2021年9月30日木曜日

20年間のアフガン戦争で市民4万6000人が死亡 今後も犠牲拡大の懸念

 米ブラウン大のまとめによると、20年にわたったアフガニスタン戦争では、アフガン市民4万6000人が犠牲となったということです。これは米軍の約20倍、タリバンの約5万3000人に迫るものです。米軍など空爆強化したため巻き添えや誤爆が増えたことも一因です。
 しかしバイデン米大統領はテロ勢力に対し無人攻撃機による空爆の継続を表明しており、現実に8月29日に、首都カブールでドローンによりアフガン市民の一家10人を爆殺しました。米国は当初、過激派組織「I S」系のテロリストを殺害したと主張しましたが、現地のメディアが米国に協力していたメンバーの1人が車で帰宅し、子どもたちが車に駆け寄ったところを爆撃したと明らかにしたためようやく認めたのでした。
 米軍がアフガンで空爆を強化したのはオバマ政権が発足した2009年ごろからで、オバマは特に無人攻撃機に注力しました無人機による爆撃は、軍人ではないCIA職員が米国本土にいながら、無人機が送ってくる画像を見ながらミサイルの発射ボタンを押しているのですから誤爆が多発するのは当然で、後にオバマ氏自身「米国の空爆で民間人が犠牲になったことは厳然たる事実」と述懐したようですが、そんなのは何の言い訳にもなっていません。
 当然ながら国連は早く(2013年以前)から米軍が実施している無人機攻撃について「相手国の主権を侵害している」とする声明を出し、「攻撃の透明性や法的根拠が欠如している」とその違法性を指摘しています。
        ⇒(13.8.16) 国連事務総長 米無人機攻撃は違法
 最近も米国内外の113団体が米大統領に無人機攻撃の停止を訴えています。
        ⇒(7月6日) 無人機攻撃の停止を 米大統領に書簡 米内外113団体
 東京新聞が報じました。
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20年間のアフガン戦争で市民4万6000人が死亡…米軍の空爆強化で巻き添えや誤爆増加、今後も犠牲拡大の懸念
                          東京新聞 2021年9月29日
 20年にわたったアフガニスタン戦争では、アフガン市民4万6000人が犠牲となった。この数は米ブラウン大のまとめによると、米軍の約20倍、イスラム主義勢力タリバンの約5万3000人に迫る規模だ。米軍などの空爆強化で、巻き添えや誤爆が増えたことも一因。だが、バイデン米大統領はテロ勢力に対し無人攻撃機(軍事ドローン)による空爆の継続を表明しており、空爆による犠牲拡大への懸念が高まっている。(ワシントン・吉田通夫)

◆ドローン爆撃は「米軍犠牲者を減らし、他国領土でも攻撃」


 国連のまとめによると、戦争で死亡した市民は、年間2800〜3800人。イスラム主義勢力タリバンが仕掛けたIED(即席爆破装置)と呼ばれる手製爆弾の犠牲になったり、銃撃戦に巻き込まれたりするケースが多い。一方、米軍などによる空爆の犠牲は10%前後だが、投下した爆弾が多いほど、爆発に巻き込まれたり誤爆されたりして死亡する市民も増える。
 米軍がアフガンで空爆を強化したのは、オバマ政権が発足した2009年ごろから。米軍の犠牲者を減らしつつ、他国領土でも攻撃できる新技術として、ブッシュ(子)政権が導入したドローンによる爆撃を増やした。オバマ氏は13年5月の演説で「国際テロ組織アルカイダの指揮官や工作員らを何人も排除し、テロ計画を破壊した。国内法、国際法上も合法だ」と効果や正当性を主張した。
 一方、同年に情報分析官としてアフガンに赴任した元兵士(29)は「ドローンには大型ミサイルを積むことができないので巻き添え被害を小さくできると言われているが、それでも多くの市民を巻き添えにしてしまった」と述懐する。オバマ氏自身も「米国の空爆で民間人が犠牲になったことは厳然たる事実」と認めており、爆撃の規制を強化するなどして投下爆弾数を減らし、巻き添え死も減少傾向に転じた

◆トランプ政権下で交戦規定を緩和…犠牲者急増
 しかし、17年1月に発足したトランプ政権下で再び投下爆弾数が増え、市民の犠牲者も急増。背景には交戦規定の緩和があり、トランプ氏は同年8月に「制限を撤廃した」と明かし現地の裁量を拡大したと説明した。
 当時のマティス国防長官は議会で、空爆については、民間人の巻き添えを減らすため米軍や友軍が敵対勢力に一定程度近づかなければならないという要件が「もはやなくなった」と述べた。
 バイデン政権は交戦規定の変更について公表していないが、米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)によると、ドローン爆撃にホワイトハウスの許可を必要とするなど規制を強めたという。

◆アフガン戦争終結宣言後も続く攻撃
 それでも、今年8月29日に、米軍は撤退間際のアフガニスタンの首都カブールで、過激派組織「IS」(イスラム国)系勢力のテロリストと誤認し、アフガン市民を支援していた団体職員を乗用車ごとドローンで爆撃。子供7人を含む一家10人が死亡した。
 バイデン氏は、アフガン戦争の終結を宣言した際に、同時にISなどテロ勢力にはドローン攻撃を続ける方針を表明している。
 これに対し、市民の巻き添え死などを調べてきたボストン大のネタ・クロフォード教授(政治学)は「米軍は、意図的に市民を殺害した第2次世界大戦などに比べれば巻き添えを防ぐ努力はしているが、依然として、期せずして市民を巻き込むケースがあり、中立的な一般人の信用を失い逆効果になる」と説明する。