2022年11月19日土曜日

窮地の岸田首相 政権維持へ表沙汰にできない秘策

 支持率が下がり続けている岸田首相は、コロナ感染以降鼻声が治らず 悄然とした姿をとどめています。しかし松野官房長官(安倍派)は一向に首相を支える姿勢を見せないし、茂木幹事長に至っては「次はオレだ」という雰囲気で、麻生氏も不穏な動きを見せているということです。
 そうであれば岸田氏が首相の座を去るのは時間の問題ということになりますが、実は政権の維持に自信満々だということです。政治ジャーナリストの泉 宏氏が東洋経済オンラインに「窮地の岸田首相 政権維持へ表沙汰にできない秘策」という記事を載せました。
 それによると岸田氏が何か秘策を持っているという訳ではなく、党内には当面彼に替わる人物がいないので、解散さえしなければこのまま首相の座に留まれると判断したからということのようです。
 岸田氏はハト派などではないので長く首相の座に留まっても何一ついいことはないのに、困ったことです。
 併せて現代ビジネスの記事:「信念なき岸田総理の『大迷走』ついに麻生・茂木が『次の政権』に向けて動き始めた…!」を紹介します。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
窮地の岸田首相、 政権維持へ表沙汰にできない秘策
   閣僚辞任ドミノで支持率落ちても強気なワケ
                   泉 宏 東洋経済オンライン 2022/11/17
                          政治ジャーナリスト 
 岸田文雄首相が大ピンチに直面している。旧統一教会問題や物価高騰への対応での集中砲火、問題閣僚の“辞任ドミノ”も加わって、内閣支持率は続落した。しかし、国会混乱の最中の8日間にわたる東南アジアでの首脳外交では、自信満々で「外交の岸田」をアピールするなど、政権維持への強気の姿勢は変わっていない
 10月3日の臨時国会召集前後からの相次ぐ難題処理の拙劣さで、与党内からも「判断がすべて後手」(自民幹部)との批判が噴出。政局運営での岸田首相の求心力喪失が際立つことで、政界では「早期退陣論」も現実味を増している。

岸田降ろしの封じ込め戦略が奏功
 にもかかわらず、岸田首相は「事ここに至っても自信と余裕の心境」(側近)だとされる。周辺によると、その理由は「衆院解散さえしなければ退陣に追い込まれることはなく、政権内部の“岸田降ろし”封じ込め戦略も効果が出ている」(側近)との判断からだという。
 もちろん、超大型経済対策実施のための第2次補正予算の早期成立も含め、臨時国会での与野党攻防を乗り切ることが危機脱出の大前提。ただ、野党も補正処理には柔軟対応の構えをみせ、首相も「旧統一教会問題解決のカギとなる被害者救済法案で野党と妥協して今国会成立にこぎつける」(自民幹部)ことを狙っている。
 ただ、こうした「前のめりの対応」(同)が自民党内の不信感を招き、同法案に警戒心を強める公明党とのあつれきも顕在化している。このため、首相周辺から「首相の独断が混乱を拡大させれば、自らの首を絞める」(官邸筋)との不安ももれるなど、今後の展開は極めて不透明だ。
 10月末の大手メディアの世論調査で、内閣支持率はいったん下げ止まり傾向となった。その時点で、岸田首相は「1つひとつ成果を出せば、反転攻勢は可能」(側近)と自信を回復していたとされる。
 ただ、旧統一教会との“癒着”での拙劣な対応で、10月24日に“更迭”となった山際大志郎前経済再生相を、すぐさま党のコロナ対策本部長に就任させるという大失態。さらに、首相を支えるはずの岸田派幹部・葉梨康弘氏の、いわゆる「死刑にハンコ」発言での11月11日の法相更迭劇で「危機管理能力欠如を露呈」(閣僚経験者)して国民的不信も急拡大し、内閣支持率は危険水域に突入間近となっている。
 そうした状況にもかかわらず、「首相は心の奥底では、次期総裁選まで続投する自信は揺らいでいない」(岸田派幹部)とされる。その背景には、①最大派閥・安倍派の空中分解の可能性、②反岸田勢力の旗頭の菅義偉前首相、二階俊博元幹事長の支持取り付け、③有力な後継候補の不在、という自民党内の権力構図があるとされる。
 まず安倍派の状況だが、当初有力視された塩谷立会長代理の昇格案が、同派中堅若手などの反対で頓挫。その背景には次期総裁選に向けての同派総裁候補の激しい主導権争いがあり、その場しのぎの「集団指導体制」でも軋みばかりが目立ち、「次期総裁選でも草刈り場になりかねない状況」(若手)だからだ。その場合、岸田首相は「最大派閥の圧力から解放される」(周辺)ことになる。

