2021年3月29日月曜日

政府のモニタリング検査は1日わずか650件 1万件目標に大きく遅れ

 菅首相は、かつて新型コロナ感染症のことは「この1年間で大体分かってきた」と言い、「Go Toでコロナの感染が進むというエビデンスはない」とも述べました。正月明けに一部の都府県に緊急事態宣言を出すに当たっては「必ず1ヶ月で収束させる」と断言しました。いずれも大変な自信に基づくものと言えますが、その根拠は常に不明で、結果的にそれらはすべて事実によって否定されました。
 先に緊急事態宣言を解除するに当たり、以前から言われてきたPCR検査拡充(=モニタリング検査)を含むリバウンドを防ぐための5つの柱を挙げましたが、今度もやはり実行されていません。
 しんぶん赤旗によれば、確認されている直近1521日の1週間で検査総数は45971日657件)1日1万件という政府の「目標」からは大きく遅れています。
 現在第4波に向かっていますが、従来と決定的に異なるのは変異株が増加しつつある点で、それが優勢になればコロナ禍の様相も劇的に悪化する惧れがあります。
 そのためには変異株の保有者を早く見つけて拡大を抑える必要がありますが、1日1万件では全く足りません。

 毎日新聞は「広がるコロナ変異株 なぜ検査が増えないのか」とする社説を出し、その中で、神戸市積極的なPCR検査を評価し、1回の検査で感染の有無と変異株を同時に調べる手法を導入するなどして変異株の検出に注力する必要性を強調しました。
 そして新たな局面のたびに対応が後手に回るという、これまでの失敗を繰り返してはならないと述べています。
 政府がいまだに本気になっていないのは本当に不思議なことです。
 しんぶん赤旗と毎日新聞の記事を紹介します。
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新型コロナから命守る 政府モニタリング検査
1日わずか650件 1万件「目標」に大きく遅れ
                       しんぶん赤旗 2021年3月28日
 政府は緊急事態宣言解除に伴う対策として感染再拡大の予兆をつかみ、感染源を把握するためのモニタリング検査を打ち出しました。内閣府によると、確認されている直近の15~21日の1週間で検査総数は4597件です。無症状感染者を発見する例も生まれていますが1日1万件という政府の「目標」からは大きく遅れています。
 モニタリング検査は、緊急事態宣言が解除された栃木、埼玉、千葉、東京、神奈川、岐阜、愛知、京都、大阪、兵庫、福岡の11都府県で実施され、無料で受けられます。
 知らず知らずに感染を広げる無症状感染者の発見に焦点を当てた大規模検査を、政府がようやく打ち出したことは重要な前進です。
 しかし直近の検査実績は1週間で4597件で、1日あたりにすると657件。1都府県あたりでは60件にすぎずモニタリング(感染動向調査)の意味をなしていません。
 内閣府は「4月には1日5千件、ゴールデンウイーク後には1万件に増やし、北海道や沖縄も対象に加えたい」としています。1日1万件でも1都道府県あたり1000件未満にすぎず、感染源の探知などできません。すでに各地で、新規感染者、変異株が増加しつつあります。第4波防止へ、検査の規模とスピードを一気に増やす政府の本気度が問われます
 他方、8~14日の1週間に確認された1116件の検査では6人の「陽性」=「感染疑い者」を確認。2人が京都府、4人が兵庫県です。無症状者の検査で感染者を発見したことは重要ですが、内閣府によるとその後の対応は本人任せ。検査をするにあたり「陽性の場合、自分で病院に行き最終判定の検査を受けることの同意が検査の条件になっている」といいます。
 無症状感染者が発見されたのに、責任をもって保護しなければ感染制御につながりません。
 検査の方法は、企業や学校で従業員や学生に対しまとめて行う場合と、繁華街などに検査スポットを用意しスポットに来場する人に対し検査キットを配布して行う場合とがあり、配布数と検査数は大きくずれています。検査スポットの場所は原則非公開です。

 



社説 広がるコロナ変異株 なぜ検査が増えないのか
                            毎日新聞 2021/3/28
 新型コロナウイルスの感染再拡大が懸念される中、変異株が広がりを見せている
 変異株の累計感染者数は空港検疫を含め600人を超えた。1週間で160人以上増えている。
 感染者は26都道府県に及び、9割は英国株だ。感染力が強いとされ、子どもにも感染しやすいとの指摘がある。
 既に市中感染に至っている可能性もある。専門家は変異株が第4波を招くと警鐘を鳴らす。従来とは異なる対策が求められる。
 しかし、検査体制が不十分なため、実態把握に不可欠なデータが得られていないのが実情だ。
 変異株は、陽性の検体を再度PCR検査して調べる。さらに国立感染症研究所などでゲノム(全遺伝情報)解析し、確定させる。
 こうした煩雑な手続きがネックとなり、自治体によっては一部しか再検査に回していない。確定までに数日かかるため、初動が遅れる恐れもある。
 東京都は新規感染者数が全国最多なのに、変異株の検査率は5~10%にとどまり、確定数も少ない。大量のPCR検査を民間検査機関に頼ってきたが、新たな事態への対応が遅れている。協力を得て拡充を急ぐべきだ。
 神戸市は、積極的な検査で注目を集めている。国からの指示を待たず、機器や人員配置を独自に拡充した。検査率は6割を超え、ゲノム解析も自前で行う
 政府は緊急事態宣言解除に当たって検査率を4割に上げ、対策を強化することを目標に掲げた。
 だが、号令をかけるだけでは、自治体の取り組みは進まない。
 感染者が急増している宮城県などで、変異株に力点を置いた実態把握を国主導で進めてはどうか。ノウハウを確立し、他の都道府県と共有してほしい。
 1回の検査で感染の有無と変異株を同時に調べる手法を導入し、対策に追われる自治体の負担を減らすことも重要だ。
 ウイルスは2週間おきに変異を起こす。今後、海外からの渡航者が増えればリスクは増す。より強力な変異株が国内で出現する可能性も十分にある。
 新たな局面のたびに対応が後手に回るという、これまでの失敗を繰り返してはならない。