2021年9月6日月曜日

06- 自爆の全真相 万策つきた菅首相 辞任の必然 <上> <中> <下>

 4日付の日刊ゲンダイに、「『自爆のぶん投げの全真相 万策つきた菅首相、辞任の必然 <上> <<>」という記事が載りました。

 これまで <><> は有料記事になっていて読めなかったのですが、「阿修羅」に「文字起こし」版が載りましたので紹介します。
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「自爆のぶん投げ」の全真相 万策つきた菅首相、辞任の必然 <上>
                      日刊ゲンダイ 2021/09/04
この期に及んでコロナに専念などとほざく国民愚弄
「政界、一寸先は闇」を地で行く展開だ。自民党総裁選(17日告示、29日投開票)で再選するため、奇策も禁じ手もいとわなかった菅首相が3日突如、白旗。不出馬を表明した。事実上の退陣表明だ。ポストを譲り渡した安倍前首相と同様に新型コロナウイルス対策で失策を繰り返し、最後は政権をブン投げ。世紀の恥さらしの言い分はこうだ。
「首相となって1年、コロナ対策を中心とする課題に全力で取り組んできた。コロナ対策と総裁選の選挙活動には莫大なエネルギーが必要であり、両立できない。コロナ感染防止策に専念したいと判断した」
 この期に及んで「コロナに専念」とは、よく言えたものだ。一体いつ、全力でコロナ対策に取り組んだのか。
 肝いりの「GoToキャンペーン」で全国にウイルスをまき散らし、東京五輪強行で感染爆発を招いた張本人だ。ワクチン接種で感染拡大を抑え込めると信じ込み、抜本的なコロナ対策はおざなり。結果、医療崩壊をきたし、「自宅療養」の名目で放置され、医療を受けられずに孤独死するケースが相次いでいる。ゆるゆるの水際対策で感染力の強いデルタ株の流入を許したことから、菅政権下で約147万人が感染し、1万4000人超が命を落とした。
 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。
「内閣支持率が30%を割り込んで危険水域に突入したのは、菅政権が続けば命がいくらあっても足りないからです。菅首相は世論に追い詰められ、党内の求心力も失い、万策尽きて政権を投げだした。現職なのですから、総裁選の選挙活動をせずに公務に専念したとしても、世論に評価されていれば結果はついてきたはずです。弁解すべき内容すら持ち合わせていないから、不出馬表明もメチャクチャ。追い詰められたのは明白です」
 菅が得意とする人事権が及ばないマーケットの反応は極めて正直で、さっそく株が急上昇だ。不出馬が報じられると、日経平均株価は急騰。上げ幅は一時、600円超に拡大し、2カ月ぶりに2万9000円台を回復した。菅が売り材料だったということ。ポンコツが去るのは全国的な朗報である。
ぶち上げた人事もできなくなった無能の極み
 菅にトドメを刺したのは、見苦しさを通り越した異様なまでの悪あがきだ。3日の自民党総務会で役員人事の一任を取りつけ、6日にも実施する段取りだったのがパー。主流派閥の支持を得られない焦りから強権乱用で延命を図った揚げ句、総スカン状態に陥って「推薦人20人の確保すら危うくなった」(自民党関係者)というから、無能の極みである。
 菅の「必勝シナリオ」は、五輪メダルラッシュが生む熱狂で政権浮揚を図り、衆院選になだれ込んで勝利を収め、総裁選無投票再選で乗り切るというものだった。これが見事に崩壊すると、死に物狂いで謀略に走る。岸田前政調会長が名乗りを上げ、総裁選が回避できないと見るや、争点潰しを画策。党内から反発を買う二階幹事長を狙い撃ちした「総裁を除く党役員は1期1年、連続3期まで」とする岸田の党改革案を横取り。「二階切り」がキモの党役員人事を断行し、解散総選挙で総裁選を吹き飛ばそうとしたのである。
 まさに筋違いの悪手連発。安倍と麻生財務相へのアピール策だった「二階切り」で二階派をはじめとする党内の反感を買い、総裁選先送りの暴走プランには頼みの安倍までもが反対した。子飼いの小泉環境相にまで「踏み切れば自民党も終わる」とクギを刺される始末。派閥の支持は広がらないどころか、人も出してもらえないありさまだった。政治ジャーナリストの角谷浩一氏は言う。
「菅首相は得意としてきた人事で最後につまずいた。小泉環境相を幹事長、ワクチン担当を任せた河野行政改革相を政調会長に据えるなどの構想があったようですが、衆院選対策で人気者を寄せ集めればいいとの考えがミエミエ。玉砕した場合は責任を取らせられるのが分かっていながら、引き受けるモノ好きはそういないでしょう」
 迷走に迷走を重ねた果ての自爆。ご愁傷さまだ。

