2021年3月2日火曜日

「思いやり予算」特別協定の延長 二重三重に道理がない

 トランプ時代にボルトン大統領補佐官(当時)が日本に求めた年間約8500億円という法外な負担の要求は、バイデン政権にも引き継がれました。
 現行の米軍駐留経費負担(思いやり予算)は3月末に期限切れとなりますが、日本政府は現行水準で1年分の暫定合意を結ぶ案を提示し合意しました。年内には改めて本格交渉を行うことになります。
 いわゆる「思いやり」予算は1978年、財政難を理由にした米国の要求に応じ、当時防衛庁長官であった金丸信氏が違法を承知で発案したもので、総額62億円でスタートしたのでした。それが21年度予算では「思いやり」予算は2017億円に、その他の項目を加えると総額は4205億円に達しました。世界一の負担額です。
 トランプはその2017億円(20年時点では1993億円)を8500億円に上げろと吹っ掛けたものでした。米国の要求は何から何まで筋の通らないものです。

 しんぶん赤旗は、1日付の「主張」の中で、2017億円の「思いやり予算」及びそれにSACO関係経費を合わせた額4205億円は、いずれも在日米軍の維持経費は米側負担とした日米地位協定の原則に反するもので、廃止に踏み出すことこそ必要だと述べています。
 地位協定24「日本国に合衆国軍隊を維持することに伴うすべての経費」は「施設及び区域並びに路線権」の提供を除き「日本国に負担をかけないで合衆国が負担する」、の原則に立ち返るべきです。
 しんぶん赤旗の2つの記事を紹介します。
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       (20.08.26) 米軍駐留経費負担 筋通らぬ「思いやり」は不要だ
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主張 駐留経費特別協定 米軍「思いやり」の延長許せぬ
                        しんぶん赤旗 2021年3月1日
 日米両政府は、在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)に関する現行の特別協定を来年3月末まで1年間延長する改正議定書に署名しました(24日)。来年度の予算案には、現行協定の1年延長を前提に2017億円もの「思いやり予算」が計上されています。これに、沖縄の辺野古新基地建設費など米軍再編関係経費とSACO(沖縄に関する特別行動委員会)関係経費を合わせた額は4205億円に上り、過去最大となっています。いずれも在日米軍の維持経費は米側負担とした日米地位協定の原則に反するもので、廃止に踏み出すことこそ必要です。

特例が既に34年も継続
 特別協定は、在日米軍の駐留経費について日米地位協定が定めている日米間の負担原則の特例を設けるもので、ほぼ5年おきに見直されてきました。現行協定は今年3月末が期限です。
 日米両政府は昨年11月、新たな特別協定を結ぶための交渉を正式に開始しました。しかし、米国の政権移行と重なったため、現行協定を暫定的に1年延長し、新協定については交渉を継続することで合意していました(2月17日)。
 昨年11月の交渉では、当時のトランプ米政権が大幅な増額を求めたとされます。ボルトン元大統領補佐官は回顧録で、在任中の19年に現行水準の4倍超になる年80億ドル(約8400億円)の負担を日本側に打診したことを明らかにしています。バイデン現政権でも、日本側に増額を求める流れは変わらないと報じられています。
 しかし、特別協定は、地位協定の負担原則に反することから、政府自身が「暫定的、限定的、特例的な措置」としてきたにもかかわらず、初めて締結された1987年から既に34年がたっています。
 地位協定24条は「日本国に合衆国軍隊を維持することに伴うすべての経費」は「施設及び区域並びに路線権」の提供を除き「日本国に負担をかけないで合衆国が負担する」と明記しています。日本側負担は施設・区域(基地)や路線権(飛行場など)の提供に必要な借り上げ料と補償費だけです。
 ところが、政府は、米軍への「思いやり」(当時の金丸信防衛庁長官)が必要として、78年度から米軍基地で働く日本人従業員の労務費の一部、79年度からは基地内の新規の施設整備費の負担を開始します。さらに、政府の地位協定の拡大解釈によってもこれ以上は無理だとしてきた負担に踏み込むため、特別協定を結びました。
 現在、その負担範囲は、▽労務費の全額(来年度予算案1555億円) ▽米軍基地の光熱水料等(同234億円) ▽施設整備費(同218億円) ▽米空母艦載機の硫黄島での着陸訓練費(同10億円)―にまで広がっています。

「日本防衛」とも無縁
 加えて、政府は、96年度から沖縄の米軍基地・訓練を移転・強化するためのSACO関係経費(同144億円)、2006年度からは米軍再編関係経費(同2044億円)の負担を始めています。
 政府が世界でも異常に突出した経費負担をする在日米軍は、「海兵遠征軍」や「空母打撃群」といった海外遠征部隊で、「日本防衛」を基本任務にはしていません。コロナ禍の今こそ、道理のない負担はやめ、国民の暮らしを守るための予算に振り向けるべきです。


「思いやり予算」特別協定延長 二重三重に道理なし 廃止する以外にない
                        しんぶん赤旗 2021年3月1日
 日米両政府は、3月末に期限となる在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)を定めた特別協定を1年延長する改定議定書に署名しました。日本政府は近く国会に提出して期限内の承認を狙います。2021年度は現行の負担水準が維持されますが、22年度以降の負担額については改めて協議します。同盟の再強化を掲げるバイデン米政権の下、駐留経費負担の増額要求が想定されますが、そもそも、特別協定の是非から交渉を出発させる必要があります

拡大解釈したが
 日本の米軍駐留経費負担の根拠となるのが、日米地位協定24条です。同条は「日本に米軍を維持するためのすべての経費は、日本に負担をかけないで米国が負担する」と規定。日本の負担は基地の地代や補償などに限られていました。
 しかし、米側の「円高・ドル安」を口実にした要求により、1978年度から、(1)基地従業員の福利費など(2)米兵用の住宅や学校・娯楽施設、格納庫や倉庫などの提供施設整備費(FIP)の支払いを開始。政府は、これらの負担を「地位協定の範囲内」と拡大解釈しました。
 米側の負担要求はさらに強まり、解釈では乗り切れなくなります。そこで87年度に「特別協定」を締結。これによって、労務費の基本給や水光熱費などを次々と負担するようになりました。政府は当時、「特例、暫定的な一時的措置」だと説明していましたが、今回も含めこれまで9回延長されています。

負担の比率増加
 米軍駐留経費負担に関する特別協定を締結しているのは、米国の同盟国でも日本と韓国しかありません。韓国の特別協定も事実上、日米の特別協定がモデルになっています。
 特別協定の費目は(1)労務費(基本給など) (2)水光熱費 (3)訓練移転費です。防衛省資料によると、思いやり予算における特別協定による負担の比率は大きく増えています。
 2021年度予算案の思いやり予算額は2017億円で、うち特別協定による負担額は、1538億円((1)労務費1294億円 (2)水光熱費234億円( 3)訓練移転費10億円)と76%を占めています。
 さらに、特別協定のうち「訓練移転費」は、沖縄に関する日米特別行動委員会(SACO)経費、在日米軍再編経費にも準用されています。沖縄県道104号線越え実弾砲撃演習の訓練移転費や、米軍機訓練移転費を日本が負担し、日本全土に米軍の訓練を拡大しています。21年度予算案では、SACO経費の訓練移転費として13億円、米軍再編経費の訓練移転費として91億円が計上されています。
 日米両政府は今後、新たな負担金額をめぐって交渉を行いますが、そもそも特別協定は、日米地位協定に照らしても二重三重に道理がないものであり、廃止するのが筋です。