第2次安倍内閣の発足以前に安倍晋三氏や世耕氏などが、電通のアドバイスを受けて構築したとされる自民党ネット応援団はいまやすっかり活動が定着し、菅首相が退陣を表明したときには、菅首相に対してSNS上に一斉に「よくがんばった」「批判されてかわいそう」というような肯定論や同情論が溢れたということです。
⇒(9月6日)菅首相に「がんばった」「かわいそう」と同情論噴出の不思議
TV番組「世界ふしぎ発見」のレギュラー回答者・野々村真氏は7月30日にコロナの感染が確認され、血中の酸素飽和度が90まで下がったので31日に救急車を呼んだのですが、何故か到着した時点で96まで回復したため搬送を断られました。8月4日にも同じことが起きた(こうしたことは良くあるようです)ため、呼吸困難の様子に救急隊員から同情されながらも搬送を断られました。そして5日にようやく入院できたときには、重度の肺炎で人工心肺装置ECMOの使用一歩手前の状況だったのですが、幸いに入院後回復に向かい同月24日に無事退院することができました。
その野村氏が6日放送の『バイキングMORE』にリモート出演し、自分が新型コロナで危うく一命を取り留めた体験から菅首相の新型コロナ対策を批判したところ、いわゆるネトウヨから猛烈なバッシングを浴びました。
自民党応援団やネトウヨ連中は、芸能人や有名人の影響力の大きさを知っているので、彼らが少しでも政権批判をすると猛烈な批判・罵倒を始めるのを常(方針?)としています。そうしてSNS上で炎上させることで政権批判を口にしないようにする訳です。
その他のメディア対策も併せて、そんな狂気じみた対応によって安倍・菅政権はこれまで維持されてきたわけで、考えてみれば恐ろしい仕掛けです。
LITERAが取り上げました。
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「政治のせいで命失う」正論を口にした野々村真が炎上! 医療体制不備の被害者まで叩く自民党応援団、国民見殺し政治はまだまだ続く
伊勢崎馨 LITERA 2021.09.07
感染爆発を起こしながら権力闘争に明け暮れ、失脚に追い込まれた挙げ句、「コロナ対策に専念する」と言って退陣を発表した菅義偉首相。だが、私利私欲しかないこの男のせいで医療崩壊を招いたというのに、テレビはすっかり政局一色となり、肝心の責任追及がおこなわれる気配はまるでない。
その上、そんななかでタレントの野々村真があまりにも真っ当な菅首相批判をおこなったのだが、それが逆に猛攻撃に晒されるという事態まで起こっている。
野々村といえば、7月30日にコロナ感染が確認され、「自宅療養」中に血中酸素飽和度が90近くに低下して救急車を呼んだものの病院に搬送されず、その後、8月5日にようやく入院。重度の肺炎で人工心肺装置ECMOの使用一歩手前の状況だったというが、同月24日に無事退院した。
いわば野々村は菅政権の無為無策によって苦しめられた当事者であるわけだが、その野々村は菅首相の退陣発表について、6日放送の『バイキングMORE』(フジテレビ)にリモート出演しこう語ったのだ。
「僕は本当に申し訳ないですけれど、もっと早く菅首相には辞めていただきたかったなぐらいの思いです。もうこういうような状況にあって『いまかよ!』っていう。さんざんもう、こういう状況になって、コロナ感染がどうしようもない状況になっているときに、ここで、解散総選挙にしろ人事を変えるにしろ、またそういうことで1カ月も2カ月も国会も止まるだろうしというようなことを考えると、何にも進まないじゃないかというふうに思うし」
いまも呼吸が苦しいのか、息を切らしながらこのように切々と訴えた野々村だが、さらに「それで大物の政治家……安倍さんに麻生さんに、それで二階さん、その人たちの言うことで、やっぱり自分の言いたいことが言えなくなってしまう。一国の総理ですよ。その人がこの状況で何も言えなかったんだなっていうのはもう、つくづく国民は悲しむしかないですね」と言うと、こうつづけた。
