2022年11月10日木曜日

統一教会問題「解散命令」「救済新法」でこの先起こること

 つい先日までは、文化庁の役人は野党ヒアリングの席上 統一協会への質問権の行使について問われると、「まだその要件を満たしていない」と繰り返し述べ、我々は宗務課の役人がそういうのだから「多分そうなのだろう」と理解して来ました。

 しかし実態は要件を満たしていなかったのは宗務課の体制と陣容なのでした。それをそんな風に言い逃れるとは実に狡猾であり、それに騙された野党は甘過ぎるという誹りを甘受するしかありません。
 菅野志桜里氏ら弁護士グループから、「要件は既に満たされていてその材料も十分にそろっている」「質問権の行使に留まるようでは無意味(要旨)」と明確に指摘されたことを背景に、留まることを知らない内閣支持率の続落に悲鳴を上げた岸田首相は、これまでは「霊感商法」への対応を強化する消費者契約法の改正にとどめる方針でしたが、8日夕、悪質な寄付要求禁止や取消権などを盛り込んだ被害者救済新法を今国会に提出すると表明しました。
 解散命令を請求するには手続き上、質問権の行使を先行させなければならないので、それも特急で進められることでしょう(8日の有識者会議で文化庁の「質問権」行使基準案が了承されました)。野党案潰しに奔走していた公明党も、圧倒的な世論の中では矛を収めざるを得なくなりました。
 もしも「被害者救済新法」の成立に並んで「解散命令」にまで踏み込めるなら、岸田政権唯一の得点になるかも知れません。
 現代ビジネスに「『信教の自由』に逃げ込む宗教界…統一教会問題『解散命令』『救済新法』でこの先起こること」という記事が載りました。以下に紹介します(記事中の太字強調部分は原文に拠っています)。
 併せて、日刊ゲンダイの記事「救済新法と質問権行使で一歩前進も…自民党を脅かす旧統一教会の反撃材料と『次の爆弾』」を紹介します。
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「信教の自由」に逃げ込む宗教界…統一教会問題「解散命令」「救済新法」でこの先起こること
                     伊藤 博敏 現代ビジネス 2022/11/10
他の宗教法人も手足を縛られる
世界平和統一家庭連合(旧世界基督教統一神霊協会=統一教会)問題の早期解決を図ろうと、岸田文雄首相は「解散命令」と「救済新法」の2つの課題に取り組んでいる。
「解散命令」は過去に刑事事件化したオウム真理教など2つの事例しかなく、岸田首相は当初、「刑事罰が必要」と言っていたのに、「民法の不法行為も入りうる」と答弁を変えた。これで刑事責任を問われていない統一教会にも迫れるわけで、年内の早い時期に質問権を行使して裁判所に解散命令請求を提出する方針だ。文化庁は8日、質問権行使基準の素案をまとめ、有識者会議に提示した。
「救済新法」は自民・公明の与党が、野党の立憲民主・日本維新の会と共同歩調を取って早期成立を目指してきた。当初、野党側が「悪質な寄付勧誘行為の禁止」や「本人以外の第三者による取消権」などを法案に盛り込んでいる点に関し、与党側は「難しい点が多過ぎる」と反論していた。しかし、内閣支持率の低下に直面している岸田首相は、8日、方針を一転させ、「悪質寄付の禁止」や「取消権」を採り入れた法案の「今国会提出を目指す」と表明した
統一教会信者の過剰献金やそれに伴う二世問題に端を発しているだけに、統一教会を対象とした解散命令や法整備のように思われがちだが、今後、宗教法人全体に及ぶ改正であることを忘れてはならない。
「解散命令」の要件に「民法の不法行為」も入ると、統一教会並みに献金を強要、家庭崩壊や二世問題を生じさせている他の宗教法人も、不法行為が見つかり社会問題化すれば「解散命令」の対象となる
「救済新法」も、成立すれば影響は宗教法人全体に及ぶ。宗教法人において、「寄付勧誘行為」は高額献金を高い功徳と置き換えるのが一般的なだけに、献金徴収は見方によっては「悪質」と捉えることもできよう。また信者ではない同居する家族や子供にとっては、過剰献金は許されざるもので、「取消権」を使った訴えが多発することになる。

