国葬の翌日の28日、菅氏の弔辞が話題になったのでしょう、その時にテレ朝社員兼コメンテータの玉川氏が「当然これ、電通が入ってますからね」と述べたことが、そんなに大事件だったのでしょうか。
その番組は見ませんでしたが、玉川氏の発言は「弔辞の作成を電通が請け負った」か「ライターの選定に電通が関わった」ということで、いずれにしても菅氏自身が書いたものではないことを言いたかったのでした。
その際に具体的に「電通」の固有名詞を出してそれが間違っていたのは不幸でしたが、その点については翌日の同番組でキチンとお詫びをしています。なお、弔辞のゴーストライターについては政治ジャーナリストの田崎史郎氏が、何と岸田首相と菅前首相のライターは同一人物であったという衝撃的な事実を四国新聞で暴露しています。同一のライターでありながら、岸田首相の分は公式な式辞的なものなので無味乾燥なものになった一方で菅氏の方は情に訴える書き方になっていたのは、岸田氏にとっては不幸なことでした。
それは兎も角そうであれば玉川氏の失言は決して番組を降板しなくてはならないような大事件ではありません。それなのにテレ朝の篠塚社長はこれを好機として早速玉川氏の降板を言い出したのがまず異常で、テレ朝の放送番組審議会の見城徹・委員長(幻冬舎社長)も早速それに倣いました。
それだけでなく西田昌司・参院議員までが、さも大事件であるかのように大騒ぎを始めました。国会議員が一民間人の些細な発言ミスを取り上げて騒ぎ出すことは、篠塚社長や見城委員長以上に問題です。彼が問題視すべきはむしろ国会議員が統一協会との関りを隠そうとしてあれこれの虚偽発言をしていることの方です。
現在テレ朝には「玉川徹を降板させるな」の抗議電話が殺到しているそうで、そのため玉川氏はストレートにコメンテーターを降板することにはなりませんでしたが、これまでのような節度を持ちながら批判すべき点はキチンと批判するという、コメンテータとしての発言が聞けなくなりました。事実上の言論封鎖です。
LITERAが取り上げました。
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テレ朝に「玉川徹を降板させるな」の抗議電話殺到で、局上層部もすぐの“玉川おろし”断念! フェードアウト作戦に変更か
LITERA 2022.10.18
ついに明日19日、玉川徹氏が謹慎を終えて『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)に番組復帰する予定だが、注目を集めているのは、その“進退”だ。
周知のとおり、玉川氏は安倍晋三・元首相の国葬における菅義偉・前首相の弔辞について、9月28日放送の『モーニングショー』で「当然これ、電通が入ってますからね」などとコメント。翌日の放送で「電通はまったく関わっていないということがわかりました」と事実誤認を認めて謝罪したが、その後も批判は収まらず、10月4日にテレ朝の篠塚浩社長が玉川氏の出勤停止10日間の謹慎処分を公表した。
そして、この謹慎処分を受けてメディアでは「玉川氏が降板する」という情報が飛び交うことに。たとえば、5日配信の「FRIDAY」の記事では“番組改編期に合わせて降板することが既定路線になっている”と報道。また、13日付の「NEWSポストセブン」の記事では、19日は玉川氏の復帰ではなく謝罪のための出演に過ぎず、来年に定年を迎える玉川氏が「ここを引き際とした」と伝えている。
果たして、玉川氏は明日の放送で『モーニングショー』を降板してしまうのか──。本サイトはテレ朝関係者などに取材をおこなったが、この間、局内では相当な綱引きがおこなわれていたようだ。
「玉川氏本人は降板する気はない。ところが、篠塚社長をはじめとする上層部は玉川氏を降板させたがっており、自分から辞めるよう、すごい圧をかけている。週刊誌メディアで降板情報が出たのも、玉川氏を番組から降ろしたい上層部によるリークでしょうね」(テレ朝関係者)
だが、テレ朝側としては、玉川氏を一方的に降ろせない事情もあるらしい。というのも、テレ朝にはこの間、「玉川を降ろせ」ではなく、「玉川さんを降板させるな」という抗議電話が殺到しているらしいのだ。
「発言直後は、批判の声のほうが大きかったが、いまは『降板させるな』という電話が8〜9割を占めているようです。こんな状況で強引に降板させたら、それこそテレ朝側が炎上しかねない。しかも、もし玉川氏がケツをまくって、テレ朝を退社したら、これまでの圧力を暴露されるというリスクもある。それで、すぐの降板はなくなったようです。とりあえず今回は、出演回数を週2回か3回程度に減らす、といった対処で終わる可能性が高い」(前出・テレ朝関係者)
安倍応援団の見城徹が委員長を務める「番組審議会」で玉川おろしの声
しかし、すぐの降板はなくなったからといって、状況はまだ予断を許さない。というのも、玉川降板を仕掛けていると言われるテレ朝の篠塚社長は、報道局長時代から“テレ朝のドン”である早河洋会長の腰巾着的存在であり、安倍官邸の意を受け、報道現場に露骨な圧力をかけてきたことで知られている人物だからだ。
さらに、テレ朝の放送番組審議会の委員長を務め、同組織を牛耳っているのは安倍元首相の応援団だった幻冬舎の見城徹社長だ。テレ朝のさまざまな報道・情報番組で安倍政権に批判的な出演者が降板させられ、政権批判報道が減った背景にも、その影響があると言われていたが、今回もかなり玉川氏に対して強行姿勢をとっているという。
