しんぶん赤旗に、岸田政権が目指している大軍拡路線を徹底的に検証する記事が載りました。
軍事費をGDPの2%にアップするという「大軍拡」はひたすら米国の要求に従ったもので、いまや拡大する軍備予算を消費するために、むやみやたらに不必要な兵器を揃えなければならないという本末転倒の事態に陥っています。
政府はあたかも敵基地攻撃が必須の要件であるかのように振る舞っていますが、憲法9条と整合する筈がありません。政府が米国から購入し(たり一部は日本で開発し)て揃えようとしている兵器の多くは憲法9条に反するものです。
では兵器を買い揃えれば敵の攻撃を防げるかと言えばそんなことはありません。兵器はどんどん発達するので、どこまで軍備を進めれば大丈夫というような限界はありません。要するに軍備拡大路線は際限のない金食い虫を飼うということと同義です。
記事は「こうした破滅的な道を避けるためには、『絶対に戦争を起こさせない』ための外交努力しかありません」と結んでいます。真にそれ以外にはなく、それしかないということは1945年の敗戦で痛烈に学んだ筈でした。
関連記事(敵基地攻撃の違憲性)
(10月16日)国会審議積み重ね無視 敵基地攻撃に突き進む岸田政権
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徹底検証 大軍拡 平和と暮らし破壊 国土戦場化もたらす 敵基地攻撃能力
しんぶん赤旗 2022年11月18日
概算要求にみる危険性
「反撃能力」(敵基地攻撃能力)を柱とした岸田政権の大軍拡は、日本を守る「抑止力」どころか、国土の戦場化をもたらすー。防衛省の2023年度予算の概算要求からも、その危険性が読み取れます。 (斎藤和紀)
概算要求では、歴代政権が「保有は違憲」としてきた敵基地攻撃能力につながる兵器の導入費用が目立ちます。目玉は、相手の攻撃圏外から攻撃する「スタンド・オフ防衛能力」です。12式地対艦誘導弾の長射程化や、高速滑空弾、極超音速誘導弾など国産ミサイルの研究・量産に着手。F35Aステルス戦闘機に搭載する「JSM」、F15能力向上磯に搭載する「JASSM」など海外製ミサイルの取得も盛り込みました。さらに米軍がイラクなどで先制攻撃に使用した長距離巡航ミサイル「トマホーク」の購入を検討しています。
地上や洋上の標的への攻撃を任務とするF35Aステルス戦闘機や、空母化が進む護衛艦「いずも」に搭載するF35Bの取得も計上しています。
敵基地攻撃を行うには標的の正確な位置の把握が不可欠だとしており、目標の特定からミサイル誘導まで、軍事衛星を通じて行おうとしています。そのため政府は宇宙の軍事利用を加速させており、23年度に3基追加される準天頂衛星「みちぴき」の日米共同使用や、多数の小型衛星を打ち上げる「衛星コンステレーション(⇒多数の人工衛星)」計画も進められています。
なぜ「保有」狙う
なぜ敵基地攻撃能力の保有を狙うのか。二つの背景があります。
第1は、「ミサイル防衛の失敗」です。政府は北朝鮮の弾道ミサイル開発を理由に、04年から「ミサイル防衛」網の導入を開始。防衛庁(当時)は当初、導入費用として「おおむね8000億円~1兆円」と見積もりましたが、04年度から22年度までに総額約2・8兆円を投じており、約3倍に膨れ上がっています。それでも、ミサイルを撃ち落とす技術は未完成で、マッハ5以上で飛ぶ極超音速誘導弾など新たなミサイル技術の開発によって迎撃がさらに困難になっています。
この事実は政府側も認めています。島田和久前防衛事務次官は7日の日本記者クラブでの会見で、「ミサイルは攻撃側が圧倒的に有利だ」と言及。浜田靖一防衛相は「(ミサイルの)迎撃が困難になっているのは事実だ」(10月13日の参院外交防衛委員会)と認めました。ところが、「ミサイル防衛」破綻の検証もしないまま、〝防げないなら攻撃される前に攻撃する″との発想で敵基地攻撃能力の保有が議論されているのです。
もう一つは、米軍の「対中ミサイル戦争」への参戦です。米国訪総省は東・南シナ海における軍事バランスは中国が圧倒していると危機感をあおり、台湾有事への介入や中国の西太平洋進出阻止を念頭に、鹿児島県沖から沖縄、フィリピンにいたる「第1列島線」上に、日米の「精密打撃網」の構築を計画。そのために、日本のミサイル攻撃能力の強化が不可欠なのです。
こうした動きを受け、岸田文雄首相は5月の日米首脳会談で、「『反撃能力』も含めあらゆる選択肢を排除しない」「防衛費の相当な確保する」と誓約しました。大軍拡の根源は米国の要求です。
歴代政権は敵基地攻撃能力の保有について「平生から他国を攻撃する、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持つことは憲法の趣旨ではない」(1959年、伊能繁次郎防衛庁長官)との答弁を維持してきました。
しかし、浜田防衛相は10日の参院外交防衛委員会で、日本共産党の山旗振議員の追及に対し、同答弁を「維持」すると明言せず、「(答弁を)破ってまで判断するかどうかを検討中だ」とまで述べました。時の政
権の一存で憲法解釈を変えて敵基地攻撃能力を保有するという、新たな立憲主義破壊が狙われています。
攻撃は防げない
赦基地攻撃で相手の攻撃を防ぐのは幻想です。ミサイル攻撃は「基地」ではなく、潜水艦や航空機、地下施設などから行われるのが常識で、攻撃される前にたたくことは困難です。そのため政府・自民党は相手国の「指揮統制機能」=国家中枢まで攻撃対象に含む考えを示していますが、そうなれば全面戦争につながります。相手国の反撃を引き起こし、日本の国土が戦場になることは避けられません。
実際、防衛省は概算要求で、「抑止が破られた場合」まで想定。無人攻撃能力や抗たん性(攻撃に耐え基地機能を維持する能力)、継戦能力(敢争を継続する能力)の強化を狙っており、シェルターの設置や弾薬の拡充を求めています。政府は「国民の生命や財産を守る」と言いながら、国土が戦場になり、長期にわたって戦闘が続くことを前提にした軍拡を進めているのです。
こうした破滅的な道を避けるためには、「絶対に戦争を起こさせない」ための外交努力しかありません。
政府が導入を推進している「敵基地攻撃能力」関連機器(写真は全て省略)
【スタンド・オフ兵器】(長距離巡航ミサイル)
■トマホーク(米国製、射程1600km超。先制攻撃で繰り返し使用)
■12式地対艦誘導弾(改)(国産。射程1000km超。地発、空発、艦発の3種)
■JSM(ノルウェー製、射程500km、F35に搭載)
■JASSM(米国製、射程900km、F15改に搭載)
■高速滑空弾(国産。射程1000km? エンジンを切り離して高速滑空)
■極超音速誘導弾(国産。射程500~1000km? マッハ5~10で高速飛行)
【航空機】
■F35A、Bステルス戦闘機(敵地に侵入し、対地攻撃を想定)
■F15戦闘機の改修(JASSMなどスタンド・オフ兵器の畢載、電子戦能力の向上)
【艦 船】
■「いずも」型護衛艦の改修(F35Bを搭載可能に)