“会食攻勢”で二階氏ら懐柔、後継候補も不在
 次に、党内の「反岸田勢力」の活動をみても、「その中核となる菅、二階両氏が政権支持を表明するなど広がりに欠ける」(自民長老)のが現状。10月下旬からの岸田首相の二階氏らに対する“会食攻勢”も「効果が出ている」(同)とされる。
 さらに、“ポスト岸田”候補については、自民党内で茂木敏充幹事長、河野太郎・内閣府特命担当相らの名前が挙がる。ただ、「いずれも党内での評価は低く、とりあえず岸田首相の続投が無難との声が多い」(閣僚経験者)との見方が支配的だ。だからこそ「当面引きずりおろされるリスクは少ないとの判断から、政権危機にもうろたえていない」(側近)のだ。
その一方で「首相の『解散せずに任期3年全う』というのは絶対に表沙汰にできない“秘策”」(同)でもある。「次期総裁選不出馬を明かせば、政権はすぐ死に体化し、何もできなくなる」(自民長老)からだ。
 このため首相は、側近らや安倍派幹部の松野博一官房長官などを通じて、来年広島サミット後の衆院解散説を流すなど、「求心力維持への手練手管に腐心している」(同)とされる。自民党内でも、「首相は虎視眈々と解散の機会を探っている」(若手)と受け取る向きが多い。
 もちろん、麻生太郎自民党副総裁ら政権を支える最高幹部は「薄々、首相の本音を感じ取っている」(首相経験者)のは確かだ。ただ、「それはあくまで暗黙の了解で、麻生氏も当面は早期解散論を主張し続ける構え」(同)とみられている。
 首相が参考とするのは、三木武夫元首相(故人)の政局対応だ。約半世紀前、「金権批判」で退陣に追い込まれた田中角栄首相(故人)の後継首相となり、「クリーン三木」を売り物に、戦後最大のスキャンダルとなったロッキード事件での田中氏逮捕を主導したとされるのが三木氏。

「挙党協」に屈しなかった三木首相の粘り腰が念頭に
 これに対し、三木・中曽根両派を除く田中氏逮捕に反発する党内各派が、「挙党体制確立協議会(挙党協)」を結成して1年半にも及ぶ激しい“三木降ろし”を展開した。しかし、三木氏はあえて解散で対抗せず、衆院議員の任期満了選挙に持ち込んで途中退陣を免れるという「政治史に残る粘り腰で任期を全うした」(自民長老)。
 ただ、こうした首相の“秘策”には、なにより官房副長官や首相秘書官で構成する「官邸チーム」や、総裁派閥・岸田派の結束と支援が不可欠だ。ところが、国民の政権不信を招いた岸田首相の“朝礼暮改”は「まさに官邸チームの能力不足」(自民幹部)が原因とみられている。
 さらに葉梨前法相や、政治資金スキャンダルで野党が罷免を要求する寺田稔総務相は、いずれも岸田派の主要幹部なのに、「首相を支えるどころか足を引っ張るばかり」(派若手)だ。これに関連して同派関係者は「親分のために命を懸ける議員が1人もいない」と嘆息する。
 16日の日本の国会は「首相不在で開店休業状態」だったが、岸田首相が参加しているインドネシア・バリ島でのG20(20カ国・地域首脳会議)開催中に飛び込んだ「ロシア製ミサイルがポーランド東部の村に着弾した」との情報に、G7と北大西洋条約機構(NATO)が緊急首脳会合を開催する事態となった。その後、バイデン米大統領が「ロシアから発射されたとは考えにくい」と述べたが、国際社会は緊迫した。
 さらにこれと同時進行で、アメリカでトランプ前大統領が次期大統領選出馬を高らかに宣言したことが世界中で速報された。「まさに、国際情勢は物情騒然の様相」(外務省幹部)だ。

