しんぶん赤旗の「徹底追及 統一協会」日刊トンネル編(上)(下)を紹介します。
日韓トンネルは、九州本土から北に約20キロの離島・壱岐と韓国を海底トンネルで結ぶもので、文鮮明が1981年に提唱してから40年が経っています。しかし10兆円と推定される巨額の建設費は韓国でも問題視され、政府機関の交通研究院が「韓日海底トンネルは経済性がない」とする調査結果(2011年)を発表しています。日本の国土交通省でも国土形成計画で日韓トンネル構想を検討したことはなく、斉藤鉄夫国交相も「荒唐無稽な構想だ」と述べています。
そんな状況下なのに建設に当たる統一協会のダミー団体「国際ハイウェイ財団」は資金を集め続けており(ー般寄付金は1口10万円、特別寄付金は1口50万円)、同財団は、2021年7月、広報紙「国際ハイウェイ現場だより」で「壱岐・芦辺斜坑用地に初めての建物」とPRしました。
NPO法人「日韓トンネル研究会」の顧問名簿には多数の自民党国会議員の名前が載っていましたが、いずれも9月2日までに顧問を辞任しています。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
徹底追及 統一協会 日韓トンネル編(上)
草地にプレハブのみ 「いよいよ次は工事」と宣伝も
しんぶん赤旗 2022年10月23日
統一協会(世界平和統}家庭連合)の開祖・文鮮明が1981年に提唱し、40年にわたって計画されてきた巨大プロジェクトがあります。日本と韓国を結ぶ日韓トンネルです。国や自治体による調査すらされていない事業は現在、どうなっているのか-。九州の各地で取材しました。(統一協会取材斑)
10月中旬、取材班は旅客船に乗り、九州本土から北に約20キロの離島・壱岐(長崎県壱岐市)に向かいました。
山口欽秀市議(日本共産党)の案内で右手に風光明媚な海岸が広がる道を進むと、小高い丘の上にポツンと建てられたプレハブ小屋が見えてきました。雑木林に囲まれ、小屋のそぱにも草が生い茂っていました。未舗装の通路の入り口には金属製のチェーンがかけられ、小屋には誰もいない様子でした。
土地の所有者は、日韓トンネルの実現を目指す統一協会のダミー団体「国際ハイウェイ財団」。統一協会の政治組織「国際勝共連合」トップの梶栗正義氏が会長で、協会の田中富広会長や徳野英治前会長らが役員に名を連ねています。
初めての建物
同財団は2021年7月、広報紙「国際ハイウェイ現場だより」で「壱岐・芦辺斜坑用地に初めての建物」とPRしました。小屋は日韓トンネルの調査斜坑を掘るための″現場事務所″として設置され、ぞの開所式には梶栗会長から感謝状が贈られたとされます。
同財団は「いよいよ次は坑口設置工事です」と大々的に宣伝し、寄付を呼びかけています。一方、開所式から1年が過ぎても工事は行われていません。
取材班は壱岐市内にある国際ハイウェイ財団の事務所を訪ねました。部屋から出てきた男性に現場の進捗状況を聞くと聞くと「土地はありますが、斜坑が掘れるかどうか・・・」と本音を明かしました。
小屋が建つ土地の様子や斜坑の計画について住民の男性(87)は「たまに草刈りしているのを見かけるだけです。政府が予算をつけているわけでもないし、現実的に進んでいる印象は全くない」と断言します。
その土地が地元住民から統一協会の関連会社「極東開発」に売り渡された経緯を知る女性(75)は、バブル期にホテルを建設する計画があったと振り返ります。「トンネルを掘るという話を初めて聞いたのは20年ほど前だった」といい「統一協会との関係は全く知らなかった」と語りました。
空想的な計画
さらに取材を進めると、壱岐市議会で日韓トンネルの推進を主張した議員がいることが分かりました。豊坂敏文議長です。
