2024年6月8日土曜日

鋼鉄に埋もれる:軍事生産とウクライナにおけるNATO代理戦争

 これはウクライナ戦争の真実を記載したものでウクライナにとっては冷酷な記事です。
 結論は末尾に書かれている通りで、ウクライナ賢明な助言に従って一刻も早くこの勝ち目のない戦争を終結させる交渉の席に着き、これ以上のウクライナ兵の無意味な死を防ぐことです。
 ウクライナ政権が過去の8年間を通じてドンバス地方を完全制圧しようとして残酷な準備を重ねてきたことが、この戦争につながりました。
 その反省に立って潔くドンバス地方の独立を認め、国の行く末を彼ら自身の判断に任せることです。
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鋼鉄に埋もれる:軍事生産とウクライナにおけるNATO代理戦争
              マスコミに載らない海外記事 2024年6月 6日
                       Brian Berletic 2024年6月3日
                          New Eastern Outlook
 隣国ウクライナで、選挙で選ばれた政権が打倒され、その後のアメリカとNATO諸国による同国の軍事化によって、ロシアの特別軍事作戦(SMO)が開始されて、現在三年目を迎えているが、それがロシアの巨大な軍事産業基盤の恩恵を受けているのは明らかだ。
 かつては粗悪で時代遅れのロシア兵器が「画期的な」NATO兵器に打ち負かされつつあるというニュースで溢れていた欧米メディアが、今やロシアの軍事生産と、それに追いつけないNATO状況のギャップが拡大しているという見出しを掲げている。他の見出しも、過去二年以上の戦闘で、かつて自慢していたNATO兵器が欠点を露呈していると認めている。
鋼鉄に埋もれる:ロシアの砲弾と滑空弾生産
 こうした見出しの中に、スカイニュースの2024年5月下旬記事「ウクライナの欧米同盟諸国の約三倍の速さ、約4分の1の費用でロシアは砲弾生産をしている」があり、下記のように認めている。

 ロシアの工場で今年約450万発の砲弾が製造または改修されると予測されているのに対し、欧州諸国とアメリカを合わせた生産量は約130万発であることが公開情報を基にベイン・アンド・カンパニーが行った砲弾に関する調査で判明した。

 ウクライナでの戦闘を決定づける最も決定的な要因の一つは火砲だ。アメリカ政府と欧米諸国企業が資金提供する外交問題評議会が2024年4月に発表した報告書「戦争兵器:ロシアとウクライナの競争」には次のように書かれている。

 火砲は数世紀にわたり「戦いの王」として知られてきたが、これは今日もほぼ変わらない。ロシア・ウクライナ戦争では砲撃が両軍死傷者の約80パーセントを占めている。アメリカの援助打ち切り後のここ数カ月で、ウクライナの砲撃が5対1から10対1に減ったのは、一層不吉だ。

 もし5対1から10対1で武器でウクライナが劣勢なら、死傷者も同様にこの差を反映することになる。イギリス国防省を含む欧米諸国の様々な情報源によると、ロシアが「35万5000人」の死傷者を出しているのに対し、ウクライナは約5倍から10倍、つまり170万から350万人のウクライナ人死傷者を出している
 より現実的に考えると、ロシアの損失は5万人、ウクライナの損失は50万人の可能性が高い。
 NATOとそのウクライナ代理勢力にとって懸念が高まっているもう一つの分野は、ロシアがウクライナ防空網の残存範囲外にロシア軍用機で投下する精密誘導滑空爆弾を使用していることだ。ロシアの圧倒的な砲兵力の優位性をもってしても不可能な規模で、この爆弾は、ウクライナの要塞を標的にして破壊できる。
 2024年5月下旬の「ロシアの滑空爆弾がウクライナ都市を安価に破壊」と題する記事でBBCは次のように説明している。

 ウクライナでの攻勢を進めるため、安価ながら破壊力の大きい兵器「滑空爆弾」をロシアは益々多く使用している。
 現在、国境を越えてハルキフ近郊にロシアが侵攻する際、ウクライナ北部の町ヴォフチャンスクを攻撃するため、わずか一週間で200発以上の砲弾が使用されたとみられる。
 3月だけで同様爆弾が3,000発投下されたとウォロディミル・ゼレンスキー大統領は述べた。

