2021年3月12日金曜日

東京大空襲 300人超の証言ビデオ 20年以上放置

 東京都が記録した東京大空襲など戦争体験の証言ビデオ300本以上が倉庫に放置され、活用されない状態が20年以上続いています。
 証言ビデオは199699年度、当時都が建設を目指していた祈念館(仮称)」での公開を目的に収録したもので、当時5885330人分が集まりました。
 しかしその後日本の加害についての取り上げ方など、祈念館での展示内容や歴史認識を巡って反発があり、石原都政の99建設の計画凍結され、現在に至っています
 都の担当者は「祈念館での公開を条件に集めたもので、本人の同意なしに、それ以外の目的では使えない」として、「祈念館での公開が前提」で本人の意向の確認をする予定はないということです本当に惜しいことです。
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東京大空襲の証言ビデオ 20年以上放置 300人超の証言が封印の恐れ 
都平和祈念館計画凍結で
                         東京新聞 2021年3月10日
 東京都が記録した東京大空襲など戦争体験の証言ビデオ300本以上が倉庫に放置され、活用されない状態が20年以上続いている。当初展示予定だった「都平和祈念館(仮称)」の建設計画は凍結。都は別の方法での公開には「本人同意が必要」とする一方、意向確認は進めていない。10日で大空襲から76年。証言者が高齢化する中、「無責任」と批判の声が上がる。(岡本太)

◆祈念館凍結で公開も立ち消え 都、公開の意向確認の予定なし
 「みんな自分の経験を後世に伝えたいと思って、必死に話している。埋もれさせるなんて」。証言者の1人で、作家の早乙女勝元さん(88)は、語気を強めた。
 証言ビデオは1996~99年度、当時都が建設を目指していた祈念館での公開を目的に収録した。330人分が集まったが、日本の加害についての取り上げ方など、祈念館での展示内容や歴史認識を巡って反発があり、都が99年、建設の計画を凍結。ビデオの公開も宙に浮いた
 都の担当者は「祈念館での公開を条件に集めたもので、本人の同意なしに、それ以外の目的では使えない」と説明する。
 記録した330人のうち9人は同意を得て、空襲関連の展覧会で部分的に公開しているが、残り321人については「祈念館での公開が前提」という原則を強調。意向の確認をする予定はないという
 祈念館建設は意見が分かれたまま、見通しが立っていない。

◆80歳を超えた証言者たち 貴重な証言、失われる可能性も
 証言の撮影は映画監督の故 渋谷昶子のぶこさん=2016年死去=らが担当。証言者には「リンゴの唄」で知られる歌手の故並木路子さん=01年死去=もいた。
 江東区亀戸で被災した酒井キヨさん=撮影当時(66)=は、祈念館以外での活用に同意した1人。「朝明るくなったら1面のピンク色。足元をよくみたら、みんな人間なんです。蒸し焼きになって死んでいる。その上を歩いて帰るしかなかった」と空襲翌日の様子を語っている。
 証言者は撮影当時58~85歳。今は全員が80歳を超える。すでに亡くなった人も少なくないとみられる。都は「遺族の同意で公開するのは難しい」としており、生々しい証言のほとんどが、永久に封印される恐れがある。

 東京都平和祈念館 

東京都が墨田区に建設を計画していた戦争体験継承のための施設。延べ4500平方メートル、総工費47億円で、2001年度末の完成を目指していた。都が空襲被害だけでなく、日本のアジアに対する加害的な側面も取り上げる展示内容のたたき台を示したところ、都議や一部の識者から「自虐的」などと批判が上がり、都議会は1998年、「展示内容は都議会の合意を得た上で決定すること」とする付帯決議案を可決。石原慎太郎都政となった99年、都は批判と財政難を理由に計画を事実上凍結した。