スリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさんが名古屋入管で亡くなって半年以上が過ぎました。名古入管は、重病で苦しむウィシュマさんの訴えを無視して文字通り見殺しにしました。支援者たちが事件の真相究明に向けて監視ビデオの公開を強く求めた結果、入管は先日、ようやくそのごく一部を遺族である妹2人に限定して視聴させましたが、それは2週間分(336時間)を僅か2時間にまとめたもので、頑なに弁護士が同席することを拒んだのでした。
映像は不当な扱いをした部分はカットしたものと思われますが、それでも妹の一人は余りの悲惨さにショックを受けて、1時間ほどで視聴に堪えられなくなったためそこで中断したままで現在に至っています。名古屋入管は虐待の全容が分かる映像を弁護士同席のもとで遺族や支援関係者に公開すべきです。
25日、ビデオの全面開示を求める全国一斉抗議行動が東京、名古屋、大阪、京都、高知、高崎、仙台、札幌で行われました。
東京では日比谷公園に集合し、その後 霞門を出て検察庁を通り法務省赤レンガ庁舎、裁判所を経て、日比谷公園へ戻るというコースで、プラカードのみのサイレント行進を行いました。デモ終了後の集会で、名古屋集会からトンボ返りした指宿昭一弁護士は、
「真実はまったく明らかになっていません。入管はビデオの一部を代理人抜きで遺族に見せただけです。命が消えようとしているウィシュマさんを入管は見殺しにしました。虐待して、差別発言をして、ウィシュマさんを死に追いやった。そのビデオのたとえ1分でも1枚の映像でも公表されれば、入管は今の体制を維持できなくなります。ビデオ開示を絶対に実現させて、入管の抜本的改革を勝ち取りましょう!」(要旨)と訴えました。
レイバーネット日本としんぶん赤旗の記事を紹介します。
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9.25ウィシュマさん事件全国一斉抗議アクション
「情報を隠蔽するな!」〜真相究明とビデオ全面開示を求め200人がデモ
松本浩美 レイバーネット日本 2021-09-26
東京では200人以上の市民が集まり、デモ行進が行われた。主催は「BOND~外国人労働者・難民と共に歩む会~」。関東地方を中心に支援活動を行っており、社会人、学生という若手メンバーで構成されている。ウイシュマさんが亡くなる2週間の行動を撮影したビデオの全面開示を求めて、署名活動も展開中だ。
〇一時帰国したワヨミさんからメッセージ
集合場所となった日比谷公園では、出発前、23日にスリランカへ一時帰国したウィシュマさんの妹、ワヨミさんから届いたメッセージをスタッフが日本語で代読した。
「日本の皆さん、ウィシュマさんの死に関するすべての責任を入管がとるまで、この事件のビデオがすべて開示されるまで、最後まで私たちに心を寄せてくださいますよう、お願い申し上げます。私たちは、このデリケートな事柄に、私たちを支援してくださるすべての人々に感謝申し上げます」
本来であれば、ワヨミさんはこのデモに参加する予定だったという。一時帰国はしたものの、真相究明等をあきらめたわけではない。21日の記者会見では、ビデオの全面開示を求める理由を「姉に起こったことは、外国人の誰にでも起こること。たくさんの人に見てもらえば、入管がどんなひどいことをしているかわかるし、それが改善につながる」とコメント。さらに、「姉の死の真相究明、ビデオの全面開示はあきらめていない。もう一人の妹のポールニマは引き続き日本に在留し、闘っていく。どうぞ、応援してください」と協力を呼びかけた。
ちなみに、全面開示を求めているビデオとは、彼女の亡くなる2週間を映したもの(24×14=336時間)。入管は遺族だけに一部(入管側で2時間に短縮)を見せたが、視聴の際、代理人弁護士の同席は認めなかった。映像を見た遺族は取り乱し、1時間程度で中断せざるを得なくなった。残りを視聴するため、再び代理人の同席を強く求めたが、入管は頑なに拒否している。
〇法務省赤れんが庁舎前をサイレントデモ
デモは、霞門を出て検察庁を通り、法務省赤レンガ庁舎、裁判所を経て、日比谷公園へ戻るというコースだ。入管庁の管轄である法務省前を通るのだ。長年入管問題に携わってきた支援者、仮放免者はもちろん、学生と思しき若い人の姿が多く見られた。ベビーカーを押した母子も参加した。初めてのデモ行進だという。5月の改悪入管法に対する抗議行動でレイバーネットでも報じた、バケツをドラム代わりに叩いていた男性の姿もあった。