 ウクライナはアメリカと同等の統合直接攻撃弾(JDAM)を受領したが、減少する戦闘機と優れたロシアの電子戦(EW)能力と相まって、この能力も無意味になっている。
 2023年6月に発表した報告書「JDAM阻止:ロシア電子戦によるアメリカ兵器への脅威」の中で、アメリカ兵器の欠点と、ロシアの妨害からアメリカの滑空爆弾を守る技術的課題をアメリカが解決する可能性が低いことをロンドンに拠点を置く王立統合安全保障研究所(RUSI)は詳細に説明している。
 たとえロシアの電子戦能力をアメリカが克服できたとしても、アメリカと欧州製の滑空爆弾の数は、それを搭載できる戦闘機と訓練を受けたパイロット不足により、ロシアが使用する数のほんの一部にとどまるはずだ。
期待に応え損ねているNATOの「奇跡の兵器」
 アメリカ製JDAMが標的に命中し損ねているのに加えて、ウクライナに供与された他の多くの精密誘導兵器もロシアの電子戦妨害に直面しており、その中にはアメリカ製エクスカリバー155mmGPS誘導砲弾や、アメリカ製HIMARSおよびM270発射装置に発射される誘導多連装ロケットシステム(GMLRS)、HIMARSおよびM270システムに発射されるアメリカ製の地上発射小口径爆弾(GLSDB)などがある。
 これら兵器は戦場で効果的に使用されているが、ロシアの電子戦能力により全体的有効性が阻害されている。また同等のロシア兵器より供給が少ないため、ロシアに決定的優位性をもたらしている。
 ウクライナでの戦闘を通じて明らかになった他の「形勢を一変させる」兵器には、ドイツ製レオパルト1と2主力戦車(MBT)とイギリス製チャレンジャー2 MBTがあり、どちらも失敗したウクライナの2023年攻勢で使用された。
 アメリカ製M1エイブラムス主力戦車もウクライナに供与された。これらは2023年の攻勢時には留め置かれていたが、代わりに今年ロシア軍が勝利したアヴデーエフカでの戦闘で戦場デビューを果たした。
 戦場で燃えるM1エイブラムスの画像や映像は、ウクライナにおける他の欧米諸国主力戦車の結果の例外でないことを示している
 最近の記事で、M1エイブラムスの使用を試みたウクライナ人乗員にCNNはインタビューし、彼らの苛立ちと失望を報じた。
 「ウクライナ兵、アメリカ供給の戦車はロシア攻撃の標的になっていると語る」と題されたこの記事は、次のように認めている。

 イラクでサダム・フセイン政権軍や反政府勢力と戦うために使用された米軍の主力戦車(総経費1000万ドル)には最新兵器を阻止できる装甲が欠如しているとドイツで訓練を受けた乗員らは語った。
 「この戦争には装甲が不十分だ」とコールサイン「ジョーカー」の乗員の一人が語った。「装甲は乗員を守らない。実際に、今やドローン戦争だ。だから今では戦車が出ると、連中は必ずドローンで攻撃しようとする」

 これは欧米諸国の装甲車両の「生存性」を称賛する欧米諸国の専門家や評論家の主張と矛盾する。
 記事は、多くが運用不能となっている戦車の兵站と保守の課題も取り上げている。
 記事は、下記のように認めている。

…戦車には技術的問題があるようだ。
 木の下に駐車していた一輌は、ポーランドから輸送されたばかりだったにもかかわらず、エンジン・トラブルのため、CNN取材中ほとんど動かなかったと取材班は言う。また雨や霧の中では結露で車内の電子機器が壊れることもあると兵士は不満を漏らしている。

 また、ウクライナのM1エイブラムス戦車に提供された弾薬は戦車同士の戦闘用だとCNNは報じたが、記事はそういう場合はまれだと認めている。そではなく、戦車は歩兵陣地を攻撃するための突撃砲として使用されているので、高爆発性弾薬の方が適しているが、どうやら十分な数が供給されなかったようだ。
 最後に、アメリカ製M1エイブラムス戦車の失敗は、アメリカとNATOが決して想定していなかった、十分な火砲と航空支援がない形で:ウクライナが戦車を使用しかねない事実による可能性もあるとCNNは認めている。
 CNNは次のように報じている。

 戦車がNATOスタイルの戦争、すなわち戦車と歩兵が前進する前に空軍と砲兵が戦場を準備する戦争のために作られていることにウクライナ軍乗員は不満を表明した。キーウは長い間、砲兵と空軍の不足を嘆いてきた。

 ウクライナは空軍も砲兵もないため、M1エイブラムスを含むウクライナ軍に移管された複雑で重く信頼性の低い欧米諸国の戦車は全て特に脆弱だ。
予想可能な結果
 ウクライナへの欧米諸国の兵器供与が「形勢を一変させる」結果を予想する多くの欧米諸国の見出しと対照的に、アメリカと欧州のハードウェアの失敗は完全に予測可能だった。
 欧米諸国の軍事的優位性という神話は、全て、数十年にわたる複数の紛争で生じた一連の不一致に基づいていた。アメリカと同盟諸国は訓練も装備も不十分な軍隊の国々と戦争してきたのだ。これらの国々の多くは「ソ連」または「ロシア」の軍事装備を運用していたとされるが、それは最先端装備から数世代遅れており、装備を十分活用できない組織化不十分な軍隊に運用されていたのだ。
 こうした多くの不利な点にもかかわらず、数十年にわたり、アメリカの侵略戦争の標的となった国々は、少なくとも理論上、アメリカと欧州の兵器には限界があり、同等またはほぼ同等の敵との戦闘では脆弱なことを証明していた。このことや訓練や兵站に関する課題などの他の要因により、ウクライナの戦場における欧米諸国兵器の有効性(またはその欠如)は予想可能だった。
 欧米諸国の軍事的優位性という神話は今やウクライナで完全に打ち砕かれ、欧米諸国の兵器は量的にも質的にも限界に達し、戦場でロシア軍に決定的優位性を与えているが、欧米諸国は機会を捉えられないことが明らかになった。
 前述のスカイニュース記事は、ロシアの滑空爆弾の数が膨大かつ増加していると論じているが、欧米諸国全体の軍事産業生産が不十分なため、欧米諸国から提供される兵器が不足していることも指摘している。
 この記事には「最前線の戦争で工場が勝ち得る」という題の部分があり、下記のことを認めている。

