大間違いが明らかになったアベノミクスの継承を明言している岸田政権は、日本の経済・財政がこの先どうなるのか 見通しが真っ暗な中でも安倍元首相が提唱した「軍事費倍増」や「敵基地攻撃能力の保有」に何らの抵抗も示しません。余程、軍備大増強が大事なことと思い込んでいるのでしょう。
軍事費倍増のためには年間11兆円余りを捻出する必要があります。当面は赤字国債という方法もあるのでしょうが、恒久的には民生費を削減するしかありません。政府税調は早速消費税率のアップの検討を始めたということです。他国はインフレ対策として、消費税の減税を行うというのにです。日本の国民はこの先さらに貧しくなっていきます。
その大軍拡が行き着く先は明らかで、あの昭和20年(1945年)の敗戦であり、焼け野原になった都市の数々でした。それなのに自民・公明をはじめ維新の会、国民の各党がこの大軍拡に諸手を挙げて賛成しているのは本当に不思議なことです。
同紙のコラム部分で紹介されている各党幹部の発言は以下の通りです。
軍拡推進あらわ 首相や与党、補完勢力幹部の発言 |
元自衛隊幹部で、軍事ライターの文谷数重さんが「 ~ 必萎なのは緊張緩和の努力」と、しんぶん赤旗日曜版に語りました。
文谷さんは、この日本の動きは「中国に敵対あおる誤ったシグナル」を与えるものと述べています。
日本は史上空前の戦争国家である米国に言われるがままに誤った道を進もうとしています。
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元自衛隊幹部も警鐘 必萎なのは緊張緩和の努力
元海上自衛隊幹部 軍事ライター 文谷数重さん
しんぶん赤旗日曜版 2022年11月6日号
岸田政権の軍事費倍増や敵基地攻撃能力導入の動きに警鐘を鳴らす元海上自衛隊幹部で軍事ライターの文谷数重さん。その訳を聞きました。
軍事ライター 文谷数重さん
「敵基地攻撃」を巡る動きを見ていると、脅威や憎悪をあおることでかえって日本の安全保障を危うくしていると感じます。脅威をあおることが安全保障だと思い込んでいたとすれば、それは間違いです。旧軍の時代、国民に脅威をあおり、憎悪が高まった結果、引くに引けなくなって戦争に突入した歴史を繰り返してはいけません。
中国を脅威とみているなら、必要なのは憎悪をあおることではなく、緊張緩和の努力でしょう。強硬対応をやめ柔軟対応が求められます。柔軟対応は従属を意味しません。日本には強力な軍事力があり、中国も日本を軍事的に簡単に屈服できる国と考えていません。
現実味のない「台湾有事論」を口実にした軍拡は中国との無用の対立を招きます。それよりも可能な協力を進めて緊張を緩和していく。それが成熟した国の対応というものではないでしょうか。
中国に敵対あおる誤ったシグナル
防衛費の倍増は、お金を入れる方向が間違っています。日本経済は転落の一途。慢性的な経済不振に加え、新型コロナウイルス流行、円安と物価高で国民は生活苦に直面している。本来なら民力涵養(かんよう=養い育てること)の時期です。
北朝鮮も捨てた先軍政治
現状の防衛費は5兆円超。税収の約1割にあたります。倍増分をまかなうには教育や社会保障、生活困窮者支援エネルギー対策などの将来への投資は削らざるをえません、
未来への投資が削られ、税負担が増し、経済がさらに弱くなれば、それこそ防衛費も支えられなくなる。計画を進めれば国家財政がひっ迫して立ちゆかなくなるといわれた戦前の「八八艦隊」(※)を思い出します。自滅の道でしかありません。
※八八艦隊 旧日本海軍の建艦計画。 1920年に予算が帝国議会の協賛を経たものの、実現はし
ませんでした。戦艦8隻、巡洋戦艦8隻を中心とする艦隊兵力を整備しようとしたことから、
こう呼ばれました。
『軍事研究』(9月号)では「国軍にふさわしい態度ではない」と書きました。「国軍」の言葉は不愉快でしょうが、自衛隊は国民と苦楽をともにしなければなりません。国民生活が苦しいときには自衛隊も節約しないといけないのです。志の問題として自分たちだけ潤沢な予算を保障され特権階級化していいのか。国民が疲弊していても軍事優先では、今では北朝鮮ですら「無理がある」として放棄した先軍政治と同じ発想です。
「憲法の制約打破」か望み
GDP(国内総生産)比2%は昔、米国が同盟国に「おねがい」した軍事費の目安にすぎません。金額に具体的な根拠はありませんし、そこまで届かない国が大半です。
「2%」でなけれぱならない確たる根拠はないのです。
見過ごせないのは現状の浪費や不効率には手を付けようとしていないことです。
なによりも陸上自衛隊です。中国対策の主力ではありません。海空自衛隊を強化するなら代わりに減らすべきですが、そのままです。組織の見直しもしていません。陸自は約14万人で師団・旅団を15個つくっていますが、非常識です。フランス陸軍は約12万人で実質7個旅団です。司令部や師団長以下の将軍だけが異様に多いいびつな軍隊です。GDP比2%の防衛費で導入を検討しているのが敵基地攻撃能力です。
軍事的視点だけでいえば、敵基地攻撃能力導入の検討はありうることだと私は考えています。それでも今の政府の検討状況を見ていると不安を覚えます。導入することでどんな効果があるのかが見えてこないからです。例えば、北朝鮮のミサイル発射を導入理由にしていますが誤りです。抑止力にはなりません。米国の核と通常戦力に70年間対峙(たいじ)してきた北朝鮮が今さら自衛隊のミサイルに恐怖を抱いたりしません。
しかも敵基地攻撃能力の導入は与党の政治で進められています。そのため与党国防族の情念を色濃く受けています。「普通の国」願望、「大国」願望、憲法の制約打破といった屈折した願望を満たす道具として扱われています。
今の日中関係をみると、歴史問題や安全保障を巡って対立する部分があっても、国どうしでは敵対せずにやってきました。憎悪より理性が勝っているといえるかもしれません。
そんな時に自民党は敵基地攻撃能力の名称を「反撃能力」と言い換え、「指揮統制機能等」も攻撃対象に加えました。攻撃先を軍事基地や軍隊に限らな民間の輸送、生産、通信施設も含むニュアンスもうかがえます。
これは日本から進んで中国に対決・強硬姿勢を示そうとするものです。主張している人からすれば、それが狙いなのですが、何をもたらすのかを分かっていません。
安全保障での対立は軍隊かぎりにして国と国は敵対しないという日中の暗黙のルールを覆す誤ったシグナルを送ることになります。相手は余計に日本を敵視することになるでしょう。
軍拡推進あらわ 首相や与党、補完勢力幹部の発言
(省 略)