2021年9月28日火曜日

28- 駐豪大使の「旭日旗が見られて喜ばしい」のツイートに批判が殺到!

 19日訓練を終え帰途についた自衛艦「かが」と「むらさめ」に対して、オーストラリア海軍の公式ツイッターが、〈またお会いできることを楽しみにしています!〉などとお別れのツイートを投稿しまし。それに対して駐オーストラリア大使の山上信吾氏が21日〈ダーウィンで海上自衛隊の旭日旗が見られて喜ばしい。~ ところで、旭日旗の意味はご存知ですか?〉とツイートし、そこに外務省の公式YouTubeチャンネルにアップされた「日本の伝統文化としての旭日旗(原名は英文)」なるタイトルの動画のURLを貼り付けたため、批判のツイートが殺到したということです。

 オーストラリアダーウィンは、第二次世界大戦中の1942年2月19日から翌年11月にかけて数十回に渡って日本軍が大規模な空爆をおこない、民間人を含む数百名の死傷者を出した場所で、最初の空爆で2カ月前の真珠湾攻撃をしのぐ爆薬が投入されるなど、オーストラリアにとっては史上最大規模の被害だったのです。これでは炎上するのは当然であって、外交官がそうした感覚を持っていなかったのは呆れる話です。
 また山上氏が敢えて「旭日旗の意味はご存知ですか?」と書いたのは、旭日旗は軍国主義の象徴ではなく、それ以前の大昔から大漁旗等として使われてきた日本の伝統文化であるという政府の主張を繰り返したかったのでしょうが、それで「旭日旗」帝国軍旗であり戦艦旗であったという “史実” がなくなる訳ではありません。「旭日旗はナチスの旗と同じ」との批判(ツイート)があったのは当然のことです。
 LITERAの記事を紹介します。
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駐豪大使が旧日本軍の攻撃受けた場所で「旭日旗が見られて喜ばしい」とツイート、豪でも批判が殺到! 外交官までネトウヨ化?
                             LITERA 2021.09.26
 駐オーストラリア大使の山上信吾氏が旭日旗礼賛ツイートを投稿し、オーストラリをはじめとする国際社会から厳しい批判の声が上がっている。
 今月18日、「自由で開かれたインド太平洋」に向けた連携強化のため、オーストラリア北方で、日本の海上自衛隊がオーストラリア海軍と共同訓練を実施。海自からは護衛艦「かが」と「むらさめ」が参加し、訓練に先立ちオーストラリアのダーウィン港に寄港していた。
 
 19日訓練を終え帰途についた「かが」と「むらさめ」に対して、オーストラリア海軍の公式ツイッターが、ローマ字で〈またお会いできることを楽しみにしています!〉などとお別れのツイートを投稿したのだが、これに答える形で山上大使がこうツイートしたのだ。
ダーウィンで海上自衛隊の旭日旗が見られて喜ばしい。コロナで隊員は大変ですが、オーストラリアの仲間とともに航海することを妨げることは止めることはできません! IPD21 (インド太平洋方面派遣)がうまくいきますように。ところで、旭日旗の意味はご存知ですか?〉(9月21日)
 そして、9月6日に外務省の公式YouTubeチャンネルにアップされた「日本の伝統文化としての旭日旗原名は英文)」なるタイトルの動画のURLを貼り付けたのだ。
 周知のとおり、現在も海自・陸自の旗として使われている「旭日旗」は、戦前・戦中日本の軍国主義の象徴であることから、国際社会で強い反発を呼んできた。
 しかも、山上大使が「ダーウィンで旭日旗が見られて喜ばしい」とツイートしたオーストラリア北部のダーウィンは、第二次世界大戦中の1942年2月19日から翌年11月にかけて数十回に渡って日本軍が大規模な空爆をおこない、民間人を含む数百名の死傷者を出した場所。最初の空爆で2カ月前の真珠湾攻撃をしのぐ爆薬が投入されるなど、オーストラリアにとっては史上最大規模の他国による攻撃だ。
 よりにもよって、そんな場所で、当時の大日本帝国主義の象徴である「旭日旗」が見られて喜ばしいなどとツイートしたのである。

