2022年10月5日水曜日

05- 庶民は岸田恐慌で生き地獄 狂乱物価高対策 たったこれだけか(日刊ゲンダイ)

 10月は約6500品目もの食品の値上げが集中しました。リサーチ&テクノロジーズの試算によれば1ドル=145円の円安が続いた場合、家計の負担増は1世帯当たり年間8万1674円に上るという計算です。円安が進めば当然負担はさらに増えます。

 電気料金は11月以降に大幅に上がるし、ガソリン代も現行のリッター25円の補助がなくなればその分上がります。円安による物価高を解決しないことには、庶民の生活苦はますます増大するばかりです。
 3日の岸田首相の所信表明演説は、単に各省庁が出してきた「短冊」をつないだだけの代物で、多くの時間を割いた経済政策にしても「新しい資本主義の旗印の下で『物価高・円安への対応』『構造的な賃上げ』『成長のための投資と改革』の3つを重点分野として取り組んでい」として、10月中に物価高・円安への対応を盛り込んだ総合経済対策を取りまとめて大型補正予算を組むと述べましたが、相変わらす具体的に何をやるのかが見えないものでした。
 そんな悠長なことでは庶民は正月を越せません。参院選から3カ月も経つのに今まで何をしていたのでしょうか。日刊ゲンダイが、「庶民は岸田恐慌で生き地獄 狂乱物価高対策、たったこれだけか?」という記事を出しました。「慎重に見極め、あらゆる手段を排除することなく、高い緊張感を持って注視し、丁寧に説明していく」というような無内容さでは、狂乱物価の到来は防ぎようがなく「岸田恐慌」になるという意味です。
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庶民は岸田恐慌で生き地獄 狂乱物価高対策、たったこれだけか?
                        日刊ゲンダイ 2022年/10/04
                       (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
 支持率下落が止まらず捨て鉢なのか? 3日から臨時国会が始まり、岸田首相が所信表明演説を行ったが、その中身のなさといったら、やる気を失っているとしか思えないものだった。
 スタートアップ、GX、DX、経済安全保障、災害対策、女性活躍、防衛力強化……。各省庁が出してきた「短冊」をつないだだけの代物で、何をやりたいのか、さっぱり見えてこない。
 演説で多くの時間を割いた経済政策にしても、「新しい資本主義の旗印の下で『物価高・円安への対応』『構造的な賃上げ』『成長のための投資と改革』の3つを重点分野として取り組んでいきます」と言うのだが、どうやって実現するつもりなのか。具体性はなく、気概も感じられない。
 いま、国民生活は負担増でたいへんだ。生活物価の値上げは止まらず、10月は約6500品目もの食品の値上げが集中。円安の影響で輸入物価が高騰し、電気料金やガソリン代の上昇も家計を圧迫する。
 電気・ガス料金はこれから需要が増える年末にかけ、さらに高騰するとみられている。
 賃金は一向に増えないのに、今まで通りの生活をするだけで支出が増えてしまう。みずほリサーチ&テクノロジーズの試算によれば、現在の1ドル=145円の円安が続いた場合、値上げによる家計の負担増は1世帯当たり年間8万1674円に上るという。しかも、これは政府の物価高対策を織り込んだ数字だ。一段と円安が進めば、もっと負担が増える
 さらに、今月からは一定の収入がある75歳以上の医療費窓口負担が1割から2割に引き上げられた。対象者は単身なら年収約200万円、2人以上の世帯なら年収約320万円以上が対象になる。物価高に加えて医療費倍増は、年金生活者には死活問題になってくる。
 今月から児童手当の所得制限も見直され、高所得世帯では月額5000円の特例給付が廃止された。雇用保険料も労使とも02ポイントずつ引き上げと、負担増ばかりがズシリと国民生活にのしかかるのだ。

自分の尻尾を食べるようなもの
 「岸田首相の所信表明を聞き、失望を通り越して怒りすら感じます。物価高の原因を何とかする根本対策が必要なのに、日銀の緩和継続を容認して円安を放置している。それで数十兆円規模の補正予算を組んでバラまいても、財政資金で損失補填するその場しのぎの施策になる。原資の税金は国民のカネですから、自分の尻尾を食べるようなものです。自民党内からは、補正の規模は30兆円という声も上がっていますが、大きな数字をブチ上げて、統一教会の問題から目をそらすのに使われる気がしてなりません。物価高は消費税と同じで、低所得層ほど影響が大きい。30兆円も使うならば、バラマキより、時限的にでも消費税を減税した方が国民生活には確実にメリットがある。中抜きで目減りすることもなく、家計の負担を軽減することができます。円安を放置し、減税を議論の俎上にも載せない経済対策に期待しろという方が無理です」(経済評論家・斎藤満氏)