言うまでもないが、こんなポンコツを談合で担いだ自民党も下野が当然
 ポンコツ首相を祭り上げてきた自民党の連中もどうかしている。
 昨年、安倍のブン投げを受けた後の総裁選では、二階がいち早く菅支持に動くと、麻生派が乗っかり、安倍の出身派閥である細田派も菅支持に回った。計5派閥が勝ち馬に乗れとばかりに菅支持に動いたのだった。
 結果、菅が圧勝すると、党4役に国対委員長を加えた5ポストは支持に回った5派閥にキレイに割り振られ、閣僚も派閥均衡で登用された。結局、ポスト欲しさで各派閥が、談合的に菅を担ぎ上げたに過ぎないのだ。
 菅は就任当初、「国民のために働く内閣」なんて胸を張っていたが、一体何をしてきたというのか。この1年間、新型コロナは猛威を振るい続け、国民の生活は悪化の一途をたどった。スズメの涙の支援金で自粛だけを求める無策。国民のために働いた形跡は何一つ見えない。
 自民党の責任も重大だ。コロナ失策の連発で支持率が急落すると、党内からは一気に「菅じゃ選挙に勝てない」と不満が噴出。談合でポンコツを誕生させておきながら、人気がなくなるとポイ捨てとは、呆れてものが言えない。これが腐敗堕落した自民党の正体なのだ。
 高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)はこう言う。
「今回は、失策続きの菅首相に自民党もスッカリ呆れてしまったということでしょうが、当然ながら、選んだのもまた自民党です。無能な人物を担ぎ上げた責任を棚に上げ、『選挙に勝てないから代えろ』というのは、あまりにご都合主義で無責任でしょう。結局、自民党議員は選挙での自らの当選が第一優先。また、いかにポストを回してもらえるかという欲望しか頭にないのです。国民不在にもほどがあります」
 腐った自民党は下野が当然だ。

「自爆のぶん投げ」の全真相 万策つきた菅首相、辞任の必然 <中>
                         日刊ゲンダイ 2021/09/04
                       (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
菅を担いだ連中がまだのさばり暗躍していた舞台裏
 菅が退陣表明へと追い込まれた決定打のひとつは、菅が最後の望みをかけた「総裁選先送り解散」の奇策を、安倍が止めたことだった。「人間として菅さんを支持する」と周囲に語っていたとされる安倍だが、本当にそうだったのかは怪しい。
 昨年の総裁選で菅を担いだ連中は、安倍も麻生も二階もみな本心では、キングメーカーとして権力を握り続けられれば、菅じゃなくても構わなかったのだ。
 特に安倍。表では「菅支持」としながらも、自身を慕う高市前総務相や下村政調会長が出馬の意向を表明することを容認。「基本路線はニュー・アベノミクス」などと安倍政治を礼賛する高市は、体のいい安倍PR要員みたいなものだ。
「現在は無派閥の安倍氏ですが、出身派閥の細田派のオーナー気取りで、『菅支持でいくんだ』『自主投票はダメだ』と派閥幹部に指示していたそうです。ところがその一方で、水面下では岸田氏も支援し、菅氏との両天秤にかけていた。岸田選対には安倍氏の側近チームが送り込まれている。そして最後は“菅切り”。菅氏が目指した人事刷新で、安倍氏は盟友の麻生氏とともに、『ポストを受けてはダメだ』と邪魔をしていたらしい」(自民党関係者)
 96人の党内第1派閥(細田派)と53人の第2派閥(麻生派)という「数」さえあれば、全てをコントロールできるという傲慢なのである。
 政治評論家の野上忠興氏が言う。
「安倍氏は執念深い人ですからね。昨年、病気退陣したのだから奥の院で蟄居していればいいのに、引き際に納得していないので、不必要に政局に介入したがる。2A(安倍・麻生)と2F(二階)によるキングメーカー政治と決別しないと、自民党は変わりませんよ」
 新総裁でシャッポを代えるだけではダメなのだ。
まだ派閥の談合を繰り返すのか 醜悪な自民党総裁選に国民唖然
 早速、次期総裁レースを巡って、各派閥が蠢き始めている。
 第2派閥会長の麻生は昨夜、大臣室に派閥幹部の甘利税調会長らを呼んで“密談”。総裁選への対応を話し合った。野田聖子幹事長代行は、立候補に必要な20人の推薦人確保のため、複数の自民党議員と会談。竹下派会長代行の茂木外相は「まずグループをまとめていくことが自分の責任」と、一気に菅支持に回った前回総裁選とは打って変わって様子見発言だった。「ある派閥の関係者は早速、国民から人気の候補者を口説き始めている」(自民党関係者)という。
 5派閥が菅支持で雪崩を打った前回の総裁選同様、今回もまた派閥による談合選挙が繰り返されるに違いない。
「今の自民党の主要派閥は『誰を担げば得するか』しか頭にありませんから、また談合になる可能性が高いでしょう。そんな国民不在の状態なのに、大手メディアの報道で、総裁選は妙にもり立てられている。菅首相の『棒読み』があまりに酷かったこともあり、テレビ出演した岸田前政調会長について、SNSでは『メモも見ずに話していてスゴイ』といった声が上がるほどです。国民は総裁選という目くらましに騙されず、冷静な視点を持つべきです」(五野井郁夫氏=前出)
 菅支持を明言した進次郎は報道陣に、「菅総理には『ありがとうございました』と伝えた」と涙を浮かべながら語っていた。岸田も「心から敬意を表したい」と話し、河野は「本当にお疲れさまでした」と発言。いかにも耳当たりのいい言葉を並べ立てていたが、醜悪な総裁選に国民は唖然としているのではないか。

