2021年9月14日火曜日

八代氏の「共産党は暴力革命」デマは公安調査庁の捏造を利用したもの

 TBSの「ひるおび!」の10日の放送で、八代英輝弁護士が日本共産党について「まだ暴力的な革命というのを党の要綱として廃止していない」と虚偽の発言をしたことに共産党が抗議していた問題で、13日、同番組内でアナウンサーが「日本共産党の綱領にそのようなことは書かれていませんでした。訂正しておわびします」と謝罪し、八代弁護士は「私の認識は閣議決定された政府見解に基づいたものでした。一方、日本共産党はそれをたびたび否定していることも併せて申し上げるべきでした。申し訳ありませんでした」と話しました。
 それに対して共産党の志位委員長は同日、ツイッターで「コメンテーターの発言は、『暴力的な革命を党の要綱として廃止していない』という虚偽発言への撤回・謝罪になっていない」と、八代氏の謝罪に納得していないことを明らかにしました。
 フリージャーナリストの江川紹子さんも「八代氏のは、自分の発言は政府の見解に沿ったもの、という『弁解』であって、共産党綱領にないことを『ある』とした虚偽コメントへの『謝罪』とは言えませんね」とツイートしました。
 この問題はまだ終わりそうもありません。
 そうした謝罪が行われる前の段階でLITERAが13日、「八代英輝弁護士が『共産党は党の綱領に暴力的革命』とデマ、~ 背景に公安調査庁の捏造と野党共闘つぶし」とする記事を出しました。
 矢代氏が敢えて取り上げた「政府見解」とは、東西冷戦下の1952年に共産党を排除する政治的な目的でつくられた法律「破壊活動防止法」に基づいて、公安調査庁が共産党を一貫して調査対象にしてきたことをベースに、維新の会などが折りに触れて政府に対して共産党が破壊活動防止法上の対象組織であることを確認する意図で出す質問主意書に対する回答として出されたものです。
 しかし公安調査庁は、この60年以上 破壊活動の立証など一度もできていないのが実態で、そもそも破壊活動防止法も公安調査庁も無用の長物なのですが、一度作られた組織は原則として潰さないという日本の風土に基いて存続しているに過ぎません。
 そういう背景の中で、虚偽の「政府見解」を最大限利用しようとする姑息さは、それ自体大いに問題です。
 LITERAの記事を紹介します。
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八代英輝弁護士が「共産党は党の綱領に暴力的革命」とデマ、維新の政治家も丸乗り! 背景に公安調査庁の捏造と野党共闘つぶし
                             LITERA 2021.09.13
 『ひるおび!』(TBS)のレギュラーコメンテーター・八代英輝弁護士が、日本共産党をデマ攻撃し、大きな批判を浴びている。共産党がTBSに抗議しただけではなく、ツイッターでは「#八代と田崎をテレビに出すな」というハッシュタグがトレンドになっている。
 問題になっているのは9月11日放送での発言。この日の『ひるおび!』は、自民党総裁選をめぐる政局を大々的に取り上げ、申し訳程度に野党共闘の動きを紹介したのだが、そのなかで、八代弁護士が、共産党、そして共産党も含めた野党共闘についてこう攻撃したのだ。
「志位委員長、共産党の。つい最近、『敵の出方』って言い方やめようって言いましたけども、共産党はまだ『暴力的な革命』というものを、党の要綱として廃止してませんから。よくそういうところと組もうという話になるな、というのは個人的には感じますね」
 しかし、志位和夫委員長や小池晃書記局長らが反論していたように、この八代発言は真っ赤な嘘だ。
「党の要綱」というのは「党の綱領」の言い間違いだと思われるが、日本共産党の綱領に「暴力的な革命」などという文言は一切ない。
 また「敵の出方論」も、暴力的な革命とは何の関係もない。志位委員長が党創立99周年記念講演会などで説明したところによれば、「敵の出方論」というのは「(1)選挙で多数の指示を得て誕生した民主的政権に対して反動勢力があれこれの不法な暴挙に出たさいには国民とともに秩序維持のために必要な合法的措置をとる」「(2)民主的政権ができる以前に反動勢力が民主主義を暴力的に破壊しようとした場合には広範な国民世論を結集してこれを許さない」というもので、相手が不法や暴力に出たとしても、合法的・平和的に抵抗するというものでしかない
 しかし、産経など右派勢力が「敵の出方」という表現を悪用して、共産党があたかも「敵の出方によっては暴力的手段をとる」かのように喧伝していることから、2004年の綱領改定後は使っておらず、今後も使用しないことを8日の中央委員会総会で表明していた。
 TBSも共産党の抗議を受け、「共産党の綱領には記載がなく、発言は誤りでした」とデマであることを認め、「月曜日の放送で対応することになります」と13日の放送で訂正などなんらかの対応をするという。
 しかし、八代弁護士が、野党攻撃や政権批判封じのためにこうしたデマを吐くのははじめてのことではない。『ひるおび!』の政権擁護論客といえば、田崎スシローこと田崎史郎氏を思い浮かべる人も多いだろうが、八代弁護士も負けず劣らず。森友加計問題からコロナ対策にいたるまで、露骨な政権擁護を繰り返してきた
 いや、政権擁護だけでなく、嫌韓発言や「ハンギョレ新聞と中央日報と朝日新聞は反日三羽烏」などという、ネトウヨ性をあらわにした発言は、たんなる御用記者の田崎氏以上に悪質ともいえる。
 今回のデマについては、八代弁護士がコメントするのか、局アナが訂正とお詫びを読み上げるだけなのか、よくわからないが、これを機にテレビからとっとと退場してもらいたいところだ。

