2015年3月18日水曜日

プーチンが核兵器使用の計画に言及したわけ

 ロシアのプーチン大統領が15日の国営放送インタビューの中で、「クリミア情勢によっては核兵器を臨戦態勢に置くことも検討していた」と述べたことで、プーチンへのバッシングが起きています。
 しかしプーチンを非難する資格のある人は被爆者や核兵器廃絶運動家たちであって、これまで国連の核兵器禁止決議に常に「不賛成」の立場を貫いてきた日本政府やそれを容認してきたマスメディアには、非難する資格などありません。
 
 もともと昨年2月のウクライナのクーデターはアメリカの主導で起されたものですが、その後キエフ政権は民衆から支持されず国内の統一が出来ないでいるためアメリカは目的を遂げるためにロシアとの全面戦争も辞さない腹だと指摘する声が出ていました
 
 「櫻井ジャーナル」によれば、キエフ政権はクリミアを軍事制圧すると主張、アメリカ/NATOは黒海周辺に艦船や航空機などを配備し、軍事パレードや演習でロシアに圧力を加えているということで、プーチンがいま敢えて核兵器に触れたのは、アメリカの好戦派がこのまま暴走すれば核戦争になると逆に警告したのだということです。
 
 またクリミヤが3月の住民投票で賛成率95%以上をもってロシアに加盟したことについても、プーチンは「ロシアは2月に時点でそうする方針を持っていた」とも述べました。
 もはや不要になったそんな話をなぜわざわざ、国際世論からバッシングされるのを承知で語ったのかについても、いまの時点で西側世界に対してクリミヤに対するロシアの確固たる態度を表明した方がよい、という判断に基いたものと思われます。
 
 以下に「櫻井ジャーナル」を紹介します。
 やや長文のブログのため一部を省略しています。詳細はURLをクリックして原文をご覧ください。(19日以降にご覧になる場合は、ブログ左側にあるカレンダーで「17日」をクリックしてください)
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FOXニュースで米軍少将がロシア人を殺せと発言、米軍がウクライナ入りして軍事的緊張が高まる
櫻井ジャーナル 2015年3月17日
 FOXニュースの番組に軍事アナリストとして登場したロバート・スケールス退役少将はロシア人を殺せと発言した。そこまでアメリカの有力メディアは戦争に関して鈍感になっている。ロシアには脅しが通用しないと認識、実際に多くのロシア人を殺すしかないということのようだ。シリアの体制を転覆し、ウクライナを制圧する作戦が思惑通りに進まないことに苛立っているのかもしれない。
(中 略)
 言うまでもなく、クリミアでロシアへ加盟する動きが吹き出した原因はキエフで起こったクーデターにある。2013年11月に始まった反政府運動は年が開けると暴力的になり、2014年2月に入るとアメリカ/NATOを後ろ盾にするネオ・ナチのグループがクーデターを成功させ、ビクトル・ヤヌコビッチを大統領の座から引きずり下ろした。勿論、これは憲法違反だが、日頃、護憲、護憲と繰り返している日本の「リベラル派」や「革新勢力」も、このクーデターを支持していた。
(中 略)
 その当時、EUは話し合いで争乱を解決しようとしていたのだが、ヌランド元米国務次官補-女性はそれが気に入らない。(中 略)彼女は暴力的にヤヌコビッチ政権を倒し、ヤツェニュクを含む傀儡政権を樹立させようとしていたのだ。明らかな内政干渉。日本のマスコミはこうしたことに興味がないらしい。
 ヌランドの意向通り、2月18日頃からネオ・ナチは暴力をエスカレートさせた。棍棒、ナイフ、チェーンなどを手に、石や火炎瓶を警官隊に投げつけ、ピストルやライフルを持ち出して街を火と血の海にしたのである。
(中 略)
 クーデターで排除され、場合によっては殺されていたヤヌコビッチ元ウクライナ大統領の支持基盤は東部や南部。そうした地域の住民がキエフのクーデターに怒り、警戒し、拒否するのは当然。そうした中、最も早く動いたのがクリミアで、ロシアの構成主体としてロシアに加盟するかどうかを問う住民投票が3月16日に実施された。
 
 その投票率は80%を超え、そのうち95%以上が加盟に賛成したという。棄権した人も含め、全住民の4分の3以上が賛成したということになる。住民の意思は明確に示されたのだが、日頃、民意、民意と叫んでいる日本の「リベラル派」や「革新勢力」も、この住民投票を無視していた。
 
 アメリカの好戦派にとっても、ロシアにとっても、クリミアは戦略的に重要。セバストポリはロシア海軍の黒海艦隊が拠点にしてきた。1991年にソ連が消滅するとクリミアはウクライナ領になるが、1997年にロシアとウクライナとの間で締結され、99年に発効した条約により、基地の使用と2万5000名までのロシア軍駐留が認められ、その当時から1万6000名が駐留。このロシア軍をキエフ政権や西側のメディアは「侵略軍」だと宣伝、今でもウクライナの東部や南部にはロシア軍がいるという偽情報を発信し続けている。
 
 現在、ウクライナのキエフ政権はクリミアを軍事制圧すると主張、アメリカ/NATOは周辺に艦船や航空機などを配備し、軍事パレードや演習でロシアに圧力を加えている。スケールス少将のロシア人を殺せという発言には具体的な動きが伴っている。過去を振り返ると、カーチス・ルメイのようにソ連を先制核攻撃したがっていた軍人はいたわけで、スケールス少将の発言を軽く見てはいけない。
 スケールス少将と同じようにFOXニュースがアナリストとして雇ったポール・バレリー退役少将はIS(イラクとレバントのイスラム首長国。ISIS、ISIL、IEIL、ダーイシュとも表記)を実際に指揮している、あるいは生みの親だと言われている。
(中 略)
 アメリカ/NATOの軍事力増強に対抗、ロシアも戦闘機や爆撃機を西部地域に配備するなど受けて立つ構えだ。クリミアには超音速の戦略爆撃機TU-22M3も演習のためい移動しているという。クリミア情勢によっては核兵器を臨戦態勢に置くことも検討していたとロシアのウラジミル・プーチン大統領が語ったそうだが、当然だろう。
 
 キエフではネオ・ナチを使ってクーデターを行ったアメリカ/NATOはクリミアを押さえ、ロシア軍の重要な基地を手に入れたと思っていたら、住民が反発しただけでなく現地のウクライナ軍もロシア側についてしまう。少数派を扇動することにも失敗、残された道は軍事侵攻という事態になっていたのだ。NATO軍が動けばロシア軍も出るということ。西側のメディアは、ロシア軍がアメリカ/NATO軍に抵抗することは許せないという立場から報道している。アメリカの脅しに怯え、従属するべきだとでも思っているのだろうか。
 
 当時、アメリカ/NATOの行動はロシアとの全面核戦争に発展する可能性があると警告する声が出ていた。それはそうした背景があるからだが、今、プーチン大統領が核兵器に言及し、軍事演習を実施している理由は今後の展開を念頭に置いているのだろう。すでにキエフ軍は東/南部で劣勢。ネオ・ナチを総動員し、国外から傭兵を投入しても追いつかず、アメリカ軍がウクライナへ入り始めている。ロシア軍がウクライナにいるという作り話とは違ってこれは事実。アメリカの好戦派がこのまま暴走すれば核戦争になるとプーチンは警告しているように思える。日米メディアの反応を見ると、プーチンの警告は効果があったようだ。