 武器と弾薬生産の重要性から、ウクライナ戦争の勝敗は最前線ではなく、工場の生産ラインで決まる可能性があると多くの専門家は述べている。

 これは「アマチュアは戦略を語り、プロは兵站を語る」という格言を反映している。
 欧米諸国の兵器メーカーは十分な注文があった場合にのみ生産能力を拡大すると記事は説明している。これにより利益は最大化されるが、即応性が犠牲になる。生産拡大は費用のかかる過程であり、資源や、更に重要なことに時間が必要なのだ。
 ロシアの国営兵器製造企業は即応性を優先し、注文に関わらず過剰生産能力を維持しているため、欧米諸国の工場が一年以上もかかるのに対し、ロシアは数ヶ月という比較的短期間で生産を増強できる。
 ウクライナの現在の危機が、少なくとも部分的には、SMO⇒特別軍事作戦が始まる何年も前からロシアが軍事産業生産と兵站に長期的に重点を置いてきたことと、これだけの規模や激しさや、これ程長期にわたる運用を決して想定していなかった欧米軍事産業基盤による武器を使って代理戦争を戦っている欧米諸国集団との対立の結果であることは明らかだ。
 欧米諸国が共同で軍事産業の生産拡大に真剣に取り組む頃には、ロシアは既に数年先を行く状況にある。例えば、アメリカと欧州の砲弾生産合計は、2025年から2027年の間に年間250万から300万発に拡大すると予測されている。これはロシアの現在の生産量より少ない。2025年から2027年までにロシアが生産量を更に拡大しているのはほぼ確実だろう。
 ワシントンやロンドンやブリュッセルの政策立案者の間では、この紛争におけるウクライナの「勝利」は決して本当の狙いではなかった。2019年のランド研究所論文「ロシアの手を広げさせる」が認めている通り、常に、この計画の狙いは莫大な費用を伴うロシアによるウクライナ介入を誘発し、ロシアを過度に拡大させ、ソ連のように崩壊を引き起こす可能性だった。ウクライナ紛争は「不釣り合いに多くのウクライナ人の死傷者、領土の喪失、難民の流入を引き起こす可能性がある。ウクライナを不利な平和に導く可能性さえある」と論文は予測していた。
 今日、かつて東西間でバランスを取り、両世界との商売で利益を得ていた東欧の国ウクライナにおけるロシアとのワシントン代理戦争の余波が一体どのようなものかを我々は見ている。ウクライナを本当に支援する能力も意欲もない同盟諸国の利益のために、ウクライナは、ロシアの鉄鋼に埋もれつつある
 戦闘の明らかな結末(2019年初頭には既に良く知られていた結末)にもかかわらず、ウクライナが非合理的に戦い続けるのを促すように欧米諸国全体から発せられる言説の多くは作られている。多くのウクライナ人の心の中に、ロシアに対する深い憎悪が意図的に植え付けられているが、彼らの本当の敵は常に欧米諸国全体の指導部だった。利益、権力、影響力の永続的ながら最終的には持続不可能な獲得を前提とする欧米諸国の政策立案者の近視眼的性質は、欧米諸国全体自身さえ最大の敵にしているのだ。
 勝てないだけでなく(そもそも勝つ見込みもなかった)戦争の結末が全て戦場で決まるとすれば、より賢明な助言が勝ち、より適切な欧米外交政策が採用され、ウクライナが最終的に交渉の席に着き、戦いが長引けば長引くほど最終的に「ウクライナ」が小さくなる戦争を終わらせるまで、この自己破壊過程がいつまで続くか時が経てば分かるだろう。
 一方、ロシアの軍事工業生産は成長を続けている。砲弾や装甲、航空戦力、滑空爆弾、ドローン、防空システム、あらゆる種類のミサイルは生産量が増大しているだけでなく、品質の向上に向けて開発が進められている。多くの場合、ロシアの軍事装備は欧米諸国の装備の能力を超えている。品質に関係なく、単純に量が多いため、戦場で敵を鋼鉄で「葬り去る」ことができるのだ。