「僕なんか生死をさまよった人間として言わせてもらいますけど、本当にいま、いまこの時点でたくさんの方が苦しんでいるんですよ。小泉環境相にも言いたいけど、泣きたいのは、泣きたくても泣けなくて苦しんでいるのは、いま本当にICUに入っている人たち、そして亡くなった人たち、そのご家族。その人こそが、本当にこの政治のおかげで命を失っていることを絶対に忘れないでほしい。それだけです」
野々村真の主張は全て正論だ! 安倍政権と菅政権の政治姿勢が医療崩壊を起こした
直球の正論、そしてあまりにも真っ当な怒りだ。菅政権の発足時から国会では医療提供体制の強化は叫ばれてきたというのに菅首相はそれをおろそかにし、むしろ「Go To」を筆頭とした経済対策を優先させ、第3波は首都圏で、第4波は関西で医療崩壊を起こした。さらにデルタ株による感染拡大を専門家が指摘しても聞く耳も持たず、野党から要求された通常国会の延長も臨時国会の招集も無視し、菅官邸は「重症化しなければ、コロナもただの風邪になる」(朝日新聞6月30日付)などと言い張って東京五輪を強行開催。またも医療崩壊に陥らせ、入院すべき患者が入院できずに自宅で亡くなるという犠牲者を出しておきながら、それでもなおコロナ対策そっちのけで解散カードさえ切ろうとした。つまり、菅首相は一貫して自分の権力維持にばかり躍起になり、国民の命を無下にしつづけてきたのだ。
しかも、いまだに菅首相は自分の見通しの甘さを反省することもなく、増えつづけている自宅死を食い止めるための対策も自治体に丸投げ。さらには、自宅死が起こったことにかんする謝罪も首長がおこなっている。
たとえば、杉並区の勤務先で自宅療養を余儀なくされていた男性が亡くなった件では、保健所が電話をしてもつながらなかったことから対応を打ち切っていた問題を受け、杉並区の田中良区長が遺族に直接謝罪。同様に、埼玉県の男性が自宅療養者であると認識されないまま放置された亡くなった件でも、大野元裕知事が謝罪をおこなった。
これらの大元の責任は言うまでもなく、保健所機能を強化することもせずキャパシティオーバーの感染拡大を引き起こした菅首相にあるというのに、すぐに必要な対応もとらず、謝罪もせず、すべて自治体任せ。その上、菅首相は「コロナ対策に専念する」と言っていたが、その後、菅首相がやったことといえば、経団連・十倉雅和会長との面会で海外とのビジネス往来の再開を「着実にやる」と意欲を示したことくらいだ。
自宅死がこれだけ起こっていても、いまなお意欲を示すのは経済界優先の政策……。「政治のおかげで命を失っている」という野々村の訴えは、まさしくそのとおりとしか言いようがない。
医療崩壊の最中、容体が悪化してもすぐに入院できずに命の危険に晒された野々村から発せられた、的を射たこのメッセージ──。これは菅政権のコロナ軽視政策によって置き去りにされた患者やその家族の思いを代弁するものだろう。
正論を口にした野々村真に政権応援団が「コロナ対策しないで政府の責任にするな」と攻撃
ところが、野々村のこの発言がニュースになると、批判が殺到。たとえば、Yahoo!ニュースのコメント欄では、このようなバッシングが巻き起こった。
〈何でもかんでも政治のせい。違うでしょう?感染したのは自分でしょう。入院できなくて大変な思いしている方は確かに居るでしょうが、全てが菅さんのせいではないでしょう。〉
〈自分がコロナにかかったことを政治に対して八つ当たりしているようにしか見えない 政治の力でコロナが封じ込められるんだったらとっくに感染者はゼロになってるだろ〉
〈そりゃ菅さんももっとやってほしい事はあったけど密とまではいかないけど屋内のスタジオで時には大声出してさぁアナタたちだってもっと注意できたことはあったのでは?〉