「自爆のぶん投げ」の全真相 万策つきた菅首相、辞任の必然 <下>
                         日刊ゲンダイ 2021/09/04
                       (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
政治をマトモに戻すには、一連のワルを逮捕するのがスタートライン
 こんな腐り切った連中に政権を任せていてはダメだ。総裁選後に実施される衆院選では自民党を下野させ、悪行三昧だったワルどもを断罪しなければマトモな政治は戻らないだろう。
 アベスガ政権の8年あまりは、あまたの不祥事、事件の連続だった。自殺者まで出てしまった財務省の公文書改ざん事件に、「総理のご意向」で首相の“腹心の友”が運営する学校法人の学部新設が優遇された加計学園問題。「桜を見る会」前夜祭を巡っては、安倍自身が公選法違反や政治資金規正法違反の疑いで刑事告発され、東京地検特捜部が不起訴処分としたものの、検察審査会が「不起訴不当」を議決。目下、特捜部が再捜査中だ。
 菅にしても、かつて大臣を務め“天領”とされる総務省が違法接待問題で大揺れだった。菅の長男が勤める東北新社などから違法接待を受け、国家公務員倫理規程違反で32人もの職員が処分された。携帯電話や電波行政が歪められた疑惑まで浮上していた。日本学術会議の任命拒否問題では、気に入らない学者を菅が排除したのは明白だが、いまだにロクな説明はない。
 数々の悪事を働きながら知らんぷりしてきた連中をお縄にしなければ、この国は何も変わらない。菅が退陣しても、今後また同じことを繰り返すだろう。
「かつての自民党は、党内で議論を戦わせ、異論をよしとしてきた。敵対勢力の意見に耳を傾ける姿勢があったから、党内で自浄作用が働いていたのです。ところが、8年間のアベスガ政権で、官邸に力が集中しすぎました。異論を許さず、歯向かう者は徹底的に干すことが当たり前になっているから、自浄作用が働かず同様の不祥事を繰り返す。岸田前政調会長は森友問題について『国民が納得するまで説明を続けることが政府の姿勢として大事』と発言しましたが、どこまで説明するのか、具体的な言及がありませんでした。これでは菅首相が代わっても、政権の体質は変わらないでしょう」(五野井郁夫氏=前出)
 国民は鉄槌を下すべきだ。
後任は誰か、候補者乱立、電波ジャックのアホらしさ
 菅が政権をブン投げたことで、これまで「菅VS岸田」が軸だった総裁選の構図がガラリと変わった。
 すぐさま動いたのは河野だ。所属派閥領袖の麻生を財務省に訪ね、立候補の意向を伝えた。これまで白紙だった石破元幹事長も「全く新しい展開になった」として、出馬への意欲をにじませた。菅のドーカツに負けていったん、不出馬に転じていた下村までもが、「状況が変わった」と出馬の再検討に入ったのには笑うしかない。
 ジャーナリストの鈴木哲夫氏が言う。
「世論人気が高い石破氏と河野氏が出馬すれば、岸田氏との三つ巴となるでしょう。党員・党友票は世論と近く、『石破4、河野4、岸田2』ぐらいの比率。議員票は今後、派閥の締め付けが出てくるが、衆院選が近く、みな世論を意識するので議員票も流動的で、石破氏と河野氏の決選投票となる可能性があると思います」
 3日午後のテレビは各局が、岸田、河野、石破、下村、高市、野田の顔写真を並べて「ポスト菅」予想に興じていた。次から次へと当事者が生出演し、政治記者の解説もありの総裁選電波ジャック。これから告示までは「誰が出る」、投開票日までは「誰が勝つ」で、テレビは大騒ぎするのだろう。
 総裁選を“お祭り”にして、世論に菅のコロナ無策や議論回避を忘れてもらい、あわよくば逆風を、追い風に変える――。衆院選へ向け自民党はそんな計算をしているが、そうは問屋が卸すものか。
「東京五輪後の世論調査を思い出してください。『五輪が始まればムードが変わる』『菅内閣の支持率は挽回できる』と言われていましたが、フタを開けてみれば、『五輪開催は良かった』が多くても、内閣支持率は下がったままでした。コロナ禍をきっかけにして、国民はお祭りと政治を切り分ける目を持つようになった。総裁選が派閥の論理で進んだり、政策論争がなければ、世論は厳しい目を向けるでしょう。『コロナ感染の大変な時期に国会を開かず、何をやっているのか』と憤っている人も少なくありません」(鈴木哲夫氏=前出)
 自民党というコップの中の権力闘争にすぎない総裁選より、大事なのは衆院選である。