「旭日旗の意味を知っていますか?」という山上大使の問いに「ナチスの旗と同じ」という答えが殺到
 当然ながら、この山上大使のツイートには、オーストラリアの人々から厳しい批判の声が上がった。
〈うわ…あなたは間違いなく恥知らずだ〉
〈その旗のもと、オーストラリアで何が起きたかわかって、言っているのか? 恥を知れ〉
「旭日旗の意味を知っていますか?」という山上氏の問いに応じるように、旭日旗が大日本帝国、軍国主義の象徴であることを指摘する声も相次いだ。
〈その旗の意味は知っています。死と破壊と拷問と処刑。〉
〈第二次世界大戦中に日本が使っていた、ファシストの旗。〉
〈おぞましい。戦後日本は民主化を受け入れたのに、帝国主義と人道に対する罪を象徴する旗を、なぜ守っているのか。〉
 旭日旗は、ナチスの旗と同じだと批判する声も多数あった。
〈第二次世界大戦で日本が私たちの国を侵略したときに使っていた旗と同じものです。ナチスの旗と同じ、卑劣なシンボルです。〉
〈ジーザス! 理解するのはそんなに難しいことですか? それはナチスの戦時中の旗と完全に同等です。〉
〈知らない人のために言うと、太陽から光線が放たれる旭日旗は日本のファシストの旗で、ナチスの旗と同義です。言い換えれば、まったく同じです。〉
 もちろん、ダーウィンという町が日本軍の爆撃により多大な被害を受けた地であることを指摘する声も多数あった。
〈山上さん、日本人はダーウィン襲撃についてまったく習ってないのですか? オーストラリア人は、そのとき何が起きたのか、歴史を間違いなく知っていると思いますよ。私はアメリカ人ですが、外交団の人間がこんな投稿をするなんて信じがたい。〉
〈1回爆撃されただけじゃないですよ、ダーウィンは60回も爆撃されたんです〉
〈ダーウィンは、その旗をPRするのに最も適切な場所ではないかもね……〉
〈第二次世界大戦以来、またオーストラリアを侵略するつもりですか?〉

山上大使の旭日旗礼賛にアメリカで日本研究する大学教授も「これ本当の大使なんですか?」
 ところが、こうした批判の声に対して、日頃から「旭日旗に文句をつけるのは中韓だけ」と言い募っている日本のネトウヨは、「中国や韓国が大使にイチャモンをつけている」「文句を言っているのは中国人と韓国人と反日活動家」などと日本語・英語で反論してまわっていた。
 しかし、実際にツイートをチェックしてみると、中国や韓国に関係するとみられるアカウントからの批判もあったものの、オーストラリアやアメリカ、アジアの人からと思われる批判はそれ以上に多かった。
 こうした日本の侵略の史実を無視したネトウヨの反論についても批判の声が上がっている。たとえば、中国・韓国が絡んでいるというネトウヨのツイートに対して、こんなコメントが投稿されていた。
〈旭日旗のもとに行われた残虐行為を認識するのに、中国人か韓国人である必要はありません。オーストラリア、イギリス、インド、ビルマ、インドネシア、フィリピン、ヴェトナム、マレーシア、シンガポール、カンボジア、琉球、ラオス、太平洋諸島の人々……みんな日本の被害者です〉
 まあ、ネトウヨの国際社会への視点欠落はいまに始まったことではないが、問題は、駐オーストラリア大使という公職、しかも外交に関わる人間が、大日本帝国と軍国主義の象徴である旭日旗が、まさに甚大な被害を受けた地で掲げられている様子に対し「喜ばしい」という非常識なツイートをしたということだろう。
 この点についても、もちろん、厳しい批判の声が上がっている。たとえば、日本史研究で知られる米・ノースウエスタン大学のエイミー・スタンリー教授は、本物の大使とは信じられない、とまでツイートしていた。
〈これは非常に……まずいです。もしかして、これ本当の大使なんですか? ヤバっ〉
〈ひょっとするとフェイク・アカウントですか? 本物の大使とは信じられません
 だが、残念ながら、山上大使は本物の大使だし、このアカウントはフェイクでもない。しかも、山上大使のこの姿勢は現在、日本の外務省の姿勢でもある。
 前述したように、山上大使はツイートの末尾に「日本の伝統文化である旭日旗」なる動画のリンクを貼っており、SNSでは、その内容についても、「この動画もいったい何を考えてるんだ!?」と呆れる声が上がっていた
 だが、この動画は、9月6日に外務省が公式YouTubeチャンネルにアップしたもので、2019年5月24日、外務省のHPにアップされた「旭日旗」に関する説明文書とほぼ同じ内容を動画にしたもの。“旭日旗のデザインは、日本で古来より親しまれ、自衛隊で長年使用されてきたもので、国際社会にも受け入れられている”“問題ない”と主張するものなのだ。

