中谷元防衛相は13日、名護市辺野古の新基地建設に反対する翁長知事と「会っても意味がない」と語りました。実際に安倍首相をはじめとして閣僚はただ一人を除いて知事に会いませんでした。知事が2回東京に訪ねたにもかかわらずです。
これほど知事と沖縄県民を侮辱した話もありません。中谷氏の発言は、彼個人の意見に留まるものではなくて、安倍内閣の総意を語ったものに他なりません。
翁長知事の再三の中止要請にもかかわらず、官邸・防衛省・沖縄防衛局は12日、辺野古沖のボーリング調査(海底地質調査)を開始しました。
安倍内閣は、仲井真前知事が任期末ぎりぎりで埋め立てを承認したことを工事遂行の唯一の根拠にしていますが、知事選で大敗して死に体になった仲井真氏の承認が本当に有効だと思っているのでしょうか。
国がここまで沖縄県民の意向を無視して基地の建設を強行するのであれば、知事としては岩礁破砕許可の取り消しや、第三者委員会の検証に基づく承認の「取り消し」「撤回」の決定を急ぐしかないのではないでしょうか。
14日の沖縄タイムスの社説はそう語っています。
同じ日の琉球新報も、沖縄の「島ぐるみ会議」が9月にジュネーブで開かれる国連人権理事会に参加し、辺野古新基地建設強行が県民への人権侵害に当たると報告することを報じ、政府の仕打ちの不当性、非民主主義的専制ぶりを訴えるべきだと、社説説で述べました。
そして国連人種差別撤廃委員会が5年前日本政府に、「沖縄への米軍基地の不均衡な集中は現代的人種差別だ」として改善を勧告したにもかかわらず、そのときよりも事態ははるかに深刻化し、人権侵害があからさまになったとしています。
琉球新報の社説も併せて紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(社説) [辺野古掘削続行] 極まった政権のおごり
沖縄タイムス 2015年3月14日
名護市辺野古への新基地建設をめぐって、中谷元防衛相は13日の閣議後会見で、新基地に反対する知事とは「会っても意味がない」と語った。
民主主義のイロハも知らない暴言である。名護市長選、県知事選、衆院選で示された沖縄の民意を無視した傲岸(ごうがん)不遜な態度に強く抗議したい。
官邸・防衛省・沖縄防衛局は12日、再三にわたる県の中止要請にもかかわらず、埋め立て工事に向けた辺野古沖のボーリング調査を半年ぶりに再開した。海底の地質を調べる掘削は13日も続いた。
さまざまな問題点が指摘されている前知事の埋め立て承認を唯一の根拠に新県政との対話を拒み、反対派市民の抗議行動を強権で封じ込める。米軍政下の軍事優先政策を思わせる強引さだ。
調査再開について菅義偉官房長官は、1999年に県と名護市が米軍普天間飛行場の辺野古移設に同意しているとも主張したが、この指摘はあまりにも一面的である。
稲嶺恵一知事は「軍民共用」と「15年使用期限」の条件を付けて辺野古沿岸域への移設を認め、それを前提に岸本建男名護市長も条件を付して移設を容認した。
しかし計画は頓挫。日米両政府が2005年10月に合意した沿岸案(L字案)には、稲嶺知事も岸本市長も反対した。
06年5月、在日米軍再編の最終報告で示された現行案(V字案)は、国が一方的に計画を変更したものである。すでに岸本氏は市長を退任し亡くなった後で、稲嶺知事もこの案には同意していない。
■ ■
昨年12月、翁長雄志氏が知事に就任して以降、安倍晋三首相や沖縄基地負担軽減担当相を兼ねる菅官房長官と面談できない状態が続いている。
埋め立て承認を検証する県の第三者委員会が終了するまで海上作業を中止するよう申し入れても聞く耳を持たず、コンクリートブロックの投入でサンゴ礁が傷ついたとして知事が出した作業停止指示にも素知らぬ顔だ。
日本政府だけではない。サンゴを調べるため県が求めた臨時制限区域内の立ち入りを米軍は拒否している。
臨時制限区域は反対派住民を閉め出そうと、昨年急に設定されたものである。市民が座り込みを続けるキャンプ・シュワブゲート前のテント撤去の警告とあわせ、政府に不都合な声を抑え込むという、あからさまなやり方だ。
防衛局による環境監視等委員会資料の改ざん問題が明らかになり、委員会副委員長が辞任の意向を示す中での掘削再開は尋常ではない。
■ ■
辺野古容認の候補が続けて敗れた選挙結果を「真摯(しんし)に受け止めたい」としながら、工事を強行する安倍首相。その言行不一致は、本土向けの言葉と沖縄に対する行動を使い分けるものであり、「法の下で平等な保護を受ける権利」という民主主義の原則に反する。
翁長知事には岩礁破砕許可の取り消しや、第三者委員会の検証に基づく承認の「取り消し」「撤回」の決定など、早急な対応が求められる。
時間の余裕はない。
(社説)国連人権理事会 政府の非人道性を訴えよ
琉球新報 2015年3月14日
今の政府の沖縄に対する態度がどれほど非人道的か、いまさら申すまでもない。人権に敏感な国際社会の目に照らせば、非難を浴びることは火を見るより明らかだ。
その意味でまことに意義深い。沖縄の政財界や労働・市民団体の有志、有識者でつくる「島ぐるみ会議」が9月にジュネーブで開かれる国連人権理事会に参加し、政府による辺野古新基地建設強行が県民への人権侵害に当たると報告する。
政府の仕打ちの不当性、非民主主義的専制ぶりを訴えてほしい。
それにしても安倍政権の言行不一致ぶりにはあきれ返る。
安倍晋三首相は就任直後、「(基地負担に関する)地元の声に耳を傾ける」と語り、ことしの施政方針演説でも「沖縄の理解を得る努力を続け」ると述べたが、翁長雄志知事が繰り返し面会を求めても門前払いだ。「耳を傾ける」発言は仲井真弘多前知事の時だった。言うことを聞く人の声は尊重するが、そうでない人は無視するということなのであろう。
首相は国会で「沖縄の基地負担軽減に取り組む」とも述べたが、片腹痛い。実際に行っていることは、軍港機能を新たに加える辺野古新基地建設の強行である。
考えてもみてほしい。普天間飛行場は、代替基地を県内に置かず、そのまま取り払ったとしても、在日米軍専用基地の沖縄への集中度は73・8%から73・4%になるにすぎない。そんなささやかな望みでさえ沖縄には持つ資格がないと言わんばかりの強行なのである。
地元名護市の市長選も市議選も知事選も新基地反対派が勝利し、衆院選では反対の候補が全勝した。これ以上ないほど明確に示された民意を踏みにじる今の政府の態度が、人権侵害でなくて何であろう。
「日本領土内で住民の意思に反した不当な支配がなされていることに国連加盟国が注意を喚起することを要望する」。現状を指すかと見まがうが、実は翁長知事の父がかつての立法院で読み上げた決議文だ。今の日本政府の専制ぶりはかつての米軍占領統治にも等しいと分かる。
国連人種差別撤廃委員会は5年前、日本政府にこう勧告した。「沖縄への米軍基地の不均衡な集中は現代的人種差別だ。沖縄が被っている根強い差別に懸念を表明する」。5年前よりはるかに深刻化し、あからさまになった人権侵害を見て、今度は絶句するだろう。