松井一郎、足立康史、音喜多駿ら維新も乗っかり「共産党は暴力革命捨ててない」のデマ
 しかし、この問題はたんに八代弁護士のネトウヨ性があらわになったというだけの話ではない。そもそも「共産党は暴力革命路線を捨ててない」というデマは、政権や右派、保守勢力が積極的に流してきたものだ。
 今回も八代発言に便乗して、維新の政治家連中がこのデマを積極的に拡散している。たとえば、“維新の暴言男”足立康史・衆院議員はこんなツイートを連投した。
〈逆にTBSが謝罪とか訂正とかしたら、大変な問題になる。→「共産党は暴力的な革命を廃止していない」〉
〈共産党の力を借りて世の中を変えようと考えている全ての野党は、今すぐ博物館へ。〉
〈暴力革命の問題は、単なる放送電波の問題としてでなく、国会でしっかり議論しなければなりません。〉
 また、音喜多駿・参院議員も〈共産党は公安も認定する通り暴力革命の路線を捨てておらず、TBS番組でコメンテーターの方が言いたかったことは正しいです。ただ、党綱領には書いてないので、その点が不正確でまずかった〉と投稿。
 さらには、松井一郎・大阪市長も、高橋洋一・元内閣官房参与の〈要綱で暴力的革命と発言したから間違いなので、破防法で調査団体であり暴力革命の方針に変更はないといえばよかった〉〈月曜日の放送で謝罪というけど、折角なら、6月の閣議決定などを含めて解説してもらえればいいけど。「共産党は要綱で暴力革命と発言しましたが誤りです。正しくは破防法対象団体で、暴力革命の方針に変わりないと政府は認識しているとの閣議決定があります」と放送したら凄い〉などというツイートを連続リツイートした。
 しかし、これらも全部、デマである。連中が共産党について、暴力革命路線を捨てていないという根拠は、破壊活動防止団体の対象になっているということなのだが、それこそこの破防法の運用自体がでたらめ極まりないものなのだ。
 破防法とは、「暴力主義的破壊活動」をおこなった団体に対する規制措置などを定めた法律で、たしかに共産党をずっと調査対象にしてきた。同法とセットで設置された破防法適用のための調査機関である公安調査庁(公安庁)のレポート「内外情勢の回顧と展望」の2021年1月版でも、イスラム国やアルカイダをはじめ、朝鮮総連、オウム真理教、中核や革マル等の新左翼セクト、一部右翼団体などとともに、日本共産党について述べられている。
 しかし、この破防法はもともと東西冷戦下の1952年に共産党を排除する政治的な目的でつくられた法律で、破防法も公安庁も、自民党や警察関係者にすら「無用の長物」「予算の無駄遣い」と冷笑されてきた。