霊感商法を駆使して宗教ビジネスを展開する統一教会の“悪質”さに合わせて、解散命令が既成事実化されることや高額献金規制など手足を縛る法案が通過することを宗教界は恐れている。なかでも創価学会という日本最大の宗教法人を支援団体に持つ公明党は、「厳しい規制は免れたいが、統一教会バッシングのなかで公言はできない」というジレンマに陥っていることだろう。

警察も裁判所も手出しできない
しかし人は、喉元を過ぎれば熱さを忘れる。95年の14人の犠牲者を出した地下鉄サリン事件で宗教法人法は改正され、解散命令を視野に入れた質問権が付与され、財産や収支をオープンにする書類作成と所轄庁への提出が義務づけられた。しかし質問権が行使されたことはなく、文化庁が各種書類の開示請求に応じたことはない
阻んでいるのは憲法に保証された「信教の自由」である。世の中を震撼させたオウム事件で改正された法律が形骸化したのは、「信者が納得して行っている献金を含む行為」に、政治も行政もメディアも異を唱えなかったからだ。95年当時、質問権や書類提出に多くの宗教法人が猛反発して声明を出したのに、今回、沈黙を守っているのは「時間が解決する」という“教訓”である。
だが「信教の自由にとらわれる必要はない」と、新宗教問題に詳しいジャーナリストの段勲氏(75歳)は断言する。

統一教会は宗教ビジネスであって営利企業と一緒です。根こそぎの収奪によって信者の家庭が崩壊する事例も多く、解散命令もやむを得ないでしょう。だからといって信教の自由を侵すことにはなりません。解散命令が出ても教えや信者はそのまま残る。優遇税制など宗教法人としての特権は失いますが、信仰を禁じたわけではない。オウム真理教の場合と一緒です

確かにオウム真理教は、事件化の翌96年に破産したが、後継団体が設立され、「アレフ」「ひかりの輪」「山田らの集団」の3団体が活動を継続している。オウムの場合は公安調査庁の監視が続いているが、統一教会が「民法の不法行為」によって解散しても、任意団体となって生き残れるし、オウムのような公安の監視下に置かれることはあるまい。
段氏は70年代半ばから新宗教の取材を始め、『新興宗教その狂気と腐敗』など著作は40冊以上に及び、改定を重ねる『新宗教ガイドブック』も制作した。12月には創価学会信者の挫折と苦悩を描いた「人間革命」の黄昏 創価学会に踊った男の人生(花伝社)を上梓する。その半世紀に及ぶ取材活動のなかで感じているのが「信教の自由」によってトラブルの解決が阻まれることだ。

(安倍晋三元首相殺害犯の)山上(徹也)容疑者のような宗教による家庭崩壊は山のようにあり、統一教会だけでなくいろんな宗教法人が抱えています。ただ宗教問題は警察も裁判所も手が出せない。
夫婦の全財産を持って某教団の教会に逃げ込んだ信者夫人がいました。仰天した夫が警察に行っても『民事不介入』で相手にされなかった。裁判しようにも裁く法律がないから結局、離婚訴訟を起こすしかなかった。訴えを受けて訴訟に付き合いましたが、単なる夫婦の離婚問題でないのは明らかでした。
救済新法ができれば宗教法人の違法献金問題として解決に踏み出すことができます。救済新法で論議されている『マインドコントロール下の高額献金の禁止』が適用される事例となったでしょう。反対もあるでしょうが、それは宗教法人サイドの『戻したくない』という事情に過ぎず、信教の自由とは何の関係もありません

あれほどの税制優遇を受けているのだから
また、宗教法人の財務がオープンにされず、ブラックボックス化していることが、統一教会への底知れない怖さにつながっているとして、段氏は「宗教行為の無税措置を受けている宗教法人は、正当な請求理由がある場合は改正宗教法人法の厳格な適用で財務を開示すべきです」と続ける。

戦後に宗教法人法が制定されたとき、社会は荒廃し、宗教法人への献金といっても献金箱に5円、10円と入れる時代でした。戦前と違って信教の自由が認められ、戦後の混乱期にはそれなりの役割があり、公益性も高いし掃除など境内の維持もたいへんだということで非課税としたのです。
しかし今、創価学会のように『財務』と称した献金を年間1000億円以上集める法人もあります。税制優遇を受けている公益法人、学校法人、社会福祉法人、認定NPO法人は情報開示が義務化されています。宗教法人だけが例外でいいはずがない

