共産党の小池晃議員は1日の参院財政金融委で、来年10月に予定されるインボイス(適格請求書)制度導入について「小規模事業者やフリーランスなどにとって新たな消費税大増税だ」として導入中止を迫りました。
小池氏は、インボイス導入で小規模事業者を取引から排除する事例が相次いでいることを指摘。またアニメや声優業界で働くフリーランスの約4人に1人がインボイス導入で「廃業の可能性」とした調査を紹介し、「地域経済や文化を支えるフリーランスや小規模事業者の仕事を奪い、廃業に追い込んでいいのか」と迫りました。
インボイス制度は19年に消費税率10%引き上げとセットで導入が決まり、猶予期間を経て来年10月から実施される予定です。従来の請求書と異なる点は、新に「税率別の消費税額」と「事業者の登録番号」を記載することで、これに伴ってこれまで年間売上高1000万円以下は免税業者とされていた零細事業者やフリーランスにも事実上登録が要求されます。
登録せずにいると購入対象(納入業者)から排除されたり、排除はしないものの購入価格(納品価格)から消費税分を減額されるなどの不利が生じます。
⇒ インボイスって何? どんな問題があるの? (しんぶん赤旗)
しんぶん赤旗の3つの記事を紹介します。
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インボイスは新たな大増税 参院財金委 小池議員、導入中止迫る
小規模事業者追い込むな
しんぶん赤旗 2022年11月2日
日本共産党の小池晃議員は1日の参院財政金融委員会で、来年10月に予定されるインボイス(適格請求書)制度導入について「小規模事業者やフリーランスなどにとって新たな消費税大増税だ」として導入中止を迫りました。
小池氏は、インボイス導入で小規模事業者を取引から排除する事例が相次いでいると指摘しました。福島市が入札参加資格申請の手引に「インボイス制度の登録がない場合、水道局及び下水道室発注の工事等の受注ができなくなる」と記していた問題や、JR広島駅のタクシーの入構管理規定に「駅構内に入るものは適格請求書を発行しなければならない」との文言が入った問題を紹介。「免税事業者の排除ではないか」とただしました。
インボイスを登録しないと入札制度から排除することに関し、総務省大臣官房の三橋一彦審議官、財務省主計局の前田努次長は「適当ではない」と自治体や各省庁に周知したと答弁。国土交通省運輸安全委員会の岡野まさ子審議官は、タクシーの入構制限が「独占禁止法に抵触する恐れがある」と周知するメールを地方運輸局などに送ったと述べました。
小池氏は、アニメや声優業界で働くフリーランスの約4人に1人がインボイス導入で「廃業の可能性」とした調査を紹介。「地域経済や文化を支えるフリーランスや小規模事業者の仕事を奪い、廃業に追い込んでいいのか。岸田政権の経済対策にも逆行する」と迫りました。
鈴木俊一財務相は「安定的な移行にむけ努力をしたい」などと述べるだけ。小池氏は「インボイス導入は今後の消費税増税のためだと指摘されてきたが、政府の税制調査会で増税の議論が始まっている」と指摘。増税の議論はやめ、インボイス導入は中止するよう重ねて求めました。
インボイス導入ノー 声優・俳優ら訴え 市民連絡会が国会内集会
しんぶん赤旗 2022年11月2日
消費税のインボイス(適格請求書)制度に反対する集会が1日、衆院第1議員会館で行われました。声優やライターなど、インボイスの対象になる人たちが次つぎとマイクを握り、導入が強行されれば仕事を続けられなくなる人がたくさん出てくると訴え。「中止の世論をみんなで高めていこう」とアピールしました。
主催した「公正な税制を求める市民連絡会」を代表して、共同代表の宇都宮健児さんがあいさつ。インボイスは、フリーランスや小規模事業者など幅広い職種の人に深刻な悪影響が出ると指摘。「廃業を検討している人も少なくありません。中止の声をさらに広げていきましょう」と語りました。
インボイスの影響を受ける当事者が発言しました。
「インボイス制度を考える演劇人の会」を立ち上げた俳優の廣瀬綾さんは、「演劇関係者のなかでは、いまだにインボイスの周知すら進んでいません」と告発。業界アンケートにも取り組みながら、実態を可視化していきたいと述べました。
声優の岡本麻弥さん(「VOICTION」共同代表)は、日本には声優として活動している人が1万人いるが、そのほとんどがインボイス制度の影響を受けてしまうと発言。「若い人たちの才能の芽も摘む、インボイスは反対です」
日本共産党、立憲民主党、国民民主党、社民党の国会議員が参加し、共産党からは田村貴昭衆院議員があいさつしました。
【主張】インボイス中止を フリーランスの怒りの声聞け
しんぶん赤旗 2022年10月29日
来年10月からの消費税のインボイス(適格請求書)制度の実施中止を求める運動が広がっています。26日には、「インボイス制度を考えるフリーランスの会」主催で、東京・日比谷野外音楽堂に約1200人が参加して導入に反対するリレートークイベントが開かれました。同会が呼びかけているインボイスに抗議する電子署名も10万人を超えました。岸田文雄政権はこの声を聞くべきです。
若い人たちの未来奪うな
インボイスの導入は2019年、消費税率10%引き上げとセットで決定されました。
業者は客から受け取った消費税から仕入れにかかった消費税を差し引いて納税します。いま帳簿でおこなっている税の計算をインボイスですることが義務づけられます。年間売り上げが1000万円以下は免税事業者とされ、インボイスを発行する必要はありません。しかし、課税事業者である発注業者はインボイスが無ければ仕入れ分を差し引けず消費税の負担が増えます。アニメーターなどのフリーランスが、規模の大きな取引先の課税事業者からインボイスを求められれば断るのは困難です。
インボイスを発行する事業者は課税事業者となるので、売り上げが数十万円でも消費税を支払わなければならなくなります。事務負担も重くのしかかります。同会は、「税率変更を伴わない消費税の増税。弱い人に負担を押し付ける」と批判しています。
26日のイベントでは、低収入のフリーランスの人たちが新たな負担を押し付けられることで声優などが辞めざるを得なくなる事態を危惧する発言が相次ぎました。「インボイスでアニメーションがなくなるかもと感じる。アニメーターは、実力をつけるまで時間がかかる。インボイスで若い人たちを台無しにされたくない」(アニメスタジオの社長)など切実です。
3人の声優が立ち上げた有志グループ「VOICTION」の調査の中間集計(9月29日)によると、声優の72%は年収300万円以下で、課税事業者となる1000万円以上はわずか5%です。「インボイスの発行がない場合、今後の取引をしないという通告が来た」などの声があがっており、23%が廃業を検討しています。
日本漫画家協会は、インボイスを発行できないと、発注元と漫画家との関係が悪化し、最悪の場合、「免税事業者であることを理由に取引が中止される等のリスク」もあると訴えます(7月の声明)。日本アニメーター・演出協会理事会も7月、「アニメ制作者と共に現場を支える制作会社をも運用コスト及び税負担の双方で痛めつけ、制作現場の環境を悪化させます」と反対を表明しました。
影響は広い人たちに
インボイスを発行する必要のある可能性のある業種は、小説家、脚本家、漫画家、イラストレーター、フリーライターなどのフリーランスなどとともに、小売店、飲食店、町工場、シルバー人材センターの会員など1000万人に及ぶ可能性があります。
政府はインボイス導入の口実に税率の違いをあげますが、現在も8%、10%で納税がおこなわれており、理由になりません。フリーランスの人たちなどを追い込むインボイスは中止すべきです。なにより消費税の減税が不可欠です。