経済学者の植草一秀氏が「日本経済超停滞を招いた主犯」とする記事を出しました。
日本の実質GDPがピークを記録したのは19年4~6月期で、年率557・6兆円でした。それ以降はこの水準を上回ったことは一度もありません。その理由は単純明快で19年10月に消費税増税(8%→10%)が実施されたことでした。
その後日本経済は不況に転落しましたが、原因はこの消費税増税であり、コロナショックによるものではありませんでした(感染の第1波は翌年の8月20日頃をピークとする前後1ヶ月ほどで、その後は一旦鎮静)。
植草氏は消費税を増税すれば日本の経済は「墜落」すると繰り返し警告しましたが、実際にその通りになりました。GDPの最大の構成項目は「家計消費」であり、生産物の振り向け先の最大費目が個人消費ですから、消費が落ち込めばGDPは下がり景気は悪くなります。
その消費税大不況に目下インフレが追い討ちをかけています。日本のインフレ率は消費者物価指数で前年比3%に到達しました。11月には食品・飲料などの800以上の品目が値上げされます。円安の影響がより反映されるのは年明けからと言われているので、日本の経済がこの先どこまで悪化するのか見当もつきません。この日本経済大不況を導いている責任は、安倍政治を継承するという岸田内閣と黒田日銀にあります。
植草氏のブログを紹介します。
それとは別に 日刊ゲンダイが、「『消費税減税は間違い』枝野発言で国民裏切り 岸田自民&立憲に『増税大連立』計画の仰天!」という記事を出しました。
立民党の泉代表は、先に「維新の会」とは一緒にやっていけると親近感を表明して呆れさせましたが、枝野前代表もこのところ「消費税減税は間違い」と繰り返し強調しています。そんなことを言い出せば「悪魔の法制」と呼ぶほど便利な消費税に頼りたい財務省は喜ぶことでしょうが、枝野氏は一体何が悲しくて二重課税であり逆進性を持つ大衆課税である消費税を上げたがっているのでしょうか、理解に苦しみます。
そういえばあらゆる面で財務省の応援を受けて民主党の代表に選出され、民主党政権の首相の座についた野田佳彦氏も、ひたすら消費税増税を叫んだ挙句、自分が決断した衆院選で大敗して自民党に政権を奪還されたのでした。。
日刊ゲンダイの記事を併せて紹介します。
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日本経済超停滞を招いた主犯
植草一秀の「知られざる真実」 2022年11月16日
日本経済の停滞が深刻だ。
11月15日に発表された2022年7-9月期の実質GDP成長率は年率換算で前期比1・2%減少した。4四半期ぶりのマイナス成長になった。
日本の実質GDPがピークを記録したのは2019年4-6月期。年率表示で557・6兆円だった。
これ以降、この水準を上回ったことが一度もない。
理由は単純明快。2019年10月に消費税増税が実施されたこと。
アベノミクスの8年間に2度の消費税増税が実施された。
2014年4月に消費税率は5%から8%に引き上げられた。
その消費税率が2019年10月にさらに10%に引き上げられた。
消費税率は2倍になった。
消費税率が10%に引き上げられることを受けて日本経済は不況に転落した。
日本経済は2018年10月から景気後退に陥ったのである。
消費税増税で日本経済が不況に転落したタイミングでコロナショックが日本を襲った。
日本の実質GDPは2020年4-6月期に500・6兆円に急減した。
実質GDP推移
コロナショックを背景に強力な財政金融政策が実施された。
先鞭を付けたのは米国。トランプ大統領が200兆円規模の財政支出追加を決定。
FRBはFFレートを1・5%水準から一気にゼロ水準に引下げた。無制限、無尽蔵のコロナ融資も実行された。
日本でも無担保・無利子の融資がばらまかれた。
財政金融政策の総動員によって日本経済は改善したが、実質GDPは2022年4-6月期に545・3兆円に戻した後、7-9月期には543・6兆円に再減少した。
コロナ前の2019年4-6月期の557・6兆円の水準を回復していない。
コロナショックが発生する前に日本経済が消費税増税不況に陥っていたことを見落とすことはできない。
この消費税の巨大負担が日本経済を低迷させている主因になっている。
2021年度の法人企業の内部留保資金が516兆4750億円に達したことが公表された。
巨大な資金を企業が溜め込んでいる。この法人内部留保に課税してはどうかとの提案がある。
これに対してすかさず出てくる反論が「二重課税論」だ。
法人の内部留保資金は法人課税後の利益処分の一形態である。
税金を払った後の内部留保に課税すれば課税が二重になるとの批判が生じるわけだ。
しかし、同じことは消費税にも言える。消費税を払う原資は個人の可処分所得。
働いて得た賃金から労働者は所得税等を支払う。所得税等を支払った残余が可処分所得だ。
この課税後所得で買いものをすると、再び税金を取られる。
これもれっきとした二重課税なのである。
消費すると税金をむしり取られるのだから消費税は「消費懲罰税」に名称を変更するべきだ。
消費をすると懲罰が課せられる。
これでは人々は可能な限り消費を抑制しようと努めるだろう。
消費が落ち込めば景気が悪くなる。生産した生産物の振り向け先の最大費目が個人消費だ。
個人消費が切り詰められれば販売は不振に陥り、生産活動は停滞する。
このために消費税大不況が広がっているのだ。
ここに追い討ちをかけているのがインフレだ。
日本のインフレ率も消費者物価指数で前年比3%に到達した。
賃金が上がらず物価だけが上がる。実質賃金が減少している。
実質賃金が減るのだから消費が減退するのは当然のこと。
この日本経済大不況を導いているのが岸田内閣と黒田日銀である。
岸田内閣と黒田日銀の経済政策失敗の責任を追及しなければならない。
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(以下は有料ブログのため非公開)
「消費税減税は間違い」枝野発言で国民裏切り 岸田自民&立憲に「増税大連立」計画の仰天!
