2015年3月24日火曜日

礒崎氏は緊急事態条項最優先、公明は環境権を除外へ 

 自民党礒崎首相補佐官は22日、政治資金パーティーで、憲法改正について緊急事態条項の新設から取り組むべきだとの考えを示しました。大災害時に有用な条項という理解が広まれば一番容易に進められるという認識からです。
 しかし日本は世界に類を見ないほど精緻に整備された災害対策基本法があるので、緊急時の法の備えは既に整っているうえに、緊急事態条項の創設はナチスの例に鑑みて大変に危険だ、というのが識者の見解です
 
※ 2月21日 「国家緊急権」創設=改憲 の危険性 

 緊急事態条項決して安易に新設してよいというようなものではありません
 
 公明党は、これまで環境権の「加憲」を提唱してきましたが、昨年夏与野党議員が行った欧州視察で、欧州では環境権を憲法に盛り込んだ結果 環境権に関する違憲訴訟が相次いで、開発や投資の妨げになっていることが判明したため、除外する方向で検討に入ったということです。
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礒崎首相補佐官、2段階論を提唱 
「一番のテーマは緊急事態条項」「できれば来年中に」
産経新聞 2015年3月22日
 自民党憲法改正推進本部事務局長を務める礒崎陽輔首相補佐官は22日、大分市での自らの政治資金パーティーで、憲法改正について、大災害などを想定した緊急事態条項の新設から取り組むべきだとの考えを示した。「最初はできる限り合意が得られるところで行い、次からもう少し難しい問題を議論すれば良い」と2段階論を唱えた。
 
 礒崎氏は、憲法9条改正や改憲手続きを緩和する96条改正を2段階目の課題だと説明。「分かりやすいところから改正する必要がある。そうすれば国民も9条などの議論の仕方が分かる」と述べた。
 自民党は改憲で緊急事態条項や環境権、財政規律条項の新設を優先させる方針。礒崎氏はこのうち「一番テーマになっているのは緊急事態(条項)だ」と持論を訴えた。
 改憲時期に関し「できれば来年のうちに、遅くても再来年前半までに憲法改正の国会発議や国民投票ができるようにしたい」と重ねて強調した。
 
 
公明:「環境権」の除外検討 憲法改正で方針転換
毎日新聞 2015年03月23日
 公明党は憲法を改正し新たな条項を加える「加憲」の対象から、環境権を除外する検討に入った。環境権の加憲は、同党が選挙公約で掲げており、憲法改正に関する中心的な主張だが、欧州諸国で環境権に関する違憲訴訟が相次ぎ、開発や投資の妨げになっていることを受け慎重姿勢に傾いた。早期の改憲を目指す自民党は、環境権加憲に応じることで公明党の抱き込みを狙ってきたが、戦略の練り直しを迫られることになりそうだ。【高本耕太】
 
◇経済への支障懸念
 公明党がこれまで提唱してきた環境権は、国民に「良好な環境で生きる権利」を付与し、国に「環境問題に取り組む義務」を課すもの。1990年代から掲げており、象徴的政策の一つだ。昨年12月の衆院選の重点政策集にも、加憲の対象として「例えば、環境権など新しい人権」と掲げた。
 
 しかし、昨年夏に衆院憲法審査会の与野党議員が行った欧州視察では、環境権を憲法に盛り込んだ結果、経済的なダメージがあったなど否定的な意見が多いことが判明。ギリシャでは「開発と環境保護のバランスをとるのが困難だ」として、経済成長の支障になる可能性が指摘された。ポルトガルでは「個人主義を助長する恐れがある」などと、社会的な秩序が混乱することへの懸念が出された。
 
 公明党幹部は「環境権を盛り込むことで、地理的に離れた場所での違憲訴訟も可能になるかもしれない。公共工事は立ち行かなくなってしまう」と懸念する。
 
 日本には、憲法13条(幸福追求権)に基づき、環境保全の施策を定めた環境基本法が既に存在する。党憲法調査会幹部は「環境権の加憲はデメリットも大きく、ことさら書き込む必要はないのではないか」と、環境基本法での対応で十分と指摘。別の党幹部も「(党内は)かなり否定的に傾いている」と語った。
 
 衆院憲法審査会は月内にも、改憲項目の絞り込みのための議論を始める予定だ。自民党は各党との合意形成を優先し、多くの党に比較的認められやすいテーマとして「環境権などの新しい人権設定」を提唱しているが、公明党の方針転換でテーマの再考を迫られる可能性がある。
 
 公明党は今後、加憲対象の柱として、地方自治の拡充や、衆院解散時に大規模災害が起きた場合の対応を定めた緊急事態条項の創設を訴える方針だ。9条については、1項(戦争放棄)と2項(戦力の不保持)を堅持したうえで、「自衛隊の存在と国際貢献」を明記する3項を加えることを提唱しており、海外での武力行使は認めない姿勢だ。同党幹部は「加憲は本来、9条を想定している。堂々と9条の議論をすればいい」と語った。
 
【ことば】環境権
 大気や水など自然環境に関し、良好、快適な環境で健康に生活するための権利。新しい人権の一つとされている。深刻な公害被害など環境問題が、人々の生活に大きな影響を与えるようになったことを受けて主張されるようになった。外国の憲法には、国民が環境権を保有することを明記したものや、国家や国民に環境保護を義務付ける規定を盛り込んだものがある。