 Brian Berleticは、バンコクを本拠とする地政学研究者、著者。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.su/2024/06/03/buried-in-steel-military-production-natos-proxy-war-in-ukraine/

08- ハワイ周辺で実施する軍事演習RIMPACにNATO加盟国も参加する意味

 1971年に創設された環太平洋合同演習RIMPAC)に自衛隊が初参加したのはまだ初期の1980年(隔年開催)でした。
 1949年に創設された北大西洋条約機構(NATO)は「ソ連」を敵国とした軍事同盟です。日本は北大西洋に面していませんが、岸田首相は何故かNATOに加わりたがっています。 ⇒23.5.15)なぜ議論にならないのか NATO事務所開設/タイム誌 
 櫻井ジャーナルは、「NATOは米英がヨーロッパを支配する目的で設立された」と述べています。米国にウクライナ戦争への協力とロシアとの絶縁を要求された欧州国が目下深刻な経済的打撃を受けているのを見ると頷ける話です。
 21年9月に米・英・豪の3カ国太平洋軍事同盟AUKUSを作り、さらに米国はJAPHUS(日・比・米というNATO的な軍事同盟を作りました。それは中国やロシアとの戦争を想定しているだけでなく、米国がその地域全域の支配体制を強化することを目的にした東/東南アジアの植民地化であると述べています
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ハワイ周辺で実施する軍事演習RIMPACにNATO加盟国も参加する意味
                         櫻井ジャーナル 2024.06.07
 アメリカ軍は6月26日から8月2日まで配下の軍隊をハワイ周辺に集めて軍事演習「RIMPAC(環太平洋合同演習)」を実施 する。海軍力による太平洋支配を維持ることが目的だろう。参加国はアメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドのアングロ・サクソン系5カ国のほか、日本、ブルネイ、インド、インドネシア、マレーシア、韓国、フィリピン、シンガポール、スリランカ、タイ、ラテン・アメリカのチリ、コロンビア、エクアドル、メキシコ、ペルー、ヨーロッパからデンマーク、フランス、ドイツ、オランダ、そしてトンガ、イスラエルだ。名前だけだろうという国も少なくないが、ヨーロッパからこれだけ参加するのは興味深い。

 本ブログでは繰り返し書いてきたが、アメリカの支配力は弱まっている。軍事同盟を強化するため2017年11月にオーストラリア、インド、アメリカ、日本で組織されるクワドの復活を協議したのもテコ入れのつもりだろう。アメリカ太平洋軍は2018年5月にインド太平洋軍へ名称を変更している。太平洋の拠点は日本、インド洋の拠点はインド、ふたつをつなぐ役割をインドネシアが担うとされた。
 2020年6月にはNATO(北大西洋条約機構)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長はオーストラリア、ニュージーランド、韓国、日本をメンバーにするプロジェクト「NATO2030」を開始すると宣言、21年9月にアメリカ、イギリス、オーストラリアのアングロ・サクソン3カ国は太平洋で軍事同盟AUKUSを築く。JAPHUS(日本、フィリピン、アメリカ)なる軍事同盟も編成した。こうした動きに対し、ニコライ・パトロシェフは2021年9月、AUKUSは中国やロシアを仮想敵とする「アジアのNATO」だと指摘している。その当時、パトロシェフはロシア国家安全保障会議の議長を務めていた。

 NATOは集団防衛機構だとされているが、その事務総長だったヘイスティング・ライオネル・イスメイはNATO創設の目的はソ連をヨーロッパから締め出し、アメリカを引き入れ、ドイツを押さえつけることあるとしている。このイスメイはウィンストン・チャーチルの側近だ。
 NATOは1949年に創設されたが、その母体になったのは48年に作られたACUE(ヨーロッパ連合に関するアメリカ委員会)。この組織はアメリカやイギリスがヨーロッパを支配する目的で設立され、イギリスのチャーチルやアメリカのアレン・ダレスたちが参加していた。ちなみにビルダーバーグ・グループはその下部機関のひとつ。
 NATO加盟国には破壊活動を目的とする秘密部隊が存在していることもわかっている。その中でも特に有名な部隊がイタリアのグラディオ。1960年代から80年頃までクーデター計画や極左グループを装った爆破事件を繰り返していた。

 フランスのOASもそうした秘密部隊ネットワークにつながる組織で、メンバーの一部が1962年にシャルル・ド・ゴール大統領の暗殺を試みている。
 その背景を知っていたド・ゴールは1966年にフランス軍をNATOの軍事機構から離脱させ、SHAPE(欧州連合軍最高司令部)をパリから追い出している。ジョン・F・ケネディ米大統領が暗殺されたのは1963年のことだが、ド・ゴールはケネディ暗殺と自分の暗殺未遂の背景は同じだと考えていたと言われている。

