2021年9月9日木曜日

シリーズ検証 安倍・菅政権の9年 (1) (しんぶん赤旗)

 しんぶん赤旗が「安倍・菅政権の9年」を検証するシリーズを開始しました。

 第1回目の一つは、13年1月、沖縄県内全41市町村長と議長、全県議らが署名し、普天間基地の「県内移設断念」を求めた「建白書」が提出されたのに対して、安倍首相同年11月、自民党の県選出国会議員と仲井真県政に公約を撤回させ、1471に辺野古新基地建設を閣議決定し、ついに建設を強行したことです
 同年11月には、新基地建設反対を掲げる「オール沖縄」翁長県政が発足し、1510月、辺野古埋め立て承認を取り消し、その後県政は「オール沖縄」玉城デニー氏に引き継がれました。安倍政権は「国と自治体は対等」という地方自治の原則をゆがめ、県の権限を封殺して18年12月、ついに建設海域への土砂投入に踏み切りました。
 その沖縄への強権政治の司令塔を担ってきたのが当時の菅官房長官で、菅氏は辺野古で得た住民弾圧の “ノウハウ” を、同県東村高江でのヘリパッド建設にも適用しました。
 もう一つは、当時官房長官だった菅氏が主導し14年に内閣人事局を発足させ、これにより官邸が中央省庁の幹部人事を一元管理する仕組みが出来上がり、官僚は政権に逆らえなくなったことで忖度政治が横行するなどの、菅氏の強引な人事に伴って起きたさまざまな問題です。
 森友・加計疑惑などの政治の私物化問題では官僚による忖度と国会での虚偽答弁、公文書の隠ぺい・改ざんが起こりました。
 検察幹部の定年延長問題も、安倍首相の「モリ・カケ・さくら」問題を司法に咎めさせないための画策でしたが、それはごうごうたる国民の批判で廃案にせざるを得ませんでした。
 そして菅政権の発足早々には、日本学術会議メンバーの半数交代の任命で、当初の取り決めを無視した人事介入を行いました。菅首相は結局6人のメンバーの任命を拒否した理由を語れませんでしたが、最後まで撤回しませんでした。まことに強権政治そのものでした。
 これとは別にしんぶん赤旗が「自民総裁選の顔ぶれ 安倍・菅政治に共同責任」とする記事を出しましたので、併せて紹介します。
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シリーズ検証 安倍・菅政権の9年
 強権政治 辺野古 民意圧殺の国家犯罪
                        しんぶん赤旗 2021年9月8日
 「安倍政権の継承」を最大の看板にした菅義偉首相が政権を投げ出しました。9年におよぶ安倍・菅政権の破綻です。安倍・菅政治をシリーズで検証します
 「国家犯罪だ」。沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設反対のたたかいに長く参加している浦島悦子さん(同市在住、フリーライター)は、沖縄県に対する安倍・菅政権の所業をこう断じます。8割もの住民が反対しても無視。抗議する市民を機動隊や海上保安庁が強制排除して違法工事を強行。司法まで動員して反対の声を圧殺する…。9年間の安倍・菅強権政治が、最も露骨に表れたのが沖縄です。
 2013年1月、県内全41市町村長と議長、全県議らが署名し、普天間基地の「県内移設断念」を求めた「建白書」が、就任間もない安倍晋三首相に提出されました。本来なら、ここで新基地建設は断念すべきでした。

県の権限封殺
 しかし、安倍政権は同年11月、自民党の県選出国会議員と仲井真県政に公約を撤回させ、集団的自衛権の行使容認と同じ14年7月1日、新基地建設を閣議決定しました。
 同年11月には、新基地建設反対を掲げる「オール沖縄」翁長県政が発足し、15年10月、辺野古埋め立て承認を取り消しました。しかし、安倍政権は「国と自治体は対等」という地方自治の原則をゆがめ、県の権限を封殺して工事を強行します。18年7月、末期がんに冒された翁長雄志知事が最後の力を振り絞って埋め立て承認撤回を決断。玉城デニー氏が知事選で圧勝して「オール沖縄」県政を継承しますが、安倍政権はこうした民意を平然と無視し、同年12月、ついに土砂投入に踏み切りました。
 こうした、沖縄への強権政治の司令塔を担ってきたのが当時の菅義偉官房長官や公安警察出身の杉田和博官房副長官らでした。「粛々と工事を進める」。沖縄県民が選挙で何度民意を示しても、菅氏の口からは冷徹な言葉が繰り返されました。

