安倍前政権が強行した憲法違反の安全保障関連法の成立から 19日で6年が経ちました。
「国には固有の自衛権がある」という通念に対して、日本が敢えて戦争放棄の憲法9条を掲げたこととの整合性として、「戦力不保持の我が国が急迫不正の侵害を受け、助けてくれる人も他の手段もなければ、必要最小限度の反撃は、国民感情として認めうる」として、自衛隊が合憲とされるぎりぎりの許容範囲を示したのが1972年の政府見解でした。その「急迫不正の侵害を現実に受けた場合に限り、必要最小限度の反撃は許される」との見解は、以後半世紀近く歴代の内閣で連綿として引き継がれてきた大原則でした。
それを第2次安倍内閣は一内閣の見解で一挙にひっくり返し、安全保障関連法を成立させました。そこで突然登場したのが「重要影響事態」とか「存立危機事態」等というオドロオドロしい言葉であり、何が何でも「集団的自衛権」を行使(違憲)して戦争に参加したいという欲望がみなぎっていたのでした。昔、日本軍が大陸で起こした軍事行動を「事変」と呼びましたが、ここでいう「事態」も似たようなもので、審議されていた当時は「むかし『事変』、いま『事態』と呼ばれたものでした。 ⇒(15.3.11)騙しのテクニック 安倍政権
東京新聞は、「週のはじめに考える 安保法の来し方行く末」のなかで、台湾有事があれば「間違いなく『存立危機事態』に関係してくる(麻生副総理)」として、対中戦争に米国の下で参加する現実の危険性を指摘しました。もしもそうなれば米国との集団的自衛権」を標榜している以上、日本全土が中国からの攻撃対象になります。安倍氏が望んでいた戦争が、種も仕掛けもなく実現するということです。
すでに今年6月には、平時から自衛隊が他国軍の艦艇や航空機を守る「武器等防護」の対象にオーストラリア軍が加わりました。いわば集団的自衛権(の行使)は米国に限定されないどころか、米国に言われるままに範囲は広がることになります。
しんぶん赤旗は、米海兵隊トップのバーガー総司令官が「10月か11月に海上自衛隊の船(⇒「いずも」型護衛艦)から飛ばす」と明言し、米軍F35Bの「いずも」型護衛艦の使用を通じて「標的」=攻撃目標の情報を共有したいとの考えを示したことを伝えました。
要するに日本は既に「空母」を持ち、それを米軍と共用する体制になっているということであり、短距離離陸・垂直着陸型のステルス型戦闘爆撃機F35Bを大量に買い込むことにしたのは、まさに空母を持ちたかったからです。日本の防衛に何故攻撃型の空母が要るのか政府はどう説明するのでしょうか。
東京新聞としんぶん赤旗の記事を紹介します。
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週のはじめに考える 安保法の来し方行く末
東京新聞 2021年9月19日
安倍晋三前政権が強行した安全保障関連法の成立から十九日で六年がたちました。違憲とされてきた「集団的自衛権の行使」を容認し、米軍との一体化をより進める法律です。戦後憲法の平和主義はどこに行き着くのか。安保法の来し方と行く末を考えます。
菅義偉内閣の閣僚から七月、気になる発言が飛び出しました。
中国が台湾に侵攻した場合の日本の対応について、麻生太郎副総理兼財務相が「台湾で大きな問題が起きると、間違いなく『存立危機事態』に関係してくる。日米で一緒に台湾を防衛しなければならない」と述べたのです。
安保関連法で集団的自衛権を行使できる要件の「存立危機事態」に当たる可能性があるとの認識を示したのです。
◆台湾有事で武力行使?
