2021年3月18日木曜日

専門家会合 新型コロナ“すでに再拡大”指摘も

 18日7時半から開かれた専門家委員会で、21日をもって緊急事態宣言を解除するという政府案は了承されました。国会に諮った後に18日の対策本部で正式決定するということです。
 17日のぶら下がり会見で菅首相は、記者から17日の東京都の新規感染者数が約1カ月ぶりに400人台になったが」と聞かれたことに対して「何にせよ専門家委員会の皆さんと、そういったことも含めて意見をうかがいたい」と答え、「感染再拡大が始まっているとの指摘もあるが」という問いには、「厚労省の専門家の委員の皆さんから、そこはしっかり話もきょううかがって提言をいただいてます。その中であす諮問委員会に解除の方向で提案する」という回答でした。足元の東京都では新規感染者数が前日、300人/日の大台に乗ったばかりなのに翌17日には一挙に408人にまで拡大したという事態の中でも、何が何でも解除するという意思が伝わりました。
 このところ緊急事態宣言の延長や解除については首相が先ず方針を示し、それを専門家会議に諮るというスタイルをとっています。それは正月明けに緊急事態宣言を発したときに「後手後手の対応」と批判されたことへの反省なのかもしれませんが、そんな面目の次元にかかずらわるべきではありません。
 宣言を解除するにしても延長するにしても、肝心なことは感染拡大(乃至はリバウンド)を回避する方策を打つということなのですが、それは皆無で、まさに何が課題なのかの自覚さえもないかのようです。

 ところですでに宣言が解除された府県の状況ですが、大阪府、京都府、兵庫県の関西の2府1県での感染者数は前の週に比べて133倍、福岡県は115倍と収束に向かうどころではありません。また「Go Toイート」をいち早く始めた宮城県では、感染者が165倍にも達したため中断せざるを得なくなりました。これは現状のままでは、仮に緊急事態宣言を解除しても とても正常な経済活動は出来ないということを示すものです。
 それだけでなく、今知られている3種の変異株に加えて新たな種類も出て来るなど、感染力が強くその分重症化の可能性も大きな変異株がいずれ主流になることは明らかなのに、それを出来るだけ把握するという動きも全く見られません。これこそが「後手後手の対応」と批判される所以です。
 NHKの2つの記事、「緊急事態宣言解除決定を前に専門家会合“すでに再拡大”指摘も」と「【変異ウイルス】これまでにわかった特徴・感染拡大の現状は」を紹介します。
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緊急事態宣言解除決定を前に専門家会合“すでに再拡大”指摘も
                     NHK NEWS WEB 2021年3月17日
菅総理大臣は17日、首都圏の1都3県で継続している緊急事態宣言を、今月21日の期限で解除すると表明しました。
これに先立って、新型コロナウイルス対策について助言する厚生労働省の専門家会合が開かれ「都市部ではすでに感染の再拡大、リバウンドが生じ始めているのではないかという指摘もある」としました。
感染力が高いとされる変異ウイルスの監視体制を早急に強化し、検査や感染経路の調査を再び強化するなどの対策が必要だとしています。
会合では、緊急事態宣言が出されている1都3県の状況を中心に分析が行われました。
報告されたデータでは16日までの1週間平均の新規感染者数は
▽東京都では前の週に比べて1.10倍、
▽埼玉県では1.17倍と増加、
▽千葉県は0.92倍、
▽神奈川県は0.88倍と下げ止まりとなっていて、感染者のうち若い世代の割合が高くなり、人の流れが再び増える動きが見られるとしています。
一方で医療提供体制については、自治体での入院調整の改善傾向が続き、病床の使用率もステージ4の指標を継続的に下回るなど負荷の軽減が見られるとしています。

全国でも1.09倍と増加傾向に転じる
また、すでに宣言が解除された
▽大阪府、京都府、兵庫県の関西の2府1県での感染者数は前の週に比べて1.33倍、
▽愛知県と岐阜県の2県は0.95倍、
▽福岡県は1.15倍となっています。
このほかにも
▽宮城県では1.65倍、
▽沖縄県では1.44倍と20代、30代を中心とした感染拡大が見られるとしていて、全国でも1.09倍と増加傾向に転じています。

リバウンドが生じ始めているのではないかという指摘も
こうしたことから専門家会合は全国の感染状況について「今月上旬以降、横ばいから微増が続いている」と分析し、特に「関西圏を含めた都市部では、すでにリバウンドが生じ始めているのではないかという指摘もある」としています。
このため、専門家会合は緊急事態宣言の解除がリバウンドを誘発することに注意すべきだとして、感染力が高いとされる変異ウイルスの監視体制を早急に強化し、検査や感染経路の調査を再び強化するなどの対策が必要だとしています。
また、医療機関と高齢者施設や地域によっては飲食店でのクラスターも引き続き発生し、カラオケに関係するクラスターも起きているとしていて、卒業式や歓送迎会、花見など、年度末から年度初めの恒例行事に伴う宴会や旅行をなるべく控えるとともに、年度初めには入社や入学の際に移動や研修を伴うことが多いため、感染拡大につながらないよう注意が必要だとしています。
さらに次の感染拡大の波に備え、ワクチン接種の着実な推進や、感染拡大時に医療を機動的に提供するために体制の充実を確実に行う必要があるなどと指摘しました。
脇田隆字座長は「緊急事態宣言の解除が検討されているが、東京や埼玉では特に20代30代での若い世代での感染の増加が見られる。これまでの対策の経験から感染拡大は若い世代から始まることがわかっていて、仮に宣言が解除されても対策をしっかり続けることが重要だ」と話しています。


