2022年10月15日土曜日

オバマとトランプはなぜ安倍国葬に来なかったのか ~ (世に倦む日々)

 世に倦む日々氏が掲題の記事で、安倍氏の国葬にオバマ、トランプなど「海外の首脳要人がこぞって欠席した」のは、「安倍晋三がカルト統一教会の親玉で、教団に恨みを持つ2世信者に殺されたという事実は、安倍晋三の政治家像を決する重要な問題であり、要人たちにとっては国葬に参列する意味を問われる点」だったからとしています。

 要するに海外の人たちが、カルト集団と接触する人に強い違和感、忌避感を持っていることの顕れということで、岸田首相が、参院選挙中に安倍氏が銃撃され亡くなったのは民主主義における最大級の悲劇であるかのような言い方をして、国葬に邁進したことが大いに「ズレていた」のだという指摘です。
 1980~90年代には欧州でも統一協会が宗教活動を標榜して欲しいままに振る舞ったようですが、元々 欧州ではカルト団体を忌避する感覚が旺盛なので最終的に強い規制が掛けられました。その点が、統一協会が現在に至るまで野放し同然で推移してきた日本とは大違いで、それが岸田首相の読み違いにつながったと言えます。
 日本が今後も、統一協会が信者を洗脳し様々に脅迫して法外な献金を要求し続けることを放任するのであれば、海外からますます信用されなくなります。
 それなのに岸田氏が統一協会問題でも一向に煮え切らない態度しか見せていません。リーダーの資質に欠けるというしかありません。
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オバマとトランプはなぜ安倍国葬に来なかったのか -「外交の安倍」の閑古鳥
                      世に倦む日日 2022年10月13日
国葬の弔辞で岸田文雄が絶賛した「安倍晋三の事績」の中でも、特に強調されていたのが安倍晋三の外交方面の成果と実績だった。10/11に発表されたNHKの世論調査でも、安倍晋三の国葬を「評価する」と答えた少数派33%は、評価する理由の第一として、「国際社会から評価されていたから」という点を挙げている。安倍政治を評価する者たちは、外国から高く支持されていたという認識と判断を持っている。海外の諸国民から、そして首脳や要人から一目置かれ、世界政治の中で重要人物だと認められていたと概念づけている。NHKなどマスコミは、安倍晋三に対してそうした像を通説にして撒いている。

だが、果たしてそれは真実だと言えるのだろうか。今回の国葬で意外だったのは、海外の首脳・要人がこぞって欠席した事実である。まず、マクロンが欠席の回答をした。それを見て横並びしたのか、メルケルが出席を手控えた。これはエリザベス女王の死去の前だった。英国も、ジョンソンもトラスも出席すると言わなかった。結局、G7の中で出席はカナダのトルドーだけという惨めな状況になっていたが、最終局面でトルドーも国内の災害対応を理由に取りやめた。キャンセルの口実を探していた事情が透けて見える。マクロンが出席に応じなかった理由は何だろうと想像すると、大きな要因はアメリカが副大統領の派遣に止めたからだろう。

その後、名前が出ていたオバマが見送りを決めた。オバマは8月初旬の時点では「参列の方向で調整」と報道が出ている。それが1か月後の9月中旬には「見送り」となった。また、安倍晋三の盟友で蜜月関係のアピールぶりが徹底していたトランプも、暗殺直後の7月10日に葬儀参列に意欲を示しておきながら、蓋を開けてみれば欠席となった。トランプについては、理由について憶測が流れていて、案内状が出されていないのではという見方もある。バイデン政権が日本政府に圧力をかけて阻止したか、バイデン政権の意向を忖度した日本政府がトランプに事情を話して、内々に辞退してもらった可能性がある。

だが、もしそうであれば、トランプの気性からして、その内幕の経過を暴露し、中間選挙に向けてのバイデン政権叩きの恰好の材料にしただろう。本当の理由は別にありそうだ。私は、オバマの欠席も、トランプの欠席も、統一教会が本当の理由ではないかと推測している。安倍晋三が誰に暗殺され、なぜこの事件が起きたのか。7月から8月にかけて事実内容がアメリカでも報道され、統一教会の2世信者の犯行の動機と背景が伝わったのだろう。安倍晋三とカルト統一教会との深い関係が判明するに及んで、国葬への参列がマイナスになり、中間選挙を前にした米国世論に悪い影響を与えかねないという判断に至ったのではないか

事件の直後は、統一教会と安倍晋三の関係の真相がよく伝わっておらず、単に反安倍過激派によるテロだと早合点して、トランプは即座に葬儀出席を表明、オバマも内諾を打診したのだと思われる。ぞの後、日本から届く情報を精査して、これはまずいと結論したのだろう。もし二人がそのまま出ていれば、アメリカの報道でも大きな話題になり、カルト統一教会の問題に焦点が当たる。アメリカ政界でも極右の重要な影響力の柱となっている統一教会がジャーナリズムに掘り返され、中間選挙に向けての争点の一つになりかねない。トランプはそれを選挙戦略にとってマイナスと計算して警戒し、オバマも「触らぬ神に祟りなし」と慎重になったのに違いない

マクロンが早々と欠席を決めた裏にも、統一教会の問題がある可能性がある。フランスは「反セクト法」を制定した国である。フランスがこの規制法を成立させた背景には、80年代から統一教会信者のトラブルが多発した経緯があった。フランス政府がカルト統一教会にセンシティブになるのは当然で、安倍晋三横死の真相を知ったときは衝撃だったに違いない。メルケルも同様で、欧州の首脳・要人は二の足を踏み、結局、英国も狡猾に一列に足並みを揃えた。安倍晋三カルト統一教会の親玉で、教団に恨みを持つ2世信者に殺されたという事実は、安倍晋三の政治家像を決する重要な問題であり、要人たちにとっては国葬に参列する意味を問われる点なのだ。