共産党を破防法の対象にしている公安調査庁のお粗末な実態、予算維持のためのでっちあげ
 共同通信で公安を担当し、『日本の公安警察』(講談社)という著書もあるジャーナリスト・青木理氏も共産党が破防法の監視対象団体となっている問題について、こう解説する。
「公安庁は、冷戦期からの惰性と妄想、そして自らの組織維持のために共産党を監視対象団体としているだけのこと。しかもその情報収集能力も劣悪で、冷戦体制の終焉時には自民党内からも『公安庁に膨大な予算をかける意味があるのか』と廃止論が出されるほどでした。ただ、公安庁と破防法は成り立ちから分かるように、共産党をはじめとする左翼勢力取り締まりが最大目的ですから、それを否定されると組織の存在意義に直結してしまう。とにかく彼らの頭の中にあるのは、組織の存在意義を保つことと予算を削減されないことだけで、そのために無理やり監視対象を作り出している。実際にこの60年以上、破壊活動の立証など一度もできていないのですから、まさに不要なのは公安庁と考えるべきでしょう」
 ようするに、共産党をいまだ破防法の対象にしているのは、公安調査庁が自分たちの組織と予算を維持するため。実態はまったくないのに無理やり「破壊活動の疑い」をかけ続けているのだ。
 ところが、自民党政権や右派勢力はこの公安庁の予算維持目的のでっち上げに乗っかって、これを共産党叩きに利用してきた。
 実際、松井市長がリツイートした高橋・元参与のツイートにある「6月の閣議決定」というのは、維新の鈴木宗男・衆院議員の質問主意書に対し、〈日本共産党は、現在においても、破壊活動防止法に基づく調査対象団体である〉などと答えたものだが、この鈴木宗男議員の質問は、「正論」(産経新聞社)7月号に掲載された公安調査庁・横尾洋一次長と佐藤優氏の対談「日本共産党に騙されるな 革命路線に変わりなし」を受けてのものだ。
 そして、この閣議決定でも、肝心の具体的事案については、〈暴力主義的破壊活動を行った疑いがあり、現在でもこの認識に変わりはないが、その具体的内容を明らかにすることは、公安調査庁における今後の業務に支障を来すおそれがあることから、お答えは差し控えたい〉などと思わせぶりに答えるだけで、何もあげることができなかった

2度の「共産党は破防法対象」閣議決定も露骨な選挙対策・野党共闘ツブシ
 ちなみに、安倍政権時代の2016年3月にも〈日本共産党は、現在においても、破壊活動防止法に基づく調査対象団体である〉〈警察庁としては、現在においても、御指摘の日本共産党の「いわゆる敵の出方論」に立った「暴力革命の方針」に変更はないものと認識している〉などとする答弁書を閣議決定している。
 このときは宗男議員の娘である鈴木貴子・参院議員の質問主意書に答えたもの。貴子議員は質問主意書を出す直前、民主党(当時)を離党。その後自民党に入党している。
 2016年というのは、2015年に安保法案が可決・成立して以降、初の国政選挙である参院選がおこなわれたが、この参院選では、立憲主義に反する安保法制強行成立への抵抗から野党共闘が始動していた。
 ようするに、野党共闘を攻撃するために、民主党を離党し、のちに自民党入りする国会議員がこの質問を仕掛け、安倍政権がわざわざ「暴力革命の方針に変更がない」などと答えていたのだ。
 そう考えると、今年、再びこの閣議決定がなされたのも、総選挙対策以外の何物でもない。安倍・菅政権の数々の不祥事やお粗末なコロナ対応に対する国民の不満や批判の声を受け、躍進が予想される共産党を攻撃するとともに、野党共闘を妨害するため、またぞろありえない話を持ち出してきたのである。
 そして、政権応援団の八代弁護士がそれに乗っかって、こんなデマを地上波で流した。

 ナチスドイツが反共を喧伝し、ドイツ共産党などの抵抗勢力を弾圧することで権力を掌握していったのは有名な話。こんなデマを平気で口にするというのは、それこそ自民党政権と応援団の本質を表しているとしか言いようがない。(編集部)