2021年3月1日月曜日

生活保護の扶養照会一部改正 厚労省通知/生活保護の扶養照会とは

 政府は、生活保護自体を窓口で受け付けずに断念させる「水際作戦」に加えて、当人や当家族を扶養できないかを第3親等までに照会するという嫌がらせをしています。しかもこの扶養照会は法令で定められたものではなく、厚労省の通知で行われているものです。この扶養照会には申請者の54%が抵抗感を持ち、35%の人たちは申請を断念しています。
 26日、厚労省は、虐待や家庭内暴力(DV)がある場合は照会しないよう一部改正する通知を自治体に出しました(3月から運用)。
 厚労省は照会しなくていい例について、これまで「70歳以上の高齢者」や「20年間音信不通」などにとどめてきました。今回の改正でそれを10年程度」に短縮し、「相続で対立している」「借金を重ねている」など「著しい関係不良」も加えました。しかし明確に禁止しているわけではなく対象も限定的です。
 生活困窮者の支援団体は、扶養照会を本人の承諾なしに行わないなどの全面的な運用改善を求めています。
 しんぶん赤旗が報じました。
 併せて「シリーズ なんだっけ」の「生活保護の扶養照会って?」を紹介します。
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生活保護の扶養照会一部改正 虐待あれば行わず 厚労省通知
全面的改善求める声も
                       しんぶん赤旗 2021年2月28日
 生活保護を申請した人の親族に連絡し、援助ができるかどうかを問い合わせる「扶養照会」について、厚生労働省は、虐待や家庭内暴力(DV)がある場合は照会しないよう要領を一部改正し、26日付で自治体に通知を出しました。運用は3月から。
 戸籍情報を基に、親や子、兄弟、孫にまで生活の援助ができるかどうかを問い合わせる扶養照会。本人の承諾なしに行われており、DV加害者にまで照会する自治体もあって問題になっています。
 厚労省は照会しなくていい例について、これまで「70歳以上の高齢者」や「20年間音信不通」などにとどめてきました。今回の改正で「20年間」を「10年程度」に短縮。「相続で対立している」「借金を重ねている」など「著しい関係不良」も加えました。しかし明確に禁止しているわけではなく、対象も限定的です。
 
 コロナ禍で生活に困窮する人たちが増えるなか、国は生活保護が国民の権利だとして利用を呼びかけています。一方で生活保護の利用を親族に知られることを嫌がる人が多く、扶養照会が大きな壁になっています。
 厚労省の2017年の調査で扶養照会は年約46万件。うち援助につながったのは1・45%にとどまり、自治体によって対応に大きな差もあります。
 生活困窮者の支援団体らは、扶養照会を本人の承諾なしに行わないなどの全面的な運用改善を求めています


なんだっけ 生活保護の扶養照会って?
                       しんぶん赤旗 2021年2月28日

  生活保護の扶養照会って?
 A 生活保護を申請するときに、援助ができるかどうかを福祉事務所が親族に問い合わせるものです。親族に知られるのを嫌がる人も多く、利用をはばむ壁になっています。「つくろい東京ファンド」が年末年始、生活困窮者向け相談会で行ったアンケートからも明らかです。165人が答え、生活保護を利用していない人は128人。理由について34・4%が「家族に知られるのが嫌だから」と答えています。

 Q 扶養照会をして親族の支援につながるの?
  2017年の厚生労働省の調査では、年間約46万件の扶養照会が行われ、援助につながったのは1・45%にすぎません。福祉事務所の職員からも「業務負担が大きいだけ」「意味がない」「税金の無駄」という批判が上がっています。

 Q 照会は義務なの?
  扶養照会は法律上の義務ではありません。厚労省は、扶養が期待できなければ親族への直接照会はしなくて良いとしています。しかし明確に禁止していないため自治体によって大きな差があります。

  運用が一部見直されたね。
  厚労省は家庭内暴力(DV)がある場合などは控えるよう要領を改定しましたが内容は限定的です。一方で、コロナ禍で困窮する人が増加するなか、「生活保護の申請は国民の権利」とホームページで呼びかけています。本人の承諾なしには扶養照会は禁止にするなど、利用しやすくするための全面的な運用の見直しが必要です。 (2021・2・28)