山上氏が紹介した外務省の旭日旗肯定動画の詐術と旭日旗の本当の歴史
 外務省が作成した動画「日本の伝統文化としての旭日旗原名は英文)」は2分程度の長さで、太陽が描かれた古い絵画や大漁旗の写真、自衛隊の船が旭日旗を使っている様子の写真、さらに太陽をモチーフにした北マケドニアやアリゾナ州の旗のデザインなどの画像を見せながら、全編英語でナレーションとテロップが付けられている。その内容は、以下のようなものだ。
「旭日旗は日本の文化の一部です。日本の国旗と同じく、旭日旗も太陽を表しています。旭日旗のデザインは、縁起の良さや成功、ポジティブエネルギーの象徴です。その意匠は、何世紀にもわたって、日本人の生活にとって不可欠なものでした。幸運のお守りとして、たとえば木版画やお相撲さんの化粧まわしにも見られます。
この古くからの伝統は、めでたいものとして現代の生活でも生きています。
たとえば、節句の祝いや還暦祝いや結婚、大漁を願ったり祝ったり、商売繁盛や様々な祝いごと。またスポーツイベントで選手を応援するのにも使われますし、地方のお祭りでも使われています。
旭日旗は、自衛隊の乗り物にも使われており、日本国内でも海外でも様々な場面で、掲げられてきました。
太陽から光が放たれる旭日のデザインは、日本固有のものではありません。
世界の様々な地域で広く使用されています」(編集部訳)
 しかしこの主張は、旭日旗の歴史を無視する、欺瞞に満ちた開き直り、歴史修正主義と呼ぶべきシロモノでしかない。詳しくは既報(https://lite-ra.com/2019/09/post-4970_2.html)を参照されたいが、この機会に、日本政府が隠蔽しようとする“旭日旗の歴史” 簡単におさらいしよう。
旭日旗は日本の軍国主義の象徴である」という韓国など国際社会の批判は、べつに言いがかりでもなんでもなく歴史的事実だ。旭日旗は、戦前・戦中に帝国陸軍の「軍旗」(連隊旗)および帝国海軍の「軍艦旗」として用いられた。それぞれ形が異なるが、現在、海上自衛隊が艦旗として使用している旭日旗は、戦中の海軍から丸ごと引き継がれたものだ。
 それら旭日旗は、戦前、どのように扱われていたか。たとえば陸軍では、たんなる連隊の標識にとどまらず「旭日旗=天皇の分身」として、軍旗に関する礼式、取り扱い等も規定された。紛失したり、奪取されることなどもってのほかで、敗北・玉砕の際は連隊長が腹を切り、軍旗を奉焼の儀式にて灰にした(寺田近雄『完本 日本軍隊用語集』学習研究社)。
 歴史家の秦郁彦氏によれば、第二次大戦末期には爆薬によって旗手が軍旗もろとも自爆する処置までとられたという(『日本陸海軍総合事典』東京大学出版会)。まさに“狂気”としか言いようがない。
 海上自衛隊にそのままの形で引き継がれた、帝国海軍の旭日旗はどのように扱われていたか。1902(明治35)年に海軍少佐・奥田貞吉の名前で著された「帝國國旗及軍艦旗」は、その意匠に〈我帝國ノ武勇ヲ世界ニ輝カセ〉〈帝國ノ國權ヲ地球ノ上ニ發揚セヨ〉という意味があると説明している。つまり、外務省は〈自衛艦または部隊の所在を示すもの〉と一面しか説明せず、完全にネグっているが、歴史的には、たんに船舶の所属を表すだけでなく、国威発揚や帝国主義の正当化を図る示威行為の意図があったのだ。
 狂気の象徴だった陸軍の軍旗および海軍の軍艦旗、旭日旗は当然ながら、敗戦後は一度消滅する。ところがその後、海上自衛隊で自衛艦旗として復活する。その背景には、旧海軍出身者の帝国海軍のメンタリティ、「旧軍の旭日旗の思想性」を復活させたいという意図があった(詳しい経緯は既報を→ https://lite-ra.com/2019/09/post-4970_2.html)。実際、元海軍軍人であり戦後海上幕僚長も務めた大賀良平氏は、旭日旗復活について、「かつての軍艦旗“旭日旗”が再び自衛艦旗として使えるように決まったこと」に「関係者が感激し狂喜した」と述懐している。
 海上自衛隊の自衛艦旗=旭日旗は、たんにそのデザインが戦中と同じというだけでなく、大日本帝国の思想性を継承したものに他ならないのである。