日刊ゲンダイ 2022/11/14
一体どうしてしまったのか。立憲民主党の枝野幸男前代表の“急旋回”が話題だ。
12日、さいたま市内で講演した枝野氏は、昨年10月の衆院選で「消費税減税」を訴えたことについて「間違いだった」と発言。「あれ(消費税減税)が敗因の大きな一つ」と決めつけ、「見直すべきだ」と言い出した。
先月は自身のYouTubeでも「消費税減税は間違い」「二度と言わない」などと話していたが、昨年の衆院選で5%の時限的減税を共産党などとの共通政策として選挙協力を行った当時の代表が枝野氏だ。突然の転向には、与野党に戸惑いの声が広がっている。
立憲は今年6月にも消費税減税法案を他の野党と共同提出し、直後の参院選で公約に掲げたばかり。現執行部は消費税減税を訴える立場を維持しているのに、前代表があっさり「間違い」と言うのは、消費税減税を支持して投票した国民に対して、あまりに不誠実で無責任ではないか。
■背後に野田元首相の存在
「実は、路線変更の背景には野田佳彦元首相の存在がある」と、野党関係者がこう解説する。
「野田氏が先月25日に衆院本会議で行った安倍元首相に対する追悼演説は、自民党支持層にも高く評価された。これに気を良くした立憲議員の間には『野田佳彦を党の顔にして政党イメージを左寄りから中道保守にしたい』という声がある。ネックは、野田氏が首相在任中に3党合意を推し進めて消費税増税を決めたことで、減税を訴えて選挙を戦った党の代表にはなり得ない。ならば、党の方針自体を変えてしまおうということでしょう」
■財務省主導、清和会“切り捨て”で支持率が上がる
驚くことに、その先には岸田自民との大連立も視野に入ってくるという。消費税増税を進めた野田内閣は“財務省内閣”と呼ばれていたが、岸田内閣も財務省の影響が強く、共鳴するものがあるのだ。
「岸田首相が立憲の増税派と手を結んで大連立に向かうという待望論が一部にある。自民党内で積極財政派は清和会を中心とした安倍元首相に近かった勢力で、統一教会とも関係が深い。求心力が低下している岸田首相がここで清和会を切り捨てれば、支持率が上がるという見立てもあります。そこに増税シフトの立憲が抱きつこうとしている。財務官僚の振り付けでしょうが、左派色が強い菅直人元首相らは連立入りを拒否されそうです」(前出の関係者)
左派を排除した“希望の党騒動”の再来かとウンザリしてしまうが、立憲が国会対策で日本維新の会と共闘を始め、共産党を切り捨てたのも、増税大連立への布石ということか。
「野田氏が消費税を上げないという公約を破って民主党政権は国民の信頼を失った。今回の枝野氏の発言も国民に対する裏切りです。消費税減税が間違っていると思うなら、枝野氏は立憲を離党して自民党に入れてもらえばいいじゃないですか。庶民イジメの岸田政権がフラフラなのに、自民党と同じような主張をしてどうするのか。明確な対立軸を打ち立てて、野党一丸となって増税政権の打倒に動くべきです」(政治評論家・本澤二郎氏)
増税翼賛体制なんて、国民は誰も求めていない。