 東アジアにNATO的な軍事同盟を築く目的は中国やロシアとの戦争を想定しているだけでなく、その地域全域の支配体制を強化することにあるはずだ。つまり東/東南アジアの植民地化である。ロシアに敗北した西ヨーロッパ諸国は東/東南アジアに注目しているのか、あるいは世界大戦を始めて戦況を一変させようとしているのかもしれない


NATO加盟国が言う:ゴールはロシア連邦の解体
                  耕助のブログNo. 2170  2024年6月6日
 Nato Country Says Goal Should Be …Breakup of the Russian Federation
                by Tyler Durden
先週、ロシアのメディアは、エストニアのカーヤ・カラス首相による最新の挑発的な発言に注目した。彼女はロシアの隣国の小さなバルト三国を反モスクワのタカ派的な確固たる立場に導いたのだ。エストニアは2000年代半ば、ブッシュ政権時代にNATOに加盟した東欧諸国の波の一部だった。
彼女はロシア連邦の解体を求めた。カラスは先週、首都タリンでの討論会で、ウクライナ戦争の望ましい結果として、ロシアはもっと「小さく」なる可能性があると提案したのだ。

「ロシアの敗北は悪いことではない。なぜなら社会が本当に変わるかもしれないのだから」と首相は第17回レンナルト・メリ会議で語った(ロシアのRTが翻訳{1})。
彼女は、現在のロシア連邦は実際には「多くの異なる国家」から構成されていると見ることができ、それらは当然ながら別々の国家に分割される可能性があると述べた。
小国のような国が増えれば、それは悪いことではないと思う。大国がより小さくなることは悪いことではない」とカラスは主張した。
その小さな国土にもかかわらず、エストニアはここ数カ月、戦争に関連して強気な発言をしている。例えば、フランスのマクロン大統領は最近NATOにウクライナへの西側部隊の派遣を検討するよう呼びかけたが、それを支持するような発言をした{2}:
エストニア政府は、ウクライナ軍を前線での戦闘に解放するために、直接戦闘ではない「後方」の役割を担う部隊をウクライナ西部に派遣する可能性について「真剣に」議論しているが、これは差し迫った決定ではないとタリンの大統領国家安全保障顧問はブレイキング・ディフェンスに語った。
もちろん、これらの部隊は、たとえ「後方」で前線から遠く離れていたとしても、ロシアの航空部隊による直接攻撃の可能性に直面することになる。
さらに最近では、新たな国境紛争が勃発する可能性もある{3}:
戦争研究所(ISW{4})の報告書によると、モスクワはクレムリンの国境警備隊がロシアとエストニアの海上国境を示すブイを撤去した後、NATOの「決意」を試そうとしているという。
エストニアの警察と国境警備隊はリリース{5}の中で、ロシアの法執行機関が木曜日の夜、ナルヴァ川に設置された浮上国境の一部を撤去したと述べた。エストニア警察によると、このブイは航路を示すためのもので、タリンとモスクワ間の2022年合意の一環として、毎年春に設置されている。
おそらく、エストニアの指導者たちが一貫してモスクワに向け大胆な発言をしていることに対するある程度の報復として、このような挑発行為は今後も続きそうである。
政治地図/ロシア連邦の州 …Source: MapsofIndia.com
ロシアとウクライナの紛争を通じて、親西側のバルト三国の指導者たちはますます「強気なこと」を口にするようになっている。しかし最終的にはワシントンを含む西側の強力な後ろ盾に頼らざるを得ない。
Links:
{1} https://www.rt.com/russia/597979-estonia-ukraine-nato-eu/ 
{2}https://breakingdefense.com/2024/05/estonia-seriously-discussing-sending-troops-to-rear-jobs-in-ukraine-official/ 
{3}https://www.newsweek.com/russia-tests-nato-bold-border-move-isw-1904303 
{4} https://www.newsweek.com/topic/isw 
{5}https://www.politsei.ee/en/news/border-guard-of-the-russian-federation-removed-light-buoys-from-narva-river-11981 

https://www.zerohedge.com/markets/nato-country-says-goal-should-be-breakup-russian-federation 

2024年6月5日水曜日

大地動乱の時代(植草一秀氏)

 植草一秀氏が掲題の記事を出しました。
 はじめにフォッサマグナと中央構造線の説明があります。記事中に紹介されている文書をご覧になれば分かりますが、大雑把にいうと、フォッサマグナは糸魚川~静岡構造線(南側)と柏崎~千葉構造線(北側)に挟まれる地帯(中央地溝帯)のことで、日本列島がユーラシア大陸から分離される過程で弓型に押し出された際に、本州の北と南の間がさけて離れたことから生成されたものです(溝の深さは6千m)。
 中央構造線は「千葉~本州~四国の北部~九州熊本」間を走っている地溝帯で、地表にそれを示す「溝線」が走っていることが航空写真でが確認されます。