山上大使は駐豪大使の前は、経済局長として韓国のホワイト国除外の急先鋒
 また動画では、さらっと「スポーツイベントでも選手を応援するのに使われます」などと説明しているが、実際は、旭日旗を応援に使うことが大きな問題になり、国際的なスポーツ連盟で禁じられているケースもあるのだ。2017年には、サッカーのアジア・チャンピオンズリーグの試合で、サッカーJ1・川崎フロンターレのサポーターが、韓国の水原三星ブルーウィングス戦で旭日旗を掲げた。アジア・サッカー連盟は、旭日旗を掲げる行為は人種や政治的な心情による差別を禁じる規定に違反するとして、川崎に執行猶予付き無観客試合や罰金などを命じた。川崎は異議申し立てをしたが、スポーツ仲裁裁判所には提訴せず、処分が確定している。
 にもかかわらず、今年おこなわれた東京五輪でも、組織委は旭日旗の持ち込みを認める判断を示していた。コロナの影響で無観客になったため、実際に旭日旗が持ち込まれることはなかったが、もしオリンピックという世界平和を掲げる国際イベントの場で旭日旗がはためくという事態が起きていれば、国際社会から大きな批判を浴びたことだろう
 外務省の説明では、旭日のデザインが日本の古来でも使用されていたことや、北マケドニアなどでも使用されていることを持ち出しているが、だから何だというのか。問題は「旭日」=朝の太陽の“デザイン性”にあるのではなく、「旭日旗」=帝国軍旗・戦艦旗という“史実”にある。いまでも海自が使っている日本の「旭日旗」が、まさしく大日本帝国のミリタリズムを継承したものである以上、韓国など日本が植民地化したり侵略したアジア・太平洋諸国が嫌悪するのは当たり前の話だ。
 そういう意味では、外務省がつくったこの動画は国際社会から見たら、まさに歴史修正主義のフェイクそのものと言っていい。もっとも、外務省は、安倍政権時代から、極右政治家たちの圧力を受けて、こうした動画のように、歴史修正主義の広報をするポーズはとるようになったものの、自ら国際社会に軋轢を生むような行動まではしていなかった。
 そういう意味では、旧日本軍侵略攻撃の被害にあった場所で「旭日旗の意味をご存知ですか?」などとドヤ顔で世界に拡散した山上・駐オーストラリア大使の行動はやはり異常というほかはない。
 旭日旗や歴史修正主義が国際社会でどのような目で見られているか、ダーウィンがどういう場所なのか、外交官でありながら、山上大使は認識していなかったのだろうか。あるいは、ネトウヨよろしく「旭日旗否定は中国と韓国の言いがかり」と思い込んでいるのか。
 山上大使はオーストラリア大使就任前は外務省・経済局長を務めており、2019年当時、ホワイト国除外などの嫌韓政策において中心的な役割を担っていた。今回の旭日旗礼賛ツイートと合わせて考えると、もともとネトウヨ思想の持ち主なのかもしれない。厚労官僚が韓国の空港で暴行をはたらき「韓国人は嫌いだ」と叫ぶなど大暴れした事件をはじめ、安倍政権下で官僚・公務員たちのあいだでもネトウヨ思想がはびこっていることを示す事件が度々あったが、外交を担う外務省にまで浸透しているとは……。
 しかし、外務省までがこうしたネトウヨレベルの歴史修正主義、歪んだナショリズムを前面に出すことは、国益という意味でもマイナスの結果しか生まない。現在、日本政府は軍事力を増強する中国への警戒感を強調し、日本、アメリカ、インド、オーストラリアの4カ国からなるクワッドという枠組みで対抗する、としているが、今回の山上大使のツイートは、それこそそのクワッドの一角であるオーストラリアに日本嫌悪をも呼び起こし、クワッドの連携を危うくする可能性すらある。
 外交官までがネトウヨ化する日本。一体この国はどうなってしまうのだろうか。(編集部)