2022年11月30日水曜日

やはり息の根を止める必要 看過できない「泥船政権」の憲法破壊(日刊ゲンダイ)

 「敵基地攻撃」は当初「敵基地先制攻撃」と呼びました。それは相手国が「日本を標的にしたミサイル発射の兆候を正確にキャッチし、その直前に発射基地をピンポイントで攻撃する」というものでしたが、今は移動式発射台や潜水艦から突然発射されるのでピンポイント攻撃は無理です。それに兆候をつかんだとしても発射の意図や方向が分からなければ、日本への武力攻撃に着手したとは言えないので、結局、国際法違反先制攻撃となります。

 それに対して敵の司令部を攻撃するという代案?もあったようですが、それは直ちに全面戦争開始につながる攻撃に他なりません。
 それで「先制」という表現をなくしましたが考え方は同じで、結局は抗戦能力の保持ということで明らかな憲法違反です。
 有識者会議は22日、敵基地攻撃能力の保有「不可欠」と結論づけ「報告書」を提出しました。そのメンバーは元駐米大使や金融関係者、報道関係者ら10人で、最初から「結論ありき」の有識者会議でした。反対意見はまったく出なかったということです
 岸田政権はそれを口実にして、年末に改定する『安保関連3文書』に敵基地攻撃能力の保有を書き込む方針ですが、憲法との整合性へ視点が皆無の「報告書」を元に、そんな風に進んで良い筈はありません。
 そもそもその方向に向かえば、戦後日本が周辺諸国から攻撃の対象にならなかったのは『専守防衛に徹している』と認識されていたからという、絶対的な平和国家の根拠を放擲することになって、周辺国との軍事的緊張を高めることは必定です。
 そうなれば後は軍備拡張競争という「賽の河原の石積み」に励む中で、ひたすら損耗への道を歩むしかありません。これの何処に日本の安全があるというのでしょうか。
 岸田首相には元々信念なく、強い米国にも党内の強者にも逆らわずに保身に汲々としているだけです。自分がなく 状況に流されるトップほど、国を危機に陥らせると言われますが、実際その通りになってきました。
 日刊ゲンダイが「やはり息の根を止める必要 看過できない『泥船政権』の憲法破壊」とする記事を出しました。
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やはり息の根を止める必要 看過できない「泥船政権」の憲法破壊
                       日刊ゲンダ 2022年11月27日
                       (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
 この国をどうするつもりなのか。一気にキナ臭くなってきた。
 自民党と公明党が25日、実務者会合を開き、自衛のために敵のミサイル基地を叩く「敵基地攻撃能力」の保有について議論を開始した。これまで躊躇していた公明党が「容認」に転じたことで、来週中にも敵基地攻撃能力の必要性で合意する見通しだ。
 敵基地攻撃とは、要するに「やられる前にやっちまえ!」ということだ。敵がミサイルを発射する前に敵の基地を攻撃するというものである。
 しかしこの理屈は、ウクライナに侵攻したロシアとほとんど同じだ。プーチン大統領も「侵略に対する先制攻撃だ」と「自衛」だったと主張している。逆に、たとえ「自衛目的」だったとしても、もしウクライナが侵略される前にロシアの基地を攻撃していたら、国際社会はウクライナに同情もせず、支援もしなかったのではないか。
 そもそも、ミサイル発射の兆候を正確にキャッチし、その直前にピンポイントで攻撃する、などということが可能なのかどうか
 元海将の伊藤俊幸氏が、毎日新聞でこう語っている。
「巨大な発射台からミサイルが発射されていた時代とは違い、今は移動式発射台や潜水艦から突然発射される。もし兆候をつかんだとしても発射の意図や方向が分からなければ、日本への武力攻撃に着手したとは言えないその段階での反撃は先制攻撃となり国際法違反であり、撃たれる前に敵基地を攻撃するのは不可能だ
 軍事評論家の前田哲男氏もこう言う。
敵基地攻撃は、技術的に無理だと思います。ミサイルは潜水艦や列車からも発射される。まず、発射の兆候をつかむのが困難だし、移動する標的を捉えることも難しい。自民党のなかには、だったら敵国の司令部を攻撃すればいい、などという乱暴な声もありますが、そんなことをすれば全面戦争につながってしまいます」