存立危機事態は、日本と密接な関係にある外国への武力攻撃が発生し、日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態を指します。その場合、ほかに適当な手段がなければ、自衛隊は外国への攻撃を武力で排除することができる規定です。
麻生氏の発言に当てはめれば、中国の台湾侵攻に米軍が介入し、米中両軍が武力衝突した場合、自衛隊が中国の攻撃から米軍艦艇などを防護することになります。
日本が直接攻撃されていないにもかかわらず、密接な関係にある外国への攻撃を自国への攻撃とみなして武力行使する「集団的自衛権の行使」に該当します。
日本国民だけで三百十万人、周辺国や対戦国を合わせれば膨大な犠牲者を出した先の大戦の反省から生まれた憲法九条は、戦争放棄と戦力不保持を明記しています。
その後、必要最小限の自衛力として自衛隊を創設しましたが、歴代内閣は、集団的自衛権の行使は憲法九条が許す自衛力の範囲を超え、違憲としてきました。
それを根本から変えたのが、安倍前内閣による憲法解釈変更と、六年前の安保関連法成立強行でした。集団的自衛権の行使容認は、この法律の核心でもあります。
歴代内閣の憲法解釈は長年の国会審議などを経て確立したものです。それを一内閣だけの判断で変更し、それに基づく安保関連法を国会での反対を押し切って成立させたことも強引でした。
野党側が安保関連法の違憲部分の削除を求め、全国各地で違憲訴訟が相次ぐのも当然でしょう。
もちろん、中国が台湾を武力を使って強引に統一することが許されてはなりません。軍事的台頭著しい中国に自重を求める外交圧力をより強め、武力紛争の回避に尽くすべきは当然です。
ただ、日本の歴代内閣は一九七二年の日中国交回復以降、「一つの中国」を支持する立場を堅持しています。つまり台湾は中国の不可分の一部です。日本の集団的自衛権の行使が、中国の「内戦」への介入になりはしないか、日中間で本格的な武力衝突に発展しないか、心配は尽きません。
◆自国民保護から戦争へ
安保関連法に関連して、別の気になる動きも出てきました。アフガニスタンからの邦人退避対応の「失敗」を機に、自衛隊法の改正論議が浮上しているのです。
自民党総裁選に立候補した高市早苗前総務相は、邦人退避について、現行法では「邦人を奪還できない」として、自衛隊による邦人奪還を可能にする法改正を目指す考えを表明しました。岸田文雄前政調会長も同様に法改正の必要性に言及しています。
現行法では、自衛隊が外国での邦人の警護や救出、輸送などを行うには、戦闘行為が行われていないことが条件になってはいます。
ただ、いくら邦人救出のためとはいえ、戦闘行為が行われているような危険な場所に自衛隊を派遣すれば、戦闘に発展する可能性があります。戦争の発端が、自国民保護を名目にすることが多いのも歴史の教訓です。それは戦争放棄の平和憲法に反します。
そもそも今回の邦人保護の「失敗」は、情報収集や自衛隊機派遣の遅れなどが指摘されています。外交努力を尽くさず、自衛隊法の改正を持ち出す性急な議論には、違和感すら覚えます。
自衛隊の役割や法律を、地域情勢の変化に応じて不断に見直すことは必要でしょう。でも、今や日本人の血肉と化した憲法の平和主義から逸脱することを、決して認めてはならないのです。
オーストラリア軍艦艇も防護対象 進む日米一体、安保法6年
東京新聞 2021年9月19日
集団的自衛権行使を容認する安全保障関連法は成立から19日で6年を迎えた。今年6月には、平時から自衛隊が他国軍の艦艇や航空機を守る「武器等防護」の対象にオーストラリア軍が加わり、活動範囲が拡大。日米の運用一体化も着実に進む。米中対立の激化や台湾海峡情勢の緊迫化で、日本が偶発的な衝突に巻き込まれるリスクへの懸念もつきまとう。
岸信夫防衛相は17日の記者会見で「安保法成立で日米同盟はかつてないほど強固になり、抑止力、対処力も向上した」と意義を強調。
米軍への武器等防護は昨年25件と過去最多。弾道ミサイルの警戒監視や日米共同訓練の任務に当たる部隊が対象だった。(共同通信)
安保法制強行6年 危険性浮き彫り 自衛隊艦いずもから米戦闘機F35B飛行
米海兵隊トップ“今秋にも”
しんぶん赤旗 2021年9月19日
「いずも」型護衛艦の“空母化”をめぐり、米海兵隊トップのバーガー総司令官は「10月か11月に海上自衛隊の船から飛ばす」と明言し、今秋にも「いずも」の甲板から海兵隊F35Bステルス戦闘機の飛行を行うとの意向を示しました。米シンクタンク「戦略国際問題研究所」(CSIS)主催の1日の会合で語ったもの。
さらにバーガー氏は、米軍F35Bの「いずも」型護衛艦の使用を通じて、「標的」=攻撃目標の情報を共有したいとの考えを示しました。政府は、安保法制=戦争法の発動要件である「重要影響事態」などで、「いずも」から米軍F35Bが空爆に出撃する可能性は「排除されない」と明言しており(2019年3月8日、衆院安保委員会で岩屋毅防衛相=当時)、バーガー氏の発言はこれを明確に裏付けるものです。
仮に米軍F35Bが「いずも」に搭載され、攻撃目標まで共有されれば、違憲の「他国の武力行使との一体化」に該当します。19日で成立強行から6年を迎える安保法制の危険性があらためて浮き彫りになりました。
バーガー氏は、初めてインド太平洋地域に長期航海している英空母クイーン・エリザベス(QE)に、米海兵隊のF35B飛行隊が同乗し、英軍のF35Bとともに一体運用を行っていることに言及。今秋に行う「いずも」型護衛艦でのF35Bの飛行と併せて、「(NATOのような情報共有の枠組みの)始まりだ」と評価しました。
QE打撃群は今後、数週間にわたって日本周辺にとどまり、海自などとの共同訓練を行います。その期間中、「いずも」で米軍F35Bの飛行が行われる可能性もあります。
防衛省は短距離離陸・垂直着陸が可能なF35Bを42機導入し、「いずも」型護衛艦に搭載し、空母化を狙っています。既に「いずも」は飛行甲板の耐熱加工などの改修を終えており、2番艦「かが」の改修にも着手しますが、自衛隊F35Bの実戦配備は24年度以降のため、それまでは在日米軍のF35Bが独占的に使用する可能性もあります。
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。