宗教法人に対する底知れなさは、公称と実際が違う信者数を始め、内実が明らかでないことだ。財務のオープン化は、非課税措置の国民的合意に繋がるだろう。同時に可視化は宗教をより親しみやすくする。
統一教会は霊感商法・合同結婚式など特殊性をもつが、高額献金・二世問題などには他の宗教法人も持つ一般性がある。
宗教法人は、これまで「信教の自由」に逃げ込んできた。そうさせたのは政治である。創価学会、幸福の科学、立正佼成会、神社本庁など宗教法人がそれぞれに政治活動を展開し、その票を当てにした政治家が宗教法人の支援を受け、その見返りに宗教法人側の意向を汲んできた。また信教の自由を額面通りに受け取って、宗教法人に忖度した行政の責任でもある。さらに組織力を駆使して抗議活動を行う宗教法人と敵対することを避けたメディアの責任も重い
今、「宗教の聖域」は、安倍晋三銃撃事件を生んだ統一教会を端緒に壊されようとしている。我々は宗教法人改革をオウム真理教の時のように一過性のものにするか、これを機に宗教法人の在り方を変え、過剰献金や二世問題を発生させない環境を築くことができるかどうかの瀬戸際に立たされている。


救済新法と質問権行使で一歩前進も…自民党を脅かす旧統一教会の反撃材料と「次の爆弾」
                          日刊ゲンダイ 2022/11/10
 旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)問題を巡り、焦点となっている「被害者救済新法」と「質問権行使」が8日、実現に向けて一歩前進した。多くの自民党議員の首根っこをつかんでいる教団が黙っているとは思えない。一体、どんな反撃に打って出るのか。
 岸田首相は8日夕、悪質な寄付要求禁止などを盛り込んだ被害者救済新法を今国会に提出すると表明。政府・与党は今国会では「霊感商法」への対応を強化する消費者契約法の改正にとどめる方針だったが、世論に押され、カジを切った格好だ。
 また、8日は文化庁の有識者会議が開かれ、文化庁が提示した宗教法人法に基づく「質問権」の行使の基準案が了承された。
 基準は▼宗教法人に所属する人が繰り返し法令違反▼法人の法的責任が認められている▼被害が広範囲や重大な場合──などで「客観的な資料、根拠により判断する」としている。旧統一教会が該当するのは明らかだろう。
 永岡桂子文科相は「年内のできるだけ早いうちに権限を行使できるよう手続きを進めたい」と強調。質問権の行使を経て、政府が解散命令請求に踏み切る可能性は十分ある。

■次は閣僚、党三役など“大物”が浮上か
 旧統一教会としては、新法成立により“財源”にメスを入れられ、解散命令請求に向けて手続きが着々と進むのはおもしろくないはずだ。
「まだ教団は自民党議員の政治生命を脅かすような“決定打”は出していません。解散命令請求などを阻止するために小出しに“秘密”をリークし、牽制する可能性がある。関連団体との事実上の政策協定、推薦確認書では、副大臣の署名が判明しましたが、今後は閣僚、党三役など“大物”が浮上することも考えられる。選挙支援、秘書派遣、議員の旅費を教団側が持つなどの資金提供と、教団はさまざまな情報を持っているはずです。関係の深かった議員は戦々恐々としているのではないか」(ジャーナリスト・鈴木エイト氏)
 来春の統一地方選挙に向けて、教団が揺さぶりをかけてくる可能性もある。
「地方選は僅差で当落が決まることもあり、教団票がキャスチングボートを握るケースも少なくありません。教団に依存し、密接な関係を築いてきた自民党などの地方議員は、表向きは教団との関係を断つとしながら、実際には難しい場合もあるでしょう」(鈴木エイト氏)
 全国各地で教団が地方議員との関係を次々と暴露したら、統一地方選で自民党には大逆風となるかもしれない。解散命令請求と寄付の規制が現実味を帯びる中、教団はあの手この手で“爆弾”を投下し、あらがうのだろうか。