このところの岸田首相は基本方針を一夜にして変更することが重なるなど、どこかおかしいと感じる人が増えています。首相宛のLINEは1週間も未読のままで放置されているということです。これは精神的に追い詰められている証で、「週刊現代」は、次々と降りかかる難題、統一協会に関連する政務3役らの不祥事、低迷する一方の支持率などのダメージが心身に蓄積し限界を超えつつあるのでは・・・と見ています。
「トロイカ体制」と呼ばれ、内閣発足以来続いていた麻生・茂木との密談もいまは途絶え、岸田氏と岸田派の幹部との間にも隙間風が吹くようになって孤立を深めているということです。先般突然自分の長男を総理秘書官に就けたのはその顕れだったのでした。
8月下旬、コロナの治りばなには唐突に原発の再稼働や新増設を口にして驚かせた一方で、足取りは弱々しくなって周囲からは後遺症の「ブレイン・フォグ(頭に靄がかかる)では」と噂されたということです。
ある官邸幹部は、首相は10月中旬からずっと体調が悪いにもかかわらす豪州外遊を強行し、週末も休まないため疲れが取れず、そのため周囲への指示内容も国会での答弁もコロコロ変わるという悪循環に陥っていると話しています。信念も定見も持たないままトップに上り詰めればこうなるというケースの一つかも知れません。
秋風が吹きすさぶ岸田氏の現況を現代ビジネスが取り上げました。
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失意の岸田総理「LINE送っても既読にすらならない」
もはや諦めの境地か
現代ビジネス 2022/11/01
「週刊現代」2022年11月5日号より
国会で、会見で、総理の様子がどこかおかしいと感じる人が増えている。次々と降りかかる難題、発覚する不祥事、そして低迷する支持率――心身に蓄積したダメージは、限界を超えつつある。
もう諦めの境地
自民党岸田派のある議員は、スマホをチェックしては気を揉む。
「総理は派閥の議員には『何かあったらLINEでいつでも連絡してほしい』と言っていた。なのにここ1週間ほど、送ったメッセージが既読にすらならないんです。もう官邸で半径数m以内にいる人以外、誰ともコミュニケーションをとれていないんじゃないか」
岸田のもとには昼夜を問わず、自民党議員や官邸のスタッフたちから無数のメールやLINEが届く。八方塞がりの岸田を案じる連絡や、政策に関するアドバイスだ。しかし今、岸田はそれに返信するどころか、目を通すことすら困難になっている。いわゆる「未読スルー」―精神的に追い詰められている証だ。
前経済再生担当相の山際大志郎と統一教会の関係が報じられた直後、岸田は山際を更迭しようとしたが、「お目付け役」がそれを許さなかった。山際の所属派閥の会長で党副総裁の麻生太郎と、山際と同じ神奈川が地盤で、やはり麻生派重鎮の前党幹事長・甘利明である。
「麻生さんと甘利さんは『山際が辞めれば(統一教会との関係が指摘されている)細田(博之)衆院議長もドミノ倒しで辞めることになる』と言って強く止めてきた。言われているうちに総理もその気になり、途中からは『山際を絶対に守る』と路線変更したんです。
そうして粘っているうちに回復不可能なほど傷が広がり、辞めさせるほかなくなった。今までの努力は一体何だったんだ、という気持ちでしょう」(前出と別の自民党岸田派議員)
10月24日夜、山際との面会を終えて出てきた岸田は、どこか諦めたような、投げやりな表情を浮かべていた。
「(辞任の)申し出を了とすることを決断いたしました」「申し出があった。私としては、了解した」「私が、それを了とした」「申し出を了とした」「辞職を了とした次第であります」「了とした」……。
ひどい鼻声で、何を聞かれても壊れたレコードのように、山際の辞任を「了とした」と繰り返す岸田。その回数は計8回にも及び、記者たちは顔を見合わせた。
この理不尽な状況を「了とする」しかない――自分にそう言い聞かせているかのようだった。
岸田派でも孤立している
