2021年9月18日土曜日

自宅死亡者数も把握できず 発熱した子どものPCR検査拒否続出(LITERA)

 菅首相は新型コロナウイルスの対応に専念すると述べて来季の総裁選に立候補しないことを明らかにしましたが、具体的に何をやっているのかはよくわかりません。8月5日から1ヶ月以上経ってから行われた16日第2回目の参院厚労委閉会中審査にも出ずに、小池都知事と共に「酸素ステーション」を視察していました。
 新規感染者数は減少に転じたとはいえ、全国の自宅療養者数は6万人以上います。
 東京都の重症病床使用率いまだにステージ4のままで死亡者は増える一方。病床逼迫の状況は変わっていません。
 そもそも現在都が公表している新規感染者数の信憑性については大いに疑問で、5日迄の1週間に行われたモニタリング検査では人口10万人あたり640人となっているのに、同じ時期に都が公表している新規感染数は人口10万人あたり62・510分の1以下になっています(別掲記事)。同じやり方でより長期間にわたって日刊ゲンダイがおこなった例では3分の1以下となっています。

 警察庁調べで8月中に自宅など医療機関以外で死亡した新型コロナ感染者は全国で250人にものぼっていますが、厚労委の閉会中審査で立民党の石橋通宏参院議員が「8月以降に自宅で亡くなられた方を把握されているのか」と質問すると、田村厚労相は「HER-SYSで見と、8月中、自宅療養中に発生した死亡事案は全国で11件というふうに出てます」と答え、桁外れの数値しか把握していないことが明らかになりました。
 閉会中審査に応じない菅首相と言い、審査会で平然とそうしたデタラメを口にできる田村厚労相と言い、当人たちに当事者意識が欠如していてはどうにもなりません。
 コロナはほんのいっときやや落ち着ついたかに見えますが、この時にPCR検査や抗原検査を徹底するなりして火種を徹底的に消し切ることが出来ないのであれば、直ぐにも第6波の大爆発が起きるのは目に見えています。
 実態はどうなのか。LITERAの水井多賀子氏が「総裁選に騙されるな、政府のコロナ対策のお粗末さは変わってない 自宅死亡者数も把握できず、発熱した子どものPCR検査拒否続出」とする記事を出しました。
 日刊ゲンダイの記事「コロナ“隠れ陽性者”は東京都発表の3倍超! モニタリング検査抑制の罪とリバウンドの火種」を併せて紹介します。
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総裁選に騙されるな、政府のコロナ対策のお粗末さは変わってない! 自宅死亡者数も把握できず、発熱した子どものPCR検査拒否続出
                       水井多賀子 LITERA 2021.09.17
 本日、自民党総裁選が告示され、テレビをつければまるでコロナ問題などないかのような密状態の出陣式の模様をはじめ、4人の候補者によるテレビジャック状態に陥っている。
 だが、新規感染者数が減少傾向にあっても、全国の自宅療養者数は6万人以上、東京都の重症病床使用率がいまだにステージ4のままであるように病床逼迫の状況は変わっていない。しかも、東京大学の仲田泰祐准教授らによる試算では、11月末までに約75%の都民が2回のワクチン接種を終わらせても、12月中旬には新規感染者数が1日平均で1万人を超えるとしている。いますぐに対策の強化が必要なのだ。
 にもかかわらず、政権与党の自民党は党内の権力闘争に明け暮れ、メディアもそれを批判することもなく丸乗り。この有事に臨時国会の招集を自民党が拒否しているという大問題も、不問に付されている。
 ようするに、自民党は総裁選の加熱報道によって菅政権によるコロナ対策の大失敗を糊塗し、国会を閉じたままにすることでポンコツの菅義偉首相など存在しなかったかのように目くらまししているのである。
 だが、この国民の目を欺く自民党のお祭り騒ぎによって被害を受けるのは、言うまでもなく国民だ。しかも、総裁選報道に夢中になっているメディアはほとんど取り上げないが、国会の閉会中審査では、いまなお菅政権にはすさまじい医療崩壊を巻き起こしたことの反省がまるでないことが浮き彫りになっている。
 たとえば、16日におこなわれた参院厚労委員会の閉会中審査。8月5日の参院厚労委員会で田村憲久厚労相は「中等症は原則入院だ」と強弁したが、ご存知のとおり、その原則はまったく守られることなく、中等症でも入院できず自宅に放置された患者が続出、自宅死を招く結果となった。当然、今回の閉会中審査でも田村厚労相に対してその責任を問う声があがったが、田村厚労相は言い訳に終始し、一切謝罪をしなかった
 しかし、問題は謝罪をしなかったことだけではない。厚労省はいまだに、自宅死の実態をまるで把握をしていないのだ。
 先日、警察庁調べで8月中に自宅など医療機関以外で死亡した新型コロナ感染者は全国で250人にものぼり、そのうち死因が新型コロナあるいは肺炎だった人は187人だったことが判明。これは7月の約8倍、過去最多の人数となっている。
 ところが、立憲民主党の石橋通宏参院議員が「8月以降に自宅で亡くなられた方を把握されているのか」と質問すると、田村厚労相はこう答弁したのだ。
HER-SYSで見ますと、8月中、自宅療養中に発生した死亡事案は全国で11件というふうに出ております」
 田村厚労相は「入力されていないものがたくさんある」「HER-SYSにあらかじめ登録した上でコロナが原因で自宅で亡くなられたというものはいま完全に把握できている状況ではないが、これから順次HER-SYSにデータが入ってくると思う」とも述べたが、警察庁によると、死亡者250人のうち93人は生前にコロナ陽性が判明し、コロナによって命を落としていた。にもかかわらず、厚労省はたったの11件しか死亡事案を把握していないのだ。ようするに、患者の状況をリアルタイムで把握するシステムすら、この国ではいまだに確立されていないのである。

