統一協会の害悪や信者やその家族が受けた莫大な被害の数々は文字通り枚挙にいとまがありません。国はいま質問権の行使と解散命令請求を目指して作業を進めていますが、解散命令の要件として「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」(宗教法人法)が挙げられています。
全国霊感商法対策弁護士連絡会によると、協会の違法行為を認定した司法判断は民事事件で少なくとも約30件、伝道、献金、物販、集団結婚式という協会の主な活動のいずれについても違法判断が確定しています。
しんぶん赤旗がその一端を紹介しました。協会の諸活動で30件以上が5年以上も前に、司法によって違法・違憲と断定(確定判決)されています。そうであれば文化庁宗務課が野党のヒアリングに対して「まだその要件を満たしていない」と答えたのは一体何だったのでしょうか。国会の場でなかったとはいえ公然と虚偽の回答をするのは許されません。
現在与党側は何故か「マインドコントロール」という要素を除外するよう主張しているということです。しかしマインドコントロールこそは統一協会の「伝道」の技法を貫く真髄になっているわけで、その要素の有無は教団側にとっては死命を制するものと言えます。実効性のある規制を進めて欲しいものです。
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徹底追及 統一協会 伝道・献金・霊感商法・集団結婚…活動すべて違法判断
しんぶん赤旗2022年11月18日
統一協会(世界平和統一家庭連合)の解散命令請求が焦点の一つになっています。宗教法人法は命令の要件として「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」を挙げます。全国霊感商法対策弁護士連絡会によると、協会の違法行為を認定した司法判断は、民事事件で少なくとも約30件。伝道、献金、物販、集団(合同)結婚式という協会の主な活動のいずれについても、違法判断が確定しています。(統一協会取材班)
正体を隠し勧誘する伝道
宗教団体という「正体」を隠して勧誘する統一協会の伝道・教化活動そのものが不法行為だと認めたのは、元信者らが起こした「青春を返せ訴訟」の札幌地裁判決(2012年3月)と札幌高裁判決(13年10月、確定)です。
統一協会は「自己啓発セミナー」や「運勢鑑定」などを名目に対象者を勧誘し、宗教活動だという事実を隠したまま「家系に先祖の悪い因縁があるため、現在の家庭にも不幸が及ぶ」などと告げて不安に陥れることを伝道の入り口としてきました。
その後、教義を刷り込むビデオ講座を繰り返し受講させます。初期には「夫婦や家庭のあり方」や「霊界と因縁」などを、進んでくると「人間は『原罪』を負っている」ことや「再臨の救世主(メシア)に出会うには財物に対する執着を捨てて神や先祖のために使うこと」などを教え込むといいます。
その先の「トレーニング」に進んで初めて、統一協会や文鮮明の名を伝え、「罪を清算するため」として献金や協会への貸し付けを求めるといいます。
この「正体隠し」と指摘される伝道について判決は、「統一協会の伝道活動は、受講生が原罪や霊界、因縁が実在すると信じて疑わない状態になるまで、宗教性を完全に秘匿することに大きな特徴がある」「この伝道は非常に不公正」「経済取引なら、独占禁止法、特定商取引法などにより違法とされるはずだ」と指摘しました。
違法確定判決 こんなに 協会本体の不法行為も
その後の教化活動として行われる合宿形式の「トレーニング」などで、信者たちは自宅を離れて集団生活をし、過酷な「伝道活動」「経済活動」(物販など)に3年半ずつ従事することなどを求められたといいます。
判決は「入信後間もない時期から、普通の社会生活を二の次にし、伝道と経済活動に膨大なエネルギーを注ぎ、その後に合同結婚式で結婚するという人生をたどる」「協会が求める実践は、人生と財産を差し出し、経済活動に従事するという非常に特異なもの」としました。
宗教の伝道であることを明らかにした時点でも、このような特異な実践が求められることは隠されていました。判決はこの点を「宗教性の秘匿と同様、あるいはそれ以上に不公正」だと指摘します。
その上で判決は、信者らによる伝道・教化活動を「社会的相当性の範囲から著しく逸脱する民事上違法な行為」だと判断。統一協会には使用者責任があり、賠償責任を負うとしました。
自由意思 制約下での献金
統一協会の献金勧誘を違法とした判決は多数あります。
例えば1990年代に勧誘された男女3人による訴訟での2010年12月の東京地裁、11年11月の東京高裁判決(確定)。被害者が「霊界の存在や先祖の因縁をことさらに意識させられ、教義をそれと知らないまま教え込まれ、不安を植え付けられていった」と指摘。原告らによる献金は「信者らの不当な影響の下、従わざるを得ない心理状態にあった」「自由な意思決定が制約された状況下でなされた献金であり、信者らによる社会的に相当な範囲を逸脱した違法な行為に基づくもの」だと判示しました。協会の使用者責任も認めました。
献金について使用者責任ではなく、「統一協会そのものの組織的不法行為」を認定したのは、16年1月の東京地裁、同6月の東京高裁判決(確定)です。
この件では女性信者が、夫に無断で夫の親の遺産や給料・退職金などを献金し続けました。夫は妻と離婚した後、協会に約1億円の賠償を求めました。
判決は「統一協会が組織的活動として、夫の財産を夫の意思に反して内緒で交付させており…夫の意思に反して出資されたことを認識していた」と判断。協会が「組織的な不法行為として夫に対する損害賠償責任を負う」と結論付けました。
霊感商法、刑事で有罪確定
統一協会の物販活動(霊感商法)が刑事裁判で裁かれ、有罪が確定したのが印鑑販売会社「新世」(東京都渋谷区)の事件(09年11月東京地裁判決)でした。
社長以下全従業員が信者だった新世は、路上で声をかけた被害者を協会関連施設に連れ込み、「先祖の因縁」などのトークで不安を抱かせて40万~300万円で印鑑を買わせていました。
犯罪とされたのは、被害者に「先祖がたくさん人を殺している。ご主人もその因縁のせいで亡くなった」などと「執ように言うなどして印鑑購入を迫り、威迫して困惑させた」こと。特定商取引法違反の罪で同社に罰金800万円、社長に懲役2年(執行猶予4年)と罰金300万円を言い渡しました。
印鑑販売の手法が「信仰と混然一体となったマニュアルや講義によって周知され、販売員は販売手法が信仰にかなったものと信じて実践していた」と述べ、協会の宗教活動と物販活動が一体のものだと認定しました。
集団結婚式への勧誘も違法
過酷な伝道・経済活動の末に、多くの信者が「原罪がなくなる唯一の方法」とされる集団結婚式に進みました。開祖の文鮮明が指定した相手と結婚します。
この集団結婚式への参加強要を違法と認めたのが02年8月の東京地裁判決(最高裁で確定)。女性が統一協会に対し、「婚姻の自由を侵害された」として慰謝料などの支払いを求めました。
判決は、信者が「メシア(文鮮明)による結婚以外は罪の繁殖だと言われていた」「勧誘・教化の過程で教え込まれたカイン・アベル(上位者への絶対服従)の教義により、文鮮明の選んだ相手を自己の意思で断ることが困難な精神状態に置かれていた」と認定。
集団結婚式に参加しなければ自己や先祖の救いがないと信じさせられていたとして、信者らによる「合同結婚式への参加に向けたさまざまな行為には、原告らの婚姻の自由を侵害する違法がある」と結論付けました。
全国霊感商法対策弁護士連絡会によると、このほかに集団結婚式について婚姻を無効とした判決や家裁の審判の例は、全国で50件を超えるといいます。