2022年10月19日水曜日

「統一教会への報告徴収・質問権行使の検討」を始めるとは言っても

 岸田首相は、統一協会の解散請求は「信教の自由に関わることなので慎重に対応しなくてはならない」として一貫して否定的な考えを示していましたが、どういう訳か急に方針を変え、予め主要メディアにその旨を伝えた上で、17日の国会(衆院予算委)で「質問権行使の検討」を始めると明言しました。

 こんな風に安易に180度転向するのは信念のなさ(浅薄さ)を示すものですが、それが予算委開催の直前だったことについて、ジャーナリストの有田芳生氏「野党の質問に首相は『統一教会の調査を指示しました』と答弁し、追及をかわすつもりなのでしょう」と述べています。成程その一言で全てが説明できます。
 いずれにしても「質問権行使」の検討に入ると述べただけなので、実際に行使するのかはまだ不明です。文化庁宗教や法律の専門家による「宗教法人審議会」を25日に開催し、専門家の意見を聞きながら「質問権」を行使する場合の考え方や基準、具体的な質問項目などをまとめるというのですが、この場合は文化庁が審議会のリーダーシップを取らなければいつまとまるかも分かりません。しかし宗務課にはたった8人しかいないというのでそんなことは到底無理でしょう。
 その後に質問権を行使したとしても、宗教団体が回答を引き延ばし世間の関心がなくなるまで時間稼ぎをされる可能性も大いにあります。全国弁連によればこれまでの訴訟の実績から既に解散請求を出せる資料は揃っているということですから、こんな風に質問権の行使が結果的に事態の進展の障害になるくらいなら、直ちに解散請求を出すべきでしょう。
 ところで岸田首相は予算委で、解散命令請求が認められる法令違反の要件として「民法の不法行為は入らない」と急に言い出しました。これについて霊感商法対策検討会メンバーである菅野志桜里弁護士は18日、連続ツイート「どういう趣旨の答弁かまだよく分からないので一般論で」と前置きした上で
「解散命令要件に民法違反が入らないとなれば犯罪さえしなければ、絞り取ったお金に税金はかからず税優遇を受け続ける存在、ということになる」
「その結論はおかしいからこそ、宗教法人法は解散命令要件を刑法に限定せず『法令違反』としている
・「民法違反を質問権の根拠に使いつつ、解散命令請求の根拠から外すのは無理筋。質問権はあくまで解散命令請求のためのものなので」(以上カッコ内はいずれも『要旨』)
述べています。
 こんな風にいたずらに解散請求の困難さを主張したがる岸田首相に、何かを望むのはそもそも無理なのでしょうか。
 日刊ゲンダイ(2本)と東スポWEBの記事を紹介します。
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盗人猛々しい被害者ヅラの政府・与党 ズブズブの共犯者たちが「調査」のお笑い
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                        (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
 「関係を持たない私が責任を持って、未来に向けてこの問題を解決したい」──。のっけから、自らは統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と関わりがないことを強調した答弁に驚いた。
 ようやく、17日から始まった衆院予算委員会。冒頭のセリフは岸田首相が自民党議員の質問に答える形で、宗教法人法に基づく統一教会への「報告徴収・質問権」の行使検討を指示した際のひとコマだ。
 宗教法人法に基づく質問権の行使が実現すれば初めて。結果次第では宗教法人格を剥奪する「解散命令」の請求につながる可能性はある。
 しかし、今回の指示は自民党の統一教会総汚染で支持率下落に歯止めが利かず、岸田周辺がひねり出した窮余の一策に過ぎない。教団のせいで、無関係の自分が追い込まれているという被害者意識が透けて見える岸田の他人事のような答弁が、その証拠でもある。
 そもそも、岸田に教団を解散させるつもりがあるのか。その本気度は極めて怪しい。まず、文化庁が指示を受け、宗教や法律の専門家による「宗教法人審議会」を開催するのは来週25日。その後は専門家の意見を聞きながら、「質問権」を行使する場合の考え方や基準、具体的な質問項目などをまとめる段取りだ。
 権限行使の目標は「年内のできるだけ早いうち」(永岡文科相)。調査終了時期の目安については、衆院予算委で立憲民主党の山井国対委員長代理に何度聞かれても、岸田は「具体的に申し上げるのは難しい」と繰り返すのみだった