「子どもが発熱してもPCR検査を勧められなかった」と回答がなんと約65%に
 だが、さらに呆気にとられたのは、感染割合が増加している子どもたちにかんする問題での政府答弁だ。
 同じく参院厚労委員会で質疑に立った日本共産党の吉良よし子参院議員は、8月に「子どもの発熱にかんするアンケート」(回答者409人)をネット上で実施し、その結果を紹介。「保育園や学校で陽性者が出た際、どの範囲まで検査がおこなわれたか」という問いでは、「園や学校のすべての児童、教職員などの関係者におこなわれた」という回答はわずか0.3%、「濃厚接触者やクラス・学年のメンバー全員」もたったの8.6%で、「濃厚接触者のみ」が37.9%、「検査はおこなわれなかった」が24.8%と多数にのぼった。なかには「保育園や陽性者が出たが“濃厚接触者ではない”と判断され、発熱してもPCR検査を断られた。父親の勤務先でPCR検査を受けたところ陽性だった」という声もあったという。
 さらに、「子どもが発熱してもPCR検査を勧められなかった」という人の割合は64.7%にものぼっており、吉良議員のもとに寄せられた「医師の診断は『風邪ですね』の一言だけ。『検査しなくていいのか』と訊くと『子どもは軽症だから大丈夫』と言われた」「『大人が体調不良でなければ子どものコロナはありえない』と言われた」という声を紹介。「子どもが発熱した際にはすぐに検査を徹底すべきでは」と訴えた。
 だが、田村厚労相の答弁は、信じられないものだった。
「発熱された患者は基本的に診療・検査外来という医療機関に行っていただければ検査をしていただくというふうに我々は認識している」
 65%近くもの人たちが「発熱しても検査を受けさせてもらえなかった」と言っているのに、田村厚労相は質問を聞いていたのか?という話だろう。しかも、吉良議員は12歳未満の子どもたちはワクチン接種ができないことも踏まえて保育園や学校などでの定期検査を求めたのだが、田村厚労相の答弁は「重症化リスクという意味では、高齢者と比べると(子どもは)明確に数字が違う」などと述べて定期検査の実施を拒否したのだ。

