2021年3月31日水曜日

31- 北朝鮮、弾道ミサイル発射は自衛権に基づいた行動

 北朝鮮弾道ミサイル発射についてバイデン大統領国連安保理決議違反述べましが、北朝鮮は「主権国家としての自衛権に基づいた行動だ」と反発しました。
 国連安保理北朝鮮制裁委員会は26日緊急のオンライン会合を開き、その中で多くの国が今回のミサイル発射は安保理決議違反だと懸念を表明し、米国は制裁委員会に今回の発射に関する調査を要請し、制裁の強化を視野に独自の資料を提出する考え示しました(中国とロシアは、拙速な行動は控え長期的な視野に立って制裁を緩和すべきだと主張しました)。
 それに対して北朝鮮は、「世界の多くの国々は、軍事力強化を目的にさまざまな飛翔体を発射しているのに、われわれだけを問題視しているのは話にならない」「二重の基準にこだわるならば朝鮮半島の情勢は激化し、対話ではなく対決だけを煽ることになる」とけん制しました。
 米国要人らによる北朝鮮への恫喝的な発言や姿勢を見ると、北が「自衛権に基づいた行動」だと弁明するのは理解できるし、多くの国々軍事力強化を目的にさまざまな飛翔体を発射しているのに北朝鮮だけには禁止するのを理不尽と述べることにも同意できます。
 そもそも、米国などはミサイル発射や核実験を行っても良いとする一方で、北朝鮮がそれを行うのは絶対的に認められないし経済制裁を科すという安保理決議に道理があるのでしょうか。それは北朝鮮の独裁政治が是認できないこととはまた別の問題です。

 経済制裁をしたからと言って独裁政権が倒れるわけではありません。
 食糧や燃料の輸出禁止によって苦しむのは北朝鮮の国民であり、その大半は飢餓に苦しんでいるといわれています。そして厳寒の冬季に燃料がないため家を暖房することも出来ないというありさまで、どちらも人道上大問題です。国連が理性的に対応しているとは到底言えません。
 NHKの記事と「論文 経済制裁は死を意味する(アルフレッド・デ・ザヤス)」を紹介します。
 この論文は北朝鮮に関するものではありませんが、「経済制裁が国民の死を意味する」という点では全く共通しています。
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北朝鮮 国連安保理を前に談話 “自衛権侵害なら相応の措置”
                     NHK NEWS WEB 2021年3月29日
北朝鮮は、先週の弾道ミサイル発射を受けて、今週開催が検討されている国連安全保障理事会の会合を前に談話を発表し、「われわれの自衛権を侵害する試みは必ず相応の措置を誘発することになる」とけん制しました。
北朝鮮が、今月25日に弾道ミサイル2発を発射したことを受けて、国連の安全保障理事会は30日に非公開で会合を開くと伝えられています。
これを前に、北朝鮮外務省のチョ・チョルス国際機構局長は、国営の朝鮮中央通信を通じて談話を発表し、「世界の多くの国々は、軍事力強化を目的にさまざまな飛しょう体を発射しているのに、われわれだけを問題視しているのは話にならない」として、ミサイルの発射は自衛権の行使だと主張しました。
そのうえで「二重の基準にこだわるならば朝鮮半島の情勢は激化し、対話ではなく対決だけをあおることになる。われわれの自衛権を侵害する試みは、必ず相応の措置を誘発することになる」とけん制しました。
安保理をめぐっては、北朝鮮の友好国の中国とロシアが長期的な視野に立って北朝鮮に対する制裁を緩和すべきだという立場で、アメリカとの間の意見の隔たりが浮き彫りになっています。