“ノウハウ”に
 菅氏は、辺野古で得た住民弾圧の“ノウハウ”を、同県東村高江でのヘリパッド建設にも適用します。全国から機動隊を動員し、抗議する住民を暴力で排除。菅氏は首相就任後、高江での工事を、「沖縄の負担軽減」と称し、自らの実績として何度も誇っています。
 沖縄に深刻な傷痕を残した安倍・菅政治。浦島さんは、「菅氏の退陣表明は本当によかった。でも、総裁選の顔ぶれを見ても、何も変わらないのは目に見えている」と指摘。何としても、総選挙での野党勝利が必要だと訴えます。

学術会議介入 問答無用
 安倍・菅政権の強権のテコが人事権でした。安倍政権は2014年、内閣人事局を発足させ、官邸が中央省庁の幹部人事を一元管理する仕組みをつくります。当時、官房長官だった菅首相が主導し、実質的な人事を担いました。
 官邸が人事権を掌握するもとで、官僚は政権に逆らえなくなり忖度(そんたく)政治の温床となりました。森友・加計疑惑などの政治の私物化問題では官僚による忖度と国会での虚偽答弁、公文書の隠ぺい・改ざんが起こりました。

批判で廃案に
 森友学園問題で安倍晋三首相が刑事告発を受ける中で、検察幹部の定年延長を閣議決定し、検事総長に据えることを画策。違憲・違法の批判を受けると、閣議決定を追認する検察庁法改悪案を国会に提出(20年3月)し、ごうごうたる国民の批判で廃案にせざるを得ませんでした。
 安倍政治の継承を掲げ、同年9月に発足した菅政権は、無法な強権を学問の世界にも振るいます。菅首相は、学術会議が推薦した会員候補105人のうち6人の任命を拒否したことが「赤旗」のスクープで明らかになりました。(同年10月)

理由を答えず
 憲法23条の「学問の自由」の規定に基づき、学術会議法3条は「独立して…職務を行う」と定め、高度の独立性を大原則としています。戦前の軍国主義による学問弾圧の経験への反省から明記されたのです。任命拒否は学術会議法に反し、「学問の自由」を侵害する違憲・違法な人事介入です。
 しかも菅首相は、学術会議や多くの学会から求められても任命拒否の理由を答えず、「総合的、俯瞰(ふかん)的活動を確保する観点」から任命したと言うのみです。問答無用で任命拒否に従えという態度です。
 任命拒否に対して、学問分野を問わず1000を超える学会が反対声明を出し、数十万の反対署名が短期間で集まりました。
 安倍・菅政権の強権の根底には立憲主義破壊という無法があります。説明のつかない政治をごり押しするために強権を振るうのです。コロナ感染爆発と医療崩壊のもと、国民の命と暮らしの危機が広がる中、野党の求める国会開会に応じず、強権政治の破綻があらわになりました。


自民総裁選の顔ぶれ 安倍・菅政治に共同責任
                        しんぶん赤旗 2021年9月7日
 菅義偉首相の政権投げ出しを受け、自民党は総裁選(17日告示、29日投開票)へ向けて党内抗争を始めています。深刻な状況が続く新型コロナウイルス対応はそっちのけ。憲法に基づき野党が求める臨時国会開会にも背を向け続けています。メディアも「次の首相は誰?」と騒ぎ立てていますが、その顔ぶれは、9年間の「安倍・菅政治」を支えてきた共同責任者たちです。破綻した自民党政治の枠内からは、現状を打開する展望は見えてきません。
 菅首相の「退陣」表明後に共同通信が実施(4、5両日)した世論調査で、菅内閣の支持率は30・1%と2012年の政権交代以降の最低を記録しました。「退陣は当然」とした人は56・7%に上りました。
 無為無策の新型コロナ対応や東京五輪の強行で、感染爆発と医療崩壊を招いた一方、国会は開かず国民への説明はしない―。「コロナ失政」、強権・腐敗政治に対する国民の怒りと運動が広がり、菅政権を退陣へと追い詰めました。
 「コロナ失政」による政権投げ出しは、安倍晋三前政権に続き2代連続。行き詰まった「安倍政治の継承」を掲げて首相に就いた菅首相のわずか1年での退陣は、9年にわたる「安倍・菅自公政治」の大破綻を示しています