菅首相は小池都知事と連れ立って利用率最大3割の「酸素ステーション」視察する頓珍漢ぶり
 コロナの自宅死亡者の数も把握せず、発熱したら検査が受けられるという仕組みも徹底せず、その上、定期検査の実施も拒絶──。この体たらくは一体何なのか。
 しかも、呆れるのは、「コロナ対策に専念する」と言って総裁選不出馬を決めた菅首相だ。「専念する」と大見得を切ったのだから、本来ならばこの閉会中審査に出席してしかるべきだが、国会にその姿はなし。その間、何をしていたのかと思ったら、またも小池百合子都知事と連れ立って、東京・築地に開設する「酸素・医療提供ステーション」を視察していた。
 だが、都内の「酸素ステーション」の利用率はピーク時でも3割程度で、菅首相肝いりで開設された渋谷の「酸素ステーション」では看護師が「少ないときは(患者が)5人とかしかいない。看護師も何すればいいか困ることもある」「宝の持ち腐れ」と証言しているほど(TBS『news23』15日放送)。菅首相は今回の視察でも「画期的な施設であり、こうした施設を全国に増やしていきたい」などと胸を張ったが、全国に増やす前に抜本的な見直しが必要であるはずだ。
 しかし、この菅首相よりももっと酷い「国会サボリ閣僚」がいる。総裁選候補者であるワクチン担当の河野太郎・行革相だ。
 16日の閉会中審査では、前出の立憲の石橋議員や国民民主党の芳賀道也参院議員がワクチン担当として河野大臣の出席を求めたというが、なんと「拒否された」というのだ。
 ご存知のとおり、河野大臣といえば総裁選告示前からテレビに出ずっぱりで、「やはり河野太郎でなかったらワクチンはここまで来なかった」などと自画自賛。ここまできたのは言うまでもなく自治体の努力にほかならないが、挙げ句、ワクチン担当大臣として国会に出席を求められてもそれを拒否し、総裁選にかまけているのである。
 そもそも、15・16日とおこなわれた衆参厚労委員会の開催は3週間ぶりだったというのに、審議時間は2日合わせてたったの4時間。その上、大臣として国会での説明を拒否する人物が、次期総裁・首相の第一候補だというのだ。臨時国会も開かず、閉会中審査に現首相も次期首相有力候補の大臣も出てこないというこの現実を見れば、いかに国民がバカにされているのか、そして自民党政権がつづくかぎりは何も変わらないということが、よくわかるというものだろう。 (水井多賀子)


コロナ“隠れ陽性者”は東京都発表の3倍超!モニタリング検査抑制の罪とリバウンドの火種【独自試算】
                          日刊ゲンダイ 2021/09/17
「感染者がいまだ市中に潜在している可能性がある」――16日の東京都のモニタリング会議で大曲貴夫医師は警戒感を示した。都が発表する新型コロナウイルスの新規感染者数は氷山の一角。隠れ陽性者が発表の3倍を超える可能性があることが日刊ゲンダイの調査で分かった。
 都は繁華街や飲食店、駅前、空港などでモニタリング検査を実施している。感染の疑いがある有症状者や濃厚接触者ではなく、無症状者が検査対象で、市中感染の広がりを推測できる。
 7月5日の週は5975人の検査を行い陽性者は3人で陽性率は0.05%だったが、その後、陽性率はみるみる上昇。8月16日の週は0.73%(陽性198人/検査2万6952人)と14倍に跳ね上がっている(別表)。
 都は8月10日付で各保健所に対し「積極的疫学調査」の縮小を通知。濃厚接触者や感染経路を詳しく調べるのをやめてしまった。その結果、市中感染の拡大を許してしまった可能性がある。
 日刊ゲンダイの指摘に都は、「新型コロナは症状の出ない陽性者が市中に一定数います。無症状者だけが増えているのではなく、有症状者も含めて全体として陽性者数が増えている。積極的疫学調査の縮小が潜在の陽性者を増やしたのかどうか、影響したのかは一概に言えない」(感染症対策部)と答えた。

新規感染者数は減少傾向だが…
 もし、モニタリング検査を都民全員に実施するとどうなるのか。モニタリング検査の陽性率を東京の人口に当てはめ、1日平均の新規感染者数を試算した。8月16日の週は1万4693人で都が発表した3877人の3.7倍、9月6日の週でも6808人と発表の3896人の1.7倍だ。発表数の数倍の隠れ陽性者の存在をうかがわせる。
「新規感染者数の減少傾向が続いていますが、喜んでいる場合ではありません。隠れ陽性者が市中感染を広げ、リバウンドにつながる恐れがあります。モニタリング検査の陽性率が限りなくゼロに近づくまで感染対策を徹底すべきです」(西武学園医学技術専門学校東京校校長の中原英臣氏=感染症学)
 警察庁によると、自宅などで死亡したコロナ感染者は8月に250人が確認されたが、半分近くの118人は死後に陽性が判明している。多数の隠れ陽性者が死に至っているのだ。
 一貫して検査抑制してきた罪は重い。