 記事は次に地震と活断層の関係に移り、「活断層」とは地表や地表付近にくりかえし下または横方向にズレが生じた断層のことで、「最近の時代にずれ動いた断層は、近い将来にもずれ動いて地震を発生すると考えられます。ここで地質学的には「最近の時代」は200万年前~現在とされるのですが、原発の重要構造物の耐震設計については125千年前以降を「最近の時代」と狭く本来はより安全な方向に基準を定めるべきなのに現実はそのに、基準地震動をより小さくし原発の建設を幅広く可能にしていることを明らかにしています。

 そして日本は2020年に「大深度地下使用法」(大深度法)を制定し、公共目的であれば地下40m以深の工作物建造について地表の地権者の許可や了解を不要としました。
 それは40m以上深ければ地表への影響はないという前提に基づいていますが、実際には大深度でトンネルを掘ると、1611月に福岡県博多駅前の道路が大きく陥没したり、2010には東京都調布市の住宅街で住宅地が陥没したりするなどの事故が起きました。
 要するに40m以深のトンネルの構築なら「地表部への影響はない筈」という目論見が外れたのでした。
 植草氏は、耐震基準が脆弱である原発と同様「リニア中央新幹線」工事も即刻中止すべきだとしています。
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大地動乱の時代 3804号 原発・リニアと日本の現実
                  植草一秀の「知られざる真実」 2024年6月 4日
私たちは謙虚になるべきと思う。大自然の巨大な力に人間が太刀打ちできることはない。
日本列島はかつてユーラシア大陸の東端に陸続きで位置していた。
youtubeで「小麦粉ときな粉で日本を作ろう(フォッサマグナ実験)」というタイトルの動画が公開されている。
https://www.youtube.com/watch?v=BWSYuFfhawA
以下の解説が付されている。
「日本列島のでき方が簡単にわかる実験です。弓なりに曲がった日本列島の真ん中に、隠れた地質の大きな割れ目(フォッサマグナ)があります。どのようにフォッサマグナができたのでしょうか。
小麦粉を使って簡単に再現できます。割れ方が気に入らなければ何回も実験できます。
フォッサマグナについて知りたければ、フォッサマグナミュージアムまで。
https://fmm.geo-itoigawa.com/
日本列島がどのようなメカニズムで組成されたのかが分かる。
「大鹿村中央構造線博物館」のウェブサイトも参考になる。
https://mtl-muse.com/study/earthquake/aroundjp/
「日本列島の骨組みを組み換えた大断層」
「中央構造線ってなに?」
などの解説が示されている

この解説を元に地震と活断層の関係を以下に記す。
「活断層」とは、最近の時代に、地表や地表付近にくりかえし食いちがいが生じた断層のこと。地殻は通常数十万年程度で大きく変わらないなら、最近の時代にずれ動いた断層は、近い将来にもずれ動いて地震を発生すると考えられる。
ここでいう「最近の時代」とは、おおむね200万年前~現在
しかし、工学的指標としては、たとえば原子力発電所の重要構造物の耐震設計については12万5000年前以降を「最近の時代」とし、必要な場合は約40万年前以降まで遡って活動性を評価する(原子力規制委員会新規制基準)。
200万年前以降にずれ動いた断層を「活断層」とするが、原発建造では、これが12万5000年前以降に動いていなければ「活断層」とみなさないということ。
本来は、より安全な方向に基準を定めるべきだが、現実は逆。

地表の活断層の地下延長部で発生する地震でも、マグニチュードが65以下の規模では地表地震断層が出現しない。
内陸の地殻内地震の震源は深さ10km程度がふつうだが、この場合、マグニチュード6規模の地震では地震地表断層が出現しない
これに対して、マグニチュード70以上の地震では震源断層の一部が地表に出現し、マグニチュード80の地震では震源断層のほぼ全長の上端が地表に出現する。
したがって、地表に活断層が観察される場所では、過去にマグニチュード70以上の地震が繰り返し発生し、これからも発生することが予想されるということになる。

日本列島は太平洋プレートとフィリピン海プレートが大陸プレートの下に沈みこんでいる「沈み込み帯」にある。
この日本列島とその周辺で発生する地震には3~4通りのタイプがある。












海洋プレートが沈み込む直前に海洋プレート内で発生する地震がある。
このタイプの地震で海底に地表地震断層が生じるような浅部で発生するものが「アウターライズ地震」。
遠方のため海岸で感じる揺れが弱い割に大きめの津波が来ることがある
沈み込んだ海洋プレートを一枚岩や床板を意味するスラブと言うが、その沈み込んでいくスラブの中で発生する地震を「スラブ内地震」と呼ぶ。
強い警戒が求められるのが、沈み込んだ海洋プレートと大陸プレートの境界面で発生する「プレート境界型地震⇒構造図ではプレート間地)
太平洋プレートは1年に約10cm、フィリピン海プレートは1年に約4cmの速度で沈み込む。
広い面積のプレート境界面がずれ動くために規模の大きな(マグニチュードの大きな)地震が発生する。
沈み込まれている日本列島側(大陸プレート側)の地殻の上部で発生する地震が「上部地殻内地震」。
マグニチュードはプレート境界型地震よりも小さめだが、震源断層が陸地の浅い地下に生じるため、震源域付近の地表の揺れは強くなる。ただし、強く揺れる範囲は狭くなる。

