『報道ステーション』(テレビ朝日系)に毎週金曜日に出演していた元経産官僚・古賀茂明氏が、官邸からの強い働きかけがあって3月一杯で解任されました。
直接の原因となったのは1月23日の放送で、古賀氏が、「イスラム国」による人質事件の最中でほとんどのメディアが政権批判を控えているなか、首相が中東訪問を控えているのなら、政権はそれまでに人質問題を解決しておくこともできたのに、放置したまま、エジプトで「『イスラム国』と戦う周辺国に2億ドル出します」と演説するなどして、逆に「イスラム国」を刺激するパフォーマンスを繰り返した安倍首相に責任があると、敢然と批判したことでした。
放送の途中から番組関係者の元に数分毎に抗議とおぼしき電話が入り、放送中で出られないと分かると官邸は局の上層部に直接電話を入れたということです.
権力の中枢が報道機関に直接クレームを出すとは、昭和10年台だと勘違いしたのでしょうか。
古賀氏だけでなく、これまで周囲からの圧力に抗して『報道ステーション』路線を支えてきた番組統括の女性Mチーフプロデューサーと、やはり比較的良心的なコメンテーターであった恵村順一郎氏も同時に解任されたということです。
この数少ない良心的番組:『報道ステーション』は以前から安倍政権から目の敵にされていて、今回の『報ステ』つぶしの人事は、安倍首相と親しい見城徹幻冬舎社長が間に入ってテレビ朝日会長と話をつけた結果だといわれています。
安倍政権の違法な報道介入は留まるところを知りません。
田中龍作氏が27日、最終回出演を終わった古賀氏にインタビューしました。
以下はインタビュー記事の前編で、「古館キャスターがいかにしてテレビ朝日の軍門に下ったか」の巻ということです。
古館伊知郎氏くらいキャスターとしての実績があれば、たとえ決定権は持たなくても人事についても相当の影響力が発揮できたのではないかと思われるのですが、そうした努力は何もなかったようです。
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古賀茂明氏、単独インタビュー ~テレビ朝日編~
田中龍作ジャーナル 2015年3月29日
I am not ABE。テレビ朝日の報道ステーションで安倍政権を批判したため、官邸に圧力をかけられ、番組を降板させられた元経産官僚の古賀茂明氏が『田中龍作ジャーナル』の取材に応じた。
前・後編に分けてインタビューを再現する。
前編は古館キャスターがいかにしてテレビ朝日の軍門に下ったか。
田中:番組が終わってテレビ朝日から外に出てくるまで大変長い時間がかかっていましたが。
古賀:つるし上げっていうか、帰してもらえなかった。まず、最初のCMの時、現場で一番偉い人(若林統括プロヂューサー)が来て、「古賀さん、なんでそんな打ち合わせにないことを言うんですか?」って言うから、「打ち合わせにないことを言っちゃいけないんですか?」
紙に「打ち合わせにないことを話してはいけないと若林プロデューサーは言ったということでいいですね」と(書いて)聞いた。
途中で、「こういうことやめましょう」とか古館さんがワーワー言うわけです。「こんなことやってたって視聴者の方わかりませんよ」と(古館キャスターが)言うから、「いや分かる人とわかんない人がいる」(と古賀氏は言った)。
田中:古館さんが番組最後に言った「古賀さんのコメントには承服しかねる」の一節が間違いなく局から出たなと思ったのは、翌日テレビ朝日が会社としてコメント出したが、あれとまったく一緒。
古賀:私はそこは見ていないので、はっきりは分からないのですが、後で聞いた話では――
一番最後の為替とかやる前に、篠塚報道局長がサブスタジオかなんかに入って来てスタッフを呼んで、「こういう事(『古賀さんのコメントには承服しかねます』を読め」と書いた紙を古館さんに渡したらしいんです。古館キャスターはそれを書き写して最後に読み上げた。
だから、彼は言わされてるわけなんです。彼のほうが弱いんですよ。(テレビ朝日)早河会長とかから比べれば全く弱い立場。
普通は、あんな大看板のメインキャスターだったら相当ワガママを言える。僕を出すかどうかはたいした問題じゃなくて、テレ朝の最大の問題はプロデューサーを変えるということ、恵村さんというコメンテーター(朝日新聞編集委員)を変えること。
去年からそういう動きがあって、1月の初めには全部決まってたんです。(にもかかかわらず)こないだの木曜日か金曜日まで隠してた。後ろめたいからですね。
早河会長は安倍さんと食事をしたりしてべったりですからね。佐藤会長は古館プロダクションを仕切っている人で、古館さんはその影響下にある。
古館さんは前回(出演の時)楽屋で平謝りだったんですよ。要は、自分は何にもしませんでしたと。
何を謝ったかというと、僕(古賀)を出さないことだけじゃなくて、「自分(古館)は局がやろうとしていることに一切異論を唱えなかった」と。
つまり議論して負けたんじゃないんですよね。彼は「わざと知らないふりした」と言ったんですよ。プロデューサーを首にすることとか、恵村さんを変えるということとか局側に一言も(異論を)言わなかったんですよ。とにかく軍門に下ったんですね」。
一番驚いたのは(古館さんが)放送で「結構我々もいい番組やってるでしょう」と。あれはぜんぜん逆でいい番組を作っているのはプロデューサーなんです。
ビデオはプロデューサーが戦って戦って、いろんな横やりを全部蹴飛ばして(作った)。逆に古館さんはむしろ逆の姿勢で「こんなことはやりたくない」とか「それはやり過ぎじゃないか」(と言う)。毎日トラブルですよ。
だから、4月に入っても(古館キャスターは)しばらく政府を批判したようなこと言いますよ。批判されるから。
報道ステーションの特集企画、村山談話、川内原発、沖縄とかすばらしい特集はプロデューサーががんばってやってる。だけど古館さんは村山談話の時なんかびびっちゃって。「やっぱり村山さんと反対意見の人もちゃんと呼んでやるべきでしたね」。とか。
次回は、虎とキツネが同居したような「アベ官邸の陰湿な脅しと報道統制」について古賀氏が赤裸々に語ります。
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