2022年10月30日日曜日

30- 統一協会 闇の実像 第4回 「祝福」と「万物復帰」(下)

 しんぶん赤旗日曜版に不定期で連載されている「統一協会 闇の実像」の「祝福」と「万物復帰」(下)です。
 ここでは「霊感商法」の背景になっている「教義」とその具体的な「実践」方法に迫りつつ、統一協会の標的にされたAさんとBさん(どちらも女性)が、どのようにして財産を収奪されたかがリアルに紹介されています。
 なお連載1~3回分は下記で紹介しています。
   (9月6日)  統一協会 闇の実像 第1回(赤旗日曜版)
   (10月1日)パートナーシップ制度  /統一教会 闇の実像 第2回・第3回
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統一協会 闇の実像  「祝福」と「万物復帰」(下)
教義と一体の霊感商法 〝財産は地上では役に立たない″と献金促す
                   しんぶん赤旗日曜版 2022年10月30日号
 宗教ジャーナリスト、柿田睦夫さんの.シリーズ「統一協会 闇の実像」は4回目。「『祝福』と『万物復帰』」の下です。「霊感商法」の「教義」と「実践」に迫ります。
 統一協会のもう一つの重要教義が「万物復帰」。正体を隠した詐欺的伝道も霊感商法も合理化する教えです。この世の人も財もすべて神のものであり、地上というサタンの世界にある財産を本来の所有者である神=文鮮明に「復帰」させるのだから、それ善であり救いである。霊感商法の被害者も財産を「復帰」したのだから実は救われているのだという理屈です。
 統一協会はそれを、聖書の言葉を使って教えます。
 「宝を地上にたくわえるのはやめなさい」
 「宝は天にたくわえなさい。・・・あなたの宝のあるところに、あなたの心もあるからです」
                          (マタイによる福音書第6章)
 この一節は、一般的には「信仰と生活のあり方を問い、地上の宝(財産や地位や名誉)に執着してその奴隷になって生きることを戒め、それを正しく管理、運用するよう説いたもの」(日本長老教会・星出卓也牧師)と理解されています。これが統一協会にかかると「財産は地上にあっても役に立たない。天=文鮮明に積むことに意味がある」というふうな解釈になります。
 「金や財産は神に復帰″させてこそ救われると純粋に信じて摂理(霊感商法や献金のノルマ)達成のために頑張っていた」
 筆者が取材した元信者のほとんどがそう語っています。教義の是非は内心の自由に属し、第三者が口をはさむことではありません。だが統一協会の場合、教義を霊感商法のような反社会的行為に一体化させている。そこにこの教団の特異性と反社会性があります。

「鑑定する」と誘い出す 「ポラリス」事件の手口
 2007年から10年にかけて、警察は全国12力所で霊感商法を摘発し39人逮捕しました。全員統一協会の信者です。だが起訴されて裁判になったのは09年の「新世」事件だけ。他は略式起訴(罰金)止まりでした。摘発されると教団は「当法人は営利活動をしていない」とコメントし、末端信者が進んで認めて「個人の犯行」にする、という図式です。その一つが東京・町田市の「ポラリス」事件。全国霊感商法対策弁護士連絡会がその全容を公表しました。08年8月、二つの事件が同時進行します -。
 Aさんの夫は1年前にがんで手術。2日前、病院で再発を告げられた。町田駅前で見知らぬ女性に声をかけられた。「人生の転換期でお悩みのようですね」。聞かれるままにのことを話すと「先祖の協助あれば助かる。鑑定してあげる」。近くの「ポラリス」に誘われた。印鑑や健康食品を扱う店舗。Aさんを誘った女性はそこで「田辺先生」と呼ぱれていた。姓名判断や風水鑑定をして「家族運が希薄。念珠を持てば家族の輪ができる」。40万円の数珠を契約。その後も通うたぴに「がんに効く」人参液80万円や「悪霊を封じる」90万円を買う。を助けたい。その一心で、もう何も見えなくなっていた。
 「井田先生」なる女性も加わった(実は統一協会町田教会婦人部長)。家系図鑑定の結果は「霊界で先祖が苦しんでいる。供養が必要」。供養には財産の明示が要ると言われて夫妻の資産を話す。
 「先生」のお告げがエスカレートする。「夫は先祖の罪で病気になった。罪を清算しないと助からない。それには400万円必要」「このままだと長男に因縁が継がれる」「清平(韓国の教団聖地)での先祖解怨の費用300万円」「田辺先生が代理で行くから旅費6万5000円・・・」》
 8ヵ月後、夫は死去しました。結局、献金等を含めてAさんが支出したのは790万円。家族や友人がAさんの異変に気付かなかったのは、「先生」が「人に話したりネットを検索すると効果がなくなる」と口止めしていたから。
 同じ8月の横浜駅前。夫の女性問題に悩んでいたBさんに顔なじみの洋品店員が声をかけました。「風水鑑定で悩みが解決する」と紹介したのが町田市の「ポラリス」。「井田先生」が鑑定し「色情の家系。いずれ息子にも出てくる」。以下、Aさんと同じ経過をたどります。全国弁連の山口広弁護士は「顕著な組織性を示す典型例」だと語りました。

