今年に入ってから特に首都圏や大阪府においては、緊急事態宣言が出されていなかった日数は数えるほどしかありません。政府は、緊急事態を新に出したり延長したりするたびに、今度こそ期限までにコロナを鎮静させると繰り返しましたが一度も実現しませんでした。一向にPCR検査を普及させない(保健所を通さないと受けられず、個人で受ければ有料)ためひたすら感染拡大のリバウンドを繰り返してきました。
そんな風に漫然と時間を空費し、しかも海外からの流入を阻止する水際対策もロクに採らなかった結果、真夏にデルタ株による第5波の大惨状を呈しました。8月1日~9月27日までの約2か月間に2319人が死亡し(昨年来の死者の総数は17504人)、そのうち入院できずに自宅などで亡くなった人は8月だけで250人(7月の8倍)に達しました(50代までの比較的若い世代がおよそ半数)。
幸いなことに第5波が鎮静に向かった結果、30日には全国的に緊急事態宣言等が解除される見通しになりました。しかし第5波がなぜ鎮静に向かったのかが明確でないため、今後もこれまでのように安易に過ごすなら、この先寒気に向かって新型株のコロナが大感染する可能性は大です。
通常の生活スタイルに戻れればその経済効果は6000億円/月と言われます。そうであればそれに見合う費用をPCR検査の拡大や、病床の拡大、臨時入院施設の建設等に回すべきであり、それが最も緊要な対策の筈です。間違っても入院できないまま亡くなる人を二度と出すことがないように政府は最大の努力を払うべきです。
東京新聞の記事「 ~ 第6波に備え医療体制の準備が必要」を紹介します。
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「入院できない状況は異常」自宅療養者を診る医師
第6波に備え医療体制の準備が必要
東京新聞 2021年9月28日
新型コロナウイルス感染拡大の第5波では一時、自宅療養者が全国で10万人を超え、東京都内では8月以降、みとりを含めて自宅療養中に48人が亡くなった。往診に奔走した英はなぶさ裕雄ひろお医師は「入院すべき人が入院できない状況は、あってはならない。異常だった」と指摘する。第6波が到来しても、医療逼迫ひっぱくは「二度と繰り返すべきではない」と語った。(池田悌一)
「コロナには裏をかかれっぱなし。これだけ急激な感染爆発は想定していなかった。いやが応でも地域の医療機関も関与せざるを得なくなった」。新宿区の住宅街にある新宿ヒロクリニック。英院長の表情には疲労の色がにじむ。
クリニックはこれまで、高齢者や糖尿病患者らの訪問診療を担ってきた。新型コロナの流行で、保健所から自宅療養者の往診を頼まれることもあったが、今春の第4波までは「月に数件程度」だった。
ところが、7月下旬から依頼が増え、8月に入ると急増した。常に感染者70〜80人を担当する状況となり、同月の患者は273人に上った。このうち都が入院対象とする中等症は5割超の144人。実際に入院できたのは全体の3割の83人だった。
基礎疾患のない軽症の女性(53)は8月中旬、酸素飽和度が中等症レベルに低下した。クリニックはステロイド薬と酸素吸入で対応したものの状態は悪化。しかし入院先は見つからず、9月上旬に回復するまで往診や電話診療でしのいだ。
英院長は「入院治療が必要なら全員入院できるようにすべきだ。高齢者や基礎疾患がある人などリスクの高い患者は特に、あっという間に重症化して死に至る恐れがある」と強調する。実際、クリニックで診ていた80代の2人が8月、自宅療養中に命を落とした。
感染が収まってきた現在、担当する自宅療養者は一桁に落ち着いた。英院長は第5波を教訓に、「今のうちから臨時の医療施設を確保するなど、第6波が来ても慌てないよう準備する必要がある」と考える。
第5波では図らずも、地域の医療機関が感染者対応に関わる流れが生まれた。英院長は今後について、こう語る。
「保健所に任せきりにせず、福祉を含む地域の関係機関が連携していかなければいけない。自宅療養者も必要なときは速やかに入院してもらい、緊急時には臨時の医療施設を機能させる。状況に応じた医療提供体制をつくることが、市民の不安払拭ふっしょくにつながる」