービスへの事業承継を認可したのは2017年10月14日だが、その4日後の18日には同社の社長だった木田氏が、当時、大臣官房総括官で2017年1月の違法状態での申請認定をおこなったときの決裁者のひとりである吉田眞人・総務審議官を銀座で接待しているのである。これはようするに、違法問題を黙認し、子会社承継という荒業が成功したことの「祝杯」だったのではないのか。
 客観的に見て、総務省との面談日や報告内容が具体的であることを踏まえても中島社長が嘘をついているとは考えにくいし(嘘が疑われるとすれば、違法をすり抜けるための「アイデア」を自分たちから出したという点で、実際には総務省側が提案した可能性もあるだろう)、何より東北新社側には虚偽の答弁をおこなう理由がない。しかも、総務省に出向いて違法状態であることを直接、総務課長に伝えていたとなれば、当然、上司だった山田真貴子・前内閣広報官にも報告がなされ、何らかの文書やメモが残っているはずだ。
 しかし、こうした証言に対し、総務省の吉田博史・情報流通行政局長は「当時の担当者によると、『外資規制に抵触する可能性ある旨の報告を東北新社から受けた覚えはない。そのような重大な話なら覚えているはずであり、口頭で済むような話ではないのではないか』とのことだった」「これまで確認している範囲では、当時の文書やメモでそのような報告を受けているものはない」と答弁し、真っ向から否定。武田総務相も「(総務省と東北新社に)齟齬がある。一方的な話だけを信じるのは非常に危険」などと主張したのである。
 面談の事実が判明しても、文書もメモも残っていないと言い張る。これは完全に、面談や交渉の記録を「破棄した」と言い張りながら、実際には記録は残っていた森友問題を彷彿とさせる展開ではないか。
 森友問題では、安倍昭恵氏と籠池夫妻との写真が提示された際の面談記録がいまだに明らかにされていないが、今回の「菅首相の長男案件」でも公文書は消されてしまうのか──。菅首相は本日の国会で「長男とは家計も別」などという噴飯モノの答弁をおこなったが、違法であることの報告を直接受けていながら行政処分をおこなわなかったという異常事態の背景には、総務省に絶対的影響力を誇る菅氏の影響があったのは間違いない。公文書改ざん・隠蔽という国家的犯罪がまたも繰り返されることがないよう、徹底した調査と監視が必要だ。 (編集部)