「結論ありき」の有識者会議
 どんなに「自衛目的だ」と強弁しても、敵基地攻撃は、国際法に反する先制攻撃だと見なされる可能性が高い。戦後日本が守ってきた「専守防衛」という考え方からも大きく外れる。なのに岸田政権のやり方は、あまりにも姑息だ。
 政府の有識者会議は22日、敵基地攻撃能力の保有は「不可欠だ」と結論づけ、岸田首相に「報告書」を提出している。しかし、会合は4回しか開かれていない。
 しかも、反対意見はまったく出なかったという。メンバーは元駐米大使や金融関係者、報道関係者ら10人だった。最初から賛成者だけを集めた「結論ありき」の有識者会議だったのではないか。
「有識者会議の報告書を受け取った岸田政権は、自公の合意を得た後、年末に改定する『安保関連3文書』に敵基地攻撃能力の保有を書き込む方針です。しかし、敵基地攻撃能力の保有は、日本は火の粉を払う『盾』に徹し、相手国の本拠地を攻撃する『矛』は米軍に任せるという安保政策を大きく変えるものです。どうしても保有したいのなら、国会で議論し、その上で解散総選挙で信を問うのが当然でしょう。有識者会議の結論や自公の合意だけで既成事実化するのは、おかしいですよ。安保政策は憲法問題に直結するのに、有識者会議のメンバーに憲法学者が入っていなかったことも不可解です」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)
 多くの国民が気づかないうちに、日本の安保政策は大きく変えられようとしている。

これでは危機が高まるだけ
 つい最近まで防衛省だって、憲法9条を持つ日本は敵基地攻撃はできないとしていたはずだ。
 防衛白書にはこうある。
専守防衛とは、武力攻撃を受けたときにはじめて防衛力を行使し、態様も自衛のための必要最小限に限るなど、憲法の精神に則った受動的な防衛戦略の姿勢
 こうなると敵基地攻撃は、憲法違反の疑いも出てくるのではないか。
 実際、歴代政権は敵基地攻撃能力の保有について、「平生から他国を攻撃する、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持つことは、憲法の趣旨ではない」(1959年、伊能繁次郎防衛庁長官)という答弁を維持してきた。
 しかも敵基地攻撃能力の保有は、抑止力どころか、周辺国との軍事的緊張を高めることにもなりかねない。立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)が言う。
「日本が敵基地攻撃能力を保有すれば、アジア諸国で軍拡競争が始まるでしょう。戦後、日本が周辺諸国から攻撃の対象にならなかったのは『専守防衛に徹している』と認識されていたからです。放棄してしまえば、日本への警戒心が高まるのは確実。いわゆる『安全保障のジレンマ』です。自国の安全を高めようと軍備を増強すると、相手国も軍事力を強化し、かえって緊張が強まってしまう。敵基地攻撃能力の保有は、最悪の事態を招く恐れがあります」

信念のない男が国民を危機にさらす
 敵基地攻撃能力の保有にシャカリキになっている岸田は、要するに日本を「戦争ができる国」にしたいのではないか。
 岸田は来年1月、米ワシントンを初訪問し、バイデン大統領と会談する予定だ。バイデンに「防衛費の相当な増額を確保する」と約束した岸田は、敵基地攻撃能力の保有、防衛力強化を“手土産”に訪米するつもりなのだろう。
 この男がヤバイのは、信念もなく、保身に汲々としていることだ。
 ノンフィクション作家の保阪正康氏は週刊誌「AERA」(9月26日号)でこう言っている。
「岸田さんは状況の中でしか生きられない政治家です。自分の思想を掲げて集団を引っ張っていく、ということができない人です。そういう人物がリーダーを務める危険性は、状況を自分で作っていない分、無責任になることです」
 実際、自分がなく、状況に流されるトップほど、国を危機に陥らせることは歴史が証明している。
 芯のない岸田が敵基地攻撃能力の保有や防衛力強化を言い出したのも、右派へのアピールのためなのは明らかだ。
 「宏池会出身の岸田首相は、信念を持って軍事力の強化に動いているのではないと思います。しかし、岸田派は第4派閥と基盤が弱いため、安倍派を中心としたタカ派の支持を取り付けなければ、政権を維持できない。タカ派にいい顔をするために過激な政策を打ち出しているのでしょう。国民が物価高に苦しんでいるのに、防衛力増強のために増税まで検討している。ご自慢の『聞く耳』は一体どこを向いているのか。国民生活に寄り添えないのであれば、首相を辞任すべきです」(金子勝氏=前出
 やはり岸田政権の息の根を止める必要があるのではないか。野党やメディアはあらゆる疑惑で追い込まなければダメだ。