さらに卑劣なのは、こうした攻撃が野々村のYouTubeチャンネルの動画のコメント欄にまで及んでいることだ。実際、8月25日に投稿された、野々村が復帰の報告をおこなった動画のコメント欄では、昨日の『バイキング』放送後から、野々村の発言を批判する以下のようなコメントが溢れている。
〈不十分な対策で罹患したのに首相のせい? まじで頭もう一度診てもらった方がいい〉
〈菅首相をはじめ政府がやるべきことに全力で取り組んでいたからこそ、貴方は生還できたのでは?ワクチンも打たずに出歩いておきながら、何を言っているんでしょう?〉
〈とりあえず、意味わからない発言してすいませんでしたとガースーに謝罪してくれない?〉
〈ご自分でコロナ対策していないで感染して政府の責任にされてもねぇ〉
〈政権批判の前に自分の行動を反省して、自分の経験から反面教師として感染予防を伝えてくださいね〉
〈リモートワークやワクチン接種等、政府の言うことも聞かずに感染したバカが感染したのは政府のせいだとw自分が油断してただけのことを他人のせいにすんなって 見てて虫唾が走るわ〉
〈一生リハビリしてメディアの露出はしないで下さい〉
ここまで感染が拡大した状態では個人の対策だけでは感染は避けようもないし、テレビ局の感染対策をいちタレントがどうこうできるわけもない。ワクチン接種は国による不安定な供給も影響していまも予約がとりづらい状態の自治体も多いのが実情だ。にもかかわらず、菅首相を批判したというだけで、野々村は「コロナに感染する自分のコロナ対策が万全でなかったくせに政治のせいにするな」「八つ当たりだ」「ガースーに謝罪しろ」と激しい攻撃に晒されているのだ。
唯一、五輪反対を言い続けたせいでネトウヨと自民党応援団から標的にされた『バイキング』
まさに菅首相が打ち出した「自助」がここまで幅を利かせていることにはウンザリするが、これほどの攻撃がおこなわれているのは、菅首相の擁護というより、芸能人が政権批判したからだろう。
自民党応援団やネトウヨ連中は、芸能人や有名人の影響力の大きさを知っているから、少しでも政権批判をしたら、まるでピラニアのように食いついてくる。炎上させることで、口をつぐませようとするのだ。
しかも、発言媒体が『バイキング』だったことが、さらに拍車をかけた。
というのも、『バイキング』では政権べったりのフジテレビの番組であるにもかかわらず、安倍政権時からどのワイドショーよりも政権の不祥事を取り上げ、MCの坂上忍も安倍政権の批判を口にしてきたからだ。そのたびにヤフコメでは「芸能人が政権批判するな」勢による坂上の批判が殺到してきたが、とくに最近は、坂上が五輪開催を批判し再延期を訴えたことにより、それが激化。「坂上はロケもやっていたくせに五輪批判するな」「ひな壇に芸人を集めてろくな感染対策もとっていないのに五輪批判か」と反発が強まっていた。
そんななか、コメンテーターの野々村はいつも毒にも薬にもならないコメントをおこなってきた人物だが、今回、坂上が敵視されてきた『バイキング』で菅首相批判をしたことで、より強い攻撃を受けてしまったのだろう。
『バイキング』では、過去にコメンテーターを務めていた小籔千豊が露骨な政権擁護を繰り広げたり、現在もブラックマヨネーズのふたりが大阪維新に毒されたコロナ対策を軽視する発言をおこなうこともある。
だが、そうした「政治的発言」は問題視されないのに、それが政権批判だと「芸能人がしたり顔で語るな」と喚き立てるのだ。
しかし、野々村は菅政権による医療提供体制の不備による被害に遭った当事者なのだ。そんな人物の正論さえ、卑劣な攻撃に晒され、炎上状態になってしまうとは……。こんな状況下では、いくら菅首相が退陣しても、国民軽視の自民党政治は終わることはないだろう。 (伊勢崎馨)