2021年9月4日土曜日

菅首相辞任 岸田、河野、高市、誰がなっても安倍の言いなり

 菅首相は来期、首相を退任するに当たり、「新型コロナ対策中心とするさまざまな問題について全力で取り組んできた。総裁選に出馬を予定していたが、コロナ対策も選挙活動もばく大なエネルギーを要するので両立はできない。新型コロナの感染拡大防止に専任したい(要旨)」と述べました。あれで「コロナに全力で取り組んできた」と言われても納得のしようがないので、やはり1日も早く退場してもらうしかありません。

 辞任の本当の理由は、政権浮揚のために党役員の人事一新と閣僚の一部交代を画策したものの、誰も泥船に乗る人がいなかったためです。これまでなら二階氏の力を借りれば解決できたのですが、真っ先に二階氏を切ることを通告していたのでそれも出来ず、「万事休した」のでした。要するに菅氏も沈没の瀬戸際になって、初めて自分自身が「泥船」であったことに気がついたのでした。
 そもそも岸田氏を対立候補に仕立てたのは安倍氏(と麻生氏)であり、目的は二階氏を幹事長の座から引きずり下ろすことでした。岸田氏はその意を汲んでひたすら幹事長の任期制限を強調しました。一方菅氏は、単純にも早々に二階幹事長を更迭する決断をしました。巨額な闇献金問題を抱える二階氏を切るのは社会正義に則ったものですが、そもそも菅氏はそういう立場の人ではありません。菅氏はその後に岸田氏を据えれば、有力対抗馬を消せて総裁を続投できると踏んだようなのですが、自分の「後ろ盾」を切るという尋常ではない決断をしたのは、自分が権力者だと思い上がっていたからでしょう。しかし永田町では自分の延命のために「恩人」を切ったという見方が支配的になり、最終的にそれが菅氏の致命傷になりました。
 二階氏切りが明らかになった時点で岸田氏が安倍氏に面会すると、大いに賞賛されたということです。岸田氏は菅氏の幹事長就任要請は拒否すると言明し、その他の人たちの中にも、敢えて泥船に載るような物好きはいませんでした。菅氏には側近と呼ばれるような議員も皆無だそうで、最近は小泉進次郎議員が相談相手だったとか、あまりのことに涙を誘います。
 菅氏は、今度の衆院選で落選する可能性があると言われ、政界からの退場も現実味を帯びています。在任中、横暴な態度を発揮できたのは偏に地位に付随する権力のゆえであったことに、菅氏もいつかは気がつくことでしょう。
 何はともあれ、これで安倍・菅と2代続いたデタラメを尽くした政治に終止符が打たれるのは喜ばしいことです。
 菅氏は8年弱の官房長官と1年間の首相の在任中に、人並外れた横暴さを発揮して多くの民主的慣行を葬ってきました。官房長官会見のデタラメぶり、首相の国会答弁や会見のデタラメぶり、公文書管理のデタラメぶり、経済統計の取り方のデタラメぶり等々、これらはずべて安倍・菅政権になってから極端化したものでした。
 新政権にはこの歪曲し尽くした政治の在り方を確実に改善していって欲しいものです。
 ところで菅氏はこれで実質的に政治の表面からは消えるものと思われますが、安倍氏の方はそうではありません。安倍氏は今回の総裁選において誰が総理・総裁になろうとも、全て自分のいいなりになるというキングメーカーの地位を確立しつつあるということです。
 そういえば岸田氏の公約にはチャンと憲法「改正」も謳われています。尤も「桜」疑惑の解明も謳われていて、この点は大いに安倍氏の不興を買ったようです。まあこれは岸田氏がまだ十分に「空気を読めていない」ことの反映なのでしょう。(^○^)
 LITERAが取り上げました。
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菅首相辞任も…元凶を作った安倍晋三は何の批判もされずキングメーカーに! 岸田、河野、高市、誰がなっても安倍の言いなり
                      水井多賀子 LITERA 2021.09.03
 本日、菅義偉首相が総裁選の不出馬を党臨時役員会で表明し、今月末の総裁任期満了にともなって総理大臣を退任することとなった。
 無論、これはコロナ対策の失敗や自身の無能さを認めての退任ではなく、打つ手なしの状況に追い詰められた結果でしかない。実際、総裁選を先送りして解散に踏み切る案が封じ込められたあとも、来週におこなう方針だった党役員人事で河野太郎・行革相らを要職で起用することを検討するなど、昨日までは強気の姿勢を崩していなかった。
 ところが、菅離れが加速するなかで目玉だったはずの執行部刷新の人事が難航。一部では「河野氏の処遇をめぐって菅首相と麻生太郎副総理が電話で大喧嘩になった」とも伝えられている。
 さらに、昨夜には菅首相のお膝元である自民党神奈川県連の幹事長までもが「県連としては特に、菅さんを頼むという運動をするつもりは一切ない」と発言。お得意の人事権を振りかざすこともままならないばかりか、「推薦人20人も集められないのではないか」という声さえあがるまで追い込まれてしまったのだ。
 まったく自業自得としか言いようがないが、呆れたのはその捨て台詞だ。菅首相は総裁選への不出馬表明後におこなわれたぶら下がり取材で、不出馬の理由をこのように語った。
「コロナ対策と選挙活動、こうしたことを考えたときに、実際、莫大なエネルギーがこれ必要でありました。そういうなかで、やはり両立はできない。どちらかに選択すべきである
「コロナ対策と両立困難」って、いまのいままで党利党略ならぬ「個利個略」の権力闘争に明け暮れていたのは一体どこのどいつだ。ようするに、この期に及んでもこの男は、自分の無責任さには頬被りしているのである。
 まあ、それでも、菅首相のやり口は完全に国民にバレている上、総理大臣の座を追われるかたちになったわけだから、まだいい。
 問題は、この国の状況をここまで悪化させた最大の原因をつくった挙げ句、菅首相を生み出した張本人がキングメーカー気取りでチョロチョロ動き、後継候補を操ろうとしていることだ。ほかでもない安倍晋三・前首相のことだ。