石橋克彦神戸大名誉教授が指摘するように、日本は「大地動乱の時代」に移行している。
頻繁に大地震が発生している。
原発もリニアも巨大地震に耐えられない。
自然の力を謙虚に認めて、日本の国情に合わない原発やリニアから訣別する冷静な判断が求められている。

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アメリカ帝国は絶え間なく続く戦争が政府を運営しているのだ

「マスコミに載らない海外記事」でケイトリン・ジョンストンが掲題の趣旨の記事を出しました。米国が史上空前の戦争国家であることは既に下掲の記事でも明らかなところです。
   (15.2.28)アメリカは建国後合計222年間=93%の年間 戦争をしてきた
 今度の記事は、それは歴代の政府が戦争を引き起こしてきたのではなく、「絶え間なく続く戦争が政府を運営しているのだ」とするものです。大統領が代わろうとも戦争は決して止めない実態をみれば、そう表現するのが的確かも知れません。
 かつてノーベル平和賞に輝いたオバマこそは在任中に最大数の侵略戦争を行った大統領であり、逆に強気で知られたトランプは在任中新たな戦争を一つもしなかったといわれています。
 それは兎も角として では米軍は高級な軍隊かというと、実態はそれとは真逆のボロボロの軍隊のようで「耕助のブログ」に下記の記事が載りました。