NZのアーダーンも安倍国葬に出なかった。マスコミは関心を払わないが注目点だと思われる。日本政府はこの人物の交渉・説得に相当なエネルギーを要したはずだ。華のあるキャラクターであり、国際政治の上で価値の高い政治家だからである。なぜ欠席したのだろう。同じ英連邦のトルドーは瞬時に出席の意思表明をし、後に一人だけ浮いて慌てる騒動の顛末となった。カナダが前のめりで出席を決めたのに、NZは踏み止まった。対照的な反応だった。日本側の執拗な依頼に首を縦に降らなかった。本来なら、カナダと同じ立場であり、安倍晋三とも仲よさげな関係の演出を繰り返してきて、早期に出席確定リストに名前が載ってよかったキーパーソンだ。

理由は何なのか。私は、イデオロギー(価値観)の問題だと睨んでいる。アーダーンは労働党のリベラルの政治家で、安倍晋三的な極右反共・従米反中の路線とは一線を画した位置にあるのだろう。そう考える根拠は他にもあり、例えば、クアッドにNZは入ってない。クアッド立ち上げを推進したのは、ブリンケンと安倍晋三である。主導者がブリンケンで、仕掛人が安倍晋三。本来、二人の構想からすれば、反中包囲網のイニシアティブは4か国の構成に止める必要はなかったはずで、ファイブ・アイズのメンバーであるNZとカナダを含めてよかった。4か国に止まり、名前もクアッドと命名したのは、NZ(アーダーン)が水面下で加盟を拒否したからではないか

その真相を隠すために、元々の構想段階から4か国が原点だったという物語を仕立て、それを撒いているのだと想像する。クアッドと同時に立ち上がったアライアンスにオーカスがある。主導者はブリンケンとジョンソンで、こちらは米国と英国と豪州の3か国の軍事同盟だが、オーカスにもNZが入ってない。それも不自然に見える。豪州が、NZと歩調を合わせずに国際政治でグループ活動しているのは異例で、アジア太平洋戦略で豪州とNZが独自の動きをする図は珍しい。こうした場合、英連邦の仲間の豪州とNZは常にセットで同一行動だった。豪州の前政権が反共反中のモリソンだったという事情もあるだろうが、豪州が一時の流れに引っ張られて国策を見誤った感がする。

アーダーンは42歳。NZは小国だが、ひょっとして彼女はメルケルのような大型の国際政治の指導者に化けるかもしれないという期待を持つ。アーダーンは、果たして安倍晋三が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」の戦略構想に対して、どのような見解と姿勢なのだろうか。傍目から見ても、それに全面的にコミットしておらず、ある程度の距離感を置いて臨んでいるのは明らかだ。アーダーンは、かなり早い時期に安倍国葬に欠席の返信をしていたと思われる。それはすなわち、極論して解釈すれば、NZはアメリカと中国との間に立つという意味であり、アメリカに一方的に肩入れしないという態度が含意されている。日本政府は、安倍国葬を「自由で開かれたインド太平洋」の祭典にしようと目論んでいた。

客観的に見て、アーダーンの肘鉄は、その日本政府の思惑を打ち砕く契機になったと言える。さて、今後、安倍晋三の「事績」である「自由で開かれたインド太平洋」の構想と路線はどうなるのだろう。前回の記事で、安倍晋三の「事績」とされるアベノミクスも、北朝鮮拉致政治運動も、二つとも破綻し、崩壊し、真実が暴露され、およそ積極的な「事績」として残るものではなくなり、大失敗の詐術と謀略だったという総括になるだろうと予言した。「自由で開かれたインド太平洋戦略」とは、つまるところ、中国封じ込め戦略であり、PRC(⇒中華人民共和国)をソ連と同様の運命にしようという佞悪な軍事外交戦略である。今はアメリカが主導しているが、オリジナルの提唱者は安倍晋三であり、安倍ドクトリンと呼んでもいい。

私は、こちらの方も破綻するだろうと予想している。それは、アベノミクスのカタストロフ⇒破局や北朝鮮拉致政治運動の破綻ほど確信を持ったイメージではなく、正直に言って、現時点では希望的観測のレベルのものである。破綻しなければ、台湾有事が勃発し、対中戦争となり、自動的に東アジアが第三次世界大戦の戦場となってしまう。日本が破滅する。AIロボット兵器と核攻撃で大量の犠牲者が出る。だから、それはできれば避けたいと願う。今年7月までは、それは不可避の確定的な運命だと観念し、その進行と結末の地獄を覚悟をしていた。けれども、世の中何が起きるか分からないもので、運命は神のみぞ知るである。その悪魔の戦略をオーガナイズ⇒組織・計画していた主軸の人間が消えた。

安倍晋三の横死は偶然であるようで必然の政治的事態だろう。横死によって本人の政治的実績も本質が露呈し、国葬には首脳・要人が閑古鳥という現実となった。「自由で開かれたインド太平洋戦略」のコンセプトを支持しコミットしているのも、世界の中では一部にすぎない。世界の大部分の方向性は、安倍晋三やブリンケンや右翼の意思とは別の地平にある。悪いことばかりは起きない。時にはよいことも起きる。偶然は必然である。悪ばかりが栄えることはない。神は必ず21世紀の人類史にふさわしい理念的な世界を地上を作り出す。人間の退廃と転落の象徴である新自由主義はいつかは滅びる。歴史修正の反動病弊もやみ、日本の保守は嘗ての経世会と宏池会の正規の軌道に戻る。そうした楽観論の希望的境地を持てるようになった。