今起きていることの原因はすべて安倍の責任!東京五輪強行、コロナ対策放り出し仮病で辞任
 いや、安倍前首相がやったことは、たんに菅首相を生み出しただけではない。菅首相がおこなったデタラメな政治の大半は安倍前首相に原因と責任がある
 その代表的なものが東京五輪だ。五輪開催が感染爆発に大きく影響を与えたことは論を俟たないが、世界的パンデミックの最中に東京五輪が強行開催されたのは、もともとは安倍前首相が昨年春に「1年以内の延期」をゴリ押ししたせいだ。
 当時は総理大臣をつづける気が満々だった安倍前首相は、今夏までに東京五輪を成功させ、その勢いを買って自民党総裁任期の延長を宣言、9月の総裁選で4選を果たし10月の総選挙で大勝して一気に改憲に持ち込む──というシナリオを描いていた。この安倍前首相が描いたシナリオを菅首相は自分に置き換えて実行したわけだが、その結果はご覧のとおり、変異株が猛威を振るうなかでの強行開催によってこの国は深刻な医療崩壊にまで至ってしまった。もちろん、安倍前首相が総理大臣をつづけていれば、菅首相と同様、自分の権力維持のためにコロナ対策も投げ出して五輪を強行開催し、いまごろ同じ窮地に立たされていたはずだ。
 だが、安倍前首相は姑息なことに、「アベノマスク」をはじめとするバカ丸出しのコロナ対応に批判が集中すると、昨年8月末にまたも持病を持ち出し、コロナ禍に政権を放り出してしまった。しかも、病気を理由にしたことで内閣支持率を爆上げさせるという花道までつくりあげたのだ。
 これが「仮病」であったことは、辞意表明から1カ月も経たないうちに「新しい薬が効いている。もう大丈夫だ」と言い出し、その後も次々と議員連盟の最高顧問に就任したり、さらには選択的夫婦別姓制度の導入や「LGBT理解増進法案」を子飼いの極右議員を動かして潰しにかかるという“活躍ぶり”からも明らかだ。
 つまり、自身の継承者として菅氏に政権を禅譲して院政を敷き、気に食わない政策は潰し、山積したままの疑惑について何ひとつ責任をとらないまま、いまや総裁選のキングメーカーとして幅を利かせているのである。

岸田文雄、高市早苗はもちろん、河野太郎も安倍には絶対逆らえない関係
 実際、菅首相が総裁選の不出馬を決めて、さまざまな候補者の名前が浮上しているが、そのほとんどはこの男の息がかかっている。すでに出馬の意向を示してきた岸田文雄や高市早苗はもちろん、菅首相の不出馬を受けて出馬の意向を固めたという河野太郎にしても安倍政権で重要閣僚に引き上げられた関係で、安倍前首相には頭が上がらないと言われている。
 いまのところ、安倍前首相は岸田を押すと見られているが、安倍はとにかく石破茂・元幹事長だけは総理にしたくないと考えており、石破がもし立候補して、岸田では勝てないと見るや、河野に乗り換えるはずだ。
 そもそも、河野は行政改革およびワクチン担当の大臣として菅政権の責任を負う人物であり、その責任に対する総括なくして総裁選に出馬することはあまりにも虫が良すぎる。
 この問題については別稿であらためて触れたいが、ともかく、河野か岸田のどちらが次期総理になっても、安倍前首相が関与してきた森友・加計学園問題や「桜を見る会」問題、河井案里氏の選挙買収問題などの真相究明がおこなわれることは永遠にない。石破茂が総裁選に立たないかぎり、どのみち「第4次安倍政権」が発足するようなものなのだ。
 しかも、コロナ対策でも、すでにワクチンの安定供給に失敗して馬脚を現している河野はもちろん、岸田も高市もまったく期待できない。石破にしても「メディアは恐怖を煽るばかり」などとコロナを軽視しているとしか思えない発言をおこなっている。ようするに、菅首相が退任したところで、安倍自民党が政権をとるかぎり、国民の生活や安全が最優先されることはありえないのだ。
 菅政権の終焉では何も解決しないどころか、安倍前首相が牛耳りつづける国民軽視の政治がつづいていくだけ。いまはその現実を直視すべきだろう。(水井多賀子)