北朝鮮 “ミサイル発射は主権国家の自衛権” 朝鮮中央通信
                      NHK NEWS WEB 2021年3月27日
北朝鮮は、25日、弾道ミサイルの発射について国営メディアを通じて談話を発表し、発射が国連の安保理決議に違反するとのアメリカのバイデン大統領の発言に対して「自衛権に対する露骨な侵害で挑発だ」と反発しました。
北朝鮮は、25日の弾道ミサイルの発射について、キム・ジョンウン(金正恩)総書記の側近で発射に立ち会った朝鮮労働党のリ・ビョンチョル書記の談話を27日朝、国営の朝鮮中央通信を通じて発表しました。
談話では「主権国家としての自衛権に基づいた行動だ」と発射を正当化した上で今月行われた米韓の合同軍事演習に対抗するための措置だと主張しました。
その上で、ミサイル発射が国連の安保理決議に違反するとのアメリカのバイデン大統領の発言に対して「自衛権に対する露骨な侵害で挑発だ。極度に体質化したわれわれに対する敵対感をあらわにした」と反発しました。
さらに、バイデン政権に対して「はじめから間違っている。われわれは自分たちがすべきことを分かっており、継続して圧倒的な軍事力をつくっていく」として、核・ミサイル開発を推し進める姿勢を強調しました。
今回の発射について日本政府は、北朝鮮に対し、国連安保理の決議に明白に違反しており、断じて容認できないとして、中国・北京の日本大使館を通じて抗議しています。


国連安保理北朝鮮制裁委 議長国がミサイル発射非難声明
                     NHK NEWS WEB 2021年3月27日
北朝鮮の弾道ミサイル発射を受けて、国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会は26日緊急の会合を開き、議長国のノルウェーは発射を非難する声明を出しました。しかし、制裁の実施を含む今後の対応ではアメリカと中国、ロシアの間で意見がわかれました。
北朝鮮制裁委員会は、各国に制裁の実施を求めたり、安保理決議違反への対応にあたったりする安保理の付属機関で、北朝鮮による弾道ミサイル発射のあと、アメリカの要請に基づいて26日、緊急の会合をオンラインで開きました。
会合は非公開で行われ、議長国ノルウェーの国連代表部は会合後、ツイッターに「ノルウェーは、弾道ミサイルの発射を非難した。制裁は実施されるべきだ。北朝鮮は意味のある対話を行い、非核化に向けた確かな措置をとらなければならない」とする声明を投稿しました。
安保理の関係筋によりますと、会合では、多くの国が今回のミサイル発射は安保理決議違反だとして懸念を表明しました。
このうちアメリカは、制裁委員会に対して今回の発射に関する調査を要請し、制裁の強化を視野に独自の資料を提出する考えも示したということです。
一方で、北朝鮮の友好国の中国とロシアは、拙速な行動は控え、長期的な視野に立って制裁を緩和すべきだなどと主張したということで、アメリカと中国、ロシアの溝が改めて浮き彫りになりました。


経済制裁は死を意味する
              アルフレッド・デ・ザヤス博士 2021年3月29日
                                 (国連作家協会)
  (前 略)
国際社会は、すべての国のすべての人々がすべての人権を享受することを促進することを約束します。世界人権宣言や10の中核的人権規約に謳われているこの崇高な目標は、国際的な連帯と協力によってのみ達成することができます。
また、国際社会は、国際連合の基本的な目標、すなわち平和と開発の促進を地域的、国際的に推進することに取り組んでいます。これらの目標を達成するためには、国家の主権と自国の政策を決定する権利を尊重しつつ、繁栄と安定をもたらす民主的で公正な国際秩序を実現するための戦略を策定する必要があります。
国連人権高等弁務官事務所は、その諮問サービスと技術支援が、民主主義、法の支配、国家機関の強化に効果的であることを実証している。一例として、2019年にベネズエラのカラカスにOHCHR事務所が開設されることは、UNDP、UNHCR、UNICEF、WHO、ILO、FAOなどの国連機関からの支援を調整する上で重要なステップとなります。
国連憲章が世界の憲法に等しいことを考えれば、多国間主義に基づいた国際的な行動と、国内法や法律実務がその憲法に沿ったものになるように努力すべきである。歴史を振り返ると、国際平和と各国の幸福は、他国、特に地政学的または地経済的なライバルに対する一方的な強制措置の発動を含むユニラテラリズムによって脅かされています。国連憲章第7章に基づいて課される国連制裁のみが合法である。一方的な制裁は、国連憲章の文言と精神に反するものです。
武器禁輸は、紛争を緩和し、和平交渉の機会を与えるために必要かつ正当なものですが、「政権交代」を目的とした経済制裁は、世界の平和と安定を脅かすものです。どの国やグループも、すでに戦争状態にある国や、内外の混乱の恐れがある国の武器の輸出入に対して禁輸措置を取ることはできますが、各国は地政学的または地経済的なライバルに対して、常に弱者を直撃するような壊滅的な経済制裁を課すことでギャング化してはいけません