求められる「身命を賭して国を守る決断」
 これにより、かねて岸田首相が指摘してきた「日本にとって戦後最大の危機」がますます深刻化するのは明白。だからこそ与党内からも「宰相としての決断と実行が、日本の未来を決める。政権維持の策謀などは論外」(自民長老)との声が相次ぐのだ。
 このため、政界では「岸田首相が身命を賭し、『チーム岸田』を率いて国を守るための決断と実行に邁進しない限り、任期途中での政権崩壊は避けようがない」(同)との厳しい見方も広がるが、当の岸田首相にその覚悟があるのかどうか……。


信念なき岸田総理の「大迷走」ついに麻生・茂木が「次の政権」に向けて動き始めた…!
                          現代ビジネス 2022.11.18
 支持率が発足以来最低の30%台前半まで下がった岸田政権。前編【岸田総理に異変「スーツの肩に…」気力はもう限界、自民党では「次の総理」選びが始まった】では、岸田総理の心身の状態が限界に達しつつあること、それを受けて閣僚や自民党議員らの人心も離れ始めたことを報じた。そんな中、政権の中枢を担ってきた大物の間では「ポスト岸田」を見据えた動きが表面化しつつある
  
茂木と麻生の不穏な動き
 総理である岸田をもっとも近くで支える立場でありながら、「次」を狙って動き回り始めた者がいる。そう、自民党幹事長の茂木敏充だ
 「岸田さん、麻生(太郎)さん、そして私。総裁、副総裁、幹事長という立場にあり、またそれぞれ政策グループの長でもあるわけです。古代ローマのですね、政治体制になぞらえて『三頭政治』と言う人もいるようですけれども……」
 笑みを浮かべ、こう語る茂木の様子が自民党内で物議を醸した。10月23日のBSテレ東の番組「NIKKEI 日曜サロン」に出演した際の発言である
 「三頭政治というのは、3人が同格ということだろう。いくら何でも、幹事長の茂木が自分を岸田総理や麻生さんと並べるのは先走りすぎだ」(前出の自民党閣僚経験者)
 だが茂木が自信満々にこう語るのには、それなりの理由がある。岸田を総理の座に押し上げた「キングメーカー」麻生と、茂木が密約を交わしたから――こう見る者も自民党内には少なくないのだ
  
茂木・麻生の「立ち話」
 その見方を裏付ける動きがあったのが、11月8日のことである。全国紙政治部デスクが言う。
 「まず昼の衆議院本会議直前に、議場近くのエレベーターの前で麻生氏と茂木氏が数分間、記者も全て遠ざけて何やら話し込んだ。さらにその夜、茂木氏は大家敏志参議院議員の政治資金パーティに出席。大家氏は麻生氏の最側近の一人として知られていますが、そこでも茂木氏は麻生氏、さらに萩生田氏と長時間話しているのを目撃された」
 ほぼ時を同じくして、党内で「麻生さんは『岸田が辞めることになれば次は茂木だ』と言っている」との噂が流れ出した。
 「この頃を境として一気に『岸田さんの次をどうするか』という空気になったわけです。実際、松野さんや高木さんが機能せず、統一教会の件では茂木さんが矢面に立って公明党や野党と調整するようになった。茂木さんは今、『岸田の代わりはオレしかいない』という自負でいっぱいですよ。
 茂木さんは昔からジジ殺しで、麻生さんからの評価も高いし、麻生さんは(自派の総理候補である)河野太郎さんを嫌っている。混乱に乗じて、茂木さんが麻生さんの後ろ盾を取り付けていても不思議じゃない」(前出と別の自民党中堅議員)
 