うわの空で会見を終えて官邸を出た岸田は、品川区西大井へ公用車を飛ばした。かつて東芝が所有し、今は家具小売大手のニトリHDが迎賓館として使う「志高荘」に招かれていたのだ。
同席者は、外相の林芳正、党税調会長の宮沢洋一、そして衆院予算委員長で岸田派事務総長の根本匠。いずれも、岸田派の重鎮中の重鎮である。
だが岸田は、主宰者であるニトリ会長・似鳥昭雄に挨拶だけすると、わずか10分で再びそそくさと車に乗り込んだ。
前出と別の岸田派所属議員が証言する。
「岸田さんは、もはや自派のナンバー2である林さんや、従兄弟である宮沢さんにさえ心を許すことができない。支持率低迷で機能停止した政権の例にもれず、今や岸田官邸では財務省がやりたい放題ですが、その財務省の茶谷(栄治事務次官)たちが真っ先に情報を入れるのは、岸田さんではなく『財務族』の林さんと宮沢さんなんですから。
宮沢さんは身内なのに、岸田さんのことを笑っているらしいよ。『インベスト・イン・キシダと言うけれど、この状況で日本に投資する人なんているわけがない』と」
もはやグロッキー
公邸へ戻った岸田は、ひとり自室にこもる。1年前に晴れて総理総裁に就いた直後は、A6判の小さな「岸田ノート」を夜な夜な開いては、政権構想や「潰す政治家リスト」を書きつけたものだった。
夏前までは無敵、絶好調と言って差し支えなかった。支持率は盤石、コロナも落ち着き、参院選勝利の勢いそのままに黄金の3年間を駆け抜ける――そんな自信を胸に毎夜、床についていたのだ。
それがロシア・ウクライナ戦争の泥沼化と空前の円安、インフレ、そして何よりも元総理・安倍晋三の突然の死と「統一教会」。予想外のアクシデントが、次から次へ降りかかってくるではないか。
夏の終わりにはコロナにもかかり、それからというもの、官邸や党では「足取りが弱々しい」「ブレイン・フォグ(コロナ後遺症で、頭に靄がかかったようになること)なのではないか」と噂されるようになった。会見や国会答弁で言葉に詰まる様子に「脳梗塞で緊急入院した小渕恵三元総理を思い出す」と、岸田の「脳の健康」を危惧する声まで、党内の一部からは上がり始めている。
グロッキーの岸田は、もはや日々の仕事をこなす気力を失いつつある。ある官邸幹部が言う。
「急に冷え込んできた10月の中旬からずっと体調が悪い様子なのですが、オーストラリア外遊は強行したし、週末も休もうとしない。疲れが取れないので、周囲への指示内容も国会での答弁もコロコロ変わる、悪循環に陥っている」
そんな岸田総理から、自民党副総裁の麻生太郎や幹事長の茂木敏充ら、政権や党の重鎮ですら離れ始めたとの証言も出ている。
「崩壊寸前」とも言われる政権の内幕を【失意の岸田総理「孤独すぎる毎日」麻生氏ら重鎮にも「放ったらかし」にされて…】で引き続きお伝えする。(文中一部敬称略)
失意の岸田総理「孤独すぎる毎日」
麻生氏ら重鎮にも「放ったらかし」にされて…
現代ビジネス 2022/11/01
「週刊現代」2022年11月5日号より
統一教会問題で後手後手にまわり、支持率低迷から持ち直す兆しのない岸田内閣。ついには岸田総理の「体調」を懸念する声まで出始めた。終わりの見えない苦境を【失意の岸田総理「LINE送っても既読にすらならない」もはや諦めの境地か】に続いてレポートする。
麻生も茂木も見放した
岸田総理があからさまに迷走を見せているのが、まさに今国会の焦点である「統一教会問題」と「インフレ対策」だ。統一教会への調査については「信教の自由を保障する観点から慎重に判断する」などとずっと及び腰だったのに、10月17日にいきなり調査を行うよう指示し、正反対に方向転換した。
「消費者庁で『霊感商法対策検討会』を立ち上げた担当大臣の河野太郎さんが独走し、総理にも確認せず、教団に厳しい有識者会議の報告書を官邸に上げたのがきっかけです。総理は最初『こんなもの出して、どうするつもりだ!』と河野さんに激怒したといいますが、弱腰では支持率低下に歯止めがかからないのも事実なので、やっぱり厳しい対応をとることにした」(自民党中堅議員)
冬にかけて高騰が避けられない電気代・ガス代抑制策については、岸田の言動は「不可解」というべき状態だ。経産省の幹部がため息をつく。
