2015年3月28日土曜日

袴田巌さん釈放1年、過酷取調べのテープが存在

 無実の死刑囚として拘置されていた元プロボクサーの袴田巌さん(7の再審請求がようやく静岡地裁で認められて48年ぶりに釈放されたのが昨年の3月27日でした。
 しかしながら再審の審理はいま高裁で続けられているので、袴田さんはいまも「確定死刑囚」のままです。
 
 JNN系のTBSが27日、警察署で取り調べを受けているときの音声記録(録音テープ)を独自に入手したとするスクープを報じました。
 その音声を聞くと、人権無視の過酷で暴力的な取調べであったことが分かります。
 
 袴田さんは連日最長17時間にも及ぶ暴力的取調べを受けて、ついに19日目に精魂尽き果てて警察の言うとおりに「自供」しました。
 容疑者を十分に眠らせないようにして暴行を加えるのは、疲労困憊させて警察の誘導に従い易くするための常套手段です。
 
 それがどれほど暴力的で酷い取調べであったのかについては、1年前の植草氏のブログが端的に説明しています。
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  (「袴田事件再審開始決定への検察即時抗告を糾弾す」
               植草一秀の「知られざる真実」 2014年3月30日より)      
 
     (前 略
袴田氏が獄中から子息に宛てた書簡に袴田氏の心境が端的に示されている。
 
 「……殺しても病気で死んだと報告すればそれまでだ、といっておどし罵声をあびせ棍棒で殴った。そして、連日二人一組になり三人一組のときもあった。
午前、午後、晩から11時、引続いて午前時まで交替で蹴ったり殴った。
それが取調べであった。
 
……息子よ、……必ず証明してあげよう。お前のチャンは決して人を殺していないし、一番それをよく知っているのが警察であって、一番申し訳なく思っているのが裁判官であることを。
 
チャンはこの鉄鎖を断ち切ってお前のいる所に帰っていくよ。」
 
本国憲法第36条に次の条文が置かれている。
第三十八条  何人も、自己に不利益な供述を強要されない。 
 2  強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。 
 3  何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。
 
そして、刑事訴訟法第336条は刑事裁判の判決について、次の規定を置いている。
(無罪の判決)
第336条 被告事件が罪とならないとき、又は被告事件について犯罪の証明がないときは、判決で無罪の言渡をしなければならない。
 
自白を唯一の証拠とする場合には無罪としなければならないこと。
合理的な疑いを差し挟む余地のない程度にまで犯罪が証明されない場合には無罪の判決が言い渡されなければならないこと。
こうした刑事裁判に関する根本規定、法令が遵守されていたなら、袴田巌氏に死刑判決が言い渡される可能性は皆無であったはずだ。
しかし、現実には袴田巌氏に死刑判決が言い渡され、袴田氏は48年間の長期にわたって「鉄鎖」につながれてきたのである。
     (後 略
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 TBSニュースを紹介します。
 
追記 4人を殺害する犯行を1人で行うのはとても無理で、被害者の血縁者を首謀者(=昨年死亡)とする数人(ほぼ特定)の犯行とする有力な見方が早い時期からありました。
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袴田巌さん釈放1年、過酷取り調べテープの全容 
TBSニュース 2015年3月27日
 JNNのスクープです。事件から48年ぶりに釈放された袴田巖さん(79)は、あまりに過酷な取り調べを受けていました。刑事たちによる恫喝や誘導。初めて明らかになった音声記録です。
 
 【入手した音声記録】
 「なぜ言うことが無いんだ。なぜ言うことが無いんだ。てめえは本当に意気地のない野郎だな。意気地のない弱虫だな、てめえは」(警察)
 
 これはJNNが独自に入手した49年前の音声記録です。取り調べを受けているのは、1年前の3月27日、およそ半世紀にわたる拘束から釈放された袴田巖さん。48時間にも及ぶ録音テープは、去年10月、静岡県警の倉庫から発見されました。
 
【入手した音声記録】
 「どういう精神状態だ、お前は。自分で正常だと思っているのか?」(警察)
 「思ってるよ」(袴田さん)
 「誰がお前を正常だと言ってるんだ」(警察)
 「自分は思っている」(袴田さん)
 「自分だけじゃないか、正常だっていうのは」(警察)
 
 袴田さんは49年前、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして逮捕されました。
 
【入手した音声記録】
 「私はしてません・・・家でテレビ見てて」(袴田さん)
 
 逮捕直後、否認する袴田さんの取り調べを記録したテープは、半世紀近く、存在しないものとされてきました。
 
【入手した音声記録】
 「お前は人を4人殺した犯人だぞ。しかも、殺して火をつけた。4人殺して火をつけた犯人だ。墓前に持っていってやるよ。流した涙を墓前に持っていって『袴田がこういう風に泣いてます』と言ってやるよ」(警察)
 
 17時間にも及ぶ日もあった過酷な取り調べ。袴田さんは、逮捕から19日後に容疑を認め、その後、死刑が確定したのです。
 
 釈放後の袴田さんは家の中を歩き続けるなど、長年の拘束による「拘禁反応」が表れているといいます。
 
 そして1年が経った27日も・・・
 
 (Q.どんな一年でしたか?)
 「一年ぐらいはすぐ経つ。みんな思う通りに、いきはしない。政治が思う通りにやれない」(袴田巖さん)
 
 新たに見つかった当時の捜査記録。この再審をめぐる審理は現在も高裁で続いていて、袴田さんはいまも「確定死刑囚」のままです。