2015年3月26日木曜日

辺野古基地建設 法治国家なら作業を止めよ

 沖縄タイムスは24日、「作業停止指示 筋を通した重い判断だ」とする社説を掲げ、翁長沖縄県知事が沖縄防衛局に対して作業停止を指示したことを正当で重い判断だとしました。
 琉球新報は25日、「県の停止指示無視 法治国家なら作業を止めよ」と題する社説で、国は翁長知事の指示に従うべきだとしました。
 
 沖縄タイムスは24日の社説で、沖縄県は昨年8月、仲井真弘多前知事の時に県漁業調整規則に基づき埋め立てに必要な岩礁破砕を許可したが、その後許可区域投入した大型ブロックサンゴを傷つけていたことが分かったので、県の調査が終了するまでの間すべての作業の中止を指示し、それに従わなければ岩礁破砕の許可を取り消すとしたことは筋が通っているとしています。
 そしてそれに対して菅官房長官「国としては工事の許可をもらっているので全く問題ない」と、前知事の埋め立て承認を唯一の根拠にして県との一切の対話を拒否し、一方的に作業を続けようとしているのは問題だとしています。
 
 また琉球新報は25日の社説で、翁長知事の作業停止の指示に対して、菅官房長官「この期に及んではなはだ遺憾と述べて県の指示に従わないのは、地方分権、地方自治を踏みにじる国のおごりであるとしています
 そして、国が行政不服審査法に基づく審査請求と執行停止申し立てを農水省に行ったことについて、国民の権利利益救済を主眼とした法律を国が使うのが果たして許されるのだろうかと疑問を呈しています。
 また国は「法治国家」を作業続行の言い分としているが、県が岩礁破砕許可に付した条件違反を理由に許可を取り消すのは正当なことなので、国の方こそ、県の指示に従う必要があるとしています
 
上記の2紙に加えて下記の5紙が25日、国の独断をたしなめる社説を出しています。
 
辺野古移設  政府は話し合いの席に          【南日本新聞】
辺野古移設問題  沖縄を突き放さず対話を       【高知新聞】
辺野古停止指示 沖縄の民意を無視するな       【神戸新聞】
辺野古基地移設 作業停止の政治決断を       【北海道新聞】
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(社説辺野古 作業停止指示 筋を通した重い判断だ
沖縄タイムス 2015年3月24日
 名護市辺野古の新基地建設に反対する翁長雄志知事が、自らの権限を行使し、新たな対抗措置に踏み切った。ボーリング調査を含むすべての海上作業を1週間以内に停止するよう沖縄防衛局に指示したのである。
 国が指示に従う可能性は極めて低い。従わなければ来週にも岩礁破砕の許可を取り消す考えだ。
 海底の岩石採掘と土砂採取などを内容とする岩礁破砕の許可が取り消されれば、埋め立て工事の着工に影響を与えるのは確実である。
 翁長知事にとっては就任以来、最も重い政治決断といえる。なぜ、何を根拠に、知事は作業の停止を求めたのか。一連の経過を冷静に吟味すれば、筋の通った毅然(きぜん)とした判断であることが理解できる。
 
 県は昨年8月、仲井真弘多前知事の時に、県漁業調整規則に基づき埋め立てに必要な岩礁破砕を許可した。
 しかし今年2月、海底ボーリング調査を再開するため海中にコンクリート製の大型ブロックを投入した際、許可区域外にコンクリートブロックを設置し、サンゴを傷つけていたことが県の潜水調査で分かった。
 翁長知事は「漁業調整規則違反の懸念が払拭(ふっしょく)できない」と主張、調査が終了するまでのすべての作業の中止を指示したのである。
 併せて県は、臨時制限区域への立ち入り調査を認めるようあらためて沖縄防衛局に申請した。公務遂行のための調査であるにもかかわらず、米軍は、県の立ち入り調査を認めていないからだ。
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 臨時制限区域内では、民間の工事船や海上保安庁の警備船が多数出入りし、沖縄防衛局も独自の潜水調査を実施している。なのに、県の調査だけを認めないというのは、嫌がらせと言うしかない
 菅義偉官房長官は「国としては十分な調整を行った上で許可をいただき工事をしている。全く問題ない」と法的正当性を強調する。だが、岩礁破砕の許可には条件がついており、条件に反する行為が確認されれば、許可を取り消すのは当然である。
 それよりも何よりも最大の問題は、前知事の埋め立て承認を唯一の根拠に、県との一切の対話を拒否し、選挙で示された民意を完全に無視し、抗議行動を強権的に封じ込め、一方的に作業を続けていることだ。
 埋め立て承認が得られたからといって、公権力を振り回して問答無用の姿勢で新基地建設を進めることが認められたわけではないのである。
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 国の環境監視等委員会(第三者機関)に配布した資料の改ざん、議事録公開の遅れが問題になっている。同委員会の副委員長は、国の環境影響評価(アセスメント)に不満を抱き、辞任を表明した。
 
 埋め立て承認の適法性に疑問符が付いているだけでなく、国の環境影響評価の信頼性も、疑われ続けているのである。「1強多弱」の国会の中で、安倍政権におごりや慢心が生じていないか。新基地建設は、今や完全に「負のスパイラル(らせん)」に陥っている。異常な事態だ。
 
 
社説 県の停止指示無視 法治国家なら作業を止めよ
琉球新報 2015年3月25日
 翁長雄志知事が沖縄防衛局に対して、普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設に関連する海域での作業停止を指示した。それにもかかわらず、防衛局は翌日、県の指示を無視して現場での作業を継続した。この国に民主主義は存在するのだろうか。
 菅義偉官房長官は県の停止指示について「この期に及んで」と前置きし「甚だ疑問だ」との見解を述べ、県の指示に従わない意向を示している。
 「この期に及んで」とは「何を今さら」という意味合いだ。つまり「辺野古移設は進んでいるのに、国の方針に何を今さら歯向かっているのか。つべこべ言わずに従えばいい」と言いたいのだろう。地方分権、地方自治を踏みにじる国のおごりが言葉ににじんでいる。
 
 政府は県の停止指示の翌日、作業継続と同時に県の指示は「無効」(菅氏)だとして、行政不服審査法に基づく審査請求と執行停止申し立てを農水省に出した。
 行政不服審査法の第1条には法の趣旨が記されている。行政庁の違法、不当な処分に対して「国民に対して広く行政庁に対する不服申し立てのみちを開く」「国民の権利利益の救済を図る」とある。
 強大な権限を行使して移設作業を強行している国が県の停止指示を阻止するために、国民の権利利益救済を主眼とした法律を使うのが果たして許されるのだろうか。制度として可能だとしても菅氏の言葉を借りれば「甚だ疑問だ」と言わざるを得ない。
 
 そもそも県が出した停止指示は県が防衛局に出した岩礁破砕許可に付した条件に基づいた正当な手続きだ。「公益上の事由により(知事が)指示する場合はその指示に従うこと」「付した条件に違反した場合は許可を取り消すことがある」と記されている
 防衛局が臨時制限区域外に設置したコンクリートブロックがサンゴを押しつぶしていた。県は許可を得ずに岩礁破砕が行われた可能性が高いと判断し、停止指示を出している。
 
 菅氏や中谷元・防衛相が政府の作業継続の正当性を主張する時、知事承認を引き合いにことさら持ち出すのが「法治国家」という言葉だ。許可外での岩礁破砕は明らかだ。ならば防衛局こそ、許可条件に従って作業を停止することが「法治国家」の正しい姿ではないか。指示に従わず、審査請求などもっての外だ。