「文春オンライン」が10月6日におこなわれたテレ朝の「放送番組審議会」の発言録を入手し、15日付で記事にしていたのだが、そこには「勘違いでは済まない」「何を根拠にあれだけの問題を公器で言ったのだろうか」「コメンテーターという形では、もう画面には出ないほうがいいと思う」などという委員の発言があったという。
こうした政権応援団が自民党の意向を受けて、玉川おろしを継続していく可能性は高い。
実際、自民党からはあからさまな圧力も加わっている。
たとえば、自民党の西田昌司・参院議員は、9月30日に自身のYouTubeチャンネルで「(玉川氏が)まず謝罪をしなくちゃならないのは、菅義偉(前)総理と昭恵夫人はじめご遺族の方々」「本当に失礼なことを言ったということで、それこそお詫びをしなきゃならないと思うんですけれども、(菅氏と遺族に)まったく触れてない」と玉川氏を批判。椿事件を持ち出して「私はテレ朝の社長も会長も含め、まさにこれがテレ朝なんだなと思いますね」と語った。
さらに、西田議員は夕刊フジの記事で、このように玉川氏を糾弾したのだ。
「玉川氏は私人の評論家や学者ではなく、公共の電波を使用するテレビ朝日の社員だ。ミスではなく、虚報で偏向報道だ。根拠なく菅氏の弔辞を徹底的に腐す発言は『報道の自由』を逸脱している。玉川氏個人の謝罪ですむ話ではなく、テレビ朝日のあり方が問われる」
「すでに、自民党としてテレビ朝日に説明を求めるよう、党幹部に提言した。テレビ朝日には誠実な態度を求めたい」
「国民は、政治的に公平だという前提でテレビを視聴する。虚偽の情報を事実として伝えることは危険な『政治的偏向』だ。テレビ朝日は、玉川氏個人の事実誤認としているが、本当にそうか。組織として詳細な経緯を説明する責任がある」
「極めて重大な問題で、国政の場でも強く提起したい」
言っておくが、玉川氏が裏付けのないままコメントしたのは「電通が入っていた」という部分であって、菅前首相の弔辞が演出されたものだというのは、本サイトでも記事にしたように明らかな事実だ。
本サイトだけではない。政治ジャーナリストの田崎史郎氏は四国新聞9日付のコラムにおいて、菅前首相と岸田文雄首相による弔辞のスピーチライターは同一人物だと暴露した上で、弔辞の評価が分かれたことを〈私はどれだけ「念」を入れたかの違いだと思う〉などと岸田氏の弔辞にダメ出ししている。
いや、それ以前に、国会議員が「『報道の自由』を逸脱している」「政治的偏向だ」と糾弾し、「国政の場でも強く提起したい」などと発言するのは、それこそ報道への政治的介入、報道圧力にほかならない。
だいたい玉川氏の発言が糾弾されるなら、自民党の政治家連中はどうなるのか。統一教会と自身の関係について虚偽の説明をおこなった政調会長である萩生田光一氏や、「国葬反対のSNS発信の8割が隣の大陸から」という発言疑惑の高市早苗氏、そして「桜を見る会」前夜祭問題で118回もの虚偽答弁をおこなった安倍元首相こそ、徹底追及されるべきではないのか。
『NEWS23』岸井成格を降板に追い込んだ「視聴者の会」も玉川攻撃
しかし、理不尽な報道圧力をかけているのは政治家だけではない。安倍応援団が立ち上げた「放送法遵守を求める新・視聴者の会」も、放送法違反の疑いとして、玉川氏とテレ朝の責任追及を求める申し入れ書を総務省や放送倫理・番組向上機構(BPO)に近く提出すると夕刊フジが12日に報じたからだ。
「視聴者の会」といえば、これまでも政権批判報道に圧力をかけ、たとえば安保法制を番組内で批判した『NEWS23』(TBS)のアンカーだった岸井成格氏を放送法違反だとする新聞意見広告を打ち、結果、岸井氏を降板へと追いやった民間団体。本サイトは「視聴者の会」の結成当初からその動向を追いつづけ、同会の中心人物たちが“安倍晋三応援団”だらけであることや、賛同人の多数を日本最大の右派団体「日本会議」の関係者が占めていることなどを報じてきたが、今回も圧力に動くというのだ。
つまり、西田議員にしろ、「視聴者の会」にしろ、玉川氏を降板に追い込むことによって政権批判を封じ込めようという意図がミエミエなのだ。
しかし、いまのテレビ朝日の上層部の体質を考えると、こうした圧力に屈して、最終的に玉川おろしに動く可能性は高い。
「出演回数を減らして、そのまま玉川氏の影響力を減らし、次かその次の改編で玉川氏を降板させるというのが、上層部の腹ではないかと言われていますね」(前出・テレ朝関係者)
繰り返すが、「電通」発言については裏取りをしないままコメントした玉川氏に非がある。しかし、玉川氏の発言は差別を助長するヘイトスピーチといった人権を侵害するものでもなく、出演回数を減らされたり、降板させられるような「大誤報」であるはずもない。実際、政権や自民党と電通の密着ぶりは事実ではないか。
しかも、玉川氏はその非を認め、訂正・謝罪し、謹慎処分まで受けているのだ。もし、この程度の誤報で番組降板に追い込まれ、テレビ局が糾弾されれば、コメンテーターが政権や政治家、大企業に批判的な発言に踏み込まないよう、番組制作側がコントロールするようになるだろう。つまり、テレビから政権批判が消えるということだ。
そうさせないためにも、玉川氏を降板させるようなことが起こってはならない。前述したように、「玉川氏を降板させるな」という抗議の声にテレ朝上層部も困っているという。玉川氏を守るためだけではなく、「政権批判できる自由」を守るために、抗議の声をあげなければならないだろう。 (編集部)