コロナ禍とあり、声を出さずにプラカードを掲げるサイレントデモ。それぞれが持ち寄った手作りのプラカードからは、ウイシュマさんはじめ亡くなった人たちへの追悼、入管への怒り、二度と悲劇を繰り返さない、という気持ちが伝わってきた。プラカードに込めた思いは、霞が関一帯に力強く響き渡ったように感じた。
〇「ビデオが公開されれば、入管は解体」
デモ終了後、指宿昭一弁護士がスピーチ。ウィシュマさんが亡くなった名古屋での抗議行動に参加し、とんぼ返りしてきたという。
「真実はまったく明らかになっていません。入管はビデオの一部を代理人抜きで遺族に見せただけで、国会議員、社会に対して開示していません。ビデオはウィシュマさん死亡の真実が明らかになっているものです。命が消えようとしているウィシュマさんを、入管は見殺しにしました。虐待して、差別発言をして、ウィシュマさんを死に追いやった、その真実が映っているんです。このビデオのたとえ1分でも1枚の映像でも公表されれば、入管は今の体制を維持できなくなります。一度解体して出直すくらいの改革をしなければ、入管も入管行政も変わらないんです。日本の市民が声を上げています。行動を始めています。改革はできます。5月、私たちは入管法改悪を止めました。でも、それで終わりではいけない。ウィシュマさんの死の真実を明らかにし、ビデオ開示を絶対に実現させて、入管の抜本的改革を勝ち取りましょう!」
なお、デモを主催したBONDが展開する署名総数は81015筆(9月25日時点)。10月1日に法務省に提出予定。
入管は真相隠すな ビデオ開示求め青年ら行動
しんぶん赤旗 2021年9月26日
名古屋出入国在留管理局の収容施設でスリランカ人女性のウィシュマ・サンダマリさんが死亡した事件をめぐって、真相究明と再発防止のために、ウィシュマさんの様子を撮影したビデオを遺族や国会議員に全面開示するよう求めるデモやスタンディング行動が25日、各地でありました。主催は、ウィシュマさん事件の真相究明を求める学生・市民の会。
(写真)ウィシュマさんとの写真を掲げ、再発防止と映像開示を訴える妹のポールニマさん(中央)=25日、名古屋駅前
名古屋駅前の行動には、ウィシュマさんの妹ポールニマさん(27)が駆け付け、多くの報道陣を前にマイクを握りました。ポールニマさんは「姉が亡くなって5カ月。入管から出てきた書類はすべて黒塗りされ、真相は何も分からないまま。開示された映像には、姉の苦しむ姿が映され、とても最後まで見ることができなかった。なぜ姉は死ななければいけなかったのか、真相が分かるまで日本に残ってたたかいたい」と訴えました。
ウィシュマさんの収容中の映像は、遺族に対して一部しか開示されていません。もう一人の妹ワヨミさんは、映像を見た後、体調を崩し24日に帰国しました。
代理人弁護士の指宿昭一弁護士は「映像は代理人も見ることができない。最終報告書は入管を正当化するもので納得できない」と指摘し、「真相を隠し続ける入管を抜本的に変えなければいけない。真相解明のために、力を合わせて映像開示を勝ち取りたい」と訴えました。
学生・市民の会は、真相究明を求める署名を呼びかけようと有志で7月に結成。大学3年の千種朋恵さんは「人種差別、人権侵害を見て見ぬふりはできない。弱者切り捨ての社会を変えるため、署名に協力を」と話しました。
事件うやむやにさせぬ 大阪
(写真)東京・霞が関を歩く参加者=25日
東京では霞が関・日比谷公園に約200人が集まり、出入国在留管理庁や法務省のある一角を行進しました。新型コロナウイルス感染対策として、スローガンなどは叫ばず「サイレント」で実施しました。
参加者は「入管、政府は命をないがしろにするな!」「被収容者は人間です!」などと書かれたプラスターを掲げました。
外国人の姿も多くみられました。
収容施設で2年以上を過ごしたというスリランカ出身の40代男性は現在、仮放免の身。就労は許されず、都道府県境をまたぐ移動も制限されていると話します。ウィシュマさんの事件について「この21世紀に、文明化された日本という国で、とても非文明的なことが行われている。国の評判を下げるような実態を、入管は市民から隠し続けてきた」と憤りました。
外国人支援団体で活動する大学3年生の女性は「これは日本国内で起きていること。投票権のある私たちには声を上げ、行動し、投票する責任がある」と話していました。