2022年11月4日金曜日

次期NHK会長に「前川喜平元文科事務次官」を推す動きが広がる

 故安倍晋三氏は政治家の中でも、報道機関、とりわけ公共放送NHKの理念や使命そして政権からの独立の重要性などにもっとも疎く、逆にメディアの持つべき批判精神を目の敵にした人でした。
 NHK会長は政府が任命する「NHK経営委員会」が選ぶことになっていますが、結果的にはストレートに首相の意向が反映されると言ってもよく、第一次安倍内閣時代の2008年以降、NHK会長は5期15年に渡って、アサヒビール出身、JR東海出身、三井物産出身、三菱商事出身、みずほ銀行出身の5人の財界出身者がその任に就いてきました。これではNHK会長に公共放送のトップの気概を望む方が無理です。そしてNHKはこの間大いに偏向してしまいました。
 次期会長は23年1月に選出されますが、いま市民団体「市民とともに歩み自立したNHK会長を求める会」を中心に「次期NHK会長はこの人しかいない」として、元文部科学事務次官の前川喜平氏(67)を推す動きが広がっています。
 電子署名もスタートしました。 ⇒  Change.org
 日刊ゲンダイの記事と同会小滝 一志事務局長の「電子署名 Change. org 呼びかけ文」を紹介します。
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次期NHK会長に「前川喜平元文科事務次官」を推す動きが広がる 市民団体が呼びかけ
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「次期NHK会長はこの人しかいない」──。2023年1月に任期満了を迎えるNHKの前田晃伸会長(77)の後任として、元文部科学事務次官の前川喜平氏(67)を推す動きが広がっている
 みずほフィナンシャルグループ会長などを歴任し、20年1月にNHK会長に就任した前田会長はこれまでの定例会見で、2期目について「まったくありません」と続投を否定。放送法で、NHK会長は最高意思決定機関の「NHK経営委員会」が選ぶことになっているため、現在は同委員会の「指名部会」が後任人事について協議を進めているとみられる。
 そんな中、前川氏の次期NHK会長就任を呼びかけているのは、市民団体「市民とともに歩み自立したNHK会長を求める会」

 同会によると、今のNHKは「公共放送の理念を理解しているとは思えない財界出身の会長が続き、時の政権に忖度したニュースや世論調査、社会の関心事に応えようとしない日曜討論やNHKスペシャルが日常化している」とし、「次期会長がこれまでの悪弊を引き継ぎ、市民の宝である公共放送をこれ以上毀損することは許されない」などと主張。
 その上で、森友・加計問題などで会見した前川氏について、「政権からの不当な圧力に屈せず公僕としての職責を果たす。これは放送法にうたわれた公平公正や、真実を追求し健全な民主主義のために資するジャーナリストの精神と深く重なる」として推薦することを決めたという。
 同会は11月4日、前川氏同席のもとに衆院第2議員会館で会見を開き、活動の趣旨について説明する。1日から署名サイト「Change.org」で賛同署名を募る活動も始めており、12月1日にNHK経営委員会に前川氏を会長に推す申し入れ書と賛同署名を提出する予定だ。

 同会の小滝一志事務局長は「市民の受信料で支えられる公共放送NHKを、公共の精神が希薄な人物にかじ取りを任せるのではなく、公共の大切さを心の底から理解する人に託したい」としている。


小滝 一志事務局長の電子署名 Change. org 呼びかけ文

 公共放送NHKは視聴者の受信料で支えられています。しかしNHK会長は総理大臣が任命したNHK経営委員会が決めます。
 第一次安倍政権時の2008年1月に、密室の協議で福地茂雄氏(アサヒビール出身)が会長に選出されて以来、NHK会長には5期連続で安倍氏を支持する財界出身者が選ばれて来ました。そうした会長のもとでNHKは「アベ・チャンネル」と揶揄されるような、政権にすり寄り、時には市民をないがしろにする放送を、ニュースを中心に繰り返して来ました。
 私たちは、来年1月に任期満了を迎える前田晃伸会長(みずほ銀行出身)の後任を選ぶにあたって、NHK 経営委員会が過去の病弊を断ち切り、市民とともに歩み自立した公共放送のリーダーにふさわしい新会長を選ぶことを求めます。
                  市民とともに歩み自立したNHK会長を求める会

 私たちは日本社会の民主主義と文化の向上のために、公共放送NHKが果たすべき役割は大変大きいものがあると考えています。そのためにNHK会長には、ジャーナリズムのありようや文化的な使命について高い見識を持ち、言論・報道機関であるNHKの自主・自立を貫き通す人物が選ばれる必要があります。そして、その選定にあたっては、透明性が確保されるべきです。
 ところが第一次安倍晋三政権時代の2008年1月に、菅義偉総務大臣が古森重隆氏(富士フィルム社長)を経営委員長に据え、古森氏が主導して福地茂雄氏(アサヒビール出身)をNHK会長に選んで以来、松本正之氏(JR東海出身)、籾井勝人氏(三井物産出身)、上田良一氏(三菱商事出身)、前田晃伸氏(みずほ銀行出身)と、5期(15年)の長きにわたって、安倍氏を支持する財界出身者が、経営委員長と政権幹部との密室の協議によって任命されて来ました
 その間、「政府が右ということを左とは言えない」と発言した籾井会長に象徴されるように、NHKは政権にすり寄り、市民の活動を冷笑するような放送を繰り返して来ました。特に政権に都合のよい報道に偏った政治ニュースは、「アベ・チャンネル」と呼ばれるまでになりました。
 菅義偉政権になると前田会長を中心とするNHKの政権追従の姿勢はさらに顕著になり、市民の間にコロナ禍での東京五輪の開催に批判的な意見が強まる中で、NHKは世論を無視してまで、大会の強行を後押しし、盛り上げに邁進しました。そんな中、昨年12月にはBS1スペシャル「河瀨直美が見つめる東京五輪」という番組で、民主主義の根幹をなす市民の活動、その表現手段としてのデモを貶める内容の番組が放送されました。
 一方、前田会長が「スリムで強靭な新しいNHK」を目指すとして進める改革は、公共放送の価値や役割を軽視し、もっぱら経済合理性に重点を置いた人事制度改革・営業改革・関連事業改革に終始しています。前田会長が進める改革の内実は、一般の営利企業ですでに実践されてきたコンサルティング会社による改革案を、そのまま持ち込んだものに過ぎません。こうした強引な改革によって、NHKの現場は疲弊・荒廃し、放送番組の質の低下となり、視聴者の期待を裏切る事態が生まれています
 10月11日には前田会長は、菅氏ら総務大臣経験者を中心とした自民党議員からの圧力に屈し、取りまとめていた経営計画案を急遽修正してNHK経営委員会に提出したことが新聞報道によって明らかになりました。政権主導で選ばれたNHK会長では、政治家の圧力に抗えない事実が白日の下にさらされました。

 このままでは日本社会にとってかけがえのない公共放送が崩壊しかねません。私たちは、公共放送の健全性を取り戻し、この社会の民主主義を育てるために、ジャーナリズムに深い見識を備え、NHKの自主・自立を貫き通すためのリーダーが、次期会長に選ばれることを強く望みます。