教団2世の人権蹂躙を無視した時間稼ぎ
 統一教会の問題に取り組む「全国霊感商法対策弁護士連絡会」(全国弁連)は、すでに政府に教団の解散命令を裁判所に請求するよう申し入れている。全国弁連の阿部克臣弁護士は「解散命令請求の要件は十分満たしている」「十分な資料を国も持っているはずだ」と13日の野党ヒアリングで訴えていた。
 17日の予算委で永岡は「手続きの途中でも、解散命令請求に足る事実関係を把握した場合は、速やかに裁判所に請求する」とも語った。岸田も調査の理由について「2016年、17年に法人自体の組織的な不法行為責任を認めた民事裁判の例が見られた」と説明した。だったら、サッサと「解散の手続き」に入ってもよさそうなのに、なぜ、まわりくどいプロセスを踏もうとするのか。
 全国弁連代表世話人の山口広弁護士は日刊ゲンダイの取材に「質問権を行使したところで統一教会に時間稼ぎされ、回答が返ってくるころには世間の関心が薄れてしまう」と懸念していた。それこそ「やっている感」をいきなり演出し始めた岸田以下、自民党政権の狙いではないのか。立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言った。
 「前例のない手続きであり、戦前の宗教弾圧の反省に基づき、憲法が保障する『信教の自由』も大事にしなければいけない。デリケートな問題をはらんでいるとはいえ、教団2世らは今も基本的人権を踏みにじられています。この問題を一刻も早く解決する気なら、岸田首相は最低でも『速やかに結論を出す』と調査期限を設けるべき。ただでさえ、調査権行使に強制力はない。早くしないと教団側に証拠隠滅の機会を与えるだけです」
 岸田は17日の答弁で、過去に裁判所から解散命令が下された地下鉄サリン事件のオウム真理教と、霊視商法詐欺事件の明覚寺の2例を挙げ、「オウムで7カ月、明覚寺で3年、確定までにかかった」旨を説明した。
 「言い訳めいています。調査権行使の期限は訴訟と違い、政府が独断で決められます。『国民が問題を忘れるまでの時間稼ぎ』とのそしりを免れたければ、岸田首相は期限を定めるべきです」(金子勝氏=前出)

癒着の実態解明にフタをし幕引き図る魂胆
 17日の予算委で質問に立った自民党の萩生田政調会長は「私自身も地元の世界平和女性連合の方々とご縁があり、これが旧統一教会の関連団体ということだった」と言及。「今なお高額献金や霊感商法の返済が続いている方がいる」「関与が結果として教団の信用を高めることに寄与してしまったのではないか」と猛省のポーズを取ったが、いまさら内情を知ったようなスットボケに国民は皆、呆れたはずだ。
 萩生田は信者らと長年にわたり関係を築き上げ、「家族同然」「八王子市議時代から30年の付き合い」などの証言がある。萩生田に限らず、自民党と統一教会はなぜ、これほどの癒着をしたのか、その歴史的背景に何があるのか──。
 その実態解明もそこそこに、初の「調査権行使」への検討で問題の焦点をズラす。教団側にだけ責任を負わせ、ズブズブの共犯関係にフタをして幕引きを図る。浅はかな狙いはミエミエだ。
 「宗教法人法に基づく法人格を持つ団体ではない」(永岡)と、教団「関連団体」を質問権の対象外にしたことからも、フザけた魂胆がうかがえる。自民党の「点検」の結果、教団との何らかの接点を認めた国会議員は計180人。大半が関連団体の会合やイベントに祝電を送ったり、参加・あいさつしたものだ。
 統一教会側も教団本体の「組織的な選挙支援」を否定するのに、「政治に友好団体が強く関わってきたのは事実」(田中富広会長)などと関連団体を言い訳の材料にしてきた経緯がある。いわば関連団体の存在こそが、自民党と統一教会の癒着の“隠れミノ”。そこをハナから質問権の対象外にしたのは、宗教法人法に基づく調査がズブズブの共犯者たちに及ばないようにする「防波堤」にも映るのだ。

09年と12年が変節のターニングポイント
 今や盗人猛々しい被害者ヅラの自民党と統一教会の共犯関係をひもとくには、安倍元首相の祖父・岸元首相以来「3代」に及ぶ蜜月を避けては通れない。ジャーナリスト・鈴木エイト氏の近著「自民党の統一教会汚染 追跡3000日」(小学館)によると、意外にも安倍は当初、教団とは一定の距離を置いていたという。
 自民党全体にも当てはまる変節のターニングポイントは09年の政権与党からの下野。そして12年の第2次安倍政権の発足である。09年衆院選では萩生田や山際経済再生相らが落選、それを機に教団側への傾斜が強まったともいわれている。
 また、この時期は全国に点在する統一教会系の霊感商法店舗が次々と摘発を受け、中でも教団幹部に衝撃を与えたのが09年、東京・渋谷の印鑑販売会社「新世」の摘発だった。社長や営業部長、街頭勧誘員ら5人が逮捕。本部のお膝元にある教団の施設が警視庁公安部による“ガサ入れ”を食らったのだ。
 以降、教団側は「政治家対策を怠った」との反省から、保守系政治家への接触を強め、教団票を差し出すことで関係を深めていった。第2次安倍政権の発足以降は閣僚、副大臣、政務官人事において教団と関係が深い政治家が登用されるようになり、中堅・若手議員は競い合って教団との「縁」を求めるようになったのである。
 前出の鈴木エイト氏が言う。
「16年には教団2世の大学生による政治グループ『勝共UNITE』が結成。『安保法制賛成』『憲法改正実現』『安倍政権支持』を訴え、現在も活動を続けています。歴代最長8年8カ月に及ぶ安倍政権は目先の国政選挙や憲法改正に向けた世論誘導のため、最も手を組んではいけない相手とギブ・アンド・テイクの関係を続けたわけです。国のトップが自らの政治的野心の実現に向け、反社会的教団と取引したことへの追及を緩めてはいけません」
 ズブズブの共犯者たちが「教団調査」とはお笑いだが、その背景には決して笑えない闇が広がっていることを忘れてはいけない。