 今回立候補が取りざたされる総裁選の顔ぶれは、この「安倍・菅政治」を中心となって支えてきた面々です。
 河野太郎行政改革担当相は、菅首相の側近の一人。新型コロナワクチンを担当し、ワクチン一本やりの菅政権のコロナ対応を支えてきました。7月には、ワクチン供給の大幅減で、自治体や医療機関に大混乱をもたらしました。コロナも国会もそっちのけで権力闘争に明け暮れることなど許されません。安倍内閣では外相と防衛相として悪政の一翼を担いました。
 岸田文雄前政調会長は、12年の第2次安倍政権発足以来、最長の4年8カ月にわたって外相を務め政権を支えました。外相として、15年には憲法違反の安保法制=戦争法強行などを推進してきました。
 高市早苗前総務相は、過去の侵略戦争を正当化する「日本会議国会議員懇談会」の中心メンバーで、安倍前首相の側近の一人。安倍内閣で総務相を務め、放送局が9条改憲反対を繰り返し放送した場合の電波停止の可能性に言及。憲法が保障する「表現の自由」を踏みにじりました。

「安倍・菅政権」一体 明らか
 総裁選に立候補を予定する各氏の言動からも、「安倍・菅政権」と一体であることは明らかです。
 河野氏は、改憲について、集団的自衛権の行使を前提に「自衛隊を憲法上に位置付ける改正には賛成」と主張。安倍内閣の外相時代には、対ロシア外交をめぐって、国会や記者会見で領土問題の質問に答えず、国民に対する説明を一切拒んだこともあります。自身のツイッターに都合の悪い意見を言う人は、発信が見られないようブロック(表示禁止)するなど、菅政権の「説明拒否」「強権」政治と一体の姿勢を示しています。
 岸田氏は、総裁選立候補の会見で、自民党の改憲4項目について「改正をしっかり考えていくべきだ」と表明。外相時代には、核兵器の使用について「(保有国は)少なくとも個別的・集団的自衛権に基づく極限の状況に限定するよう宣言すべきだ」と容認を明言しました。ツイッター(4日)では「コロナ禍は、感染症危機が…経済危機、外交危機にも発展しうる有事対応であることを示した」などとコロナ危機に乗じた有事対応の法整備の必要性を示しました。
 高市氏は、自民党の国会議員の有志でつくる議員連盟「『絆』を紡ぐ会」の共同代表として選択的夫婦別姓への反対を呼びかける書状を42道府県議会の議長あてに出したことを3月に表明。同氏らは、「家族が崩壊する」などとして夫婦別姓制度の導入を阻んできました。
 8月のインターネット番組では、「安倍前総理にもう一度立候補してくださいということを何十回と頼んだ」と述べ、安倍氏から拒否されて立候補を決意したと明かしています。高市氏は安倍前首相と一体の候補です。
 立候補の意向を示した野田聖子幹事長代行は、安倍内閣で総務相を務めました。20年には、性暴力の被害者への相談事業をめぐり、「女性はいくらでもうそをつける」と攻撃した杉田水脈(みお)衆院議員の辞職を求める13万超の署名の受け取りを拒否しました。
 石破茂元幹事長は、13年11月、米軍普天間基地の「県外移設」を公約としてきた沖縄県出身の衆参国会議員5人を党本部に呼んで、公約を撤回させ、辺野古への新基地建設容認へと露骨な圧力をかけたことがあります。