 岸田は「経済の再生が最優先課題」と言い、賃上げ対策として「人への投資を5年間で1兆円のパッケージに拡充」「スタートアップ5年10倍増を視野に5カ年計画の策定」などと語っていたが、そんな絵に描いた餅みたいな話ではなく、まず足元の物価高と家計逼迫を何とかしてくれ! というのが国民の切実な声だ。
 電気料金は、年末から来年の春にかけても急激な値上げが見込まれている。現代人の生活は電気に依存している。これ以上、電気代が上がれば、生活が立ち行かない人も少なくない。

経済対策を取りまとめるのが“瀬戸際大臣”という悲劇
 「家計・企業の電力料金負担の増加を直接的に緩和する、前例のない思い切った対策を講じます」
 岸田はこう言っていたが、具体的にはどうするつもりなのか。石油元売り会社に補助金を投入したガソリンと同じで、電力会社に手厚い補助金を流すのか。あるいはポイントとかクーポンとか、また中抜き事業者を喜ばせるだけの愚策を講じるのか。それのどこが「思い切った対策」なのか、甚だ疑問だ。
 そもそも、今月中に物価高・円安への対応を盛り込んだ総合経済対策を取りまとめて、大型補正予算を組む予定というのが悠長すぎる。参院選から3カ月も経つのに、今まで何をしていたのかと言いたくなる。
 補正予算案の提出は11月中旬ごろになる見通しで、仮に12月までに成立したとしても、予算執行は年内に間に合わない。困窮する国民は年を越せるのか。
「岸田政権はこの夏、新型コロナ対策も物価高対策も何もしなかった。ただ時間が経って沈静化するのを待つだけなのです。『聞く力』を強調していますが、聞くだけで実行力がない、何をしていいか分からない。無能、無策、無責任の三拍子そろっていることが露呈して支持率を落としているのに、この期に及んで思い切ったことをやれない首相です。政治家3代目のボンボンだから、庶民の暮らしの実態が分からないのでしょうか。これだけ国民が困っているのだから、消費税減税を敢行したり、企業がため込んだ内部留保に課税するなど、やれることはあるでしょう。簡単な話です。ところが統一教会の問題や、国葬への国民世論の反対に右往左往し、経済対策に手が回らない。不幸なのは国民です。しかも、経済対策を取りまとめるのは、統一教会との関係が次々と明るみに出て疑惑の渦中にある山際経済再生担当相という笑えない現実がある。経済も国民生活も瀬戸際なのに、“瀬戸際大臣”に任せられるのか。岸田首相は認識が甘すぎるのではないでしょうか」(法大名誉教授の五十嵐仁氏=政治学)

周囲のブレーンは何をしているのか
 日銀が3日発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)では、大企業・製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)が前回6月調査から1ポイント悪化。これで3期連続の悪化だ。
 「円安は自動車産業などの製造業にとっては輸出の増加でプラスになると言われてきましたが、もはやコスト要因になっている。庶民生活だけでなく、大企業の経営にも悪影響を及ぼしているのです。日銀は、自分たちで作成した統計でこういう状況になっているのに、円安圧力になる緩和政策を止める気はないのでしょうか。岸田首相は所信表明演説で、インバウンドで円安メリットを生かすなどと言っていましたが、目くらましもいいところです。インバウンドで儲かるのは観光業界などごく一部。多くの日本人を犠牲にして、外国人観光客や海外投資家を喜ばせる施策でしかありません。それより日本国民の生活を良くするのが先でしょう。岸田首相自身が経済オンチなのは仕方ないとしても、支えるブレーンは何をしているのか。アイデアがないのなら、外部の識者に頼ってでも、国民生活を助けるプランを示してほしい。何もできない首相と心中するくらいなら、自分の身は自分で守るから払った税金を返せという声が大きくなっても不思議はありません」(斎藤満氏=前出)
 岸田が首相に就任してから4日で丸1年。この間、「何もしない」と「先送り」で無難に過ごしてきたが、この狂乱物価高は国民生活を直撃する問題だ。
 慎重に見極め、あらゆる手段を排除することなく、高い緊張感を持って注視し、丁寧に説明していく」みたいな中身のない答弁を許すほど、庶民に余裕はない。
 このままでは「岸田恐慌」が現実味を帯びてくる。