2021年3月31日水曜日

コロナと法人税 大企業に負担求める時代

 かつて先進国では法人税率は4050でしたが、各国が税率の値下げ競争をした結果 現在は20%前後大幅に低下しています(その分が消費税に加算され国民の負担が重くなりました)。
 英国は半世紀ぶり法人税増税を決め米国バイデン政権法欧州連合EU 大企業の負担を増す案を検討中ということです。
 それに対してアベノミクスを継承した菅政権は増税を検討していません。しかしコロナ禍で借金財政は一段と深刻になり、経済格差も増大しました。
 もはやアベノミクスは死語です。大企業優遇政策をやめ、世界に倣って法人税を上げるべきで、それが所得再分配という税制の理念に適う道です。
 しかも法人税のアップは単独では行いにくく各国が足並みを揃える必要があるので、いまはその良い機会です。
 毎日新聞が「コロナと法人税 大企業に負担求める時代」とする社説を出しました。

 支持率以外には何の関心も持っていないかのように見える菅政権に加えて、生活苦を経験したことのない議員たちが大勢を占めている国会にも、多くは期待できません。そうした中で、財政赤字を後々 消費税の増税で賄おうとするのは全くの間違いです。
 コロナ禍で庶民は困窮し、商店などの売り上げは軒並み大幅に落ち込んでいます。そのため商店などは、4月1日を待ち切れずに値上げをしているということです。
 田中龍作ジャーナルが報じました。
 毎日新聞の社説と併せて紹介します。
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社説 コロナと法人税 大企業に負担求める時代
                             毎日新聞 2021/3/30
 大企業を優遇してきた税制を転換し、負担を求める動きが各国に広がっている新型コロナウイルス禍で所得格差や財政難が深刻化したためだ。適切な判断である。
 英国は半世紀ぶりとなる法人税増税を決めた。米国のバイデン政権も、トランプ前政権が大幅に下げた法人税率を上げる意向を示している。欧州連合(EU)も大企業の負担を増す案を検討中だ。
 各国はこれまで自国産業を強化しようと法人税の減税競争を繰り広げてきた。安倍前政権もアベノミクスの目玉として実行した。先進国でかつて40~50%に上った税率は20%前後と大幅に低下した。
 だが、減税の効果には疑問が多い。推進派は経済を成長させて税収を増やすと主張したが、日本は減税後も成長率は低く、賃上げにも結びついていない。
 むしろ企業利益を優先してきた結果、社会的不公平が拡大した。
 先進国は高齢化で社会保障費が増加し、財源確保が課題となっている。大企業が払う税が減った分、消費税などが増税されて、国民の負担が重くなっている
 さらにコロナ禍で減税競争を見直す必要性は高まっている。
 営業が規制された飲食店や小売店では職を失った人が多い。各国は雇用対策などで巨額の財政出動を余儀なくされている。
 その一方でネット通販などが活発化し、IT関連の大企業は巨額の利益を得ている。こうした企業が払う税金が増えれば、生活支援の財源に充てられる。所得再分配の観点から理にかなう。
 法人税増税で政府の借金膨張に歯止めが掛かれば、財政への不安が和らぎ、経済の安定に資する。
 増税を実施する際は、各国が足並みをそろえやすい制度が求められる。一国では自国企業の反発もあって増税しにくい。世界共通の最低税率を設けるべきだ。税率の低い国を大企業が課税逃れに使う「抜け道」も防げる。
 日米欧などが議論してきたが、結論は先送りされてきた。協調重視のバイデン政権は前向きな姿勢を示しており合意を急ぐべきだ。
 アベノミクスを継承した菅政権は増税を検討していない。だが格差や借金財政はコロナ前より一段と深刻になっている。大企業に偏ってきた政策を再考する時だ。


4月1日を待てず値上げの春 「コロナで前年比50%減は当たり前」
                中山栄子 田中龍作ジャーナル 2021年3月30日
 消費税込みの総額表示が4月1日から始まるのを前に、値上げの話題が新聞テレビに登場するようになった。
 食用油、缶詰、ハンバーガー、セルフうどん店・・・税込み価格で分かりやすくすればいいだけの話なのだが、各社いくばくかの値上げを発表している。なぜか?
 理由はコロナ禍での需要落ち込みに歯止めがかからないからだ。コロナ不況の影響は飲食店だけでなく、私たちを取り巻くサービス業にまで及んでいた。
 細かい文字で書かれたA4判の紙を見つけたのは、もう半月以上も前だ。
 いきつけのクリーニング屋。コロナ対策のため天井から吊るされたビニールの仕切りに、「値上げの告知」が貼り付けられていた。
 クリーニング屋の値上げは、3月19日にすでに始まっていた。4月1日からの開始にすると、便乗値上げのように見えるからなのだろうか。
 「リモートでみんなスーツを着ないの。ワイシャツも。うちのチェーンでも前年同月比50%から60%減は当たり前。2人で回していた店も1人で十分になるくらい業務量が減った」と受付の女性は言う。
 「お宅だって、いつものようには(服を)出さないでしょ」と、ダメ出しをされた。
 そう言われればそうだ。第一、人と会うような状況がないのだから父ちゃんもワイシャツを着ない。
 そのクリーニングチェーンでは、もともと高めにしていた土日料金並みに平日料金を引きあげたのだった。

 わが家が狭いために借りている貸倉庫でも、同じ異変が起きていた。
 毎月15日までに来月分を支払わないと携帯に督促メールが来るようになっている。3月から金額は18,200円となった。従前の料金から見てすでに2000円近い値上げだ。
 断捨離に励んで、貸倉庫を解約しようかとの考えが一瞬頭をよぎった。
 近隣の商店やサービス業者が廃業していくのを見るのはつらい。だが、着てもいない父ちゃんのワイシャツを余計にクリーニングに出すこともできない。
 コロナに対する政治の無策が、じわじわと真綿で首を絞めるように庶民を痛めつけている。
                 ~終わり~