岸田首相「旧統一教会調査」指示の姑息な魂胆 有田芳生氏「追及かわし」と本気度に疑問符
                          日刊ゲンダイ 2022/10/17
 まさか、衆院予算委員会に合わせて「教団調査」を指示するんじゃないだろうな──。そう報じた日刊ゲンダイ(15日発行)の“予言”通りだ。岸田首相は17日午前の予算委で、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)への調査をするよう文科相に対し指示したと答弁。調査を通じて法令違反の有無などを解明したい考えで、結果次第では解散命令請求もあり得るというが、「本気度」は極めて怪しい
                ◇  ◇  ◇
 複数の新聞・テレビは16日、政府関係者の話として、政府が旧統一教会の調査を検討していることを報じた。予算委前日の一斉報道は意味深だ。
 17日に公表された消費者庁の有識者検討会の提言は「調査権限の行使」を求めた。消費者庁の公式の「検討会」の提言は重い。また、岸田政権の旧統一教会問題への対応に手厳しい世論に押された面もあるだろう。
 だが、表明のタイミングとして透けて見えるのは、国会審議での“答弁逃れ”の魂胆だ。

相次ぐ野党の質問には「指示しました」繰り返しか
 予算委では野党から解散命令請求に関する質問が相次ぐことが想定される。そこで、先手を打って「調査指示」を表明。
「野党の質問に岸田首相は、『統一教会の調査を指示しました』と答弁し、追及をかわすつもりなのでしょう」(前参院議員でジャーナリストの有田芳生氏)
 新聞テレビに“情報リーク”してから表明するあたり、「調査」は“やってる感”が濃厚だ。そもそも、政府や自民党幹部は一貫して、統一教会の解散命令請求には否定的だ。14日には「十分慎重に判断すべきだ」とする答弁書を閣議決定したばかり。調査を担う永岡桂子文科相も同日の記者会見で「慎重に判断する必要がある」と、現状では難しいとの認識を示している。
 前出の有田氏が言う。
「宗教法人法の質問権を初めて適用というのも、岸田首相が“前向き”な印象を与えます。しかし、実態が明らかになり、解散命令請求まで踏み切るとは到底思えません。調査は教団の了解を得ながら行うようですが、教団はなかなか『承諾』せず、時間がかかる。また、教団は収益事業をしていない建前なので、調査には強制力もない。文化庁がどのような項目について調査するのかも不明です。岸田政権の“時間稼ぎ”に利用されるだけだと思います」
 政府が解散命令請求に慎重な理由として挙げる「信教の自由」や「判例」について、多くの法律家からは、旧統一教会に解散命令を請求しない理由にはならないと指摘されている。ぜひ、国会での徹底審議を見たいところだ。
「調査を指示しました」を繰り返す“答弁逃れ”は許されない。


菅野志桜里氏 教団に質問権行使の岸田首相に懸念「蓋を開けたら請求できませんでした、なんて…」
                          東スポWEB  2022/10/18
元衆議院議員・弁護士で、現在は消費者庁の霊感商法対策検討会メンバーである菅野志桜里氏が18日、岸田首相の発言についての懸念を連続ツイートした。
岸田首相は18日午前の衆院予算委員会で旧統一教会の問題で宗教法人法に基づく「質問権」を行使することについて発言。その中で解散命令請求が認められる法令違反の要件として「民法の不法行為は入らない」という認識を示した。
この発言について菅野氏は「どういう趣旨の答弁かまだよく分からないので一般論で」と前置きした上で「仮に一国のリーダーが『犯罪さえしなければ、どんなに違法行為を繰り返しても解散命令は出ません。税優遇も続けます』とアナウンスしたら、ものすごーく喜ぶ宗教法人が存在するんじゃないでしょうか」と疑問視。
さらに「解散命令要件に民法違反が入らないとなればつまり、日本の宗教法人は、どれだけ違法行為を繰り返して信者からお金を搾り取っても、犯罪さえしなければ、絞り取ったお金に税金はかからず税優遇を受け続ける存在、ということになります。ほとんど治外法権のスーパーパワーです」と民法違反ならどれだけ犯してもOKと受け取られかねない警鐘を鳴らした。
その上で「その結論はおかしいからこそ、宗教法人法は解散命令要件を刑法に限定せず『法令違反』としているわけです。ちなみに、刑事事件につながる相談案件があるならしっかり捜査すべきですが、現時点では雲をつかむような話」と指摘した上で「解散命令につながる刑事事件の存在を匂わせて、過去の数十件の民事事件を根拠から外した結果、蓋を開けてみたら請求できませんでした、なんていう筋書きを書いている人がいなければいいのですが」と懸念を示した。
続けて「まだ懸念の段階なので、これくらいにしておきます。ちなみに、民法違反を質問権の根拠に使いつつ、解散命令請求の根拠から外すのは無理筋。質問権はあくまで解散命令請求のためのものなので」と訴えかけて締めくくった。