「もう再生できる感じじゃないねえ」
 官房長官が離れ、幹事長が離れ、後見人にも見放された。手詰まりとなった岸田は、これまでに輪をかけて「根回しなし」「調整なし」で思いつきを口にするばかりになってしまった。
 「岸田さんは『何としても統一教会被害者救済法をこの国会で成立させないと、年末には岸田下ろしが始まりかねない』と必死の様子で、突然『被害者と面会する』なんて言い出した。与野党協議や国対委員長会談で中身を慎重に詰めようという時に、総理がなりふり構わずパフォーマンスに走るものだから、萩生田さんや茂木さんは『今さらどういうつもりなんだ』と呆れていましたよ。
 辞めた山際(大志郎・前経済再生担当大臣)さんの後任になった後藤茂之(前厚生労働大臣)さんも、総理から連絡があった後『受けざるを得ないか……』といかにもイヤそうだったし、加藤勝信(厚労大臣)さんは『この支持率の下がり方は、もう再生できる感じじゃないねえ』と人ごとみたいに言っていた。閣内にさえ、完全に諦めムードが漂っている」(前出と別の自民党閣僚経験者)
 山際の馘首が遅れたことに懲りたのだろう。岸田は失言で炎上した法務大臣の葉梨康弘を即座に更迭したが、政権末期の様相をますます印象づけただけだった。
 ある自民党重鎮によれば、かつて安倍は、内輪の会合で岸田をこう論評したという。
 「岸田にはパッション、気持ちがないから(周囲や国民から、ポジティブな反応が)はね返ってこないんだ。オレはこれを絶対にやり遂げたいとか、これだけは守りたいんだという気持ちがない。だから、総理になっても誰にも支持されないと思うよ」
 安倍は昨年の総裁選で直前になって岸田支持を取りやめ、現・経済安保担当大臣の高市早苗を担いだ。いっとき岸田に目をかけたはずの安倍が翻意した背景には、「岸田は誰にも嫌われていないが、愛されてもいない」という洞察があったのだろう。確かに、毀誉褒貶あれど安倍や高市を熱狂的に支持する有権者は少なからずいるが、岸田にはほとんどいない。
 
「統一教会解散」しかない
 もっとも、ダッチロールの真っただ中にいる岸田に、そんな省察ができるはずもない。それどころか、ここにきて以前本誌が報じた通り、破れかぶれの解散総選挙を画策している。自民党ベテラン議員が明かす。
 「岸田さんは『ネガティブ解散』になるのを承知でやりそうですよ。というのも、党選対が大急ぎで情勢調査をやっている。明らかに突発的な解散総選挙に備えた動きです。
 調査によれば今のところは、政権交代になるほどの議席減は起こらない。争点に据えるのは、統一教会に対する質問権行使の是非。つまり『統一教会を潰すべきか否か、国民の審判を仰ぎたい』と言えば、勝てると踏んでいるわけです。
 来年にずれ込めば小選挙区の区割り改定が影響してくるから、遅くとも12月の臨時国会終盤までに解散を打つしかありません。しかし問題は岸田さんを『顔』にしたまま、どこまで戦えるか。むりやり総選挙を断行すれば、来春の統一地方選に悪影響が出る可能性も大きい。やはり岸田さんではダメだとなれば、その前に麻生さんが引導を渡すでしょうね」
8月31日以降、岸田がメガネの修理や調整に出かけた形跡はない。日に日に追い込まれ神経を昂らせる岸田にとって、溜まった歪みや汚れ、曇りはもはや我慢の限界に達していることだろう。
 失意の中で政権を追われ、膝をつく岸田の顔からメガネがずり落ち、地面へと転がる。それを無残に踏み割るのは、いったい誰なのだろうか。 (文中一部敬称略)
        「週刊現代」2022年11月19・26日号より