「総理は『料金抑制のため、春までに電力事業者と小売業者に支援金を出す』と言い出しましたが、経産省は事前に何の相談も受けておらず『寝耳に水』状態。
もうガソリン補助金に3兆円もの国費をつぎ込んでいるのに、4月に統一地方選があるからといって『とにかく電気代とガス代を値上げさせるな!』と無茶ばかり言う。現場とろくに意思疎通もせず、『聞く力はどこへ行ったんだ』と呆れられています」
まるで筋の通らない駄々をこねる子供のように、思いつきで政策を左右し始めた岸田。当然、人心は離れてゆく。自民党で予算委員を務めるベテラン議員が証言する。
「私はいつも国会で岸田総理を目の前で見ているが、この国会では異様なほど総理がしゃべらされている。普通は総理が答弁に困ったら松野(博一官房長官)や担当閣僚が遮ってでも助け舟を出すものだが、みんな総理のことを放っているんだ」
「トロイカ体制」は崩れかけ
ついには政権発足以来、毎日のように密談を重ねて「トロイカ体制」を築いてきた麻生や党幹事長の茂木敏充さえ、岸田と距離をおき始めた。自民党麻生派関係者が言う。
「麻生さんは、岸田さんが長男の翔太郎さんを秘書官に就けたとき『何で俺にも相談しないんだ。最悪のタイミングで要らんことをして』と怒り、それ以来冷たい態度をとるようになった。一方で茂木幹事長は、急に静かになっています。次の総裁選に出る気満々ですから、岸田さんが泥沼にはまってもがくのを静観するつもりなんでしょう」
官邸と内閣官房では、常時1380名の職員が忙しく立ち働く。自民党にも381名の国会議員がいる。だが岸田は孤独だ。気を許せる相手は、長男の翔太郎を除けば、永田町でたった一人だけになってしまった。
「党総務会長の遠藤利明さんとばかり、よく会って話しているんです。遠藤さんは総裁選で岸田陣営の選対本部長を2回もやって気心が知れているし、グチもいくらでも聞いてくれる。11月22日の『いい夫婦の日』には、奥さん同伴で4人で会食するらしいですよ。でも遠藤さんは政策に強いわけではないし、難しいことを相談できる相手じゃないから、意味ないよね」(前出・岸田派所属議員)
本当は、呑気に飯など食いながらグチっている場合ではないのだ。 山際の辞任は序章にすぎない。
山際と並び「秋の山寺」と揶揄される復興大臣の秋葉賢也や、総務大臣の寺田稔の政治資金問題が決着する見通しは全く立たず、10月末の予定だった補正予算案提出はすでに11月下旬へずれ込んでいる。会期末の12月10日を過ぎ、会期延長しても予算案が通らなければ、見えてくるのは「退陣」の二文字だ。
広島サミットも危うい
広島サミット――。来年5月に地元で開くこのイベントを、岸田はずっと「晴れの舞台」だと思い定めてきた。岸田の側近らは「総理はサミットまでは死んでも辞めないつもりだ」と口を揃える。だが、それにさえ暗雲が垂れ込めている。
「外務省が『広島には各国首脳を泊められるホテルがない』と言い出したのです。会場・宿泊の候補になっているリーガロイヤルホテルやプリンスホテルでは、格が足りないと。県外にヘリを飛ばすかどうか、という話になっているが、それだと広島で開催する意味がない」(官邸スタッフ)
心の糸は、もはや切れてしまった。
10月23日、岸田は北朝鮮による日本人拉致被害者家族の集会に姿を見せた。拉致問題解決をライフワークとした安倍が、過去に何度も出席してきた催しである。だがこの日の岸田は終始猫背で、挨拶も途切れ途切れで弱々しかった。
「すべての……拉致被害者の方の……。一日も早い……ご帰国を……」
会場の人々は「大丈夫なのか」と声をひそめた。 「かつての安倍支持層にアピールしたかったのでしょうが、あれでは逆効果ですよ。そもそも、岸田さんがいくら安倍さんをマネしたところで岸田さんが本来やりたいこととは違うのだから、白々しいだけ。自信を持って振る舞わないと、ますます人が離れていってしまう」(前出・自民党中堅議員)
宰相の重圧から解放されるほかに、岸田の内面にかかる靄を晴らす方法はないのかもしれない。 (文中一部敬称略)