   6月3日) 米軍が物理的に崩壊しつつある理由
   6月4日) 米軍はどのように崩壊しているのか
 興味をお持ちの方は原記事にアクセスしてください。
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アメリカ帝国は絶え間ない戦争をしている政府ではない。絶え間なく続く戦争が政府を運営しているのだ
              マスコミに載らない海外記事 2024年6月4
   アメリカ帝国は、たまたま絶え間ない軍事作戦を続けている国家政府ではなく、
  絶え間ない軍事作戦こそが国家政府を運営していると理解すれば、多くの混乱が解
  消する。            ケイトリン・ジョンストン 2024年6月1日
 アメリカ帝国は、たまたま絶え間ない軍事作戦を続ける国家政府ではなく、絶え間ない軍事作戦こそが国家政府を運営していると理解すれば、多くの混乱が解消する。
 アメリカの利益のために戦争が計画されるのではなく、戦争利益に奉仕するようにアメリカが作られているのだ。国家としてのアメリカは、大規模軍事暴力とその脅威で地球を支配するための絶え間ない作戦用の資金や人員や資源や外交的隠れ蓑の供給源に過ぎない
 この作戦は、アメリカ国民やその安全の利益のために行われているのではなく、世界支配作戦が支持する継続的な暴力、搾取、搾取の世界秩序を前提とした富と権力を持つ金権政治家や選挙で選出されない帝国経営者連中の緩やかな国際同盟の利益のために行われている。この世界支配作戦とその顕現は、全体として、アメリカ帝国と呼ばれることがあるが、これは個別の国としてのアメリカとは、ほとんど共通点がない。
 皆様がこれを理解するまで、アメリカ政府アメリカ軍事機構がしていることは全く意味がわからない。アメリカ国民には何の利益ももたらさず、むしろアメリカの国家安全保障上の利益を損なう軍事作戦がなぜ遂行されるのか皆様は理解できないはずだ。誰が政権に就こうと、政党や政策に関係なく、アメリカ外交政策が変わらないのはなぜか皆様理解できないはずだ。アメリカと同盟諸国が、益々不評になりつつあるガザでの大量虐殺を支援したり、中国との冷戦を開始したり、ロシアとの核戦争を誘発しようとするなど、政府が行うべきでない狂気の沙汰をなぜ行うのか皆様理解できないはずだ。
 答えは、こうした侵略行為は、それがアメリカという国家に利益をもたらすがゆえに起きているのではなく、選出された議員連中の政治目的にかなうから起きているわけでもないのだ。絶え間ない暴力行為は、全く別の目的を達成するための手段で、それ自体がほとんど目的なのだ。つまり、戦争で儲ける連中に利益をもたらし、地政学的支配を強化し、アメリカ帝国特有のグローバル資本主義の範囲を拡大することだ
 世界中で軍事作戦が絶え間なく行われ、前景には、我々が目にする戦争や軍国主義と何らかの関係があるかのように見せかける公式政府という芝居がかった大道具が並べられている。現実には、戦争機構はすべきことをしているだけで、中絶やドナルド・トランプについて議論する演技をワシントンの議員連中が繰り広げ、実際決定を下す本物の政府がアメリカにあるかのように見せかけているのだ。
 ずっと以前、有権者の意志に任せるには戦争は重要すぎると決定されたため、今ではアメリカ国民が帝国機構の歯車に干渉しないようにするため、偽のダミー政治体制を弄ばせている。自分たちの名の下に世界中で行われていることと真実に基づく関係を持つためには、地球規模帝国の中心地で暮らす国民は余りにプロパガンダにさらされ、娯楽に溺れ、気を散らされ、忙しく、貧しく、病気にさせられている。そして、たとえ生活の中で政治に関わる時間を作っても、どちらの派閥も戦争や軍国主義や帝国主義や金権政治や環境破壊的資本主義を支持しながら、実際に権力を持つ連中の誰も気にしない問題を巡る空虚な文化的争いに膨大なエネルギーを注ぐ、偽りの二大政党制に彼らは追いやられている
 主流の帝国主義的世界観に依然囚われている人々に、このことについて話そうとするのは、「Andy Amazon & Friends」という子供向けアニメ番組をAmazonが放送し、一般の人々がそのアニメ番組がAmazonと信じ込み、世界経済を食い尽くしている純資産1兆以上の企業に関しては何も知らずにいるようなものだ。超巨大電子商取引企業について皆様が話そうとすると、皆様がアニメについて話していると彼らは思い、皆様が言っていることは番組や登場人物について彼らが知っていることと一致しないと反論するだろう。
 このアニメの背後にある大企業、そして公式政治の見せかけ人形劇の背後にある帝国を一度見とおせば、それがどこでも見えるようになる。帝国戦争機構の動きの中にそれが見える。ニュース見出しの中にそれが見える。欧米政治メディア支配階級が吐き出す偽りの正当化や言説の中にそれが見える。教育制度の中にそれが見える。果てしなく続く娯楽や資本主義の洗脳という気の抜けた主流欧米文化の至る所にそれが見える。
 そして、人形劇のことなど皆様は気にしなくなる。大統領選挙や、彼と不倫したストーミー・ダニエルズとドナルド・トランプのことや、日々の文化戦争分断問題や、立場を表明すべきだと皆が言う最新の注目話題など皆様は気にしなくなる。それは皆様にとって、家の緊急事態に対処するのに皆様が忙しい時に、子どもが背景に流すYouTube動画と同じ程度の関心事になる。
 そして帝国の行動はまさに緊急事態なのだ。これら変人連中が推進するロシアと中国に対するエスカレーションは我々全員死に至らしめる軌道に世界を乗せており、ガザやその他の場所で連中が引き起こしているテロは今まさに世界中で悪夢を生み出している。世界支配が益々脅かされるにつれ帝国は益々狂気と暴力を増すばかりで、帝国の真の姿を人々が知るまでは、帝国に対して必要な国民反対運動を作り上げ、人数の力を使って連中を止めさせるのは非常に困難だろう。
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記事原文のurl:https://caitlinjohnstone.com.au/2024/06/01/the-us-empire-isnt-a-government-that-runs-nonstop-wars-its-a-nonstop-war-that-runs-a-government/


虐殺を伝えるため田中はパレスチナを反芻する
                田中宇の国際ニュース解説 2024年6月4日

(写真上)少女は血まみれで瞳孔が開き、頭からは脳しょうが飛び出していた。~戦争の現実を伝えるために敢えて凄惨な画像の公開に踏み切りました。=ガザ 撮影:田中龍作=


(写真下)父親をイスラエルの空爆で殺された少女は絶叫し遺体にすがりつこうとした。=ガザ 撮影:田中龍作=

 戦場を離れて早や6ヵ月が経つ。耳と鼻が鈍ってきた。たまに戦場に行くのが一番危ない。「これくらい大丈夫だ」とタカをくくるからだ。
 カンを鈍らせないためにも時々、パレスチナを反芻する
 難民キャンプとその周辺は真っ昼間なのに死んだように物音ひとつしない。聞こえてくるのは唸り声をあげて上空を旋回するドローンのエンジン音だけだ。
 「ガガガガ・・・」イスラエル軍名物の超大型ブルドーザーが道路や建造物を破壊する音が耳に飛び込んでくる。
 四方八方から響いてくる発砲音や爆発音の方角から戦域を割り出し、戦域ド真ん中に入れば
 イスラエル軍が何を攻めようとし、ハマスやファタハが何を守ろうとしているのかが分かる。この目で確かめることができるのだ。
 ガザであろうがウエストバンクであろうが、病院は最大の攻防となる。
 鼻を利かせていれば、イスラエル軍の臭いが分かる。
 逃げ道を確保しながら前進する。取材が一段落したら、撃ち殺されないようにしてホテルまで辿り着かねばならない。
 虐殺の実態を読者に伝えるのだ。それが田中の使命だと思っている。

    ~終わり~

   
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