これまでの経験から、経済制裁は影響を受ける人々の人権に悪影響を及ぼすことがわかっています。多くの制裁は、たとえ国連安全保障理事会が課した「合法的な」制裁(例:対イラク1991~2003年)であっても、ユニセフやその他の国際機関が記録しているように、死、さらには大量死を引き起こす可能性があります少なくとも50万人の子どもが制裁によって死亡したと推定されていますベネズエラだけでも2018年には約4万人が制裁によって死亡しています)。制裁がこのような大混乱を引き起こす場合、制裁を解除し、国連の原則と目標に沿った他の方法を試す必要があります。このような制裁は、「集団的懲罰」を明確に非難する国際人道法にも違反します。さらに、制裁によって影響を受けた国の経済が破壊され、あるいは停滞すると、失業、飢餓、病気、絶望、移民、自殺などが起こります。このような制裁が「無差別」である限り、地雷やクラスター爆弾、劣化ウランの発がん性兵器の使用と同様に、無差別な殺戮を伴う「テロ」の一形態となる
一方的な強制制裁の歴史は、苦しみと荒廃の歴史でもあります。このような制裁は、当該国の政策を変えるように「説得」するためのものであるという理論です。専門家は、制裁によって国民の不満を募らせ、国民が政府に対する怒りを爆発させたり、クーデターを起こしたりすることを目的としていると考えている。制裁の目的は、まさに混乱、国家的緊急事態、予測不可能な結果をもたらす不安定な状況を引き起こすことですが、制裁を正当化しようとする政治的シナリオは、その真の目的として人権や人道的原則を呼び起こします。これは、「政権交代」を目的とした、典型的な人権の道具立てです。しかし、制裁によって人権は守られるのでしょうか? 制裁対象国の人権状況が改善されたという実証的な証拠はありますか?

これまでの経験から、ある国が戦争状態にあるときは、それがどのような種類のものであっても、市民的・政治的権利から逸脱していることが多い。同様に、非従来型のハイブリッド戦争を戦っている国が、経済制裁や金融封鎖を受けている場合。その結果、人権の拡大ではなく、正反対のことが起きています。制裁が経済的・社会的危機を引き起こすと、政府は日常的に「国家の緊急事態」を正当化して、異常な措置を講じます。したがって、古典的な戦争状態と同様に、国が包囲されているときには、ある種の市民的・政治的権利を一時的に制限することによって、安定を取り戻すことが試みられます。

市民的及び政治的権利に関する国際規約の第4条は、政府が一定の一時的な制限を課す可能性を規定している。例えば、第9条(拘禁)、第14条(公正な裁判)、第19条(表現の自由)、第21条(平和的集会の自由)、第25条(定期的な選挙)の適用除外などが挙げられる。このような例外を望む人はいませんが、どのような国家であっても、その主権とアイデンティティを守るために生き残ることが優先されます。国際法では、制裁、準軍事的活動、破壊工作などに直面した場合、国家の生存に対する脅威の度合いを決定する上で、政府にある程度の裁量権があることを認めている。
このように、経済制裁は人権状況の改善を促進するどころか、重要な利益を維持するための緊急の国内法の制定につながることが多いのです。このような場合、制裁は逆効果となり、負け犬の遠吠えとなってしまいます。同様に、「Naming and Shaming⇒名指しして恥を与える」という使い古された手法も効果がないことがわかっています。これまで有効だったのは、静かな外交、対話、妥協です。

   (後 略)