販売トークで心つかみ 洗脳教育施設へと送る
 Bさんを「ポラリス」に誘った洋品店員や「井田先生」らは統一協会の中でどんな役割を担っているのか。「新世」事件(別項)の裁判で、その構図が明るみに出ました。
    「新世」事件 09年、警視庁公安部が統一協会渋谷教会、同豪徳寺教会などを捜
      索し、印鑑販売会社「新世」の社長、営業部長と女性販売員5人を特定商取
      き引法違反容疑(威迫・困惑)で逮捕。社長と部長を起訴(有罪判決確定)し、
      残る5人は略式起訴(罰金)
 当時、統一協会は東京を8教区に分けていました。「新世」は「南東京教区」に所属し、社長以下の販売員は「天一国特別伝道隊」。霊感商法で稼ぐだけでなく伝道の任務をおぴていました。
 リーダーの社長が東東京教区の江戸川教会で壮婦(既婚の女性)の信者に講義した記録が公判に出されました。社長は「(印鑑)販売以前に、私達は宗教家であり伝道者である」とのべ、印鑑等の販売は「種植え」であり「いかに良い種を植えるか、良い動機の種を植えたら信仰教育」だと語っています。
 販売トークで相手の心をつかみ、救いを求める心を醸成させる。つまり「良い種」を植えつけて信仰教育施設(ビデオセンター)に送る。「新世」の場合、センターを「文化フォー ラム」と呼んでいました。そこで統一原理を教え(洗脳し)、さまざまな「実践トレーニング」を経て「前線部隊」に編入する。霊感商法の被害者を加害者に仕立てあげるカリキュラムです。「ポラリス」事件のAさんも10万円の受講料を払って「町田フォーラム」に通っていました。
 別の裁判資料によれば、霊感トークに入る段階でしておくことが顧客の「財把握」。その財産を「誰が主管しているのか。決定権を知る」こと。それによって買わせる印鑑などの値段やビデオセンターの段階での「SK=信者献金」の額の目安をたてる。そんなマニュアルの存在も裁判で判明しています。

韓国に奉仕する〝エバ国家″日本 
        文一族の遊興費、対米工作:・日本からの送金が財源
 霊感商法のような集金活動をしているのは、世界の中で日本の統一協会だけです。教理解説書『原理講論』で、日本は「エバ国家」であり「アダム国家」の韓国に奉仕する立場だからだと教えています。教団内では、日本の朝鮮侵略の歴史を示し、日本には噴罪(しょくざい)の義務があるのだというように教えます。実際、文一族の韓国や米国などでの豪華な生活遊興費をはじめ世界中での土地買いあさりや投資など、その財源はほとんど日本の稼ぎ。こんな具合です。
 「統一教東京支部が、過去9年で少なくとも8億ドルを米国ニューヨークの統一教世界本部に送り、各種事業と活動に使った」(韓国誌『新東亜』86年12月号)
 「もし日本が金を送らなければ、協会の活動のほとんどは停止するだろう」(米誌『ニューズウィーク』問9月2日)
 「韓国統一協会の赤字を埋めるために『底なしの瓶に水を注ぐ』ように流れ込んでいた日本統一協会の金の流れが断絶した」「一説によれば月の送金額が最盛期の十分の一の十億円」(韓国誌『時事ジャーナル』91年11月28日号=文鮮明は92年、霊感商法のテコ入れのため、金丸信自民党副総裁の口ききによる超法規措置で日本に入国した)
 70年頃、米ニクソン政権の在韓米軍削減計画阻止のため朴正煕軍事政権が対米工作に動き、文鮮明も71年に渡米して議会工作に当たりました。以後しぱらくの聞、米国に教団本部を置いていました。その間、文は新聞「ワシントン・タイムズ」を創刊。勝共連合の河西徹夫事務総長が87年、東京の「UCフェスティバル」でこう演説しています。
 「(同紙に)すでに100億円を投入している。しかしまだ赤字だ。・・・切り札を日本が握っている
 文鮮明は89年に突然、中国に自動車工場を建て、90年に当時のソ連のゴルバチョフ、91年に北朝鮮で金日成と会見しました。この頃、文は「勝共」ではなく「救共」だと唱えていたのです(統一協会の「反共」体質が変わったわけではありません)。文はゴルバチョフとの会見に「2000億円使った」、金日成には「200億円、さらに4000億円以上の援助金を要求された」と伝えられています。(『サンデー毎日』91年7月19日号)
 しかし、中国の工場は地元では「幽霊工場」と呼ぱれ、「人影はなく、工場が稼働された形跡もない」(中日新聞、94年8月6日付)状態で、ゴルバチョフは文との会見直後に失脚。北朝鮮は一時期、文を〝国賓″扱いしたけれど、その後は頓挫(とんざ)したまま。日本の信者の稼ぎはドブに捨てるように浪費されてきたのです。(つづく)