豊坂氏は日韓トンネル推進長崎県民会議の会合に3回ほど参加しています。同氏はNPO法人「日韓トンネル研究会」の理事を務めたことを認めた上で、こう語りました。
「会合には国会議員や県議も参加し運動の前進が呼びかけられた。推進団体の人から依頼され、議会で日韓トンネルの早期実現を求める意見書の取り組みを紹介したこともある。現実性のない空想的な計画で、理事を続ける意味がないと考えて辞任した」
実現の見通しがない計画に協力した地方議員や国会議員とはー。 (つづく)
徹底追及 統一協会 日刊トンネル編(下)
推進団体に自民党重鎮 信者から献金集める口実に
しんぶん赤旗 2022年10月25日
「宗教法人が公共事業に近いことをする例は珍しいが、統一協会の目的のーつがいわゆる『地上天国』の実現であり、その目的に貢献する事業」
1981年に統一協会(世界平和統一家庭連合)の開祖・文鮮明が提唱した「日韓トンネル」構想の原点について、国際ハイウェイ建設事業団(現財団)は、そのように説明していました。
統一協会の「特別公共部門」として同事業団が設けられ、専門家を集めて「文鮮明師が提唱した基本的な理念と構想に、いかに肉付けするか」という考えのもとで研究が進められたとされます。
しかし、40年が過ぎても実現の機運は高まらず、調査斜坑(佐賀県唐津市)の掘削工事も同財団の敷地内540mの長さでズトップ。10兆円と推定される巨額の建設費は韓国でも問題視され、政府機関の交通研究院が「韓日海底トンネルは経済性がない」とする調査結果(2011年)を発表しています。
1口50万円も
そんな状況でも、同財団は寄付金を集め続けています。一般寄付金は「1口10万円」、特別寄付金は「1口50万円」と高額です。
日韓トンネル関連の献金をめぐっては、統一協会に返金を求める訴訟も起きています。
被害者の相談に応じてきた「全国霊感商法対策弁護士連絡会」代表世話人の山口広弁護士は「統一協会が文鮮明の理想を実現するための構想で、行政や政治家を動かそうと画策してきたと考えられます。その過程で資金が必要になり、信者から献金を集める口実にもなった」と指摘します。
国土交通省によると、国土形成計画で日韓トンネル構想を検討したことはなく、斉藤鉄夫国交相も「荒唐無稽な構想だ」と述べています。その一方、日韓トンネルを推進する団体には、自民党の重鎮が名を連ねていました。
NPO法人「日韓トンネル研究会」の顧問名簿にあったのは、細田博之衆院議長や今村雅弘元復興相の名前です。谷川弥一衆院議員、江島潔参院議員も顧問を務めていました。細田氏は17年と18年の計2回、日韓トンネル実現中国連絡協議会の大会に祝電やメッセージを贈った事実を認めています。いずれの議員も9月2日までに顧問を辞任しています。
同研究会九州支部の過去の名簿には、顧問として麻生太郎副総裁の名前もありました。
「期待」と講演
16年7月31日に唐津市で開かれた第3回「日韓トンネル推進唐津フォーラム」。佐賀新聞の「国会議員動静」欄には同日、自民党の古川康衆院議員が参加する予定が書かれていました。古川氏は佐賀県知事を務め、現在は国土交通政務官です。
同フォーラムは「日韓トンネル推進佐賀県民会議」が主催し、連絡先は統一協会の政治組織「国際勝共連合佐員県本部」の関係者でした。案内状のプログラムによると、古川氏は「日韓トンネルに期待する」と題した講演をしています。
当時、主催者側から協力を求められたという唐津商工会議所の幹部は「地元の経済界が日韓トンネルを推進した事実は全くありません。統一協会とのつながりが懸念されたので、後援の依頼を断った」といいます。
取材班は古川氏の事務所に参加の経緯を問いましたが、回答はありませんでした。
(日韓トンネル編 おわり)