2022年10月4日火曜日

「日本沈没」に目を閉じる国民と、誤った方向に歩みを進める政府の行く末

 元外交官の孫崎享氏が、「世界の実質GDPに対する日本のシェアは過去61年で最低という「日本沈没」の状態であることを明らかにし、いまこそ真剣に真剣に取り組まなければならないとする記事を出しました。因みに21年度の日本の実質GDPの世界シェアは5・1%で、22年度はさらに下落すると思われます。

 孫崎氏は1960~70年代日本世界第2位の経済大国になりましたが、その要因を海外諸国は次のように分析していたことを紹介しています
欧米のあるべき方向性を学び、経済界、官界、政界が一体となってその方向に邁進した」「教育水準の高い、高度な労働力をつくり出した」「軍事力を捨て、経済力の向上に特化した」「中低層の経済水準を上げ、分厚い中間層を作り上げた」。
 そしていまの日本は上記と真逆の社会になっていると指摘し、いたずらに軍事的緊張をあおり、無用な軍事費を増大しようとしているなど政府には間違いを是正する動きは見られないと述べました。政府が何の抵抗もなく軍事費を今後11兆円超/年にしようとしていることなどはまさにその典型です。
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日本外交と政治の正体 孫崎享
「日本沈没」に目を閉じる国民と、誤った方向に歩みを進める政府の行く末
                     孫崎享 日刊ゲンダイ 2022/09/30
                       (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
 最近の国民の関心は、安倍晋三元首相の「国葬」をめぐる是非、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と自民党との関係に集中していた。だが、日本が今、真剣に取り組まなければならないのは「日本の沈没」への対応である。
 9月20日付のエコノミスト誌で、相場研究家の市岡繁男氏は「世界の実質GDPに対する日本のシェアは過去61年で最低」と題する驚くべきグラフを紹介した。
 世界の実質GDPに対する日本のシェアは1960年に5.4%、91年に10.0%、2021年に5.1%であることを示した。東海道新幹線の開業が1964年、東名高速の開通が69年であることを考えれば、60年は日本の経済基盤がまだ全く整備されていない時である。
 その時と比較して、2021年の世界の実質GDPに対する日本のシェアは低いのである。

 驚くべき報道はそれだけにとどまらない。9月19日付の日経新聞は「円安で縮む日本 ドル建てGDP、30年ぶり4兆ドル割れ」の見出しでこう報じた。
<日本の今年の名目GDPは553兆円の見込み。1ドル140円で換算すると3.9兆ドルと1992年以来、30年ぶりに4兆ドル割れの可能性がある。ドルでみた経済規模はバブル経済崩壊直後に戻ったことを示す。その間世界のGDPは4倍になっており、15%を上回っていた日本のシェアは4%弱に縮む>
 言えることは、1992年以降、日本は無為無策で来たということである。この深刻な状況からどうしたら脱することが出来るか、その課題はあまりにも重い。
 逆に60~70年代の日本がなぜ世界第2位の経済大国になったのかについて、かつて海外諸国はこう分析していた。
<日本は欧米のあるべき方向性を学び、経済界、官界、政界が一体となってその方向に邁進した>
<広範な教育水準が広がり、高度な労働力をつくり出した>
軍事力を捨て、経済力の向上に特化した>
<中低層の経済水準を上げ、国内に旺盛な所得の需要をつくり出した>
 これらの指摘と今の日本社会の姿を比べるとどう見えるか。真逆の社会になっていると言えるだろう。
 例えば、①安全、低コストが嘘であることが明白になったにもかかわらず、原発回帰しようと間違った方向に進んでいる ②GDPに占める公的教育への比率が先進国で最も低い ③むやみに軍事的緊張をあおり、高め、無用な軍事費を増大しようとしている──などだ。
 悲しいことだが、今の日本政府には間違いを是正する動きは見られない

孫崎享 外交評論家
1943年、旧満州生まれ。東大法学部在学中に外務公務員上級職甲種試験(外交官採用試験)に合格。66年外務省入省。英国や米国、ソ連、イラク勤務などを経て、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大教授を歴任。93年、「日本外交 現場からの証言――握手と微笑とイエスでいいか」で山本七平賞を受賞。「日米同盟の正体」「戦後史の正体」「小説外務省―尖閣問題の正体」など著書多数。