【変異ウイルス】これまでにわかった特徴・感染拡大の現状は
                     NHK NEWS WEB 2021年3月17日
新型コロナウイルスのうち、感染力が高いとされる変異や免疫が働きにくくなるとされる「変異ウイルス」が世界の100を超える国や地域から報告されていて、WHO=世界保健機関や各国が警戒を強めています。
その変異ウイルスについてこれまでわかっている特徴や感染拡大の傾向についてまとめました。
特に警戒が必要なのは、
▼イギリスで最初に見つかった変異ウイルス、
▼南アフリカで最初に見つかった変異ウイルス、
それに
▼ブラジルで広がった変異ウイルスです。
いずれも「N501Y」と呼ばれる変異があり、ウイルスが人などに感染する際の足がかりとなる表面の突起部分が感染しやすいように変化していて感染力が高くなっていると考えられています。

3つの変異ウイルスそれぞれの特徴とは
1)イギリスで最初に見つかった変異ウイルス
イギリスで最初に見つかった変異ウイルスは、WHOによりますと、3月9日までに111の国と地域で感染が確認されています。
この変異ウイルスの感染力は、ECDC=ヨーロッパ疾病予防管理センターによりますと、複数の研究から36%から75%高くなっているとしています。
また、イギリス政府は従来のウイルスより入院や死亡のリスクの上昇に関わっている可能性が高いとしていて、検証が行われています。
一方で、ワクチンの効果には大きな影響はないとしています。

2)南アフリカで最初に見つかった変異ウイルス
次に、南アフリカで最初に見つかった変異ウイルスです。
WHOによりますと感染力は50%高いとされ、3月9日までに58の国と地域で感染が確認されていますが、発症した場合の重症度は従来のウイルスと比べて変わっていないとしています。
一方、このウイルスには「E484K」と呼ばれる体の中で作られる抗体の攻撃から逃れる変異があるため、再感染するリスクが上がると考えられています。
さらに、ワクチンが効くかどうかについて抗体がウイルスを抑える効果が下がるという研究結果が出ていて、各ワクチンメーカーはそれでも十分な効果はあるとしていますが検証作業を進めています。

3)ブラジルで広がった変異ウイルス
そして、ブラジルで広がった変異ウイルスです。
ブラジルでは、北部のマナウスで去年12月4日に最初に出現したと見られ、1月の時点ではマナウスで報告された感染者の91%がこの変異ウイルスへの感染だったということです。
WHOによりますと、感染力が従来のものより高いとされ、3月9日までに32の国と地域で感染が確認されていますが、発症した場合の重症度への影響は限られているとしています。
また、このウイルスも、抗体の攻撃から逃れる「E484K」と呼ばれる変異があるため、再感染したケースが報告されています。
一方で、ワクチンへの影響については現在、調査が行われている途中だということです。

さらに新たな変異ウイルスも続々見つかる
このほか、国内では2月25日にフィリピンから入国した人で感染しやすく変化した「N501Y」の変異と、免疫の攻撃から逃れる「E484K」の変異がある別の変異ウイルスが検出されたと報告されています。
さらに、免疫の攻撃から逃れる「E484K」の変異がある別のタイプの変異ウイルスも3月3日までに400例近く見つかっています。
この変異ウイルスには感染しやすく変化した「N501Y」の変異はなく、感染力は従来のものと変わらないと考えられるものの、中には国内で変異が起きたと見られるものもあり、国立感染症研究所は「注目すべき変異株」として遺伝情報の解析などを通じて実態を把握していくとしています。

変異ウイルス 1週間に新たに全国で128人感染判明
(中 略)
これまでに国内で399人の感染を確認 
これまでに国内で変異ウイルスへの感染が確認された人は、
▽埼玉県が57人 ▽神奈川県が28人 ▽新潟県が32人 ▽京都府が24人 ▽大阪府が72人 ▽兵庫県が94人 ▽東京都が14人、東京都以外は20人以上のみをピックアップ)合わせて399人となっています。
また、この399人が感染した変異ウイルスの内訳は、
  ▽イギリスで報告された変異ウイルスに感染していた人が374人、
  ▽ブラジルが17人、
▽南アフリカが8人となっています。

「変異ウイルス」感染 死者は神奈川県と大阪府で合わせて3人
  (中 略)
厚生労働省 変異ウイルス感染者の入退院基準とりまとめ
  (中 略)
専門家「変異ウイルス主流の流行起きれば状況厳しくなるおそれ」 
変異ウイルスの国内での状況について、公衆衛生学が専門で国際医療福祉大学の和田耕治教授は「国内でどこまで広がっているのかまだわかっていないことも多いが、各国の状況を見ると封じ込めることは難しく、国内でも感染の主流に置き換わると考えるべきだ。変異ウイルスの情報が盛んに出始めた年末年始の時期以降、感染者数が減ってきていて一般の人はなかなか危機感を持ちにくい状況だと思うが、変異ウイルスが主流の流行が起きれば、感染拡大のスピードや感染者数などの状況がこれまでより厳しくなるおそれがある」と述べました。

そのうえで行うべき対策について和田教授は「個人で行う対策は全く変わらないが、年度替わりの時期で多くの組織で人事異動で感染対策の責任者が替わり、これまでやってきていた対策がうまく引き継がれないケースもあるかもしれない。去年の同じ時期にもそうしたケースが見られていて特に高齢者施設、医療機関、自治体などではこれまでの対策をより素早く行う必要があり、徹底してほしい。また、監視体制の強化も必要で、民間の検査会社が検査したウイルスの検体からも変異ウイルスを検出できるように、しっかりとしたルール作りを国が行うべきだ」と話しています。